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2008年2月

2008/02/29

日本経済新聞「大型ホール2館、年内に休館」

日本経済新聞の関西版にこんな記事が載っていました(Googleのアラートで飛び込んできました)。2月26日夕刊掲載の記事とのことです。

大型ホール2館、年内に休館──文化公演 大阪離れも
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news002771.html

大阪市内の大型文化ホール2館が年内に活動を休止することになり、舞台や音楽の公演企画者らが頭を抱えている。フェスティバルホール(北区、2700席)と大阪厚生年金会館(西区、大ホール2400席)で、いずれもバレエやオペラなど大規模な公演が可能な施設。2つのホールの休館で、大阪での文化活動が停滞する懸念も出てきた。

大阪フェスティバルホールが閉館することは以前から聞いていたのですが、大阪厚生年金会館もそうなんですね。フェスティバルホールは2005年のABT来日公演でガラを観に行きましたが、横幅が広く、1階前方がフラットで見づらい劇場だと思いました。何よりも、お手洗いの前に喫煙所があって、ホール全体がタバコくさくてたまりませんでした。(嫌煙家の私にはつらい環境)建て替えることはとても良いことだと思うんですけどね。あと、楽屋口がリーガロイヤルグランドホテルのロビーの中なので、出待ちする人たちがホテルを利用する人の迷惑になっている感じだったんですよね。大阪のホール事情に関しては非常に疎いので、あまりたいしたことは言えませんが。

大阪厚生年金会館の方は行ったことがないのですが、今年の夏のBBLの大阪公演やロイヤル・バレエのガラが行われるところなんですよね。ダンスマガジンに載っていた読売テレビの広告によれば、12月のボリショイまではフェスティバルホールを使い、来年3月の東京バレエ団の公演は梅田芸術劇場で開催されるようです。

追記:厚生年金会館は国の年金給付問題に絡んで整理合理化対象となり売却されるとのことですね。こういうところにしわ寄せが・・・。

朝日新聞のサイトには、こんな告知が出ています。
http://www.asahi.com/shimbun/release/20070402.html
朝日新聞社とグループ企業の朝日ビルディングは4月2日、フェスティバルホールや朝日新聞大阪本社の入る両社所有のビル3棟(大阪市北区中之島2~3丁目)を、二つの超高層ビルに建て替える「大阪・中之島プロジェクト」を発表しました。建て替えに伴い、フェスティバルホールは08年秋ごろに一時閉館し、いまと同じ2700席の規模で、最新鋭の音響・舞台設備を導入して、13年度完成予定のビル内に新装オープンします。

世界に誇れるホールへ 新フェスティバルホールの概要
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802280093.html

で、日経の記事に戻りますと、
「大阪市内でフェスティバルホールの代わりとなる会場を探してきたが……」。毎年6、10月に同ホールで定期公演を開いてきた法村友井バレエ団の法村牧緒代表は嘆く。法村バレエ団の定期公演は、約100人の出演者が待機したり、舞台セットの入れ替えがスムーズにできたりする舞台袖の広いスペースが欠かせない。大阪市内でそれが可能な施設はほかになく、来年は兵庫県尼崎市のアルカイックホールに会場を移すという。
ということで、バレエ公演にはかなりの支障があるようです。

外来ミュージカルに関しても、
海外との契約は「1週間8回公演が基本で、その契約に見合う人数が集められるのはフェスティバルだけ。会場が狭くなれば、料金を上げなければ採算が合わない」と困惑している
そうです。

全国コンサートツアー事業者協会の鏡孝彦常任理事は「平日夕方の公演で会場が神戸や京都となると、大阪の会社勤めの客が公演を見にいけないケースも考えられる。大阪国際会議場など大阪の人気ホールは来年の予約がほとんど埋まっていて、新たに割り込める余地は小さい。内外の人気アーティストの公演は大量の集客がないと採算が合わず、関西公演を見送るケースも出るのではないか」と危惧する。

まあ、平日夕方の公演が観に行けないといっても、今のように6時半始まりの公演が多いのでは、なかなか社会人は平日に舞台を観にいけませんよね。東京に住んでいても、毎回思うことです。NBSの公演の一部と、新国立劇場が7時始まりにしてくれているのは本当にありがたいです(個人的なことですが、6時半に東京文化会館には、定時に出ても間に合いません)。欧米並みに7時半とか8時だったらもっとありがたいけど、日本は公共交通機関の終電が早いですからね。

兵庫県芸術文化センターは素晴らしいホールがあり、西宮北口駅に直結しているなど交通の便も良いのですが、なかなかバレエ公演をやりませんね。フェスティバルホールが休館になったらバレエも増やすのかしら?びわ湖ホールも、これまた素晴らしい劇場ですがちょっと遠いし。いい代替劇場も思いつかないので、しばらくは関西在住のバレエファンは我慢しなければならないかもですね。

東京も、東京文化会館が石原都知事のせいでバレエ公演に以前ほどあまり貸してくれなくなってしまったようですし(東京文化会館の予算はこの4年間で、5億9036万円から3億4374万円と4割以上減らされたそうです)、老朽化しています。実際バレエを観るのに良いホールってなかなかないですよね。新国立劇場オペラパレスと、やはりちょっと(かなり)古いですがゆうぽうとくらい?

*********
日本経済新聞の夕刊といえば、今(2月25日~29日)吉田都さんの文章が連載されていますね。
http://www.nikkei.co.jp/honshi/yukan/
こころの玉手箱 バレリーナ 吉田都さん(夕刊文化面)
都さんの美しいポートレートと、記事の見出しはサイトで読めます。真面目で優しい人柄が感じられる素敵な文章ですね。

吉田さんは子どもたちにバレエの楽しさを教える活動に熱心だ。幼稚園のとき、友達の発表会でバレエの魅力に取りつかれた。だから、心が柔らかい子どもたちに本物のバレエを見せたいと考えているのだ。

2008/02/27

ダンスマガジン4月号/ダニーラ・コルスンツェフ

発売日の1日前にチャコットで入手。

珍しく?大変充実した内容で満足しました。表紙は清楚なピンクのチュチュを着たシェスタコワ。そして巻頭にはバーミンガム・ロイヤルの来日公演と、佐久間奈緒さん、平田桃子さん、ツァオ・チーさん、山本康介さんのインタビュー。吉田都さんは写真はたくさん載っているんですが、インタビューはなし。それから、ミハイロフスキー劇場の写真がいっぱい。ほとんどがコルプ祭りで、草刈タミーのインタビューも。女性週刊誌でバレエ引退か、って書かれているのにまだアンタ踊るつもりなのかいなと小一時間問い詰めたい気がします。

モンテカルロ・バレエの「ファウスト」(マイヨー振付の新作)は、ベルニス・コピエルテスが今までと違ったイメージだけど、やっぱりすごくかっこいい。そして「空白に落ちた男」のレビューに3ページ。ローザンヌコンクールの速報記事の中には、コンテンポラリー・ヴァリエーションに作品を提供したノイマイヤーや、モニク・ルディエールの姿が。審査員の堀内元さん、スカラシップを受賞した高田茜さんのインタビューも。

「眠れる森の美女」のDVD特集は、ロイヤルバレエの来日公演のプロモーション記事でしょうか。パリ・オペラ座、オランダ国立バレエ(ソフィアン・シルヴ)、キーロフ(ルジマトフとレジュニナ)の眠りは確かに名盤だと思います。

興味深いところでは、ハンブルク・バレエの新作、ノイマイヤー振付の「クリスマス・オラトリオ」のレポートがありました。

で、この号で嬉しかったのが二つ。東京バレエ団に教師として指導に来たジャン=ギョーム・バールのインタビュー。本当に彼はハンサムですね。引退について語っていますが、もはやステージに立つのも困難な状態だそうで、この若さで舞台を去らなければならない葛藤は相当なものだと思われます。しかし、古典バレエの様式美を守ってきた彼が、その経験を若いダンサーに伝えていくとしたら、本当に素晴らしいことだと思います。誠実な人柄が言葉の端々に出ていました。急に引退を余儀なくされたため、現在はオペラ座にポストはないそうですが、古典作品の上演が減っている現在、彼のような純粋なダンスール・ノーブルだった教師の存在がもっとも必要なのではないかと思われます。東京バレエ団での指導についても、「ぼくはむしろ解決しなければならない問題を抱えて苦しんでいるコール・ド・バレエのダンサーにも、ソリストと同じ熱意を持って教えたい」と語っています。「怪我をしたダンサーこそ良い教師になれる」とも。なんて素敵なのでしょう。

もうひとつは、12月にブエノスアイレスで行われた、フリオ・ボッカの引退公演のレポート。なんと30万人もの観客がつめかけ、国民的なスターの引退を惜しんだとのことです。タマラ・ロホ、ニーナ・アナニアシヴィリ、マニュエル・ルグリ、そしてホセ・カレーニョらが参加しました。これからはバレエ・アルヘンティーノの芸術監督として活動するとのことで、日本にもまた来てほしいです。

なお、巻末の広告に気になる公演が。5月18日(日)18時より、愛知県芸術劇場大ホールにて松本道子バレエ団の「白鳥の湖」が上演されるのですが、ゲストがマリインスキー・バレエのダニーラ・コルスンツェフ、それから東京バレエ団の大嶋正樹さんです。行きたい!って思ってしまいました。(この日は、新国立劇場の「ラ・バヤデール」ザハロワのチケットを取っているんですが。。。)ダニーラはなかなか日本で観る機会がないので貴重ですよね。

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2008/02/25

パリ・オペラ座「ル・パルク」来日公演プレキャスト/「FIGARO」/「プルースト」DVD

ダンソマニさんの日本語版に出ていました。ありがとうございます。あくまでもプレキャストなので、正式なキャスト発表ではありません。

Le Parc

Pujol + Legris

Cozette + Leriche

代役. Renavand, Bridard

● 8人の女性 : Bance, Bellet, Granier, Batrice Martel, Pagliero, Renavand, Wiard, Lamoureux

代役. Ranson, Reichert, Robert, Wetermann, Fujii, Gilles, Perrachi, Pelzer


● 7人の男性 : Bezard, Charlot, Guerri, Hoffalt,Houette, Kim, Paul

代役. Chaillet, Pascal Aubin, Cordier, Renaud, Marc Moreau, Vantaggio

● 4人の庭師 : Gaudion, Valastro, Bodet, Leroux

代役. Couvez, Marc Moreau

アリス・ルナヴァン、オドリック・ベザール、ジョシュア・オファルト、キム・ヨンゴル、ニコラ・ポール、マロリー・ゴディオン、シモン・ヴァラストロといったところが出てますね。代役にヤン・ブリダール、藤井美帆さん、マルク・モローなど。


ついでに、「ル・パルク」の直前、5月16, 17(マチネ、ソワレ), 18日に北京国家大劇院で行われる「パキータ」公演のプレキャストも。

パキータ: ジロ、ルテステュまたはジルベール 代役ユレル、エケ
Paquita : Gillot ou Letestu ou Gilbert, remp. Hurel, Hecquet

ルシアン: モロー、エイマンまたはパケット 代役マニュネ
Lucien d'Hervilly : Moreau ou Heymann ou Paquette, remp. Magnenet

インディゴ: ビュリヨン、パケットまたはファヴォラン 代役メイザンディ
Inigo : Bullion ou Paquette ou Phavorin, remp. Meyzindi

パ・ド・トロワ: ユレル+ウード=ブラハム+ティボーまたはズスペルギー+ダニエル+エイマン
代役フィアット、フルステー、メイザンディ、ガイヤー
Pas de 3 : Hurel + Ould-Braham + Thibault ou Zusperreguy + Daniel + Heymann,
remp. Fiat, Froustey, Meyzindi, Gaillard

ドナ・セラフィナ: シアラヴォラまたはグリンシュタイン 代役ダヤノヴァ
Dona Seraphina : Ciaravola ou Grinsztajn, remp. Dayanova

ドン・ロペス: モナン 代役ミュレス
Don Lopez de Mendoza : Monin, remp. Murez

エルヴィリー伯爵:ホフまたはウィルク
Le Comte d'Hervilly : Hoff ou Wilk

女伯爵: ジェルネスまたはフェンウィック
La Comtesse : Gernez ou Fenwick

若いジプシーの女: ヴェルデュセン 代役ディヤック
Une jeune gitane : Verdusen, remp. Dilhac


正直言って、「ル・パルク」に関してはルグリとニコラの男性主役以外は、「パキータ」に比べて明らかにキャストが見劣りしていますね。特に女性に関しては地味です。男性も若手で人気のクラシックダンサーたちはみんな北京・・・。これから期待の若手はル・パルクにも出てくれますが。(オドリック・ベザールやシモン・ヴァラストロが楽しみ)
ひょっとして、マチアス・エイマンのエトワール任命の可能性もあるんじゃないかとか勝手に予想したりして。

