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2008/02/25

2/24 空白に落ちた男

出演:首藤康之/梶原暁子/藤田桃子/丸山和彰/小野寺修二
作・演出:小野寺修二
音楽:coba
美術:松岡泉
2月24日14:30~ベニサン・ピット

実はこの作品、初日も見に行ったのだけど、その頃は忙しい上に風邪で半分死んでおり、とても面白く観たのだけど感想を書く余裕がなかった。そしておよそ一ヵ月半ぶり、千秋楽直前に観に行った2回目。初日と演出の細部も変化していたし(細かいところまで覚えていないので、一つ一つは挙げられないけど)、出演者の息の合い方や表情の豊かさも増して、興奮を覚えるほどのエキサイティングな舞台となった。

作・演出・出演の小野寺修二さんは、「水と油」というパントマイムのパフォーマンス集団を率いていた方。したがって、この公演も、演劇でもなければダンスでもない、台詞のない世界が展開するのだけど、パントマイムというものに対する固定観念がひっくり返される面白さ。台詞がない分、動きや表情の一つ一つが雄弁になっているのだけど、それだけではない。無表情の中の表情とか、ちょっとありえないような振付?とか、あっと驚く小道具の使い方、舞台装置の意外な仕掛け。片時も飽きることがない。

まず何よりも秀逸なのが、松岡泉さんによる舞台装置。一見、何の変哲もない、机や椅子が置いてあるだけの殺風景な部屋のようでいて、扉や引き出しにさまざまな仕掛けやギミックが隠されている。なのに、ごてごてとすることもなく、なんともいえず味わい深く、観れば観るほど面白く、それだけでひとつの芸術作品に見えてくる。場面転換は一切ないのに、それが取調室や、ホテルの部屋や、喫茶店や、殺人事件の現場であるバスルームに変身するのだから。

出演者5人がまたそれぞれ個性的。首藤康之さんはいわずと知れたバレエダンサーで、この中では一番有名人であり、唯一のバレエ畑出身者。だけど、決して一人浮くことなくこのアンサンブルに溶けこんでいる。ラストに美しいバレエを見せるシーンがちょっとだけあるけど。初日と見比べて思ったのは、驚くほど表情が豊かになり、まるで顔がゴムになったかのように動くようになったこと。シャイな首藤さんがあんな面白い顔をするなんて!もちろん、持ち前の身体能力が、この舞台のアンサンブルを構成する上で役に立っているのは言うまでもない。

小野寺修二さんは、そこらへんにいるような小柄なおじさんという風情なのだけど、飄々とした持ち味が最高。しかも、彼の作る表情の面白いことと言ったら、もう。動きにも無駄がなくてきびきびしているし、笑いを取るのも上手。首藤さん演じる刑事にタバコの火をもらったときの(しかも、マッチを摺るのに何回も失敗していて結局火はつかない)嬉しそうな表情は忘れられそうもない。言葉をひとつも発しなくても、観客を笑わせることができる人。

藤田桃子さんは、「水と油」メンバー。きりりとしたクールな存在感で、この舞台の屋台骨を構成しているようだった。彼女の安定感があるからこそ、この舞台もまとまりのあるものになっている感じ。この人も動きに無駄がなくて、強靭でカッコいい。

丸山和彰さんは、長身の若いパフォーマー。表情をあまり見せるところがなく、それでいて飄々としたおかしみを出すことができる、柳のようにしなやかな感性を持っている人。

そして梶原暁子さん。モダンダンス畑の人とのことだけど、小柄な体に秘めた、素晴らしい身体能力と表現力。エプロンをつけてウェイトレスに変身したかと思えば、蛇口の下に倒れこんで死体になっているし、戸棚の中にくしゃっと猫のように丸まったり、匍匐前進のように地を這ったり、変幻自在。ラストには裸足になって、これまたびっくりな高速回転の大胆なダンスソロを踊って見せた。ものすごく引き出しの多い魅力的な人。


この個性的な5人がバラバラにならずにまとまり、息がぴったり合った連係プレイを見せているのがすごい。最初の方に、小野寺さん扮するパジャマの男がスリッパの片方を求めて机の上の歩き回るとき、ほかの出演者たちが、彼の歩く方向に机を一つ一つ並べていくタイミングの鮮やかなこと。バッタンと倒れた長身の丸山さんの上に、3人がものすごい勢いで机や椅子を積み上げて、ふと見下ろしていっせいに顔を見合わせて「え!」とばかりに驚いて見せるところの呼吸の合い方も見事なもの。小野寺さんと丸山さんがまるで「マトリックス」のようにスローモーションでアクションを見せるところも、帽子の飛ばし方がすごく可笑しかった。

