2024年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« 2009年5月ザハロワの「カルメン」 | トップページ | ロイヤル・バレエの昇進情報 »

2008/07/25

7/23 ABT「白鳥の湖」(まだ途中)

よく突っ込みどころが多いとか言われているマッケンジー版の「白鳥の湖」なのだけど、私は案外嫌いじゃない。初めて観たのは、2004年のMETシーズンだったかしら。その時は、マルセロ・ゴメスとヴェロニカ・パールトが主演だった。そしてそのシーズン、マルセロが演じるロットバルトを観ることもできて、私は彼の大ファンになったというわけ。だから、マルセロのロットバルトが観たかったのだけど、今回はロットバルトはなし。代わりに、麗しきデヴィッド・ホールバーグがロットバルトを演じることになった。それはそれで、すごく楽しみであったし、実際、デヴィッドのロットバルトもこれ以上はないというくらいのはまり役だった!

デヴィッド・ホールバーグは大変な美貌の持ち主ではあるのだけど、正統派美形というよりは、ダークサイドに転んだ美青年という趣で影がある。細面で色白、サラサラの金髪に大きなアイスブルーの瞳で色素が薄い感じ。マルセロが演じていたロットバルトは、非常にセクシーで、そのセクシャルな匂いにクラクラしたお姫様たちが転んでいたわけだけど、デヴィッドはまさに魔王。妖しく鋭い瞳の魔力で姫たちを魔法にかけて、操っているのだ。無表情なのが、かえって恐ろしさを感じさせる。コミックやアニメに出てきそうな、美形悪役そのもののお姿の人が、現実に存在するとは!踊りのほうもとても良かった。4年前にMETで観た時には彼はまだコール・ドでスペインを踊っており、少年のようで華奢だった(今回スペインを踊っていたコリー君も、4年後にはプリンシパルになっているかもね)。美しい脚はそのままに、上半身が相当たくましくなった。着地は足音がしないし、ジュッテ・アントルラッセも高く上がって美しい。シェネの回り方も綺麗だった。マント捌きも鮮やか。ロングブーツを穿いているので脚の美しいラインを完全に堪能できなかったことだけが残念。

デヴィッドは悪魔とか、吸血鬼とか、狂気の王とか、そういうのがすごい似合いそう!誰か、彼にそういう役をあてがきで作品を作って欲しい!

マルセロの王子は、少年の面影を残しているけど、長身でハンサム、やはりそこはかとなくセクシー。悩める王子というよりは、育ちが良くてでイノセントで、結婚なんてまだまだ考えたくないという風情。ベンノら友達と遊んでいた方が楽しいと思っているよう。身のこなしはエレガントでまさに王子。お気に入りの娘とちょっとお戯れになっては、ベンノに持って行かれてちょっとショボンとするのがかわいい。しかし、舞踏会の途中で、自分は賑やかな中でたった一人であることに気がつき、やがては王にならなくてはならないことに気づき、ふと、取り残されたかのような孤独感をかみしめる。そんな彼が出会ったジュリー・ケントのオデットは、今までに彼がまったく知らなかった異界の生き物だった。自分とはまったく違ったオデットという夢のような幻のような存在に、彼は惹かれていくのだった。そして、それからは甘くも情熱的な彼の演技に目が引き寄せられてしまう。

ジュリー・ケントはそもそもダンサーとしてはそれほど好きではなかった。40歳近くなっても透明感のある容姿は非常に美しいと思うのだけど。テクニックがあるほうではないし、細すぎるし、柔軟性に欠けているところがある。でも、久しぶりに観た彼女の白鳥は素敵だった。アームスが柔らかいわけではないのだけど、華奢で儚い存在感、優美な姿、夢を見ているかのような表情が、彼女を人間ではない、幽玄な存在たらしめているのだ。若く健康的で純粋な王子と、魔物によって白鳥に変えられてしまった異界の女王。対照的な、別世界に暮らしていた二人だからこそ、運命的で、決して幸せな結末が待っていない悲劇的な愛を感じさせる。