それから、マチュー・ガニオがどちらの公演にも予定されていないのが気になります。怪我が長引いているのでしょうか?心配です。

現在発売中のフィガロ・ジャポン3月1日号「パリ・オペラ座物語」は、「カリギュラ」の特集で、マチューの麗しい写真も掲載されていますが、オペラ座で3月に上演される「カリギュラ」にも、残念ながらマチューは出演しないのですよね。前半3ページがファースト・キャストのジェレミー・ベランガール、後半1ページがセカンドキャストのマチューなのですが、比べちゃかわいそうなくらい、ルックスの差が際立ってしまっています。振付のニコラ・ル・りッシュのインタビューが掲載され、クリエーションのきっかけ(やはりルフェーヴェルは、ダンサーに振付を行うことを奨励し、振付ができるダンサーを優遇しているようです)、キャスティングの理由、衣装、この作品について細かく語ってくれています。さらにジェレミー、マチュー、クレールマリ・オスタのインタビューも。

この号には、ガルニエで行われているローラン・プティ展についての紹介もあり、「プルースト」の写真も小さいですが載っています。舞台装置や衣装が展示されているようですが、プティ作品には、マックス・エルンスト、デ=キリコなど錚々たるアーティストが参加してきたのですね。

そのローラン・プティの「プルースト」DVDですが、輸入盤が日本でも発売されます。お買い得だけど発売日が4月30日と遅いHMV、3月11日発売だけど値段が高いAmazon.co.jpと迷って、結局、、リージョンALLということで私はAmazon.comで注文することにしました。今はちょうどドル安なのです。

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2/24 空白に落ちた男

出演:首藤康之/梶原暁子/藤田桃子/丸山和彰/小野寺修二
作・演出:小野寺修二
音楽:coba
美術:松岡泉
2月24日14:30~ベニサン・ピット

実はこの作品、初日も見に行ったのだけど、その頃は忙しい上に風邪で半分死んでおり、とても面白く観たのだけど感想を書く余裕がなかった。そしておよそ一ヵ月半ぶり、千秋楽直前に観に行った2回目。初日と演出の細部も変化していたし(細かいところまで覚えていないので、一つ一つは挙げられないけど)、出演者の息の合い方や表情の豊かさも増して、興奮を覚えるほどのエキサイティングな舞台となった。

作・演出・出演の小野寺修二さんは、「水と油」というパントマイムのパフォーマンス集団を率いていた方。したがって、この公演も、演劇でもなければダンスでもない、台詞のない世界が展開するのだけど、パントマイムというものに対する固定観念がひっくり返される面白さ。台詞がない分、動きや表情の一つ一つが雄弁になっているのだけど、それだけではない。無表情の中の表情とか、ちょっとありえないような振付?とか、あっと驚く小道具の使い方、舞台装置の意外な仕掛け。片時も飽きることがない。

まず何よりも秀逸なのが、松岡泉さんによる舞台装置。一見、何の変哲もない、机や椅子が置いてあるだけの殺風景な部屋のようでいて、扉や引き出しにさまざまな仕掛けやギミックが隠されている。なのに、ごてごてとすることもなく、なんともいえず味わい深く、観れば観るほど面白く、それだけでひとつの芸術作品に見えてくる。場面転換は一切ないのに、それが取調室や、ホテルの部屋や、喫茶店や、殺人事件の現場であるバスルームに変身するのだから。

出演者5人がまたそれぞれ個性的。首藤康之さんはいわずと知れたバレエダンサーで、この中では一番有名人であり、唯一のバレエ畑出身者。だけど、決して一人浮くことなくこのアンサンブルに溶けこんでいる。ラストに美しいバレエを見せるシーンがちょっとだけあるけど。初日と見比べて思ったのは、驚くほど表情が豊かになり、まるで顔がゴムになったかのように動くようになったこと。シャイな首藤さんがあんな面白い顔をするなんて!もちろん、持ち前の身体能力が、この舞台のアンサンブルを構成する上で役に立っているのは言うまでもない。

小野寺修二さんは、そこらへんにいるような小柄なおじさんという風情なのだけど、飄々とした持ち味が最高。しかも、彼の作る表情の面白いことと言ったら、もう。動きにも無駄がなくてきびきびしているし、笑いを取るのも上手。首藤さん演じる刑事にタバコの火をもらったときの(しかも、マッチを摺るのに何回も失敗していて結局火はつかない)嬉しそうな表情は忘れられそうもない。言葉をひとつも発しなくても、観客を笑わせることができる人。

藤田桃子さんは、「水と油」メンバー。きりりとしたクールな存在感で、この舞台の屋台骨を構成しているようだった。彼女の安定感があるからこそ、この舞台もまとまりのあるものになっている感じ。この人も動きに無駄がなくて、強靭でカッコいい。

丸山和彰さんは、長身の若いパフォーマー。表情をあまり見せるところがなく、それでいて飄々としたおかしみを出すことができる、柳のようにしなやかな感性を持っている人。

そして梶原暁子さん。モダンダンス畑の人とのことだけど、小柄な体に秘めた、素晴らしい身体能力と表現力。エプロンをつけてウェイトレスに変身したかと思えば、蛇口の下に倒れこんで死体になっているし、戸棚の中にくしゃっと猫のように丸まったり、匍匐前進のように地を這ったり、変幻自在。ラストには裸足になって、これまたびっくりな高速回転の大胆なダンスソロを踊って見せた。ものすごく引き出しの多い魅力的な人。


この個性的な5人がバラバラにならずにまとまり、息がぴったり合った連係プレイを見せているのがすごい。最初の方に、小野寺さん扮するパジャマの男がスリッパの片方を求めて机の上の歩き回るとき、ほかの出演者たちが、彼の歩く方向に机を一つ一つ並べていくタイミングの鮮やかなこと。バッタンと倒れた長身の丸山さんの上に、3人がものすごい勢いで机や椅子を積み上げて、ふと見下ろしていっせいに顔を見合わせて「え!」とばかりに驚いて見せるところの呼吸の合い方も見事なもの。小野寺さんと丸山さんがまるで「マトリックス」のようにスローモーションでアクションを見せるところも、帽子の飛ばし方がすごく可笑しかった。

一応、刑事S、妻が二人いるという妄想に取り付かれてしまった男O、長身のガレキ男、容疑者といったキャラクターと基本設定はあるものの、しっかりとしたストーリーはないし、キャラクターは入れ替わるし、部屋の中に登場人物たちは出たり入ったりするし、場面設定もくるくる変われば、追いかけていた側が追われる側と入れ替わるし、そんな一見バラバラな世界観がなぜかまとまって見えるところが凄い。しかも、生き物であるこの舞台は、初日の頃とは変化し、成長を遂げている。世界の出口と入り口、その間にある空白というのがポイントなのだけど、意味など求めてはいけない。この不条理で可笑しくて少し怖い世界はたまらなく魅惑的で、何度でも覗いてみたくなる。それとも、この部屋自体が空白なのか?

千秋楽は木曜日。できることならもう一度見てみたいものだ(でも仕事が忙しくて無理)。まだの方には、ぜひ見てほしい。


以下は、ネタばれにつき、ご覧になった方だけ読んでください。

面白いと思ったポイントのメモです。

ホテルにチェックインしようとも、何度も同じ部屋に入ってしまう。
引き出しが階段状に現れ、それを上って部屋を脱出。
取調室の刑事と、パジャマの男のタバコの火をめぐるやり取り。靴の底でマッチをつけようとするけど失敗。
扉の窓から現れる、容疑者のマグショット。
食品の保存庫だと思ったら、覗くのはスリッパ男の両足。そしてうーんと上の窓からは男の顔が。
変な調味料を入れられて中毒になる客とウェイトレスのやり取り。
横一線に並べられた机に座る出演者たち。容疑者の顔写真は全部刑事のもの。
一着のコートをいろいろな出演者が回し着する。
机を積み上げられたところを記念撮影。
引き出し式の書架。

舞台の様子は、「ひらづみ」さんのところで、イラストで説明してあります。復習用にどうぞ。

2008/02/24

エフゲーニャ・オブラスツォーワ/キューバからの亡命ダンサー/ヴィシニョーワ公演/アンヘル・コレーラ

今日はNBAバレエ団の「ドン・キホーテ」を観てきました。キトリ役のゲスト、マリインスキー・バレエのエフゲーニャ・オブラスツォーワが、先日キトリデビューを果たしたばかり(Yuraさんのロシアのバレエ団情報にデビュー公演の記事あり)とはとても思えない、素晴らしいパフォーマンスでした。ジェーニャ(エフゲーニャの愛称)は位的にはセカンド・ソリストですが、ひとつ上のランクのコレゴワよりずーっと良かったです。

これから観る方もいると思うので、詳しいレポートはまた後日書きますが、迷っている方、明日も公演がありますのでお勧めですよ。ただし、セルゲイ・ヴィハレフによる振付は上演時間が3時間ありますので、主役が出ていないシーンはすごく長く感じられてしまうと思います。ジェーニャはとにかく笑顔がとろけそうに可愛くて、おちゃめで、でもテクニックはばっちりで、キトリのキャラクターがすごく向いている感じです。キラキラしたオーラがあるし、明るくて、こんなに可愛いキトリがいていいんだろうかと思うほど。相手役のヤロスラフ・サレンコは、「マラーホフの贈り物」に出演していたヤーナ・サレンコのお兄さん。テクニックはすごくある人なんだけどサポートがかなり苦手な感じ。でもつま先や甲がものすごくきれいだし、高速8回転ピルエットも軸が決まっていてうまければヴァリエーションでは最後に540をキメるなど豪快なので、パートナーリングやリフトなどの問題が解決すれば、より良いダンサーになることでしょう。

追記:指揮者榊原徹さんのブログに、オブラスツゥーワのリハーサル中の写真が載っています。
http://hanatsubaki.asablo.jp/blog/2008/02/18/2640146
セルゲイ・ヴィハレフさんはジェーニャにも厳しく指導したようですね。


***********

以前キューバ国立バレエのプリンシパルなど3人のダンサーが亡命したニュースをお知らせしましたが、続報があります。Taras Domitro, Hayna Gutierrez そしてMiguel Angel Blancoの3人が、揃ってサンフランシスコ・バレエに入団するそうです。
http://www.miamiherald.com/news/broward/story/428782.html
マイアミ・エラルドによると、サンフランシスコ・バレエの芸術監督ヘルジ・トマソンは当初、身長の高い男性ダンサーが最も必要とされていたのでMiguel Angel Blancoのみにオファーするところを、バレエマスターでアリシア・アロンソの相手役をかつて務めたホルヘ・エスキヴァルの助太刀もあり全員がオーディションを受けてソリストとして入団することになったとのこと。キューバでの給料は月額50ドルで、キューバ国民としてはいい金額だったそうです。
サンフランシスコ・バレエには、エスキヴァルのほか、プリンシパルにロルナ・フェイホ、ホアン・ボアダというキューバ出身者がいるため、環境としても申し分ないようです。彼らの活躍に期待しましょう。

サンフランシスコ・バレエは現在「ジゼル」を上演中ですが、ジゼル役に定評のあるヤンヤン・タン、そして小柄で可愛らしい若手のマリア・コチェトコワ(元ENB)という二人のジゼル役が評判を呼んでいます。また、ゲスト・プリンスパルトして加わったソフィアン・シルヴがミルタ役で出ているというのも話題です。マリア・コチェトコワはブログを書いており、なかなか面白いです。http://www.mariakochetkova.com/

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New York Timesにディアナ・ヴィシニョーワの公演「Beauty in Motion」の記事と写真のスライドショーが載りました。スライドショーの写真を見ると、ずいぶんと大胆な振付の作品群なのがわかります。中でも印象的なのが、記事にも使用されている、まるでヴィシニョーワが蜘蛛のような形でポーズしている「F.L.O.W.」という作品の写真。

http://www.nytimes.com/2008/02/23/arts/dance/23beau.html?_r=1&oref=slogin

「Everyone onstage dances like hell, and when we get to hell, it will be full of ballets like this.」というアレイスター・マコーリーの批評が、端的にこの公演について表現している気がしますが、もちろん私は観ていないので、勝手な感想は言えません。
オレンジカウンティ公演をご覧になったいちぞーさんの感想がわかりやすいので、リンクをしておきます。
http://blog.livedoor.jp/ichizo31/archives/54980100.html

