ABT「海賊」とコリー・スターンのインタビュー
ジャパン・アーツのアメリカン・バレエ・シアター2008ブログに「海賊」公演のレポがアップされています。
http://abt2008.seesaa.net/article/98189478.html
怪我で前回の来日公演には出演しなかったイーサン・スティーフェルの優雅な(!)アリの写真も載っているし、アンヘル・コレーラのコメント動画もあります。アンヘルの新しいカンパニーも、近いうちに日本に来て欲しいものです。
それと、コール・ドでありながらいきなりコンラッド役に抜擢されたコリー・スターンの写真も。この舞台写真で観ると、長身でプロポーションがよく、とてもハンサムですね。パリ・オペラ座のステファン・ビュヨンに少し似ている感じです。現在22歳、入団3年目。15歳の時にYAGPでスカラシップを獲得、ロイヤル・バレエ・スクールを卒業しています。
この新星コリー・スターンですが、早速、長いインタビューがTimeOutに載っていました。
http://www.timeout.com/newyork/articles/dance/29658/the-new-kid-on-the-block
「ABTスターの饗宴」のホセ・カレーニョを観て、本格的にバレエの道に進もうと決意した彼でしたが、その道は平坦ではなかったようです。中学時代には、バレエを習っていることでクラスメイトにバカにされたこともあったとのこと。一緒にバレエを学んでいたお兄さんは、それでやめてしまったそうです。しかし、15歳の時に体育館でバレエを実演したことで、いじめはぴたりと止まり、尊敬されるようになったとのことです。そしてYAGPのコンクールで音楽と完全にずれてしまうという大失敗をしたにもかかわらず、ロイヤル・バレエ・スクールへのスカラシップを獲得しました。カルチャーギャップに悩みながらも、ロイヤルでやっとバレエを楽しめるようになったそうです。
卒業後ロイヤル・バレエに入団するという選択肢もあったにもかかわらず、コリーの当時のガールフレンドがABT入りを希望したために、彼はABTのスタジオカンパニーに入ることに。しかし、学校公演でほとんどすべての主役を踊り、ABTのメーンカンパニーに合格していたそのガールフレンドが拒食症になってしまい、バレエを辞めてしまうという悲しい出来事があり、そして二人は別れてしまいます。
スタジオカンパニーで4ヶ月すごしたあと、メーンカンパニーに昇格した彼は、半年後に再びスタジオカンパニーに送り返され、学びなおすという挫折もありました。が、イーサン・スティーフェルが芸術監督を務めていたバレエ・パシフィカの「くるみ割り人形」の公演に参加したことで、新しいアプローチを発見でき、彼は変わったそうです。
なお、ロイヤル・バレエ・スクール時代に、18歳の彼はカイリー・ミノーグのビデオに出演するという経験をしました。「Chocolate」という曲で、カイリーとセクシーなパ・ド・ドゥを踊ったそうな。(ということで、YouTubeでこのビデオを見てきましたが、たしかにカイリー姫とのパ・ド・ドゥで映っていました。背が高く、横顔がきれいな人ですね)
今回、そもそもリハーサル期間もほとんどなく、突然イリーナ・コルパコワにコンラッドを踊ることになるだろうと言われたとのこと。マルセロ・ゴメスが怪我をしている間、ヴェロニカ・パルトと組んでいたことはあったけど(ってことは、やっぱり彼は背が高いわけですね)、ABTの公演でソロを踊ったこともなかったそうです。今回は基本的にケヴィン・マッケンジーに役を学び、それからコルパコワにも指導されたとのこと。「ベン・ハーをイメージするように」とマッケンジーに言われたのだとか。一回目の公演は、役を最初から踊るのがまだ2回目で、スタミナ切れに苦しんだけどなんとか踊りきることができて、自信をつけられたそうです。
METシーズンで、他にコリーは「ドン・キホーテ」でエスパーダを、そして「エチュード」、それからトワイラ・サープの新作でデヴィッド・ホールバーグの役を踊るとのこと。大きな期待が寄せられているのが判ります。
日本公演での「海賊」も、一日、コンラッド役が未定の日があります。ひょっとしたら、コリーがコンラッドを踊るのかもしれません。観られるといいなあ。
*********
なお、彼が主役を踊り、加治屋百合子さんがギュリナーラ役デビューした公演の批評も、Dance View Timesに載っています。
http://www.danceviewtimes.com/2008/05/avast-me-hearti.html
やはりアンヘル・コレーラのアリが素晴らしかったようです。易々と自然にものすごいテクニックを魅せることができ、非常に安定していたとのこと。今がダンサーとして上り詰めた地点なのかもしれませんね。コリーのコンラッドは跳躍の多い役で、まだまだ改善の余地があったようですが、イリーナ・ドヴォロヴェンコとのパートナーリングは良く、2幕のロマンティックなパ・ド・ドゥでは美しい体のラインを魅せることができたそう。加治屋さんのギュリナーラも軽やかで空気のよう、繊細な腕と美しい上半身が印象的だったようで、大成功を収められたようです。3幕の花園のシーンでは、ライラックの香りを漂わせるような踊りだったそうです。
*********
METシーズンは始まったばかりですが、「白鳥の湖」やトワイラ・サープの新作に出演する予定だったディアナ・ヴィシニョーワが怪我のため、6月11日までは出演できないなど早くも波乱含みです。ヴィシニョーワの「白鳥の湖」の代役はニーナ・アナニアシヴィリですが、ヴィシニョーワはNYで大変人気があるようで、Ballet Talkではニーナが代役なのに文句を言っている人がたくさんいます。日本では考えられないことですね。
« 5/25 新国立劇場「ラ・バヤデール」 | トップページ | ミラノ・スカラ座2008/2009シーズン »
「ABT(アメリカン・バレエ・シアター)」カテゴリの記事
- アメリカン・バレエ・シアター(ABT)で アラン・ベル、カサンドラ・トレナリー、カルヴィン・ロイヤル3世、トーマス・フォースター、ジュウン・アン、スカイラー・ブラントがプリンシパルに(2020.09.11)
- アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2019年METシーズン、ボッレのABTフェアウェル(2018.10.27)
- マルセロ・ゴメスがABTを退団(2017.12.22)
- ABTの2018年METシーズン、マクレガーの新作(2017.10.30)
- ABTの昇進発表、サラ・レーン、デヴォン・トゥッシャー、クリスティーン・シェフチェンコがプリンシパルに(2017.07.08)
コメント