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2008/03/16

Kバレエ・カンパニー「白鳥の湖」(DVD)

Kバレエ・カンパニーのDVD作品がCSのTBSチャンネルで放映されることは知っていたんだけど、うちはスカパーが観られない(アンテナを南側に立てられない)ので、観られないと思っていた。そうしたら、ケーブルテレビのオプションの中にTBSチャンネルが入っていたことに気がついた。気がついたときには「ジゼル」は放映が終わっていたんだけど、これは前に友達にDVDを見せてもらったことがあって、あまり好みではなかったので、まあいっかと。

Kバレエ・カンパニー「白鳥の湖」
振付/演出:熊川哲也
収録:2003年6月
オデット:ヴィヴィアナ・デュランテ
オディール:モニカ・ペレーゴ
王子:熊川哲也
ロットバルト:スチュワート・キャシディ
ベンノ:ジャスティン・マイスナー
王子の友人たち:長田佳世/ 榊原有佳子/ ヒューバット・エッソー

冒頭と終わりに人間の姿をしたオデットが登場するのと、3幕の構成、音楽の使い方がブルメイステル版風味。でも、1幕は比較的標準的な演出の「白鳥の湖」になっている。カメラワークも、演出も王子中心の視点となっていて、物語と、演出は非常にわかりやすい。私はKバレエって今まで3回しか観たことがなく、「白鳥の湖」は舞台では観ていないので実際の演出はどうかわからないのだけど、この映像では、3幕のキャラクターダンスがナポリとスペインしか登場しない。ちょうど2時間の尺に収めるために、DVDではマズルカやチャルダッシュを割愛したのかな?

熊川さんの王子は、一般的な「白鳥の湖」のへたれ王子的なところが微塵もなく、自信にあふれている若者で、オデットに恋をしたり、オディールに裏切られたりで初めて挫折を知り、人間的に成長するところが描かれている。1幕からかなり威厳があって、それでいてやんちゃなところもあったりで人間味があり、熊川さんらしい王子だな、と。熊川さんのことだから1幕から踊りまくるのかなと思っていたのだけど、そんなことはなく、踊りは抑え目ったのが意外だった。感情移入しやすいキャラクター作りをしているので、わかりやすい作品に仕上がっているのだと思う。演技力に疑問符がつくこともある熊川さんだけど、この作品に関しては、彼のやりたい方向と演技がぴったり合っていてとても良い。テクニックは、さすがに素晴らしい。3幕のバリエーションは白眉で、トゥール・ザン・レールもきれいに5番に着地しているし、アティチュードでのトゥールも胸がすくようでありながら、ちゃんと優雅さも残しているのがいい。3幕コーダのピルエットも、すごい勢いで回っているし。オディールとのアダージオでソテを何回も繰り返すというのは初めて観た振付だけど、彼じゃないとできない高度な振付のように見受けられる。5月の「白鳥の湖」公演のチケットを取っても良かったと思った。(でも、今深刻な財政難なので、お高いK-Balletは都ちゃんが出ない限り、なかなか観に行こうとは思わないのだ)

ヴィヴィアナ・デュランテのオデットは、表情などの演技は素敵だし、プロポーションも悪くないんだけど、腕の使い方が私の好みと外れている。ばたばたと激しく動かしていることが多いし、流れるようなしなやかさに欠けている。ヴィヴィアナはドラマティック・ダンサーだと思っていたのだけど、マイムやいわゆる演技の部分は良くても、腕による表現が粗雑なので白鳥に見えないし、情感も叙情性も出ない。うーむ残念。登場したところから、ロットバルトとのからみ、アダージオまで全部腕がばたばたともがいているのだもの。

一方、3幕のみに登場するオディールのモニカ・ペレーゴは非常に良かったと思う。フェりの「エトワール達の花束」公演で「エクセシオール」をロベルト・ボッレと踊った人だ。上半身が筋肉質なので、強そうに見えてしまうのだけど、テクニックがしっかりしており、ダイナミックな跳躍、妖艶で邪悪そうなところなどが強烈で素敵だった。ヴァリエーションは、ブルメイステル版のものに近く、ボリショイのグリゴローヴィチ版の短調の音楽で、高度なテクニックを使っているわけだけど、ピルエットも、デヴロッペも安定している。グランフェッテは、最初のようでちょっと軸が傾いたけど持ち直し、トリプルまで入れて、しっかりと回っていた。カッコいい!さすがの熊川さんも、ペレーゴには食われているなと思うほどだった。