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最後に、マドリッドのレアル劇場で上演されたオペラ「ラ・ジョコンダ」にアンヘル・コレーラとレティシア・ジュリアーニが出演した際の写真をご紹介します。友達に教えてもらったものです。すごい肉体美と露出度、です。会社で見るのはやめたほうがいいでしょう(笑)。躍動するダンサーの肉体は本当にすごいですね。

http://www.eter.es/dn/fotos/fotos.php?id=267
http://www.eter.es/dn/fotos/fotos.php?id=268
http://www.eter.es/dn/fotos/fotos.php?id=271

2/22マラーホフの贈り物Bプロ

海外出張から帰ってきて休みなしで仕事が激しく多忙、前日は終電帰りということもあってひどく疲れた金曜日の夜。やっぱり体調万全でないと、十分楽しめないと思ってしまった。

○「牧神の午後」 ポリーナ・セミオノワ×ウラジーミル・マラーホフ
振付: ジェローム・ロビンズ
音楽: クロード・ドビュッシー

横たわるマラーホフ。1階前方の席でちょっと観づらかった。脚を垂直に上げたときに、マラーホフの脚のラインの美しさにうっとりとした。脚だけでなく、胴体もずいぶんとほっそりとして、あばらがくっきりと見えてしまっていた。ロビンスの「牧神の午後」は、少年と少女の話なので、そろそろマラーホフにはつらい役柄かと思ったけど、マラーホフの持つ耽美性が発揮されていて、よく合っていたと思う。ポリーナは、この作品でマラーホフの相手役を務めるには少々生身の女性っぽすぎるところがある。少女は実体があるのかそれとも幻か、という儚さがあったほうがいいし、もっと生硬なところがあった方が良かったとも思った。小悪魔ぶりが出すぎているのだ。とはいえ、ふとした表情や視線に清清しい、ほんのりとした色香があり、鏡越しに二人が視線を交わすところの官能性にはどきりとする。鏡越しの視線が、ようやく直接交わりあったときの仄かな高揚感。唇ではなく頬へマラーホフがキスをする。夢か幻か、少女が歩き去り、再び横たわるマラーホフに訪れた官能の表現は、ごくごく控えめなもの。マラーホフならもう少し官能的に演じるかな、と思ったけど、抑制された表現の彼もいい。この作品を初めて生で観たのは、ホセ・カレーニョとステラ・アブレラで、やはり決して若くはないカレーニョが見せた清潔な色気と、アブレラのファム・ファタル的な幻の女ぶりが素敵だった。踊る人によって全然違ってくるけど、私はこの作品がとても好き。ドビュッシーの音楽がじわじわと昂ぶっていくところが、たまらない。


○「グラン・パ・クラシック」 ヤーナ・サレンコ×ズデネク・コンヴァリーナ
振付: ヴィクトール・グゾフスキー
音楽: ダニエル・オーベール

サレンコもコンヴァリーナも、Aプロよりずっと良くなっていたと思った。サレンコは、アダージョでのバランスがすごかった。バロネについては、もう少し軸を引き上げる感じがあってもいいと思う。テクニックが強いのは良くわかったから、あとは見せ方の問題だろう。伸びしろがありそうだから、これからに期待したい。コンヴァリーナも同じく、見せ方で損をしているのと、白タイツが似合わないのがもったいないと思った。回転とサポートはすごく上手いのだから。腕の使い方が今一歩。


○「ハムレット」 マリーヤ・アレクサンドロワ×セルゲイ・フィーリン
振付: ボリス・エイフマン
音楽: ルートヴィヒ・V・ベートーヴェン

パンフレットを読んで予習をして、「ロシアン・ハムレット」であるという予備知識があったのが幸いした。エカテリーナ2世と、その息子の物語。年齢が10近く年上のフィーリンが息子役というのがすごいんだけど、マーシャの圧倒的な存在感とパフォーマンスに打ちのめされた。厳しい表情で、長いドレスを着て凛と立っている姿の迫力。雄弁でそれ自体でひとつの生命体のようである腕の表現力。母と子の、ただならぬ関係を感じさせる。そしてフィーリンも、このド迫力のアレクサンドロワとがっぷり四つに組んで、おびえ飲み込まれる演技が真に迫っていた。それでも母の足元にひれ伏して愛情を求める息子。ドSという感じの厳しい表情がこの上なく威圧的なマーシャに組み敷かれる。これ、絶対に全幕で見てみたい。断片を見せられるのは、蛇の生殺しにあうようなもの。

○「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ” イリーナ・ドヴォロヴェンコ×マクシム・ベロツェルコフスキー
振付: マリウス・プティパ
音楽: ピョートル・I・チャイコフスキー

イリーナの黒鳥は、一昨年のバレエフェスで観たときの方がテクニック的には良かったと思うけど、何しろ彼女は目線や腕を巧みに使ったドラマティックな演技が素晴らしい。ガラでパ・ド・ドゥを見せているだけなのに、後ろには舞台装置があり、ロットバルトや花嫁候補たちが存在しているかのようだ。このあまりの濃厚さに拒絶反応を示す方も多かったようだけど、私は彼女の一挙一動や視線の使い方にに吸い寄せられた。あまりにも美しい悪女。テクニック的にはほんの少し衰えを見せてしまっているけど、それでもオールシングルのフェッテは音にぴったりと合っていて正確だったし、足の甲が美しい。ヴァリエーションもとても素敵だったのだけど、最後のシェネでぐらついたのがもったいない。(でも、すぐに体勢を立て直せたところは立派)マキシムは衣装が黒王子で、端正であくまでも女性(というか妻)を立てるところが好感度大。

でも、イリーナの本領は黒鳥より白鳥なのよね。7月のABT全幕が楽しみ。

○「バレエ・インペリアル」 ポリーナ・セミオノワ×ウラジーミル・マラーホフ
振付: ジョージ・バランシン
音楽: ピョートル・I・チャイコフスキー
出演: 田中結子、中島周、横内国弘 ほか東京バレエ団

睡眠不足で一週間の疲れがたまっていたこともあり、拷問のようだった。とにかく音楽性の欠片もないコール・ドに呆れる。その上、テープの録音がひどくて、耳をふさぎたくなるほどであった。3時間以上もあるガラに、こんな長尺で中身のない上演作品は必要だったのだろうか?これだったら、Aプロと同じ白鳥の湖2幕をやった方がずっとまし。東京バレエ団ではもう二度と見たくない作品。ソリストも全然良くない。マラーホフの相変わらず音のしない猫のような着地(しかし膝を庇っているのか、プリエは浅め)や、サポート中心なのに光り輝くまでの美しい佇まいは素敵だった。でも、彼に無理をさせるんだったら、この演目ごと割愛しても良かったのでは?ポリーナも、美しさ、音楽性、テクニックともあまりにも飛びぬけているので、すっかり浮いてしまっていた。彼女はアブストラクト・バレエよりはストーリー性のあるものを踊った方がいいように思える。キトリはきっと似合うだろうな。

○「シンデレラ」 マリーヤ・アレクサンドロワ×セルゲイ・フィーリン
振付: ロチスラフ・ザハーロワ
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ

ザハーロワ振付となっているけど、どう考えてもポソポフ振付のシンデレラ。あの強そうなマーシャ姐さんがシンデレラか、と思ったけどこれがまた案外可愛らしくて良い。こういう作品では、現代的な部分も見せてくれるし、実に引き出しの多い魅力的なバレリーナ。音楽がちょっと耳慣れない部分を使っていて、作品としてはどうなんでしょう。フィーリンは、白いフリフリシャツをはだけた姿がすごく似合っていてまさに王子様、素敵。

○「アポロ」 イリーナ・ドヴォロヴェンコ×マクシム・ベロツェルコフスキー
振付: ジョージ・バランシン
音楽: イーゴリ・ストラヴィンスキー

この二人にすごくよく似合っている演目だと思った。ストラヴィンスキーの奇妙な音楽にぴったりと合っているイリーナの動き。クラシックバレエ的な動きが全然ない作品なんだけど、難しそうな細かいムーヴメントやオフバランス的な動きも易々と決めてくれている。そして、なんだかすごく可愛らしい。マックスのアポロ姿も太陽神らしい正統派の凛々しい美しさで、カリスマ性もあふれ実に魅力的。これも、この二人プラスほかの女性ダンサー二人で全編で見てみたい。

○「ドン・キホーテ」 ヤーナ・サレンコ×ズデネク・コンヴァリーナ
振付: マリウス・プティパ
音楽: レオン・ミンクス

Aプロと同じ演目なのだけど、Aプロよりずっと良い仕上がり。全体の流れを止めてしまってキトリのバランスを入れまくるのはどうよ、とも感じるのだけど、バランス自体はお見事なもの。サレンコは、ヴァリエーションがすごくよかったと思うんだけど、時々股関節がインになっている?と思うことがある。フェッテは、トリプルは1回だけだったけど、ゆっくりなんだけどキレイに回っていた。音楽には合っていないところがあったけど、そもそも今回のガラは、テープの音が最悪なもので、ダンサーにとっては気の毒だったと思う。サレンコは、多分もっと叙情的な演目が似合うバレリーナなのではないかと思った。当初予定されていた「ゼンツァーノの花祭り」観たかったな。
コンヴァリーナは今回も片腕リフトはなし。ただ、サポートはやっぱり上手で、特にアダージオでのサポートの素晴らしさにはすごく感心。それから、ピルエットも良くて、コーダでのグランド・ピルエットでは軸がしっかりとしており、惰性できれいに回っていた。しかもマネージュも、今まではあまり得意ではないのかなと思ったら今回は脚が非常にきれいに開きつま先もキレイでキレのある動き、いったいどうしちゃったのかと思ったくらい良かった。コンヴァリーナは近い将来、大化けするんじゃないかと思った。顔だって可愛いし、ニコニコしているし、俄然応援モードに。

○「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」 ウラジーミル・マラーホフ
振付: ロナルド・ザコヴィッチ
音楽: クラウス・ノミ、ロン・ジョンソン 編集: アルシャーク・ガルミヤン

Aプロで観た時には、音楽があまりにも素晴らしくインパクトが強かったので、振付が音楽に負けている気がした。2回目の今日も、やっぱり音楽の力が勝ってしまっていると思ったけど、もがき苦しむような動きを見せているマラーホフの姿を見ていると、こちらまで胸が苦しくなる。様々な内面の葛藤がムーヴメントに現れていたようで、ダンサーっていうのは戦い続けなくちゃいけない過酷な仕事なのだというのが良く伝わってきた。ごろごろと転がって服を脱ぎ捨て、生まれ変わってもまだ苦悩は続いている。そして、この日は、美しいジュッテも見せてくれた。それにしても、動きそのものの形は美しいとはいえないのに、しなやかに踊り続けるマラーホフという存在は美そのもの、美の申し子なのだと感じさせるところがすごい。私はマラーホフの大ファンとはいえないけど、それでも、彼は稀有な存在であり、すべての動きにドラマを込めることができる、何十年に一人の天才なのだと改めて実感した。カーテンコールのときの輝くばかりの嬉しそうな笑顔に、彼の人柄の良さも感じた。

カーテンコールで観客のハートをわしづかみにする天才といえば、やっぱりマーシャでしょう。カーテンの前でゆっくりとレベランスをしているフィーリンを「早くしなさい」ってぐいっと奥へ引っ張っていくマーシャ、上から降ってきた紙テープを体に巻きつけているお茶目なマーシャ、フィーリンにキスを送るマーシャ(そしてそれを吸い込むフィーリン)、フィーリンの可愛い子供と戯れる優しげなマーシャ、もう最高!ポリーナを迎えるときにすべってコケるフリをして姫を迎える王子風にポーズをとるマラーホフもいい味を出していた。お約束なのだろうけど、最後に出演者全員に迎えられ、「え、ボク?」って驚いて見せるマラーホフ。カーテンコールでは実に見事なジュッテをしてくれたのだけど、今の膝の状態では無理をしないでね、とちょっと心配。本当に魅力的な人だし、だからこそ、フレンズ公演もこんなに続けられるのだろうな。それだけに、完全復調をしてくれることを心から願っている。

2008/02/23

古川和則さん、東京バレエ団を退団

古川和則さんが、ご自身のブログの中で、東京バレエ団を退団されることを発表しています。2月29日付の退団なのだそうです。

http://kazunori-furukawa.blog.ocn.ne.jp/blog/2008/02/post_e71a.html

ここしばらく、小林十市さんと、ブログでのジャンプの応酬などで大いに楽しませてもらっていて、お茶目な人柄にひきつけられていましたが、このお知らせは残念ですね。とはいっても、いろいろと考えた末のとのことなので、その決断を応援したいと思いますし、今後古川さんが踊る公演があれば、観に行きたいと思います。

ベジャールさんの訃報、公演の有無を知る前にバレエ団に退団の旨を届け出たもので今でも出演したい気持ちでいっぱいです。出演出来ないことは誰よりも本当に残念に感じています。

古川さんのいないベジャール公演というのはやはり残念ですね。今日、「マラーホフの贈り物」のBプロを観て、東京バレエ団の男子は正直いって一頃よりかなり弱くなってしまっていると思ってしまいました。古川さんのような、テクニックに優れかつ魅力的なダンサーがいなくなる損失は大きいと思います。

いずれにしても、新しい出発を祝い、これからの古川さんの活躍に期待したいと思います!


