NY出発前に紹介だけしたウリヤーナ・ロパートキナのインタビュー、ちょうどタイムリーなので訳してみます。例によって私の英語はいい加減なので、心配な方は原文をお読みください。今年1月、マリインスキーのワシントン公演のときにインタビューされたものです。
http://www.timeout.com/newyork/articles/performances/27688/a-swans-way
Time Out New York / Issue 651 : Mar 19–25, 2008
A swan’s way
The secret of a famous ballerina? Keep the glass full
By Gia Kourlas
Q.ロシアのバレエカンパニーでは、教師が生徒に深くかかわる伝統があります。あなたはイリーナ・チスチャコワとどれくらいの期間学んできたのですか?
A.4年間です。彼女についたときには、私は娘を産んだばかりで、さまざまな困難に直面していました。私はもっと注意を払い、集中的にトレーニングする必要を感じたのです。出産後私の体が変化し、以前よりも鍛える必要がありました。イリーナは、私とともにトレーニングに取り組んでくれる優しさがありました。
Q.なぜ彼女を選んだのですか?
A.彼女がどのようなダンサーだったかを覚えているからです。彼女は、特に技術的な面において素晴らしいバレリーナでした。もうひとつの理由は、彼女の教師としての成功を予測できたからです。私は、マリインスキーのほかのダンサーが彼女に学んだたしかな成果を見ることができました。どうやって彼女が彼らを鍛え、彼らがどのように改善したかも。具体的には、マリインスキーに所属していたあるカップルの例があります。彼らには才能はありましたが、役に恵まれませんでした。彼らはコール・ド・バレエに所属していましたが、イリーナと学び始めたところ、別のカンパニーに招かれ、主役を踊ることができるようになったのです。それはダンサーとしての技術面だけではなく、自分自身についてもっと冷静に、そしてもっと心地よくなったのです。それは、彼女のメソッドが有効だったからであり、私はそれを目の当たりにすることができました。
Q.それは具体的にはどんなメソッドだったのですか?
説明するのにはとても長くかかります。まるで一冊の本のようだから。それは、とてもヘルシーなシステムといえます。バレエにおいては、明らかに、背骨と位置関係と正しいポジションでのポーズのとり方の問題があります。彼女のシステム、彼女が解剖学的に見る方法は論理的なものです。それによって、人間の肉体は、要求されたことに実際に反応し、アラインメント(背骨と骨盤の正しい位置関係)とポーズ取りにおいて必要なすべてを理解できるのです。それによって人間の身体は進歩し、上手くいき、より早く向上するのです。
Q.あなたにとって、フレージングと音楽性において何が重要ですか?
ひとつの角度から答えます。まずは、すべては音楽に依存するものです。ダンサーが何を踊り、指揮者が音楽をどのように読み取り、オーケストラがどのように演奏するか、です。音楽そのものがエモーショナルな瞬間があることが私にとって重要です。その音が、私の中の感情に命を吹き込んでいることが重要なのです。ほとんどの時間、これらのニュアンスやアクセントはリハーサルの間につけられ、それから指揮者と話し合います。そのため、リハーサルでなされたのと同じように実際の舞台で表現され、観客に、スタジオで行われたのと同じ効果を上げることになります。しかしながら、同じ演目でも毎回違うこともあります。なぜならば、舞台の度、ダンサーや指揮者、そして教師によってそれぞれ違った感触があるからです。
Q.子供を持ったことは、あなたの芸術にどのように影響しましたか?
子供を生んだことで、私の人生に、そして私の芸術にはより深い意味が与えられました。すべてがもっとシリアスになったのです。とてもあいまいな答えですが、質問そのものもとてもあいまいですから。(と、ロパートキナは歯を見せないで微笑む)
Q。あなたのスピリチュアルな意味において、「瀕死の白鳥」はどのような意味がありますか?
これは、先ほどのあなたの音楽性について、そしてそれぞれのパフォーマンスがどのように変化するかについての質問に関連付けることができます。なぜなら、「瀕死の白鳥」には決まった物語がないからです。毎回、違ったアプローチをします。すべての小さな、微細な動きすらも、内面でどれだけの感情を作り上げたかによって変わります。私にとって、白鳥は、魂の状態をあらわすものです。だから、私の魂がその瞬間、どうなっているかによって変わるのです。
Q.このような、象徴的な役をどのようにして身につけたのですか?
