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« 古川和則さん、東京バレエ団を退団 | トップページ | エフゲーニャ・オブラスツォーワ/キューバからの亡命ダンサー/ヴィシニョーワ公演/アンヘル・コレーラ »

2008/02/24

2/22マラーホフの贈り物Bプロ

海外出張から帰ってきて休みなしで仕事が激しく多忙、前日は終電帰りということもあってひどく疲れた金曜日の夜。やっぱり体調万全でないと、十分楽しめないと思ってしまった。

○「牧神の午後」 ポリーナ・セミオノワ×ウラジーミル・マラーホフ
振付: ジェローム・ロビンズ
音楽: クロード・ドビュッシー

横たわるマラーホフ。1階前方の席でちょっと観づらかった。脚を垂直に上げたときに、マラーホフの脚のラインの美しさにうっとりとした。脚だけでなく、胴体もずいぶんとほっそりとして、あばらがくっきりと見えてしまっていた。ロビンスの「牧神の午後」は、少年と少女の話なので、そろそろマラーホフにはつらい役柄かと思ったけど、マラーホフの持つ耽美性が発揮されていて、よく合っていたと思う。ポリーナは、この作品でマラーホフの相手役を務めるには少々生身の女性っぽすぎるところがある。少女は実体があるのかそれとも幻か、という儚さがあったほうがいいし、もっと生硬なところがあった方が良かったとも思った。小悪魔ぶりが出すぎているのだ。とはいえ、ふとした表情や視線に清清しい、ほんのりとした色香があり、鏡越しに二人が視線を交わすところの官能性にはどきりとする。鏡越しの視線が、ようやく直接交わりあったときの仄かな高揚感。唇ではなく頬へマラーホフがキスをする。夢か幻か、少女が歩き去り、再び横たわるマラーホフに訪れた官能の表現は、ごくごく控えめなもの。マラーホフならもう少し官能的に演じるかな、と思ったけど、抑制された表現の彼もいい。この作品を初めて生で観たのは、ホセ・カレーニョとステラ・アブレラで、やはり決して若くはないカレーニョが見せた清潔な色気と、アブレラのファム・ファタル的な幻の女ぶりが素敵だった。踊る人によって全然違ってくるけど、私はこの作品がとても好き。ドビュッシーの音楽がじわじわと昂ぶっていくところが、たまらない。


○「グラン・パ・クラシック」 ヤーナ・サレンコ×ズデネク・コンヴァリーナ
振付: ヴィクトール・グゾフスキー
音楽: ダニエル・オーベール

サレンコもコンヴァリーナも、Aプロよりずっと良くなっていたと思った。サレンコは、アダージョでのバランスがすごかった。バロネについては、もう少し軸を引き上げる感じがあってもいいと思う。テクニックが強いのは良くわかったから、あとは見せ方の問題だろう。伸びしろがありそうだから、これからに期待したい。コンヴァリーナも同じく、見せ方で損をしているのと、白タイツが似合わないのがもったいないと思った。回転とサポートはすごく上手いのだから。腕の使い方が今一歩。


○「ハムレット」 マリーヤ・アレクサンドロワ×セルゲイ・フィーリン
振付: ボリス・エイフマン
音楽: ルートヴィヒ・V・ベートーヴェン

パンフレットを読んで予習をして、「ロシアン・ハムレット」であるという予備知識があったのが幸いした。エカテリーナ2世と、その息子の物語。年齢が10近く年上のフィーリンが息子役というのがすごいんだけど、マーシャの圧倒的な存在感とパフォーマンスに打ちのめされた。厳しい表情で、長いドレスを着て凛と立っている姿の迫力。雄弁でそれ自体でひとつの生命体のようである腕の表現力。母と子の、ただならぬ関係を感じさせる。そしてフィーリンも、このド迫力のアレクサンドロワとがっぷり四つに組んで、おびえ飲み込まれる演技が真に迫っていた。それでも母の足元にひれ伏して愛情を求める息子。ドSという感じの厳しい表情がこの上なく威圧的なマーシャに組み敷かれる。これ、絶対に全幕で見てみたい。断片を見せられるのは、蛇の生殺しにあうようなもの。

○「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ” イリーナ・ドヴォロヴェンコ×マクシム・ベロツェルコフスキー
振付: マリウス・プティパ
音楽: ピョートル・I・チャイコフスキー