2008/02/22

新国立劇場バレエ団ワシントン公演のレポート

友達で新国立劇場バレエ団ファンの天龍さんが、ワシントン公演を観て来たレポートのエントリをアップしています。とても面白いので、ぜひぜひ読んでみてください。新聞の記事などでは伝わらない観客の反応などがわかります。また、3月19日の新国立劇場報告会ではきっと伝わってこない、プリマの真の実力の話についても!

http://viedance.blog55.fc2.com

2月25日(月)には、この報告会こと、3月19日の新国立劇場バレエ団 春の夕べ(ワシントンD.C.公演報告会および「椿姫」ビデオ上映会)のチケットが発売されます。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000306.html

寺島ひろみさん、まゆみさん姉妹のサイトでは、ワシントン公演の詳細な写真日記が。バックステージやカーテンコール後の写真もふんだんに掲載されています。マトヴィエンコのお茶目な表情が最高!
http://www.t-twins.net/tour/index.html
そして滞在記も!かなりハードなスケジュールだったようですが、二人の一生懸命な人柄がよく伝わってくる素敵な文章です。
http://www.t-twins.net/message/index.html

ひろみさんは、あのトニー・ベントリーさん(元NYCBのバレリーナだった作家)にインタビューされたんですね。記事になるのが楽しみです。


2/23追記※
いろいろな批評を読んだりして思ったのは、新国立劇場バレエ団の大きな問題点のひとつは、ロシアと英国のスタイルが混在していることがあるのではないでしょうか。セルゲイエフ版を上演し、ゲストもザハロワ、マトヴィエンコが中心でコール・ドのそろい方もロシア的。しかしながら、バレエミステレスに小林紀子さんを配置し、脚は決して90度以上には上げない(この点については、どの批評も言及していました)慎ましやかさがある。実際、必要以上に脚は上げるな、ピルエットの回転も抑え目にしろと指導されているようです。新国立劇場バレエ団を観て、上品で美しい、とは思うものの華やかさや情熱に欠ける点が見受けられるのは、その辺りにあるんじゃないかと思いました。
それから、バランシンの本場でバランシン作品を上演したのはあまりにもチャレンジャーでしたね。

マクミランものがなかなk上演できなくなったのも、英国風とロシアスタイルの中途半端な混在がマクミラン財団に嫌われたのかな?なんて思ったりして。

森山開次さんNHKに出演/熊川哲也さん「チューボーですよ!」

2月22日(金)の朝、新作『The Velvet Suite』の公演を控えた森山開次さんがTVに出演します。

NHK総合
2月22日(金)AM8:35~AM9:25
生活ほっとモーニング

http://www.nhk.or.jp/hot/

私も『The Velvet Suite』は見に行く予定なのでとても楽しみです。チケット、即日完売だったんですよね。森山さんはインパル・ピント・カンパニーの「Hydra」で観たのが初めてで、ソロ公演を観るのは今回が初めてなのです。


ついで、ですが、熊川哲也さんが、2月23日(土)23:50~24:20 「チューボーですよ!」
(TBS 全国28局ネット)に出演します。オムライスの回なのだそうです。

※サッカー試合中継の為通常放送時間と異なります。
※放送日時は変更となる場合もございます


2008/02/21

ABTソウル公演

ABTは日本公演が終わったすぐ後に、韓国、ソウルで公演を行います。

世宗大劇場 (ソウル)

2008.7月 31日(木) ~8月 3日(日)

オープニングガラ(GALA)(Double Bill) : 7.31(木) 8pm
ドン・キホーテ : 8.1(金) 8pm/ 2(土) 3pm, 8pm /3(日) 4pm


*ガラ(GALA)(Double Bill) :
VIP 15万ウォン, R 10万ウォン, S 8万ウォン, A 5万ウォン, B 3万ウォン
*ドン・キホーテ :
VIP 20万ウォン, R 15万ウォン, S 10万ウォン, A 6万ウォン, B 4万ウォン

ガラの演目は、
Twyla Tharp/Danny Elfman 新作
Etudes(エチュード)
というダブルビル形式です。ABTによる「エチュード」ってどんな感じなんでしょう。横幅の広い、大きな劇場のようですが、チケット代は日本に比べるとだいぶお得な感じがします。

世宗大劇場 のサイトでは、ジリアン・マーフィとホセ・カレーニョが踊る動画(カスタネットのソロ、ジプシーの野営地でのバジルのソロ、夢の場面、3幕のヴァリエーション)を観ることができます。ホセさまが素敵です。キャストは3月に発表される予定。ポスターにはパロマ・ヘレーラを使っているので、パロマはきっと来ることでしょう。

http://www.sejongpac.or.kr/Performance/ProgramView.asp?pid=grpi2008073116&n_year=2008&n_mon=7&n_day=31

一応英語サイトもありますが、こちらにはまだ情報は何も載っていません。
http://www.sejongpac.or.kr/Eng_ver/


2008/02/19

ナタリア・ベスメルトノワ逝去/熊川哲也復帰

Ballet Talk経由でフィガロの記事を読んだところ、元ボリショイ・バレエのプリマで、ユーリ・グリゴローヴィチ夫人でもあるナタリア・ベスメルトノワが亡くなったというニュースが掲載されていました。

http://www.lefigaro.fr/flash-actu/2008/02/19/01011-20080219FILWWW00380-natalia-bessmertnova-est-morte.php

まだ66歳と比較的若い年齢の死ということで、少々衝撃的です。長いこと病気を患われていたようです。ナタリア・ベスメルトノワは、「ライモンダ」「スパルタクス」「イワン雷帝」「ジゼル」など多くの映像にその姿が残されておりますので、リアルタイムで観ていない方も(私もそうですが)、DVD等ではかなり観ているのではないでしょうか。手を折る癖がちょっと気になりましたが、表現力の豊かなバレリーナで、キャリアも長くボリショイへの貢献度も大きかった偉大な方です。その熱演に心動かされたこともたびたびありました。95年まで現役だったので、本当についこの間までは踊っていたという感じですね。今回の訃報は、ボリショイ・バレエからのリリースです。

ダンソマニにも早速追悼トピックが立っています。
http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?t=3431&sid=596b662b50729b042dad053224e7ac29

ご冥福を心からお祈りいたします。

追記:けいちかさんのサイトより情報をいただきました。ボリショイのリリース(ロシア語)はこちらです。
http://www.bolshoi.ru/ru/season/press-service/news/index.php?id26=838
お別れの会は2月22日(金)11時にボリショイ劇場新館のアトリウムで行われるそうです。

さらに追記:共同通信にもニュースが配信されていました。腎臓疾患だったそうです。朝日、毎日などの全国紙にも訃報は掲載されました。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008021901000648.html

またもう少し詳しい記事がここにあります。
http://breakingnews.nypost.com/dynamic/stories/O/OBIT_BESSMERTNOVA?SITE=NYNYP&SECTION=ENTERTAINMENT

http://news.yahoo.com/s/afp/20080219/en_afp/entertainmentrussiaballetbessmertnova
プリセツカヤと写っている若き日の素敵な写真があります。

**************

K-Ballet Companyのサイトに、今年5月8日から始まる「白鳥の湖」の日程とキャストがアップされ、熊川哲也さんが復帰するようです。また、7月には「海賊」の公演があります。3月の「第九」については、まだキャストが未定です。なお、「白鳥の湖」のキャストには、吉田都さんはキャスティングされていません。ジークフリート役は、熊川さんのほかに清水健太さん、宮尾俊太郎さんがキャスティングされています。また、ロットバルトにはスチュアート・キャシディのほか、遅沢佑介さんがキャスティングされています。輪島拓也さんの名前がないのがちょっと気になります。また怪我をしていた松岡梨絵さん、東野泰子さんがオデット/オディールで復帰しています。今回から、同じバレリーナがオデット/オディールを踊るようになったのですね。

http://www.k-ballet.co.jp/topics/performance.html

熊川さんの復帰は喜ばしいことですが、あまり無理をしてほしくないところですよね。

「21世紀のスターたちガラ」写真/新国立劇場ワシントン公演/ルグリ予定

一週間前のことになってしまいますが、ニューヨークで開催された「21世紀のスターたちガラ」のNew York Timesの記事にあるダニール・シムキンくんの写真がとっても可愛いです。同じく小柄なロベルタ・マルケス(ロイヤル・バレエ)とぴったり合ったカップルに見えますね。このガラを観た方の感想を読むと、「ドン・キホーテ」「レ・ブルジョア」「Moorhuhn」を踊ったダニール君が、そのスーパーテクニックで一番ウケたようです。また日本で観られる機会があるといいなあ。

http://www.nytimes.com/2008/02/13/arts/dance/13cent.html?_r=1&ref=dance&oref=slogin

Gene Schaiavoneさんのギャラリーで、このガラの写真をたくさん見ることができます。
http://www.geneschiavone.com/gallery/album22

ルンキナとニコライ・ツィスカリーゼの「薔薇の死」は、ロシアガラで見たロパートキナとコズロフのとはまったく違ったタイプのようではあるけど、ドラマを感じさせてとても素敵ですね。中村祥子さんは、踊った2作品とも、パートナーとして共演したロナルト・ザフコビッチ振付作品で、同じようなロングドレスなのがちょっともったいない感じですが、西洋人の中に混じっても遜色のないエキゾチックな美しさとプロポーションの良さが伺えます。当初出演予定だったミリアム・ウルド=ブラムが降板して、ラ・シルフィードもルンキナが踊ったようですが、とても愛らしいシルフです。デニス・マトヴィエンコはこのガラに出演してそのままワシントンに移動して、新国立劇場の「ライモンダ」に出演したんですね。

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その新国立劇場の「ライモンダ」のレビューもワシントン・ポストに出ています。写真も3点掲載されています。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/17/AR2008021702367.html

コール・ドの素晴らしさ、設立後10年でこのレベルにまで持っていった牧芸術監督の手腕は絶賛されていますが、やはり牧版「ライモンダ」は、一番美味しいキャラクターであるはずのアブデラフマンの扱いがあまりにも粗末なため、面白くないプロダクションになってしまったのがつくづく残念ですね。「情熱に欠けていた」と評されています。牧先生は、振付や改定はしないで、バレエ団運営に専念された方がよいのでは?運営に関しては、立派にやっておられるようですから。ワシントンで「ライモンダ」が上演されるのは20年ぶりとのことなのですね。寺島ひろみさんは、容姿が美しくテクニックは強靭なものの、だいぶ緊張していたかのように思われてしまったたようで、ちょっと惜しい感じです。でも、さすがに3幕は素晴らしい出来のようでしたね。

しかし疑問に思うのは、アメリカでも大人気のマトヴィエンコを出演させるなら、なんでその旨を宣伝しなかったんでしょうね。全然パブリシティ的な現地の記事を見なかったのですが、現地在住日本人と、日本文化に興味がある人さえ来ればいいと思ったんでしょうか。宣伝目的でなければ、新国立のダンサーを出演させればよかったのに。とはいえ、山本隆之さんは脚の調子が悪いとのことなので、今回出られなかったのが非常に残念です。仕方ありませんね。ほかにジャン・ド・ブリエンヌを踊れる人材がいないというわけですね。

2/19追記:もうひとつレビューを見つけました。バレエ団は絶賛されています。でもマトヴィエンコはちょっと不調だったようですね。
http://www.danceviewtimes.com/2008/02/an-enchanging-r.html

New York Timesにも批評が載りました。美しい「セレナーデ」の写真つきです。アレイスター・マコーリー氏による批評はかなり辛口です。
http://www.nytimes.com/2008/02/19/arts/dance/19kenn.html?_r=1&ref=dance&oref=slogin
初めての海外公演で、かなりダンサーたちは緊張していたようですね。そして、まだ「ライモンダ」という作品の表現が「胎児」に過ぎない、寺島ひろみさんも技術や輝きはあるものの、音楽性が弱く、あまりにも慎重に踊りすぎているとあります。「セレナーデ」にしても正確ではあるけどカンパニー自体の表現の幅が狭いとしています。ニューヨークはNYCBの本場なので、本家「セレナーデ」を目にしている批評家からは辛い点数がついてしまいますね。

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マニュエル・ルグリ公式サイトの予定を見ていたら、いろいろと予定がアップされていました。

パリ・オペラ座では、マッツ・エックの「ベルナルダの家」に出演するほか、いろいろなガラに出演します。「ル・パルク」で来日した後は、6月5日、6日に韓国ソウルで開催されるガラに、ドロテ・ジルベールと参加。マクミランの「マノン」と、キリアンの「ヌアージュ」を踊るそうです。韓国なんて近いから見に行きたい方もいるのでは?

