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2008/05/28

5/25 新国立劇場「ラ・バヤデール」

もうマイレン・トレウバエフのソロルに完全にやられました!マイレン、最高です。大好き♪予想通り、ハマリ役でした。ガラ「ザ・シック」で彼のソロルを観てから、この日を夢見ていて、その夢がかなったという心境です。ふんわりと軽い跳躍、美しいつま先、そして細やかな演技。心優しいソロルでした。

新国立のバヤデールは、牧版にしてはよくできたヴァージョンだと思います。また早いうちに再演してほしいです。

(金土日で4公演はさすがに疲れたようで、帰宅してご飯を食べたら、轟沈してしまいました。感想は後日書きます)

**********
牧阿佐美版の「ラ・バヤデール」は音楽はランチベリーによる編曲をベースにしている。今までほとんどマリインスキーやボリショイ、ミハイロフスキーの「バヤデルカ」を観ていたので、ちょっと違和感を感じるところがあった。でも、指揮者のアレクセイ・バクラン、そして東フィルの演奏がとてもよかったので、その違和感は途中からは気にならなかった。

舞台装置は、鬱蒼とした森を舞台にしたもので、オリエンタルながらもシックな雰囲気で美しい。新国立の美術や衣装は(たまに微妙な時もあるけど)、いつもとても趣味が良くて気品がある。

(一幕)

マクダヴェーヤは吉本さん。21日の八幡さんのような軽やかな若々しさはないけど、溌剌としてはじけていて、バネの効いた踊り。大怪我からここまで踊れるほど復帰できたのが嬉しい。グランジュッテをしながらマイレンのソロル登場。マイレンのジュッテは、跳躍の頂点でさらにふわっと上昇するところが素敵。着地音もしない美しい着地、つま先がきれいに伸びている。マイムをする腕の運び方も、とても美しいし、非常に雄弁で台詞が聞こえてきそう。

ヴェールをかぶった本島さんのニキヤが登場する。ヴェールを外したときに、あまりの美しさに後ずさる大僧正。本島さんはいうまでもなく、とっても美人なんだけど、時にメイクを失敗していて実物のほうが美人、ってことがある。でも、今回はメイクがうまくいっていて、まさに絶世の美女というにふさわしいほど、大僧正が思わず地位を捨ててもいいと思ってしまうほどの輝く美貌。

密会するソロルとニキヤ、二人のパ・ド・ドゥ。マイレンは、年に1,2回主演するほかはキャラクター系の役柄が多くて、その際は過剰なくらいの濃ゆい演技を魅せてくれる。それなのに、主役を踊る時には、本来の真面目な性格が出ちゃって硬い表情のことが多い。でも、今回、マイレンは一皮剥けてくれた!抑えようとしても抑えきれない、恋の歓びに震える表情、切なさを秘めた熱情が現れていて、素敵~。本当に真剣にニキヤに恋しているんだなって思わせてくれた。パ・ド・ドゥのサポートも危なげなし。

ガムザッティの西山さんは、上品で楚々とした中にも気の強いお嬢様ぶりを見せていて、似合っていたと思う。ガムザッティに引き合わされたソロルは、大きなリアクションは見せないけれども、ヴェールを外した時の彼女の美しさにたじろいで「参ったな…」という戸惑いを感じさせた。焦る心を抑え、会話する時のそつのない対応がいかにもマイレンらしい真面目さの表れ。でも、そのそつのなさが命取りなのよね。

そして見せ場の女二人対決シーン。最初のうちは、ガムザッティはとても優しそうで、親しげにニキヤに話しかけるけど、彼は私のものよ、とニキヤに言われたとたんに逆上するところが堂々として迫力があった。それでも、ガムザッティはあくまでも気品を保ち、プライドを持って対応しているところが良い。一方、本島ニキヤは、もともとキツめ
の美人なので、より感情を露わに、ガムザッティへの強い対抗心を示していて、これはニキヤらしからぬのではないか、と思ってしまった。もしかしたら、本島さんはガムザッティのほうがハマるのではないか。しかしながら、逃げ惑い、行き場を失って追い詰められ、振り上げたナイフをアイーヤに止められた後の、「私はなんということをしてしまったの」という表情は良かったと思う。逃げ去るときの姿勢はちょっと笑えたけど。

そして、その後の西山さんの怒りのマイム。ここは腕をプルプル震わせての熱演、しかしあくまでも気品を保っていて美しくも恐ろしく、素敵だった。西山さんは、演技がとても自然で好ましく、育ちが良くて本来は良い人であるガムザッティ像を作り上げるのに成功していた。ガムザッティの方に思わず同情してしまうほどだ。

