アメリカン・ダンス・アイドルとダニー・ティドウェル
ABTにダニー・ティドウェルというアフリカ系の若手ダンサーがいました。2003年春に入団し、コール・ドの所属ではあったものの、ほかのダンサーたちよりも飛びぬけて技術に優れており、またルックスもとても精悍で良いので、2003年秋のシティ・センターシーズンにおいても、ちょっと目をつけていたほどです。2002年にジャクソン・コンクールで銀賞を受賞。2004年の秋のシティセンターシーズンでは「薔薇の精」を踊り、また2005年のABTの来日公演では「ライモンダ」でベランジェ役、「ドン・キホーテ」でも闘牛士の一人としてひときわ鮮やかな跳躍を見せてくれて素晴らしいダンサーだと思ったのです。「白鳥の湖」のナポリの踊りでも、ひときわ鮮やかなピルエット8回転やトゥールザンレールを見せ、しかも身体能力だけでなく、エレガンスもありました。その前にも、ラスタ・トーマスが日本で開いたガラに、ダニーは出演していました。二人とも、ワシントンのキーロフ・アカデミーでバレエを学んでいて、以来ずっと親しいようです。
しかし、2005年のMETシーズンでABTを見に行ったときに、彼が退団するらしいということを常連の方から聞きました。来日公演が最後とのことです。「プリンシパルにもなれるかもしれない逸材なのに」と惜しむ声をたくさん聞きました。東京公演の後、大阪までオールスター・ガラを見に行ったときに、ダニーは「シンフォニエッタ」に出演していました。ABTを退団した後は、デズモンド・リチャードソン率いるComplexionsに入団すると聞いていましたが、1年くらいで、公式サイトから名前が消えていました。雑誌を発行したり、ラスタ・トーマスのサイトで彼の名前を時々見かけていたので、元気なんだろうなと思っていたのですが。
そうこうするうちに、また彼の名前を見るようになりました。ダンス・コンペティション番組「アメリカン・ダンス・アイドル」(So You Think You Can Dance)の参加者の一人として、大きな話題になっていたようです。彼が勝ち上がっていく様子を追いかけていたら、何回か振り落とされる危機に陥りながらも、最終的には2位という素晴らしい成績を残すことができ、全米のアイドルになっていたのですね。
http://www.foxjapan.com/tv/bangumi/dance_Idol/bios/dancer04.html
気になっていたクラシックバレエのダンサーが、このような形で再びスポットライトを浴びるようになったということはとても嬉しいことです。バイオグラフィーを読むと、Complexionsを離れた後、ダニーはすっかりダンスに対する情熱を失っていたところ、兄弟であるパシャが同じ番組のシーズン2に参加して踊っている姿を見て、再びダンスをやり始めようと思ったようです。そして、ダンスに対する愛を再発見したとのこと。これからの彼の活躍、見逃せませんね!アメリカン・ダンス・アイドルのシーズン3の放映は先日終わってしまいましたが、また近いうちに再放送がFOXチャンネルで行われると思います。
ってわけで、彼がABTのダンサーたちと取り組んだダンス&写真集のプロジェクト、Moving Still の写真集を買ってみました。ABTのコール・ドのケネス・イースターとアレクサンダー・ハムジ、そのほか数人の若手ダンサーが参加していますが、モノクロームの写真からも、躍動する肉体が感じられてとても素敵です。
ABTでのダニーの姿は、アンヘル・コレーラとジリアン・マーフィが出演している「白鳥の湖」のDVD1幕でも観ることができます。
Moving Still: A Life Performance David Benaym; Roger Moenks; Laurent Alfieri e-maprod Inc. 2005-05 Sales Rank : 976236 See details at Amazon by G-Tools |
« ラトマンスキー、NYCBの常任振付家に?/新国立劇場『ラ・バヤデール』キャスト変更 | トップページ | 世界遺産で舞う マイヤ・プリセツカヤ with 梅若六郎 ~永遠に咲く花の如く~ »
「バレエ(情報)」カテゴリの記事
- 彩の国さいたま芸術劇場で、ノエ・スーリエ 『The Waves』公演とさいたまダンス・ラボラトリ(2024.01.21)
- 『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』、開幕は平野亮一主演「うたかたの恋―マイヤリング―」(2022.12.06)
- 英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン、ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」2月18日より劇場公開(2022.02.17)
- 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22が、2月18日ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』で開幕(2022.01.23)
- 「ボリショイ・バレエ inシネマ2021-2022 Season」5上映作品が12月より劇場公開(2021.10.16)
« ラトマンスキー、NYCBの常任振付家に?/新国立劇場『ラ・バヤデール』キャスト変更 | トップページ | 世界遺産で舞う マイヤ・プリセツカヤ with 梅若六郎 ~永遠に咲く花の如く~ »
コメント