6月、7月の「椿姫」は、まだ出演する日は未定ですが、相手役はデルフィーヌ・ムッサンということで大人のカップルですね。

夏の間はまたイレールさんとの「さすらう若者の歌」やレティシア・プジョルとの「ル・パルク」など、いろいろなガラに出演。とにかく、イレールさんとの共演がめっちゃ多いので、東京のルグリ&イレールファンからすれば垂涎のスケジュールとなっています。

そして気になる東京バレエ団の「ジゼル」への客演ですが、予定として、9月12日、14日が東京、19日が大阪公演だそうです。まだパートナーは未定です。ジゼル役はぜひ小出領子さんでお願いしたいですね。

http://www.manuel-legris.com/actualite.html

2008/02/18

バルセロナ&ミラノから帰ってきました

バルセロナに出張し、帰りにはミラノに一泊して今日の夜に帰ってきました。Mobile World Congressという携帯電話関係のカンファレンスに行ってきたんですが、6万人という参加者、巨大な展示スペースにただただ圧倒されてきました。ふー疲れた。

まだ旅の疲れも残っています。基本お仕事で行ってきたわけですが、幸運にも、リセウ劇場でデボラ・ポラスキー主演の「エレクトラ」、ミラノ・スカラ座でプラシド・ドミンゴ主演の「シラノ・ド・ベルジュラック」の2本のオペラを観てくることができました。オペラ初心者の私にはまさに豚に真珠って感じですが、両方とも素晴らしかったです。

特にドミンゴ!やはり大スターは違う!もう70歳くらいだと思うけど剣を使ったアクションもこなし、豊かなふくらみと味わいのある、素晴らしい歌声。そしてなんと言っても演技力。シラノ・ド・ベルジュラックそのものになりきり、バルコニーでの、クリスティアンに成り代わっての愛の告白シーンの切なさには号泣。もちろん、騎士としての矜持を見せたラストも圧倒的で、感動が押し寄せてきました。一世一代の名演ではなかったのかと。高音があまりない役なので今の彼にも歌えるのでしょうが、ふくよかな声量も、そして繊細な表現力も見事なもの。「トゥーランドット」を完成させたことでしたほとんど知られていないアルファーノの作品ですが、リブレットがまた素晴らしく感動的なのです。もちろんイタリア語フランス語ができないので、ついつい字幕も見てしまいましたが、あの美しい声で、こんな言葉で愛を告白されたらどんな女性の心もとろけることでしょう。

今回はほぼ正面の四階ボックス席で、一列目のロシア人カップルが退屈して帰ってしまったので、最高の眺めと音を堪能しました。楽日だったのでカーテンコールはいつまでも続き、降って来た花をドミンゴは拾ってオーケストラへ捧げていました。本当に嬉しそうなドミンゴは、ファンのハートの掴み方も完璧。実に感動的でした。観客に心から愛されるスターだなとしみじみ思いました。

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これはリセウ劇場

てなわけで、また後日、オペラの感想は書くと思います。ヨーロッパのオペラハウスは実にゴージャスでため息が出るほど美しいですね!

不在中にたくさんコメントをいただいて、申し訳ありません!ぼちぼちレスをつけていきます。

2008/02/10

ABTとボリショイのチケット取り/2/9マラーホフの贈り物Aプロ初日

今日は朝10時からボリショイとABTのジャパンアーツ夢倶楽部会員向け先行予約だったのですが、朝10時からかけ始めて、ようやくつながったのがなんと4時半!こんなに長い時間延々とかけ続けたのは初めてかもしれません。いつもは夢倶楽部会員は電話はすぐにつながるのに。Webで買うと好みの席が出てこないし手数料かかるからと思って、絶対に手に入れておきたいチケットだけ昨日Webで買ったのですが、丸一日つぶれてしまいました。電話を切ったら、もう「マラーホフの贈り物」に行かなくてはならない時間で。途中で食事をしたりお風呂に入ったり、洗濯もしていましたが、家人にも手伝ってもらい、電話3台を使ってかけたのに、こんなに苦労させられるとは。せめて、ABTとボリショイの発売日をずらしてほしかったです。もうぐったり。明日から出張なのに、おかげで全然準備ができず、マラーホフから帰ってきてから始めました。


明日も早いのでちゃんとした感想は書けませんが、とにかくマーシャことマリーヤ・アレクサンドロワに惚れた夜でした。彼女のカルメンのカッコいいことといったらもう!腕や脚がそれぞれ意思を持った生き物のように自在に動き、強烈な磁力を持っていました。その存在感に、ほかのすべての出演者がすっかり霞んでしまったかのようでした。黒鳥のパ・ド・ドゥでの素晴らしいテクニックと押し出しも本当に素敵でしたね~すべてシングルでまとめた、正確この上ないフェッテ(ときどき腕をアンオーにして回る)も素晴らしかったです。グリゴローヴィチ版の、ほとんど片脚で立ったまま回転する難しいヴァリエーションも、あまりの完璧さにしびれました。もちろん、パートナーのフィーリンも相変わらずノーブルな中に色気があって、ここでもまたしびれてしまいました。フィーリン、「カルメン」のときの前髪を下ろした姿がボクちゃんな感じでとても可愛く、さらにピンク地に水玉という衣装は、お仕置きされているのかと思うほどでしたが。胸のすくような気持ちよいこ踊りを見せてくれるの二人に勝てる人はそうそういません。そういうわけで、ボリショイのチケットはもちろん、マーシャ&フィーリンペア中心で取っています。明るい小川、白鳥の湖、ドン・キホーテと。

マラーホフの牧神は、いかにもマラーホフらしく、両性具有的で美しく妖しく、繊細な牧神でした。いかにも男性的な色気のあるジュドとはまったく別物でした。ルルベで立っているときにちょっときつそうだな、と思ったり、完全には回復していないと思ってしまったところもありますが、でもマラーホフの魅力は十分味わえました。今回出張が入ってしまって一回しか見られないのが残念です。このたび加えられた新作「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」は、クラウス・ノミによる少々キッチュで大仰な音楽が美しくスタイリッシュでした。そして、ロナルド・ザコヴィッチ(ミラノ・スカラ座の大晦日ガラに出演していた方ね)による振付も、マラーホフのしなやかな肉体や滑らかなムーヴメントの魅力が発揮できるようなもので、よかったと思います。途中で上着やズボンを脱ぐところがなんだか可愛かったです。そこが、"再生"というテーマにつながるのでしょうね。

それにしても、マラーホフ、以前にもましてほっそりとしてしまいましたね。「白鳥の湖」では、ずいぶん高々とポリーナをリフトするところがあって、大丈夫なのかと心配になりましたが、リフトそのものは美しく安定感がありました。白鳥の2幕にドラマ性を加えられるところが、さすがマラーホフで、2幕だけでサポート中心なのにかなり満足度がありました。

ズデネク・コンヴァリーナとヤーナ・サレンコのペアはとても好感度が高かったです。最初予定されていたゼンツァーノの花祭りではなく、エスメラルダに演目が変わってしまいました(AプロとBプロが入れ替わった)。サレンコはテクニックもあるし、小柄で可愛いタイプ。キトリタイプではない感じですが、バランスがとても得意みたいだし、エスメラルダのタンバリン使いもよかった。背中も柔らかいみたい。コンヴァリーナはバレエフェスティバルのときにはあまり印象に残らないタイプでしたが、今回かなり印象がよかったです。まずサポートがとても上手。それから、回転系も達者だし、一生懸命な感じが誠実そうです。今後化ける予感がします。

イリーナ・ドヴォロヴェンコとマキシム・ベロツェルコフスキーの美男美女コンビは、「スプレンデッド・アイソレーション」が素敵でした。去年ゴールデン・バレエ・コースターで同じABTのマリア・リチェットと久保紘一さんが踊った、とても美しい作品。やはりイリーナはドラマティック・バレリーナなので、ミニマムさ、静謐さがありながらも、ストーリー性を感じさせるこの作品の中の、絶対的な美の体現者としてふさわしい感じです。またマキシムとの二人の息の合い方が完璧で、すごく切ない思いをさせられました。長い長い白いスカートが二人を隔てる幕のようになっていながら、最後には優しく二人を包むというコンセプトが好きです。「くるみ割り人形」はまさに磐石で、イリーナのキラキラした華やかさに勝てる人というのもなかなかいないだろうなって思いました。アレクサンドロワのような派手さや押し出しはないけど、これもまたクラシック・バレエの真髄と。やっぱり彼女は大好きです。マックスの王子様ぶりも完璧。

ポリーナちゃんは、年末にミラノで黒鳥を観たときにはあまり色っぽくないし音楽性も足りなくて体育会系の踊り手と思ったのですが、白鳥はとても儚く美しくて素敵でしたね。去年のフォーゲルとの時よりずっとよかったです。生身の感情をかなり出している白鳥なのですが、たまにはそういうのもいいですよね。「アレス・ワルツ」は以前中村祥子さんが踊るのを観ましたが、祥子さんのほうが、ニュアンスを出すのが上手だったと思います。

というわけで、白鳥の湖が2幕丸ごと入れているということもあり、上演時間がかなり長かったです。6時に始まり、終わったら9時20分。外は雪が降っていました。ちょっと疲れましたが、出演者みなとても魅力的で、本当に楽しめました。Bプロも楽しみです。

――第1部――
「牧神の午後」
牧神:ウラジーミル・マラーホフ  ニンフ:井脇幸江
ほか東京バレエ団

「エスメラルダ」
ヤーナ・サレンコ  ズデネク・コンヴァリーナ

「カルメン」
マリーヤ・アレクサンドロワ  セルゲイ・フィーリン

「くるみ割り人形」
イリーナ・ドヴォロヴェンコ  マクシム・ベロツェルコフスキー

【休憩】

――第2部――
「白鳥の湖」第2幕 〈全編〉
オデット:ポリーナ・セミオノワ  ジークフリート王子:ウラジーミル・マラーホフ
悪魔ロットバルト:木村和夫
ほか東京バレエ団

【休憩】


――第3部――
「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
マリーヤ・アレクサンドロワ  セルゲイ・フィーリン

「アレス・ワルツ」
ポリーナ・セミオノワ

「スプレンディッド・アイソレーション」
イリーナ・ドヴォロヴェンコ  マクシム・ベロツェルコフスキー

「ドン・キホーテ」
ヤーナ・サレンコ  ズデネク・コンヴァリーナ

「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」
ウラジーミル・マラーホフ

2008/02/09

世界遺産で舞う マイヤ・プリセツカヤ with 梅若六郎 ~永遠に咲く花の如く~

2月10日より17日まで、出張で不在にします。バルセロナで開かれる見本市に行って、帰りにミラノに寄って帰ってきます。初めてのバルセロナですが、その見本市には5万人くらい人が訪れるらしく、びっくりするほどホテルは高いしエアはなかなか取れなかったし、スケジュールはびっしりで、自由時間はほとんどないし。
その間、更新やレスができませんのでご容赦ください。

*****

さて、イープラスからこんなお知らせが来ていました。

世界遺産で舞う マイヤ・プリセツカヤ with 梅若六郎 ~永遠に咲く花の如く~

特別ゲストに日本舞踊宗家藤間流家元、歌舞伎舞踊振付師【藤間勘十郎】、ヴァイオリン【中島慎子】、パーカッション【仙波清彦】を迎え、世界遺産の上賀茂神社 細殿で行われる、そうです。

2008/3/30(日) 18:30開演 全席指定:\12,000
演目(予定):
<能>羽衣
<バレエ>アヴェ・マイヤ(グノー作曲バッハ編曲「アヴェ・マリア」よりM.ベジャール振付)
<ソロ演奏>シャコンヌ(J.S.バッハ作曲「パルティータ2番BWV.1004」より)
<舞>「ボレロ」より(ラヴェル作曲)

http://eplus.jp/sys/main.jsp?prm=U=14:P2=022128:P5=0001:P3=0001:P6=001:P1=0130

京都でもっとも古い神社である世界遺産、上賀茂神社で能やバレエが見られるというのは、きっと素敵でしょうね。公演一ヶ月半前の売り出しというのはなんだかぎりぎりな感じですが、80歳を過ぎてもなおとても美しいプリセツカヤも見られることですし、貴重な機会です。ベジャール振付の「アヴェ・マイヤ」は扇子を使っていたり、どこか"和"を思わせる作品なので、神社の荘厳な雰囲気にも合いそうです。