「瀕死の白鳥」を準備するためのプロセスはとても長かったのです。私は、その時代にとても尊敬されていたダンサーたちに学びました。さまざまな本や、映像や写真を見て、それぞれから何かを得て私のヴァーションを作り上げました。他人から剽窃することは避けたかったのです。誰かから何かを奪って、そのダンサーからの動きを取ったことで責められたくはなかったのです。私は他の誰にも似ていたくない、私自身でありたいのです。
Q.元エイフマン・バレエのイワン・コズロフが今、あなたのメーンのパートナーの一人です。彼をどうやって発見したのですか?
私はそのときボリス・エイフマンのガラに出演しており、一緒に踊る予定のパートナーが怪我をしてしまいました。それはとても深刻な状況で、誰か別の人と踊らなくてはならず、その代役がイワンでした。他の人と違っていたのは、最初のリハーサルから、とても心地よかったことです。彼はとても注意深く、その舞台は、私たちが恋人同士として登場するものでした。私はいつも、舞台の上で私に的確に反応できる人を求めていました。舞台の上で私の物語を表現するための、何らかの理由を探すことが重要なのです。それは、私だけの物語ではありません。愛についての物語だとすると、私と単なるパートナーであってはなりません。(笑)それが、私たちが一緒に組み始めなければならない理由です。
Q.あなたは芸術監督になりたいと思ったことはありますか?そのような野心はありますか?
芸術監督はとても困難な仕事で、難しい役割であることはわかりますが、とても興味深い仕事です。芸術監督になった、かつての同僚たちを見て、どんな犠牲を払わなければならないのかもわかります。一般的に考えて、答えは、それはとても興味深く、そして私のキャリアの延長にとって重要なことであるということです。
Q.あなたは何かを変えるのですか?たとえばキーロフでは?
カンパニーの中で何かを変えるためには、必ずしも芸術監督になる必要はありません。アーティストとして、ひとつまたは別の方法で物事に影響を与えることができるからです。そして、何か違ったことをしたり、目の前にいる人物がやっていることを変えることも、必ずしも必要ではありません。自分の経験やビジョンを使って、既存のベースに付け加えることによってでも可能です。そして、自分の個々のアプローチとビジョンと、そこにあるものの上に構築することから、すべてが生まれるのです。
Q.クラシックのカンパニーのあるべき姿のビジョンはありますか?
ビジョンを提示する時間は私にはありません。私は、自分のポテンシャルを、舞台の上で踊ることに使っています。私にとって、それは最初の質問ではなく、私個人に向けられた質問です。私は自分のエネルギーを舞台のために使っています。今の私にとって、そのことがずっと重要だし、それがまた、私の人生です。もちろん、私は将来のことは考えていますが、今は自分のダンスに関心が向いています。もし何かを変えなければならないのだとしたら、それはプロセスであり、プロセスを経なければなりません。
Q.何がバレリーナをつくりますか?あなたは、数少ない、類まれなバレリーナとして存在していますが。
私は、観客が舞台の上で役者を観ることができるから、バレエは興味深いのだと思います。これが、バレエという芸術のアーティストであることについての重要な要素だと思います。ロシアでは、二つの言葉があります。ダンサーと芸術家です。私は芸術家でなければなりません。演じること、そして感情を運ぶことは、ダンサーの魂と、客席に座っている観客の間の直接的なつながりだからです。このつながりがあるからこそ、観客は、劇場に来て舞台を観て、舞台の上のダンサーがその動きやジェスチャーや踊りで何を表現しようとしているのか理解できるのです。私にとって最も重要なことは、観客とその直接的なつながりを作り上げることです。だから、私はイワンと踊りたいのです。彼は舞台の上にいるべき人です。私は彼を役者として見ました。そして、私は彼にチャンスを与えたいと思ったのです。
Q.あなたはどうやって舞台に備えますか?
スタジオの中での時間だけではなく、精神の問題です。次のステップで、心の中の何かが変わります。それが、私がイリーナと作り上げるものです。舞台に立つ前には、私は人生のシチュエーションについて考えます。私は病気になるかもしれません。舞台が始まる前に心の中で泣かなければなりません。私は、いくつかの経験を心の中にとどめて置かなければなりません。私はコップの水を取って、舞台が始まる前に満杯にしなければなりません(と、想像上のコップを手に取る)イリーナは、私がその精神状態を保つのを助けてくれることがあります。彼女は言います。「覚えている?あの日を思い出して御覧なさい」。そして私は泣き始めます(笑) ときどき、自分の力を使い、そして時々、自分の弱さを利用します。それはとても細い境界線です。同じように、観客も、いつも何が自分を感動させたのか言えるとは限りません。すべてはそのコンビネーションです。そして、これらの感情は言葉では言い表せないこともあります。芸術について語るのは難しいのです。それについて語ることはできますが、感じることしかできないものについて話すことはできません。
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