ロットバルトのスチュワート・キャシディは、衣装がお仕置きさせられているかと思うほど、気の毒だった。男性の衣装で、アリやアラブ以外でお腹の部分だけが出ているのって初めて見た気がするんだけど間抜けだし、3幕では顔にへんなメイクを施してしていたりで、笑いそうになった。でも、彼のような踊りも演技もできる重厚なダンサーがロットバルトを演じると、作品が締まる気がする。

あと良かったのは、パ・ド・トロワや大きな白鳥、花嫁候補と大活躍していた長田佳世さんと榊原有佳子さん。特にパ・ド・トロワでの長田さんの切れ味のいい、細やかさとダイナミックさが同居した踊りは素晴らしい。長田さんは、オディールもレパートリーに入っているんだけど、5月の「白鳥の湖」ツアーではオデット/オディールを同じダンサーが踊ることになったためか?オディールに入っていないのが残念。私の数少ないKバレエ観劇体験の中でも、毎回突出していい踊りを見せているので、もっといい役で踊るところが観たい。

「ジゼル」を観たときには、コール・ドのレベルはとてもほめられたものではないと思ったのだけど、この「白鳥の湖」のほうは、揃っていないところが見受けられるものの、決して悪くはない。ただ、白鳥達の衣装が、膝下丈と長めでボリュームがあり、まるで腰蓑のようなので、脚がよく見えないのが不満。ロイヤル・バレエもこの腰蓑チュチュを採用していると思うので、真似しているのだろう。プロポーションも悪く見えるし、動いているときにふわっと広がってきれいなときもあるけど、静止しているときにダボっとしているように見えてしまう。特に、このチュチュで小さな四羽の踊りを踊られると、合っていなくて非常に滑稽だ。

この腰蓑スカートを除けば、ヨランダ・ソナベントによる衣装と装置はゴージャスで美しい。特に1幕、3幕とエピローフが豪華で、湖畔から一転してのエピローグの、今までに観たことがないような世界観(ちょっとキッチュだけど)には圧倒されたし、花嫁候補の衣装も、女王や貴族達の衣装も大変凝っている。カメラワークは熊川さん中心なので、時々オデットやオディールのほうを映して、と思うことがあった。エピローグの照明が明るすぎて、主役二人の顔がハレーションを起こしてしまって表情が全然わからなかったのも残念。

しかし熊川さんの凄さはよくわかる映像だし、エンターテインメント性を重視したわかりやすい演出、ペレーゴの魅力的なオディールにゴージャスな美術と、見ごたえはたっぷりあって商品として優れていると思う。熊川さんの古典改訂は、「ドン・キホーテ」といい、「海賊」といい、オリジナリティと才覚があるので、今後も手がけて欲しいなと思った。やはり次は「ラ・バヤデール」や「ライモンダ」あたりが観てみたいものだ。

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追記;熊川哲也さんの特番があるようです。
(miyaさんの「ちょこっと劇場へ行ってきます」より情報をいただきました)
「熊川哲也 復帰への300日」 (仮題)
TBS(関東ローカル)|3月29日(土)15:00〜16:24
MBC|4月05日(土)15:30〜16:54

「第九」はなかなか良くできた作品のようですし、熊川さんも怪我から見事な回復を見せたようですね。3月は忙しいので観に行けず、残念です。

また、今後のK-Ballet作品の放映予定です。
TBSチャンネル
3月22日(土)20:00「コッペリア」
3月29日(土)20:00「ドン・キホーテ」
4月05日(土)20:00「くるみ割り人形」

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コメント

こんばんは
番組情報は、当日会場でもらったチラシの中にありました。思わず想像のついてしまう内容ですが、楽しみに待ちたいです

miyaさん、こんばんは。
貴重な情報をありがとうございます。「第九」の感想も大変面白く拝読しました。
記者会見で、まだ膝が痛いと言っていましたが、無理しないで欲しいですよね~。

はじめまして。
3幕のキャラクターダンスについてです。私は、Kバレエ・カンパニーの「白鳥の湖」を生で見たことがありますが、マズルカやチャルダッシュはありませんでした。DVD化にあたって割愛されたわけではないと思います。
6年前の記事ですし、もうご存知かと思いましたが、コメントを書くことにしました。

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