そういえば以前新国立劇場で「『ジゼル』~能とバレエによる~」と題して、バレエの「ジゼル」と「新作能「ジゼル」」の二本立てを上演したことがありましたね。能は今まで3回くらいしか見たことがありませんが、とても面白かったので、この公演を見逃したのはとても残念でした。

2008/02/07

アメリカン・ダンス・アイドルとダニー・ティドウェル

ABTにダニー・ティドウェルというアフリカ系の若手ダンサーがいました。2003年春に入団し、コール・ドの所属ではあったものの、ほかのダンサーたちよりも飛びぬけて技術に優れており、またルックスもとても精悍で良いので、2003年秋のシティ・センターシーズンにおいても、ちょっと目をつけていたほどです。2002年にジャクソン・コンクールで銀賞を受賞。2004年の秋のシティセンターシーズンでは「薔薇の精」を踊り、また2005年のABTの来日公演では「ライモンダ」でベランジェ役、「ドン・キホーテ」でも闘牛士の一人としてひときわ鮮やかな跳躍を見せてくれて素晴らしいダンサーだと思ったのです。「白鳥の湖」のナポリの踊りでも、ひときわ鮮やかなピルエット8回転やトゥールザンレールを見せ、しかも身体能力だけでなく、エレガンスもありました。その前にも、ラスタ・トーマスが日本で開いたガラに、ダニーは出演していました。二人とも、ワシントンのキーロフ・アカデミーでバレエを学んでいて、以来ずっと親しいようです。

しかし、2005年のMETシーズンでABTを見に行ったときに、彼が退団するらしいということを常連の方から聞きました。来日公演が最後とのことです。「プリンシパルにもなれるかもしれない逸材なのに」と惜しむ声をたくさん聞きました。東京公演の後、大阪までオールスター・ガラを見に行ったときに、ダニーは「シンフォニエッタ」に出演していました。ABTを退団した後は、デズモンド・リチャードソン率いるComplexionsに入団すると聞いていましたが、1年くらいで、公式サイトから名前が消えていました。雑誌を発行したり、ラスタ・トーマスのサイトで彼の名前を時々見かけていたので、元気なんだろうなと思っていたのですが。

そうこうするうちに、また彼の名前を見るようになりました。ダンス・コンペティション番組「アメリカン・ダンス・アイドル」(So You Think You Can Dance)の参加者の一人として、大きな話題になっていたようです。彼が勝ち上がっていく様子を追いかけていたら、何回か振り落とされる危機に陥りながらも、最終的には2位という素晴らしい成績を残すことができ、全米のアイドルになっていたのですね。

http://www.foxjapan.com/tv/bangumi/dance_Idol/bios/dancer04.html

気になっていたクラシックバレエのダンサーが、このような形で再びスポットライトを浴びるようになったということはとても嬉しいことです。バイオグラフィーを読むと、Complexionsを離れた後、ダニーはすっかりダンスに対する情熱を失っていたところ、兄弟であるパシャが同じ番組のシーズン2に参加して踊っている姿を見て、再びダンスをやり始めようと思ったようです。そして、ダンスに対する愛を再発見したとのこと。これからの彼の活躍、見逃せませんね!アメリカン・ダンス・アイドルのシーズン3の放映は先日終わってしまいましたが、また近いうちに再放送がFOXチャンネルで行われると思います。

ってわけで、彼がABTのダンサーたちと取り組んだダンス&写真集のプロジェクト、Moving Still の写真集を買ってみました。ABTのコール・ドのケネス・イースターとアレクサンダー・ハムジ、そのほか数人の若手ダンサーが参加していますが、モノクロームの写真からも、躍動する肉体が感じられてとても素敵です。

ABTでのダニーの姿は、アンヘル・コレーラとジリアン・マーフィが出演している「白鳥の湖」のDVD1幕でも観ることができます。

Moving Still: A Life PerformanceMoving Still: A Life Performance
David Benaym; Roger Moenks; Laurent Alfieri

e-maprod Inc. 2005-05
Sales Rank : 976236

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2008/02/06

ラトマンスキー、NYCBの常任振付家に?/新国立劇場『ラ・バヤデール』キャスト変更

先日、アレクセイ・ラトマンスキーがボリショイ・バレエの芸術監督の契約を更新しない意向というニュースをお伝えしました。ラトマンスキーは、このたびNew York Timesのインタビューで、今年末の退任について、そしてNYCBの常任振付家という地位をオファーされ、現在交渉中であることについて、語っています。NYCBの芸術監督ピーター・マーティンスも、ラトマンスキーの件について公式にオファーを出したことを表明しています。

http://www.nytimes.com/2008/02/05/arts/dance/05ball.html?_r=2&ex=1359954000&en=1bd63e1cc654340f&ei=5088&partner=rssnyt&emc=rss&oref=slogin&oref=slogin

ラトマンスキーによれば、芸術監督でいることは、自分の時間の3分の2以上を必要とすることであり、振付を行うのが困難であるのが契約を更新しない理由であるとのこと。現在の任期が2008年末までなのだそうです。現在、ラトマンンスキーは、ディアナ・ヴィシニョーワのプロデュース公演Beauty In Motionで新作Pierrot Lunaireを振付けるために、ヴィシニョーワとともにオレンジカウンティに滞在しています。

ちょうどクリストファー・ウィールダンがNYCBの常任振付家を退任することから、ラトマンスキーに白羽の矢が当たったということのようです。しかも、ラトマンスキーは、“Russian Seasons”をNYCBのために振り付けし、「ミドル・デュエット」がレパートリー入りしただけでなく、5月にもうひとつNYCBのために新作を振り付ける予定です。ニーナ・アナニアシヴィリのグルジア国立バレエは、ラトマンスキーの“Bizet Variations” と“Dreams About Japan” を 2月27日よりブルックリンのブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)で上演します。かくのごとく、振付家としては引っ張りだこというわけですね。“Dreams About Japan”ってどんな作品なんでしょう。(←以前ニーナは日本でも踊ったことがあるようです)

なお、ヴィシニョーワの「Beauty In Motion」のNY公演ですが、ディスカウントチケットのお知らせがNew York Timesから送られてきました。売れていないのかしら?コンテンポラリー作品中心だからでしょうか。キャストがヴィシニョーワのほかは、デズモンド・リチャードソン、イーゴリ・コールプ、ミハエル・ロブーヒン、アレクサンダー・セルゲイエフとなかなか魅力的です。以前はヴィシニョーワがちょっと苦手だったのですが、何回も見ているうちに、彼女の独特の美意識やこだわりがなんとも魅力的に見えてきました。NYにいれば観に行きたいところですが。

それにしても、ボリショイの次期芸術監督は誰になるんでしょうか?現役ダンサーの有力候補としては、ニコライ・ツィスカリーゼの名前もささやかれているようですが、ダンサーとして頂点にいる間は、芸術監督業ではなくダンサーに専念して欲しいなって思います。自分の時間の3分の2を芸術監督としての仕事に取られるということですから。今は踊る芸術監督も本当に多いですよね。ニーナ・アナニアシヴィリ、マラーホフ、ルジマトフ、ゼレンスキー、アンヘル・コレーラなどなど・・。まだまだニカさんの踊りはいっぱい観たいですし。

****

新国立劇場『ラ・バヤデール』のキャスト変更のお知らせがありました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000302.html

5月21日のソロル役が山本隆之さんから中村誠さんに変わりました。山本さんは「都合により」出演できなくなったとのことです。怪我ではないようですが、理由をちゃんと発表してくれないと要らぬ憶測を呼ぶと思います。キャスト変更による払戻も行わなくなったことですし、変更の連絡はNBSを見習い、当然ハガキ等で行うべきと思いますが。また会場にはきちんと降板理由を掲示すべきでしょうね。NBSや光藍社は診断書を掲示していますよ。

その日のチケットを買っていたので、残念です。でも中村誠さんも、ラインがとても美しくて好きなダンサーなので、彼のソロルを楽しみにすることにします。

追記:新国立劇場より封書が届きました。「山本隆之は、来る5月に足の集中治療に専念する事になりました。これに伴い、ソロル役は中村誠に交代いたします」とのことです。3月27日(木)の「カルメン」には予定通り出演するそうですが、6月29日(日)に予定されている「白鳥の湖」に関しては治療の経過が順調ならば出演するとのこと。サイトの方にも、同じことを書けばいいのに、と思いましたが、封書を送ったのは対応としては正しいと思います。「白鳥の湖」の郵送申し込みが2月5日締め切りだったので、山本さんの回を買った方は心配でしょうね・・・。山本さん、順調に良くなりますよう、お祈りしています。

2008/02/05

2/3 マリインスキー・オペラ「イーゴリ公」

プロローグと3 幕

指揮 : ワレリー・ゲルギエフ
演出 : エフゲニー・ソコヴニン
2001年版演出 : イルキン・ガビトフ
音楽監修(2007年) : ワレリー・ゲルギエフ
「ポロヴェッツ人の踊り」 振付 : ミハイル・フォーキン
装置・衣裳 : ニーナ・ティホーノワ/ニコライ・メルニコフ
装置復元 : ヴャチェスラフ・オクネフ
照明 : ウラジーミル・ルカセヴィチ
首席合唱指揮 : アンドレイ・ペトレンコ
楽曲指導 : イリーナ・ソボレワ

出 演
イーゴリ公 (プチーヴリの公) : アレクサンドル・モローゾフ→(セルゲイ・ムルザーエフから変更)
ヤロスラーヴナ (その妻) : エカテリーナ・シマノーヴィチ
ウラジーミル (彼らの息子) : セルゲイ・セミーシクル
ガリツキー公 (ヤロスラーヴナの兄) : ワディム・クラーヴェツ
コンチャーク汗 (ポロヴェッツ人の長) : セルゲイ・アレクサーシキン
コンチャコーヴナ (その娘) : ズラータ・ブルイチェワ
オヴルール (キリスト教徒のポロヴェッツ人) : ワシーリー・ゴルシコーフ
スクーラ (クドーク弾き) : グリゴリー・カラショーフ
エローシュカ (クドーク弾き) : アンドレイ・ポポーフ
ヤロスラーヴナの乳母 : エレーナ・ソンメル
ポロヴェッツ人の娘 : タチアーナ・パヴロフスカヤ
【ポロヴェッツ人の踊り】
: ポリーナ・ラッサーディナ
:イスロム・バイムラードフ
:エレーナ・バジェノワ
:ゲンナジー・ニコラーエフ

大雪の中の公演だったけど、多分金曜日よりは客の入りが良かったと思う。とはいっても、2階サイドや、3階正面の両端は空席が目立っており、ここからD席、という8列目以降だけがびっしりと埋まっていた。そして私は、最後列のひとつ前(最後列の後ろにまだ補助席があり)。正面なので見やすいけど、やっぱり遠いなあ。バイムラードフさんが出ると聞いていれば、無理してでももう少し良い席にしたのに。ジャパンアーツのバカ!(しかも、ちょっと調べてみると招待で見に来ていた人がずいぶんいたようである)

イーゴリ公役が、土壇場で変更。初日、二日目を歌っていたセルゲイ・ムルザーエフが急病につき、アレクサンドル・モローゾフに交代。初日にガリツキー公役で出演していた人だ。ガリツキー公がちょっといまいちだな、と思っていたのですごく残念。実際、イーゴリ公として出演していても、声量が足りず、声の艶もない。悪役のガリツキーなら十分なんだけど、イーゴリ公にはちょっと力不足感あり。反面、ヤロスラーヴナ役のシマノーヴィチが初日よりもずっと安定していて、圧倒的な力量を見せてくれた。どんなにオーケストラが鳴らしていても、合唱がかぶさっても絶対に負けることのない、豊かな声量と突き刺さるような高音。不安にさいなまれながらも、妃らしい気丈さと毅然とした部分を持っているヤロースラーヴナの心境もよく表現できており、素晴らしかった。最後のカーテンコールでも、一番大きな拍手やブラヴォーを受けていた。ウラジーミルのセミーシクルは1幕では不調だったけど、後半は挽回していて、これぞテノールという甘く美しい声を聴かせてくれた。 オヴルールのワシーリー・ゴルシコーフも上手な歌手だ。スター主義ではなく平均点が高い劇場なのだけど、やっぱりシマノーヴィチが突出して良かったと思う。それと、分厚いコーラスの圧倒的な迫力も素晴らしかった。

それから、1幕の前にある長い前奏、この演奏が素晴らしい。金管が力強くて大地の鼓動を感じさせ、思わず聞き惚れる。初日よりもよく鳴っており、心は中世ロシアへと飛んでいく。NHKの3階は、音を聴く分にはそんなに悪くないなあ、と思った。でもやっぱり次イーゴリ公が来るときにはもっと良い席で観なくちゃ。