イリーナの黒鳥は、一昨年のバレエフェスで観たときの方がテクニック的には良かったと思うけど、何しろ彼女は目線や腕を巧みに使ったドラマティックな演技が素晴らしい。ガラでパ・ド・ドゥを見せているだけなのに、後ろには舞台装置があり、ロットバルトや花嫁候補たちが存在しているかのようだ。このあまりの濃厚さに拒絶反応を示す方も多かったようだけど、私は彼女の一挙一動や視線の使い方にに吸い寄せられた。あまりにも美しい悪女。テクニック的にはほんの少し衰えを見せてしまっているけど、それでもオールシングルのフェッテは音にぴったりと合っていて正確だったし、足の甲が美しい。ヴァリエーションもとても素敵だったのだけど、最後のシェネでぐらついたのがもったいない。(でも、すぐに体勢を立て直せたところは立派)マキシムは衣装が黒王子で、端正であくまでも女性(というか妻)を立てるところが好感度大。

でも、イリーナの本領は黒鳥より白鳥なのよね。7月のABT全幕が楽しみ。

○「バレエ・インペリアル」 ポリーナ・セミオノワ×ウラジーミル・マラーホフ
振付: ジョージ・バランシン
音楽: ピョートル・I・チャイコフスキー
出演: 田中結子、中島周、横内国弘 ほか東京バレエ団

睡眠不足で一週間の疲れがたまっていたこともあり、拷問のようだった。とにかく音楽性の欠片もないコール・ドに呆れる。その上、テープの録音がひどくて、耳をふさぎたくなるほどであった。3時間以上もあるガラに、こんな長尺で中身のない上演作品は必要だったのだろうか?これだったら、Aプロと同じ白鳥の湖2幕をやった方がずっとまし。東京バレエ団ではもう二度と見たくない作品。ソリストも全然良くない。マラーホフの相変わらず音のしない猫のような着地(しかし膝を庇っているのか、プリエは浅め)や、サポート中心なのに光り輝くまでの美しい佇まいは素敵だった。でも、彼に無理をさせるんだったら、この演目ごと割愛しても良かったのでは?ポリーナも、美しさ、音楽性、テクニックともあまりにも飛びぬけているので、すっかり浮いてしまっていた。彼女はアブストラクト・バレエよりはストーリー性のあるものを踊った方がいいように思える。キトリはきっと似合うだろうな。

○「シンデレラ」 マリーヤ・アレクサンドロワ×セルゲイ・フィーリン
振付: ロチスラフ・ザハーロワ
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ

ザハーロワ振付となっているけど、どう考えてもポソポフ振付のシンデレラ。あの強そうなマーシャ姐さんがシンデレラか、と思ったけどこれがまた案外可愛らしくて良い。こういう作品では、現代的な部分も見せてくれるし、実に引き出しの多い魅力的なバレリーナ。音楽がちょっと耳慣れない部分を使っていて、作品としてはどうなんでしょう。フィーリンは、白いフリフリシャツをはだけた姿がすごく似合っていてまさに王子様、素敵。

○「アポロ」 イリーナ・ドヴォロヴェンコ×マクシム・ベロツェルコフスキー
振付: ジョージ・バランシン
音楽: イーゴリ・ストラヴィンスキー

この二人にすごくよく似合っている演目だと思った。ストラヴィンスキーの奇妙な音楽にぴったりと合っているイリーナの動き。クラシックバレエ的な動きが全然ない作品なんだけど、難しそうな細かいムーヴメントやオフバランス的な動きも易々と決めてくれている。そして、なんだかすごく可愛らしい。マックスのアポロ姿も太陽神らしい正統派の凛々しい美しさで、カリスマ性もあふれ実に魅力的。これも、この二人プラスほかの女性ダンサー二人で全編で見てみたい。

○「ドン・キホーテ」 ヤーナ・サレンコ×ズデネク・コンヴァリーナ
振付: マリウス・プティパ
音楽: レオン・ミンクス

Aプロと同じ演目なのだけど、Aプロよりずっと良い仕上がり。全体の流れを止めてしまってキトリのバランスを入れまくるのはどうよ、とも感じるのだけど、バランス自体はお見事なもの。サレンコは、ヴァリエーションがすごくよかったと思うんだけど、時々股関節がインになっている?と思うことがある。フェッテは、トリプルは1回だけだったけど、ゆっくりなんだけどキレイに回っていた。音楽には合っていないところがあったけど、そもそも今回のガラは、テープの音が最悪なもので、ダンサーにとっては気の毒だったと思う。サレンコは、多分もっと叙情的な演目が似合うバレリーナなのではないかと思った。当初予定されていた「ゼンツァーノの花祭り」観たかったな。
コンヴァリーナは今回も片腕リフトはなし。ただ、サポートはやっぱり上手で、特にアダージオでのサポートの素晴らしさにはすごく感心。それから、ピルエットも良くて、コーダでのグランド・ピルエットでは軸がしっかりとしており、惰性できれいに回っていた。しかもマネージュも、今まではあまり得意ではないのかなと思ったら今回は脚が非常にきれいに開きつま先もキレイでキレのある動き、いったいどうしちゃったのかと思ったくらい良かった。コンヴァリーナは近い将来、大化けするんじゃないかと思った。顔だって可愛いし、ニコニコしているし、俄然応援モードに。