一応、刑事S、妻が二人いるという妄想に取り付かれてしまった男O、長身のガレキ男、容疑者といったキャラクターと基本設定はあるものの、しっかりとしたストーリーはないし、キャラクターは入れ替わるし、部屋の中に登場人物たちは出たり入ったりするし、場面設定もくるくる変われば、追いかけていた側が追われる側と入れ替わるし、そんな一見バラバラな世界観がなぜかまとまって見えるところが凄い。しかも、生き物であるこの舞台は、初日の頃とは変化し、成長を遂げている。世界の出口と入り口、その間にある空白というのがポイントなのだけど、意味など求めてはいけない。この不条理で可笑しくて少し怖い世界はたまらなく魅惑的で、何度でも覗いてみたくなる。それとも、この部屋自体が空白なのか?

千秋楽は木曜日。できることならもう一度見てみたいものだ(でも仕事が忙しくて無理)。まだの方には、ぜひ見てほしい。


以下は、ネタばれにつき、ご覧になった方だけ読んでください。

面白いと思ったポイントのメモです。

ホテルにチェックインしようとも、何度も同じ部屋に入ってしまう。
引き出しが階段状に現れ、それを上って部屋を脱出。
取調室の刑事と、パジャマの男のタバコの火をめぐるやり取り。靴の底でマッチをつけようとするけど失敗。
扉の窓から現れる、容疑者のマグショット。
食品の保存庫だと思ったら、覗くのはスリッパ男の両足。そしてうーんと上の窓からは男の顔が。
変な調味料を入れられて中毒になる客とウェイトレスのやり取り。
横一線に並べられた机に座る出演者たち。容疑者の顔写真は全部刑事のもの。
一着のコートをいろいろな出演者が回し着する。
机を積み上げられたところを記念撮影。
引き出し式の書架。

舞台の様子は、「ひらづみ」さんのところで、イラストで説明してあります。復習用にどうぞ。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんにちわ。
とても復習になりました!!
ベニサン・ピット自体の不思議な空間、舞台を一目見た瞬間から味わった、観客も異空間の一部になってるような感覚、、、思い出しました!
小道具一つ一つまでが出演者のような、素晴らしいアイデアに驚きでした。
友人も言ってたんですが、小野寺さんが元ボクサーのトカシキ某に似てた(笑)。小柄な身体に凄いパワーの方ですね!

マーキーさん、こんばんは。マラーホフ祭りも終わってしまいましたね。ホント、マラーホフさんって素敵な方と思いました、改めて。
そしてマーキーさんもこの公演、ご覧になっていたんですね。私も一回目は上記の通り体調不良で、2回目も最前列だったので最初のうち埃を吸い込んで咳が出ちゃったんですが、リピートすることでより楽しむことができました。
確かに、トカちゃんこと渡嘉敷氏に似ていますねcoldsweats01

こんにちは。
こんなに夢中になった作品は久しぶりでした。振り付けも演出も装置も、何もかもがとても洗練されていて、小道具の使い方に唸ったり、キャストの表情に笑ったり、本当に楽しい舞台でした。サントラを聞きながら思い出し笑いをして、電車の中で怪しい人になっています。。
私も都合がつかなくて、もう観に行けないのですけれど、naomiさまの記事とひらづみさまのところでばっちり復習させていただきました!

Elieさん、こんばんは。
これは絶対にElieさんが気に入る舞台だと思いましたよ。洗練されていて、日本でもこんな舞台ができるんだ、と思いましたね。サントラは、千秋楽に観に行く友達に頼んであります。思い出し笑い、したくなるかも。あの小野寺さんの表情がチラついて。
明日で終わりなんですよね。また観たいな~再演してくれないかしら。

こんばんは。
2度見ても全然面白さが衰えない、凝縮された(?)舞台でした。
この記事とても素晴らしくて保存版だと確信したので、うちの方でそーっとリンク貼らせて頂きました。お気に召さないようなら、おっしゃってくださいね。

ogawamaさん、こんばんは。
先日はお会いできて嬉しかったです!
そんな素晴らしい記事ではないですが(笑)リンクは大歓迎というか嬉しいです。
もう一度観てみたかったなあ。

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