ポロヴェッツ人の踊りは初日と同じキャスト。若干バイムラードフは初日の切れ味が鈍っていた感じもしたが、それでも、やっぱり彼は凄い!あのハイパー・テンションを維持し続け、コーダでも、飛び蹴りのようなジャンプを3回連続して跳び、続けて高い高いパドシャ2回。見得を切る表情は、完全に中央アジアの草原にいるポロヴェッツ人のものだった。スリムなのに身体にばねがあり、ゴムマリのように着地しては弓を持ってポーズ。至芸といえよう。妖艶でしなやかなアンナ・バジェノワ、そして背中の柔軟性と達者な技術のポリーナ・ラッサーディナ。加えて美しいバレリーナたち、勇壮な男性ダンサーたち。大興奮の坩堝で、拍手とブラヴォーはいつまでも止まなかった。またそう遠くない将来に上演してほしいものだ。(次回の来日は、カーテンコールの看板によると2011年とのこと)オペラと一緒では難しいのなら、ぜひマリインスキー・バレエのガラででも。

違和感を感じた「イーゴリ公」の構成だけど、よく考えてみると、前半はポロヴェッツ人の野営地、後半はイーゴリ公が去った後の彼の故郷という対比になっているのが理解できた。物語を語るというよりは、一つ一つのシーンを描くことに重点を置いている作品であるということも。それでもやっぱり、イーゴリ公の逃亡のあたりや、ガリツキー公の狼藉が長くてダレてしまうのが難点。ボロディンが完成させることなく亡くなってしまった未完成作品だから仕方ないのか。でも、印象的な旋律はいくつもあるし、ポロヴェッツ人の踊りを抜きにしても良い作品なのだと思う。それを、実力を蓄えた歌劇場、さらにはゲルギエフの手によるレベルの高いオーケストラ、さらには世界一のマリインスキー・バレエが「ポロヴェッツ人の踊り」を踊るのだから、満足度はやっぱり高かった。疲れたけどね。

2008/02/04

2/2 バットシェバ舞踊団「テロファーザ」

この土日は、土曜日にサントリーホールで井上道義指揮の日本フィル、シベリウス交響曲1番と7番、横浜に移動して神奈川県民ホールでバットシェバ舞踊団、そして日曜は雪の中再びNHKホールでマリインスキー・オペラの「イーゴリ公」と大忙し。すっかりぐったりしてしまい、体調も良くないのにこんなにぎっしりと予定を入れるのではなかったと大いに反省。

イスラエルのバットシェバ舞踊団、そして芸術監督であり振付家のオハッド・ナハリンといえば、なんといっても有名なのが、椅子を並べてダンサーたちが一人ずつジェスチャーゲームを繰り広げては服を一枚ずつ脱いでいく「アナフェイズ」や、その変奏曲である「マイナス16」。ってわけで、この大傑作と同等のインパクトを期待すると、ちょっと肩透かしかも。でも、「アナフェイズ」の存在のことを忘れて見れば、とっても面白い舞台だったのではないかと思う。

会場に入ると、舞台の上には4枚のスクリーンがあり、開演時刻までのカウントダウンがデジタル表示で出ている。0になると、「こんばんは、レイチェルです」というゆっくりおっとりした日本語での挨拶と、携帯電話を切ってください云々の注意事項。しかも、このレイチェルさんは、作品の中でも大いに活躍するってワケ。

そしてダンサーたちが舞台の上に横一線に並ぶように登場し、前屈して手を床につけた状態で腰を動かしたりというユーモラスな動き。公演の宣伝ビジュアルでは、派手な柄入りのユニタードを着用していたけど、実際には、みんなバラバラの、でもカラフルでキュートそしてスポーティな服を身に着けている。短パンの人が多かった。それからみんな立ち上がっていると、何人かの女性ダンサーたちが、自由奔放にガクガクと動き出す。イスラエルはクラシックバレエの伝統がないため、クラシックバレエを通過しているダンサーは少ないとのことだけど、ダンサーたちはみんな身体能力に優れていて、特に足腰がすごく強い感じ。時々、ものすごくかっこいい動きをする人がいる。後方4枚のスクリーンの前にダンサーが一人ずつ立ち、映像を切り替えていく。スクリーンの前に小型カメラがあるようで、ダンサーたちの表情が映し出されている。かと思えば、足だけを映していたり。

この作品では、群舞を重視しているということなのだけど、群舞といってもクラシックバレエのように一糸乱れず、というのとは対照的で、一人一人のダンサーの個性が際立つような、力強く、奔放でエネルギーが放出されるようなダンス。さまざまなフォーメーションで動いてみたり、一斉にプリエの動きをしたり。数名ずつのグループで踊ってみたり、輪の真ん中で一人が踊ったり。隊列のように建っているダンサーの間を縫うように動いていた日本人のダンサー、すごいかっこよかった(島崎麻美さんかな?)。てんでバラバラに踊っているのに不思議な統一感があったり。で、ダンサーたち、本当に踊っていて楽しくて楽しくて仕方ないという幸福感が漂っていた。踊ることって、まさに自己表現であり、幸せであり、生きているってことなんだな~って思わせる。

音楽もロックや民族音楽などいろいろな種類のものが使われていて、ブルース・スプリングスティーンの歌に併せたダンスはしびれるほどスタイリッシュだったし、音楽に限らず、雨だれのような自然の音や電車の音などのノイズもあり。

「マイナス16」も観客参加型の作品だったのだけど、今回もそのような仕掛けがあった。さきほどのレイチェルさん(なかなかかわいらしい女性)がスクリーンの前に立ち、客席の客に向かって、手を動かすように振りの指示が行われる(レイチェルさんの言っていることは日本語に吹きかえられている)。まずは手をまるく動かしてください、ひじから先を動かしてくださいといった単純なことから、次は右手はこうして、左手はこんな動きをしてください、と少しずつ複雑になり、頬に手を当てて、いとしい人の事を思ってください、とか銀行口座のことを考えてください、なんて指示になる。ダンサーたちも、同じように指示に従っているのだけど、日本語を理解していないのに、ちゃんと指示通りに動いているのがすごい。作品の最後に、今度は観客を立ち上がらせ、席で踊ってくださいと言われる。立ち上がるところまではみんなやるんだけど、踊っている人は半分いたかな~。日本人ってこういうの苦手な人が多いみたい。でも、椅子を並べて、その前に立ち、ものすご~く楽しそうに踊っているダンサーたちに触発され、自分たちも踊り始めるとこっちもとても楽しい気分になる。ダンサーたちは、ほとんど踊り狂っているってくらいの激しい、身体の関節がいったいどうなっているのかな、って思うほどの動きを見せている。スクリーンには、とっても幸せそうに、楽しそうに踊っているときのレイチェルさんの顔が映し出されている。

ラストは、一列に並んだダンサーたちが後ろを向いて、いっせいに一歩ずつ下がっていく。ダンサーたちが消えていくと、ストロボの点滅する中、一人の男性ダンサーがふわりふわりと舞っていて、デヴィッド・パーソンズの「コート」みたいにトリックで空を飛んでいるみたいに見える。そして並べられた椅子の上をぴょんぴょんと跳んでいる女性ダンサー。

ダンスすること、というのはどんなことなのかを理屈ではなく身体感覚で観客に感じさせるという試み。この路線を突き詰めていくと、とてつもないものができていくんじゃないかという予感がする。ダンスというものの持つ力、可能性を感じる。

カーテンコールにオハッド・ナハリンが来るかな、と思ったけど姿がなかったのが残念。稲尾芳文さんもいなかった。でも一人一人のダンサーが、みんなそれぞれ違った独特の魅力があって素敵だった。若い人が多い。足腰が強い人が多いので、下半身がすごくしっかりしている体型。表情がとても豊かで、一人一人の個性が確立されている。

いや~面白かった。でも、体力がちょっと弱っていたので、もっと体調が万全のときに見ればもっと楽しかったんじゃないかと思う。お客さんの入りもとても良くて県民ホールの1階は完全に埋まっていたし、反応も良かったみたいだから、また近いうちに来てくれないかしら。そういえばDANZAのインタビューで、イーゴリ・コールプもイスラエルのダンスシーンにとても興味があると言っていた。

ひらづみ」さんのところで、イラスト入りの詳細なレビューがあるので、これを見てみるとどんな感じなのか良くわかると思う。
http://d.hatena.ne.jp/sdt/20080202

2008/02/03

DVD「マリインスキー劇場のジルヴェスター・コンサート」New Year's Eve in Saint Petersburg

指揮:ワレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)
演奏:マリインスキー劇場管弦楽団
照明:ウラジーミル・ルカセーヴィチ

演目
「眠れる森の美女」抜粋
音楽:P.I. チャイコフスキー/振付:マリウス・プティパ
改訂:セルゲイ・ヴィハレフ/美術:Matvei Shechkov
衣装:Ivan Vsevolozhsky


オーロラ姫:エカテリーナ・オスモールキナ
デジレ王子:アンドリアン・ファジェーエフ
ダイアモンドの精:ヴィクトリア・テリョーシキナ
金の精:ヤーナ・セリーナ
銀の精:マリーヤ・シリンキナ
サファイアの精:ダリア・スホルーコワ
リラの精:エカテリーナ・コンダウローワ
白い猫:クセーニャ・オストレイコフスカヤ
長靴を履いた猫:アントン・ルコヴキン
フロリナ王女:ユーリャ・ボリシャコワ
青い鳥:アントン・コールサコフ
カラボス:イスロム・バイムラードフ
フロレスタン王:ウラジーミル・ポノマリョフ
王妃:エレーナ・バジェーノワ

「瀕死の白鳥」
音楽:カミーユ・サン=サーンス/振付:ミハイル・フォーキン
ウリヤーナ・ロパートキナ

歌劇「ランスへの旅(Il Viaggio a Reims)」フィナーレ
音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ
出演:マリインスキー劇場アカデミーの若手アーティストたち

2007年の大晦日にはミラノ・スカラ座でチャイコフスキー・ガラを観たのだけど(これもDVD化される予定)、2006年の大晦日に開かれたマリインスキーのジルヴェスター・コンサートがDVD化されたと言うので買って観てみた。最後はドレスアップした出演者でシャンパンで乾杯、ってところはとてもよく似ている。

「眠れる森の美女」の3幕と「瀕死の白鳥」だけで1枚のDVDにするにはあまりにも短いのでは、と思ったけれどもバレエの方も大変充実していたし、55分にもわたる映像特典の内容がとても良くて、値段分のお値打ちは十分あったと思う。

ゲルギエフの指揮による前奏曲が流れ、素晴らしい演奏に合わせてサンクトペテルブルグの美しい街並みや人々の暮らしの一端が映し出される。これを観て、いつかサンクトペテルブルグに行ってみたい、と思う人も多いのではないかしら。水のある街というのは(ハンブルクもそうだけど)本当に素敵。

「眠れる森の美女」3幕

「眠れる森の美女」は3幕だけでなく、オーロラ姫の目覚めから始まる。ガラとはいってもゴージャスな舞台装置が用意されていてため息が出るほど。オーロラ姫が眠るベッドへと駆けていく王子はファジェーエフ。縦ロールの長い巻き毛のカツラをかぶっていてひえ~と思うけど、ファジェーエフのような麗しい絵に描いたような王子様だからこそ、このカツラ姿もなんとか見られる。この髪型で3幕も踊ったらどうしようと思ったけど、さすがにそれはなかった(笑)

3幕も、ファジェーエフの完璧な王子様にノックアウトされる。エレガントで透明感があって、笑顔が優しく爽やか。エスコート振りも堂に入っている。アダージオのときにオーロラを受け止めようとするポーズに頼りがいがあり、素敵なことこの上なし。ヴァリエーションも軽やかで品があり、マネージュでもキレイに伸びた脚が美しい。ファジェーエフ以上に踊りもヴィジュアルも王子らしいダンサーって存在していないでしょう、きっと。

オーロラはエカテリーナ・オスモルキナ。大晦日のガラの主役を踊るほどの格のダンサーではないと思うけど、丁寧な踊りで好感度は高い。上半身の動きが柔らかく非常に美しい。ただ、大一番であったので緊張していたようで、軸足がすこしぶるぶる震えているのがわかってしまった。映像ってこういう点、残酷。多分実際のステージを見ていたら気がつかなかったと思うけど。主役を張る存在感をもう少しつけたら、プリンシパルになれる逸材であることは感じさせる。あたりまえだけど、去年のボリショイ&マリインスキー合同ガラでファジェーエフ相手に眠りを踊ったソーモワよりはずーっと良い。