世慣れていたように見えて、本当は純情で汚れを知らない王子は、年上の薄幸の美女にコロリとしてしまって、まっすぐな愛を不器用そうに捧げる、それがこの二幕。

三幕は、花嫁候補たちが自分の国の民族舞踊を献呈するというアイディアが面白いものの、ナポリ以外は振付が面白くないのが残念。せっかく、スペインにお気に入りのコリー・スターンズとロマン・ズービン、マズルカにアレクサンドル・ハムーディと有望株を起用しているのにもったいない。ナポリは、まるで光GENJIのようなイケていない衣装だけど、男性二人がシメントリーなピルエット合戦を繰り広げるのが楽しい。DVDでもこの役を踊っている、これまたキュートでお気に入りのクレイグ・サルスティーンと、今年入団したばかりのテクニシャン、ジョゼフ・フィリップス。

美しき魔王、ロットバルトがマントを翻してオディールと入場。女王の手に恭しくキスをすると、姫たちを一人ずつ誘惑。彼女たちがロットバルトの魔力で文字通り引き寄せられ、操られているのが面白い。しかも各国の民族舞踊の動きをしながらも、痴態を繰り広げられているかのよう。まるで、王子の相手にはこんな軽薄な姫たちではなく、美しく威厳と性的魅力を備えた我こそが相応しいと語っているかのよう。あ、ロットバルト自身なのかオディールなのか?とにかく一挙一動にカリスマ性とよこしまな美しき魔力を妖しく放つロットバルトは、すっかり場をさらってしまう。

そして黒鳥のパ・ド・ドゥへ。ジュリーはあの華奢ではかなげな外観だから白鳥向きかと思いきや、艶やかでとても怖い悪女役が恐ろしくはまっていた。

2008年7月23日(水) 6:30p.m~9:00p.m.
白 鳥 の 湖 プロローグと4 幕

振付 : ケヴィン・マッケンジー
原振付 : マリウス・プティパ,レフ・イワーノフ
音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
装置・衣裳 : ザック・ブラウン
照明 : ドゥエイン・シューラー
指揮 : チャールズ・バーカー
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

オデット/オディール : ジュリー・ケント
ジークフリード王子 : マルセロ・ゴメス
王妃 : ジョージナ・パーキンソン
家庭教師 : クリントン・ラケット
王子の友人 : サッシャ・ラデツキー
ロットバルト : アイザック・スタッパス,デイヴィッド・ホールバーグ

≪プロローグ≫
ロットバルト : アイザック・スタッパス,デイヴィッド・ホールバーグ
オデット : ジュリー・ケント

≪第1幕≫
パ・ド・トロワ : マリア・リチェット,加治屋百合子,サッシャ・ラデツキー

≪第2幕≫
4羽の白鳥 : カリン・エリス=ウェンツ,マリアン・バトラー,アン・ミルースキー,レナータ・パヴァム
2羽の白鳥 : クリスティ・ブーン,ヴェロニカ・パールト

≪第3幕≫
式典長 : クリントン・ラケット
ハンガリーの王女 : メリッサ・トーマス
スペインの王女 : ルチアーナ・パリス
イタリアの王女 : アン・ミルースキー
ポーランドの王女 : サラワニー・タナタニット
チャールダーシュ : カリン・エリス=ウェンツ,アレクセイ・アグーディン
スペインの踊り : マリーヤ・ブイストロワ,ロマン・ズービン;ジェシカ・サ-ンド,コリー・スターンズ
ナポリの踊り : ジョゼフ・フィリップス,クレイグ・サルステイン
マズルカ : ニコラ・カリー,ツォンジン・ファン,リーヤン・アンダーウッド,ジェニファー・ウェイレン
      : アレクサンドル・ハムーディ,ヴィタリー・クラウチェンカ,パトリック・オーグル,エリック・タム
ロットバルト : デイヴィッド・ホールバーグ


追記:マルセロとデヴィッド、ABTの誇る2大美形プリンシパルのちょっといい写真をご紹介。ABTのコール・ドとして最近まで在籍していたマシュー・マーフィくんのブログから。
http://rantingdetails.typepad.com/my_weblog/2008/06/latin-fire-devo.html
特に最後の写真は…素敵ですね♪

« 2009年5月ザハロワの「カルメン」 | トップページ | ロイヤル・バレエの昇進情報 »

ABT(アメリカン・バレエ・シアター)」カテゴリの記事

コメント

naomiさん、素敵な公演でしたね!マルセロの王子様は、男っぽくてセクシーで、19日のコンラッドに続きマルセロ様のかっこよさを堪能いたしました。他の男性ダンサーとは違う、大人の健康な男の魅力のようなものを感じます。顔もサッカー選手みたいな感じですし(フィーゴ系)。私も今回マルセロ様のファンになりました。バジルとかソロルも是非踊って欲しいです。
また感想の続きを楽しみにしています!