(二幕)
婚約式という華やかな場の割には、セットがちょっと地味というかシックでゴージャスさが足りない。ガムザッティは御つきの者に日よけを持たせて入場。やっぱりガムザッティも象に乗るとか、輿に乗って登場してほしいな、と思ったりして。壷の踊りは湯川さん。大人っぽい顔立ちと雰囲気の湯川さんがこの役なのはちょっと意外だったけど、お茶目な表情が可愛らしかった。子役二人のプロポーションの良さは信じがたいほど。顔がめちゃめちゃ小さくて、胴が短くて脚が長い。もうすっかり人種が違うって感じだ。ブロンズ・アイドルは江本さん。ブロンズ・アイドルって小柄な人が踊るものってイメージがなんとなくあるので、江本さんは背が高くて少し違和感があった。仏像っぽさや空中に浮いている感じも、バリノフのほうがあったと思う。しかし徹底的に金ピカに塗ってあって、大変な役だと思った!そして、やっぱり太鼓の踊りがないのが物足りない。この版は、ガムザッティと奴隷の踊りもないし、男性ダンサーの見せ場がとても少ないのが残念。

パ・ダクシオンは、先に踊るブルー・チュチュのメンバーがたおやかで、とっても素敵。縦のラインもすごく揃っていて、新国立の女性ソリストのレベルの高さを感じさせる。ピンクチュチュのほうは、上手なんだけどちょっと元気が良すぎたかもしれない。

アダージョは、西山さんのピルエットがちょっと傾いたのを、マイレンがサポートして位置を修正していた。マイレンのヴァリエーションは、期待通りの素晴らしさ。やはりここでも、グランジュッテのときに、一旦上昇した後、さらに高くふわりと浮くのが美しい。プリエの効いた着地は正確に5番に入っているし、跳躍の時のピンと伸びたつま先や、後ろ脚までが綺麗に伸びているところも素敵。戦士らしい力強さは少し欠けるけど、顔が濃いからその分を補っている。西山さんのヴァリエーションも、正確なんだけど、いつも西山さんの素晴らしい踊りを見慣れているので、少し物足りないかな?そしてガムザッティのイタリアン・フェッテはバッチリ決まった。グランフェッテのほうはちょっと失速したものの、これもしっかり決めていて、堂々としたお姫様ぶりを発揮していた。ものすごく華やかってわけではないんだけど、西山さんのガムザッティは、いかにもお育ちがよく、可愛らしいお姫様。だからこそ、ニキヤに「あなたが仕組んだのね」と指を指された時の平然とした表情が怖いのだ。しっかりとした役作りで、演技と踊りのバランスが取れたガムザッティだったと思う。

踊りを奉納するために傷心のニキヤが入ってくる。本島さん、ものすごく美人なのだけど、感情表現は控えめというか薄いというか…残念ながら踊りから哀しみというものは伝わってこなかった。技術的にはしっかりと踊っているし、アラベスクのバランスも見事なんだけど、愛する人を奪われる苦しみ、心から血を流しているような思いは見えない。毒が体にまわって倒れるところもきれいじゃなかったし。こんなにかわいそうじゃないニキヤを観たのは初めてかも。ガムザッティの横に座っているソロルのマイレンが、顔の表情は決して大げさではないのに、愛する人が苦しんでいる姿を見て苦悩し、二人の女性の間で葛藤し、いたたまれずに目を伏せて地獄の中をさまよっているように見えたのとは対照的。息絶えたニキヤへと駆け寄り、そして己の愚かさに押しつぶされるように走り去っていくマイレンは、体で演技をするというのはこういうものだ、というのを見せてくれたと思う。

(三幕)
ベッドの上に横たわり、アヘンを吸うソロル(パンフレットには水タバコって書いてあるけど、ここはやっぱりアヘンじゃないと)。深い後悔に苛まれているのがよくわかる。そして影の王国。先頭は21日と同じで、小野絢子さん。深いパンシェ、柔らかい背中、甲の出た美しい足、上半身のしなやかさ。小柄だけどラインが美しく、素敵な踊り。ここの影の王国は、一人一人が入場する時に少し歩いてからアラベスクパンシェするのがちょっと違和感があるが、とてもよく揃っていて美しい。二人目の人が、音のとり方がちょっとずれていると思った。32人いると、地上に降りた時に一人二人ぐらつくのは致し方ないところだけど、それ以外は非常にレベルが高い。この日は1階3列目で観ていたのだけど、影の王国は上の方で観た方が圧倒される。

3人のヴァリエーションは、それぞれ良かったけど、寺島まゆみさんの、音のとり方の正確さ、ポジションの確実さが抜きん出ていた。まゆみさんの主役の日もまた実現させて欲しいもの。