DVDのジャケットや、本編の映像クレジットでフロリナ役はダリア・パヴレンコと書いてあるんだけどどう見てもパヴレンコではない。マリインスキーのプレイビルやBallet Talkのフォーラムを見ると、ユーリャ・ボリシャコワとのこと。とても愛らしいフロリナ姫。青い鳥はアントン・コルサコフなんだけど、この役を踊るにはちょっと(かなり)太りすぎなのではないかと思う。足先などはもちろんとてもきれいなんだけど、とっても重そう。

あまり踊らない役だけど、リラは最近とても気になるエカテリーナ・コンダウローワ。長身赤毛の美女で、4月にNYで観る「シェヘラザード」でゾベイダを踊るというから楽しみ。4人の宝石の精のキャストもなかなか豪華だけど、やはりダイアモンドの精のテリョーシキナは別格。ものすごい貫禄があって、とっても正確、アカデミックな踊りを見せてくれる。真ん中で踊っても誰にも負けない存在感の持ち主。いずれにしても、宝石4人は粒ぞろい。

最近は「眠り」はディヴェルティスマンを端折る傾向が強いけど、今回は人食い鬼と親指小僧、あかずきんちゃんと狼、シンデレラと王子など、いっぱい登場する。白い猫役のクセーニャ・オストレコフスカヤがもうめちゃめちゃ美人。それと親指小僧たちはたぶんワガノワの生徒さんたちなんだと思うけどすごく可愛い。シンデレラを追いかける王子が、冗談みたいな王様の冠だったのですごく笑えた。

ヴィハレフ復元のこの眠り、美術や衣装が豪華なんだけどセンスは、ちょっと趣味が良いとは言いがたい感じ。王子はハーフスパッツのようなものを穿いているので、せっかくのファジェーエフの美脚の魅力が生かされていない。オーロラの衣装が、濃いグリーンというのも変わっている。女性陣はオーロラとダイヤモンドの精以外は、カールのあるカツラ着用。よく眠りで使われる白髪のようなカツラよりは全然マシとは思うんだけど。

「瀕死の白鳥」
「眠り」のパ・ド・ドゥが終わると通常はアポテオーズとなるはずだけど、突然暗転し、ゲルギエフがマイクを持って「スペシャル・サプライズがあります」とアナウンスすると、サン=サーンスのメロディが流れ、暗闇から後ろ向きにパ・ド・ブレするロパートキナ。ロパートキナの瀕死の白鳥は、ヴァリエーションレッスンのDVDやボリショイ・マリインスキー合同ガラなどで何回も目にしているのだけど、毎回表現が少しずつ違うのがすごい。気高い魂、生きようと抗うさま、苦しみや痛み、そして小さくため息をついて静かに迎える死と、毎回表現は違っていても感動するのは同じ。この「瀕死」については、映像特典でロパートキナがいろいろと語っている。

フィナーレ
瀕死の白鳥が終わると、アポテオーズとなり、ダンサーたちが入場する。そして最後に、ドレス姿&タキシードのオペラ歌手たちがシャンパングラス片手に入場。「ランスへの旅」のフィナーレを歌い上げるけど、このメロディが、「眠れる森の美女」と同じと言うところがポイント。眠りもランスへの旅も、同じアンリ4世讃歌を基にしているということだそうだ。歌手が歌うことで、華やかさが増して、特別なイベントである感が高まる。そして最後に、ゲルギエフと、ドレスに着替えたロパートキナが手を取り合って入場。ロパートキナは背が高くてスリムなので、ドレスを着ると本当に美しくスタイリッシュ。オペラ歌手たちも、美人が多いんだけど当然体型はふくよかだから、ますますロパートキナのスタイルのよさが際立つ。乾杯の前にすでにバレエダンサーたちがシャンパンに口をつけているのが笑えた。

特典映像
サンクトペテルブルグの街の様子や人々を捉えていたり、観客なども映していたりしたけど、やっぱり注目はリハーサルの模様。バーレッスンをするダニーラ・コルスンツェフの姿が見られて嬉しい。それから、今回の「眠り」のリハーサルをするファジェーエフとオスモルキナ。教師にいろいろと指示をされているのだけど、字幕がつかないので何を言っているのかはわからない。でも、一生懸命リハーサルに励むファジェーエフが素敵で、ファンの方には必見の映像だと思う。ワガノワバレエ学校の子供たちが、「くるみ割り人形」(これは正統派の演出)のリハーサルに臨む様子がとても可愛い。ゲルギエフがピアニストと行っているリハーサルと、ロパートキナのインタビューだけ英語字幕がつく。楽屋と思しきところでのロパートキナは、鏡に向かって微笑む姿がとても可愛らしい。クールで理知的なイメージが強い人だし、実際インタビューを見ても、思慮深くいろいろなことを考えていてインテリジェントなのがわかるんだけど、人柄の良さを感じさせる笑顔は優しく魅力的だった。

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2008/02/02

2/1 マリインスキー・オペラ「イーゴリ公」

プロローグと3 幕
指揮 : ワレリー・ゲルギエフ
演出 : エフゲニー・ソコヴニン
2001年版演出 : イルキン・ガビトフ
音楽監修(2007年) : ワレリー・ゲルギエフ
「ポロヴェッツ人の踊り」 振付 : ミハイル・フォーキン
装置・衣裳 : ニーナ・ティホーノワ/ニコライ・メルニコフ
装置復元 : ヴャチェスラフ・オクネフ
照明 : ウラジーミル・ルカセヴィチ
首席合唱指揮 : アンドレイ・ペトレンコ
楽曲指導 : イリーナ・ソボレワ

出 演
イーゴリ公 (プチーヴリの公) : セルゲイ・ムルザーエフ
ヤロスラーヴナ (その妻) : エカテリーナ・シマノーヴィチ
ウラジーミル (彼らの息子) : セルゲイ・セミーシクル
ガリツキー公 (ヤロスラーヴナの兄) : アレクサンドル・モローゾフ
コンチャーク汗 (ポロヴェッツ人の長) : アレクセイ・タノヴィツキー
コンチャコーヴナ (その娘) : ズラータ・ブルイチェワ
オヴルール (キリスト教徒のポロヴェッツ人) : ワシーリー・ゴルシコーフ
スクーラ (クドーク弾き) : グリゴリー・カラショーフ
エローシュカ (クドーク弾き) : アンドレイ・ポポーフ
ヤロスラーヴナの乳母 : エレーナ・ソンメル
ポロヴェッツ人の娘 : タチアーナ・パヴロフスカヤ
【ポロヴェッツ人の踊り】
: ポリーナ・ラッサーディナ
: イスロム・バイムラードフ
: エレーナ・バジェノワ
: ゲンナジー・ニコラーエフ

完全版の上演ではなかったけれども、それでも実質上演時間が休憩込みで3時間40分近く、休憩は1回しかなかったので非常に疲れた。しかもNHKホールの3階席は拷問椅子といってもいいほど狭かった。日曜日にもう一回観るのだけど、公演自体は非常に良かったのにあの席にまた4時間近く座るのかと思うとクラクラしてしまう。

「イーゴリ公」といえば「ポロヴェッツ人の踊り(ダッタン人の踊り)」。イスロム・バイムラードフが踊ると聞いて、いてもたってもいられなくなり、当初予定より一枚チケットを買い足した。サンクトペテルブルグ建都300周年記念ガラでの「ダッタン人の踊り」のバイムラードフさんがあまりにも素敵だったから。しかも、ジャパンアーツのキャスト発表を見たら、マリインスキーでも随一のゴージャスな美貌を誇るキャラクター・ダンサーのエレーナ・バジェーノワも踊るという。エレーナさん、先週末はワシントンでのマリインスキー・バレエの「ラ・バヤデール」でアイーヤ役で出演していたのに、今は東京にいるなんてすごい。もっと事前にキャストを発表してくれていたら、もっと良い席で観たのになあ。日曜日の席なんて、E席で3階の一番後ろの列なのだ。今日も3階の8列目だったけど。

そして、その「ポロヴェッツ人の踊り」だけど、もーーーーーーバイムラードフさんのあまりの切れ味鋭い踊りに鼻血が出そうだった。ザ・キャラクター・ダンサーというべき、シャープで激しい、炎のような踊りなのだけど、着地は美しく、もともと長い腕や脚をさらに長く見せるアクセントが効いて大きな動き。連続した跳躍も一回一回が高くてリズミカルで素晴らしいことこの上なし。弓を射るポーズもしなやかで、見得を切るさまがきまっている。ホント、観られて良かった!エレーナさんも本当につややかで美しかった。弓矢を持った男たちがいっせいにトゥールザンレールしたり、エキゾチックで官能的な衣装の女性ダンサーたちが柔らかく踊ったりと、群舞もとても見ごたえがあった。席は遠かったけど、でも正面だったから非常に良く見えた。もう一回バイムラードフさんが観られると思うととっても幸せ。もっといい席にすればよかった。(でも、高いのよね)

マリインスキー・オペラ来日公式ブログで、バイムラードフさんのインタビュー(写真つき)が載っています。
http://japanarts.cocolog-nifty.com/2008mariinsky_opera/2008/02/post_74a4.html
「だったん人の踊り」を躍らせたら世界一、と書いてあるけど、本当にその通り。

もちろん、ここでの合唱と踊りの融合も素晴らしかった。これぞ総合芸術。ブラボー。客席もものすごい盛り上がりぶり。

私はオペラは不勉強なのだけど、今日の歌手陣はみな、大変実力のある人ばかりだと思った。広いNHKの3階の後ろの方でもよく通っている。イーゴリ公のセルゲイ・ムルザーエフは威厳があって深みのある声。ヤロスラーヴナのエカテリーナ・シマノーヴィチは、プログラムに書いてあったプロフィールによればまだまだ若そうだけど、高音域も非常に澄んでいて、豊かな声量ながらきれいに出る。特に後半になってからが圧巻。ヤロスラーヴィナは、一人ぼっちで不安にさいなまれながらイーゴリ公を待つ役柄なので、よるべなさや寂しさ、それと同時に妃ならではの堂々とした強さもなくてはならない、難しい役だと思うけど見事だったと思う。ウラージミル役のセルゲイ・セミーシクルは、とても甘く美しい声のテノールで、思わず聞き惚れてしまった。合唱がまた、すごく迫力があっていい。

演奏の方は、思ったよりは爆演ではなかったというか、意外と上品に仕上げてきたと思う。もう少し鳴らした方が好み(去年12月のレニングラード・オペラでの「イーゴリ公」のアニハーノフさんの指揮の方が、ずっと派手だった)。音響の悪いNHKホールだから仕方ないのか。とはいっても、今日はミスはほとんどなくて、美しい音色、演奏レベルは高かった。3階後方になってしまうと、オーケストラピットの中が全然見えないのが残念。ゲルギエフの指揮って見ているだけで面白いのだけど、当然この席ではまったく見えない。あまりメジャーな演目ではないけど、それぞれのアリアのメロディもみなエキゾチックで美しいし、1幕の前奏部分の響きが豊かですんばらしい。惚れ惚れとする。(が、このときに客席でおしゃべりをする人がいて、すごく頭にきた)

で、問題は演出。今回は、ゲルギエフ版とでもいうべき版で、順番なども相当入れ替えてみたりしているようだ。市販されているゲルギエフ指揮マリインスキー・オペラのDVDとも、順番が違うくらい。一言で言えば、休憩後の2幕~4幕があまりにも長く、メリハリに欠けていたので、人によっては退屈するのではないかと思った。実際、私の周りでは結構寝息も聞こえてきたし。4幕の一番最後にイーゴリ公が帰還するだけで、何も歌わないという演出は、ちょっと幕切れが唐突過ぎじゃないだろうか。それまでの、ポロヴィッツ人が攻めて来ることに対しての人々の恐怖感をこめた合唱が大変迫力があり、盛り上がっているのに、唐突な終わりに尻切れトンボ感あり。ガリツキー公の登場しているところが全体的に冗長。もう少しテンポ良くしてほしかった。12月のレニングラード国立オペラのは、3幕丸ごとカットで短かったけど、それくらい思いっきりばっさりやってもよかったのかも。

レニングラード国立オペラで見たときも思ったけど、コンチャーク汗ってイーゴリ公LOVEで、あんなに怖い顔(メイクがすごい)しているのに惚れ抜いていて、おっさんのやおい話になっているのだよね。

それでも、演奏、歌(ソリスト、合唱とも)、バレエとレベルは非常に高く満足度も高い。1幕ではお馬さんも2頭登場するし、衣装も非常に絢爛ゴージャスでロシアンな感じ。贅沢な公演だった。ただ、やっぱり「ポロヴェッツ人の踊り」のバイムラードフさんに尽きる!

ボロディン:歌劇《イーゴリ公》マリインスキー劇場版ボロディン:歌劇《イーゴリ公》マリインスキー劇場版
マリインスキー劇場バレエ団 ゲルギエフ(ワレリー) プチーリン(ニコライ)

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