naomiさん、こんばんは。関西遠征お疲れ様です。
私もマルセロのかっこ良さにすっかりノックアウトです!荒くれ男と王子様のどちらを演じても似合いますね~。デヴィッドのまるでセクスィー部長みたいなロッドバルトも魅力的。ジュリー・ケントの白鳥はやや物足りませんでしたが、黒鳥はさすがプリマの貫禄。加治屋さんはとっても表情が豊かで動きが柔らかく、かつメリハリのある踊りで素敵でした。問題のコール・ドは席が前過ぎて全体が見えなかったのですが、2幕のコーダのときすごく癖のあるアクセントをつけている白鳥が何羽かいたのが気になったのと、全体的に重量感を感じちゃいました。最後の身投げのジャンプはすごかったけど、その後の日章旗(に見えました)はちょっと安っぽかったな。
余談ですが、帰りの山手線でケヴィン・マッケンジー御一行様と同じ車両になりました。背が高くスラリとして、さすがは元ダンサー、と思わせる雰囲気を漂わせておられました。

ぶうたさん、こんばんは。
まだ続きがかけていなくてごめんなさい!マルセロの感想を書くのは大変です(笑)
そうそう、彼のように男らしくてしかも爽やか、まるでスポーツ選手のようなダンサーは少ないのかもしれませんね。フィーゴ!彼はカッコいいですよね~。私も好きです、実は。
マルセロは前回の来日ではエスパーダだったけど、バジルもいけそうですね。ソロルは今年のMETシーズンでやったので、見に行きたかったんですよね。リベンジしなくちゃ。

peluさん、こんばんは。

今回、マルセロの株もずいぶんと上がったみたいなので、また何かのガラか、バレエフェスで呼んでくれないかしら、と期待しています。デヴィッドのセクスィー部長みたいなロットバルト!上手い表現でウケました♪

ジュリーの白鳥は、確かにアームスの柔らかさはなかったのが物足りないですが、あの美しさと気品で、黒鳥は雰囲気があって素敵でしたね。加治屋さんのトロワもとてもよかったと思います。彼女はテクニックが強いですよね。

白鳥のコール・ドは、ABTに期待する方が間違っています(笑)音の取り方とか、マッチョさは同感…。日章旗という表現も図星ですね。初めて見たときは私も笑っちゃいました。

ケヴィン・マッケンジーも上機嫌だったようですね。彼は電車で移動していたのですか!コルパコワも一緒だったのかしら?

再びこんばんは。
えーっと、ごめんなさい。コルパコワ先生のお顔がわかりません(名前はもちろん存じ上げておりますが)。確か関係者席にいらした女性2人と男性1人がご一緒でした。ゴメスは去年のフェリのガラや今回のシナトラ組曲ではさほど魅力を感じなかったのですが(シナトラは何しろバリシニコフで見ているので)、全幕物で大ブレイクです!彼のロッドバルトも見てみたいですね~。
どうでもいいことですが、日章旗ではなく旭日旗が正解でした(笑)。

ところで、熊川さんの怪我のニュース、心配ですね。海賊は鬼門なのでしょうか。。。


peluさん、こんばんは。

未だに書き終わっていなくてすみません!

コルパコワ先生は、小柄で細くて、ストレートヘアが肩くらいまである上品な方です。40台半ばまで踊られていたので、もう70歳は過ぎていると思いますが…あと、女王役を演じていたジョージナ・パーキンソンも、出演しない日は一緒だったと思います。彼女は背が高くて現役ダンサーのようにスタイルが良くてカッコいいですね。(NYに行くと、時々スーザン・ジャフィを客席で見かけることもあります。ショートカットにしていて、いつもおしゃれです)

マルセロは演技力もあるダンサーなので、全幕で魅力を発揮するタイプですよね。ロットバルト、また踊って欲しいです。(DVDでは彼がロットバルトですが)

熊川さんは、やはり日本のバレエ界を引っ張っていく人なので、心配です。DDDの彼のインタビューを読んだばかりだったし。去年の怪我ほどは重傷ではないと思うけど、無理しないでゆっくり直して欲しいですよね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 2009年5月ザハロワの「カルメン」 | トップページ | ロイヤル・バレエの昇進情報 »