そして本島さんのニキヤ。1幕、2幕と踊りは破綻なくきっちりとこなしていたけど、3幕でスタミナ切れしたのか、ちょっとぐたぐた。難しいヴェールのアダージオは、ミスもほとんどなく踊っていたし、アラベスクのバランスはしっかりしていた。でも、ニキヤのヴァリエーションでは、音には合っていないし、一つ一つのポーズを決められずに流れてしまっていた。何よりも、浮遊感というのがほとんどないのがつらいところ。音に合っていないのと、いかり肩ゆえ上半身がきれいに見えないのが原因だろうか。コーダの高速シェネでは持ち直して、しっかり踊っていた。

白いヴェールは、生死を超えた二人の魂の結びつきの象徴。ここがきっちり踊れていたことは良かったと思う。マイレンによるソロルの優しさと悔悟の念、ニキヤに許しを乞う気持ちが昇華されていて、美しいシーンとなっていた。ニキヤの想いが伝わってこないのが残念といえばそうだったけど、ソロルがこれだけエモーショナルに演じて暮れから満足。

マイレンは、サポートは安全性重視でしっかりしていた。二人で並んで踊る時のアントルラッセの後ろ脚は、本島さんよりも高く上がっていて優雅で美しい。最後のヴァリエーションでは、トゥール・ザン・レール6連発ではなく、身体を傾けての高いマネージュで、これもお見事だった。


マカロワ版のように4幕となるのではなく、場面転換なので、結婚式のシーンも出演者が少なく舞台装置もほとんどないのが寂しい。立ちはだかるようなガムザッティがかなり怖い。しかもソロルの友達であるはずのトロラグヴァまでもが、逃がすものかと立っているのがまた怖い。そしてニキヤの幻影。マカロワ版も含めて、最後にニキヤの幻影というか亡霊が白いヴェールをかぶっているのがお化けみたいで、私はあまり好きではない。でも、寺院の崩壊後、傷ついたソロルが、ヴェールを後ろに垂らして天に昇っていくニキヤを追いかける、だけど最後にヴェールはソロルの指をすり抜けていき、スロープの上で息絶える。そして一人ニキヤが昇っていくという救いのないラストは、無常感があって良いと思う。このときの本島さんはとても美しいし、息絶えて横たわるマイレンも、エレガントでやるせなくて、素敵だった。

振付…マリウス・プティパ
演出・改訂振付… 牧阿佐美
作曲…レオン・ミンクス
編曲…ジョン・ランチベリー
舞台美術・衣裳…アリステア・リヴィングストン
照明…磯野睦
舞台監督…森岡肇

指揮…アレクセイ・バクラン
管弦楽… 東京フィルハーモニー交響楽団


【キャスト】
■ニキヤ  本島美和
■ソロル  マイレン・トレウバエフ
■ガムザッティ  西山裕子
■ハイ・ブラーミン(大僧正)  ゲンナーディ・イリイン
■マグダヴェヤ  吉本泰久
■黄金の神像  江本拓
■トロラグヴァ  市川透
■ラジャー(王候)  森田健太郎
■ジャンペの踊り  楠元郁子 堀口純
■つぼの踊り  湯川麻美子
■パ・ダクション
〈ブルー・チュチュ〉
 川村真樹 寺島まゆみ 丸尾孝子 堀口純
〈ピンク・チュチュ〉
 遠藤睦子 さいとう美帆  大和雅美 井倉真未
■アダジオ  陳秀介 冨川祐樹
■第1ヴァリエーション  丸尾孝子
■第2ヴァリエーション  寺島まゆみ
■第3ヴァリエーション  さいとう美帆

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

おはようございます!!

当日はお疲れさまでした。
些末な事に拘る私と違って、さすが全体をよく観てらっしゃる。
レポを拝読してあらためて思い出したシーンもたくさんありました。
やはりここがスタンダードだわ。
夏もいくつかご一緒のようで、それも楽しみです。

Fさん、こんにちは。
あの時はいろいろとお話できて楽しかったです!そしてFさんのレポートも面白かったです。音楽に対するこだわりで、Fさんの、この演目に対する思い入れがすごくよくわかりました。私はもうマイレン集中型だったので(笑)
ロイヤルで素敵な奥様共々お会いできるのも楽しみです♪

影の王国の先頭は小野絢子さんだったのですね。
3階席からもとても気になりました♪
同じことをしているのに彼女だけシルエットがくっきりしていて目がいってしまうのです。
「誰なのだろう?」ととても知りたかったのでとても嬉しいです。

マイレン素敵でしたね♪(思い出し、しばしニンマリする私)

F嫁さん、こんばんは!
ご夫婦でいらしてくださってありがとうございます♪あのときマイレンで盛り上がれて楽しかったですね!
小野絢子さん、とても可愛らしいし、本当にしなやかでシルエットがくっきりで素敵でしたね~。来シーズンはアラジンとコッペリアで主演するので、楽しみです。

マイレン、ホント素敵でした!!!!!私も思い出すとニヤニヤしちゃいます♪

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