○「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」 ウラジーミル・マラーホフ
振付: ロナルド・ザコヴィッチ
音楽: クラウス・ノミ、ロン・ジョンソン 編集: アルシャーク・ガルミヤン

Aプロで観た時には、音楽があまりにも素晴らしくインパクトが強かったので、振付が音楽に負けている気がした。2回目の今日も、やっぱり音楽の力が勝ってしまっていると思ったけど、もがき苦しむような動きを見せているマラーホフの姿を見ていると、こちらまで胸が苦しくなる。様々な内面の葛藤がムーヴメントに現れていたようで、ダンサーっていうのは戦い続けなくちゃいけない過酷な仕事なのだというのが良く伝わってきた。ごろごろと転がって服を脱ぎ捨て、生まれ変わってもまだ苦悩は続いている。そして、この日は、美しいジュッテも見せてくれた。それにしても、動きそのものの形は美しいとはいえないのに、しなやかに踊り続けるマラーホフという存在は美そのもの、美の申し子なのだと感じさせるところがすごい。私はマラーホフの大ファンとはいえないけど、それでも、彼は稀有な存在であり、すべての動きにドラマを込めることができる、何十年に一人の天才なのだと改めて実感した。カーテンコールのときの輝くばかりの嬉しそうな笑顔に、彼の人柄の良さも感じた。

カーテンコールで観客のハートをわしづかみにする天才といえば、やっぱりマーシャでしょう。カーテンの前でゆっくりとレベランスをしているフィーリンを「早くしなさい」ってぐいっと奥へ引っ張っていくマーシャ、上から降ってきた紙テープを体に巻きつけているお茶目なマーシャ、フィーリンにキスを送るマーシャ(そしてそれを吸い込むフィーリン)、フィーリンの可愛い子供と戯れる優しげなマーシャ、もう最高!ポリーナを迎えるときにすべってコケるフリをして姫を迎える王子風にポーズをとるマラーホフもいい味を出していた。お約束なのだろうけど、最後に出演者全員に迎えられ、「え、ボク?」って驚いて見せるマラーホフ。カーテンコールでは実に見事なジュッテをしてくれたのだけど、今の膝の状態では無理をしないでね、とちょっと心配。本当に魅力的な人だし、だからこそ、フレンズ公演もこんなに続けられるのだろうな。それだけに、完全復調をしてくれることを心から願っている。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
naomiさんの感想、お待ちしておりました♪
私も「バレエ・インペリアル」以外はとても楽しんだのですが、演目についてあまり知らないのでとても参考になりました。
「牧神の午後」は少年と少女の話なんですねえ、なるほど。

こんにちは♪

わたしはBプロしか見なかったのですけどやはりAも見たかったな〜

アレキサンドロワや、ドヴォロヴェンコさま達がいいのは当然(笑)なんだけど、ね!サレンコxコンヴァリーナ、よかったですよね! サレンコはおっとりした踊り方でシェスタコワを思い出しました。
naomiさんの云うとおり一つは情緒的な演目を見たかったですね♪

ogawamaさん、こんにちは。私も、今回はボリショイ組など、初めて見る演目が多かったんですよ。「牧神の午後」は一昨年予習できてよかったです。マラーホフはホント麗しいしポリーナはきれいでしたね。
まだまだ知らない作品が世界にはたくさんありますので、教えてくださいね。

今晩は。
私も22日のBプロ見ました。
牧神のときのマラーホフの表情、すごかったです。ロビンズ版は初めて見たのですが、マラーホフのために振付けられたのかと思うぐらい彼に合っていたと思います。
しかし。。。バレエ・インペリアルは睡魔との闘いでした(コールドバレエのポアントの音がうるさかったにも拘らず)。そして第2部で集中力が途切れたまま第3部に突入してしまったせいか、満足度はAプロの方が高かったかも。
私的には白鳥、インペリアル共に割愛していただいて結構でした。

新国立のレポートも、興味深く読ませて頂きました。ロシア、英国式、どちらも一長一短あると思いますが、国立を名乗るからにはよそからの借り物ではなく、(例えば松山バレエ団が目指しているような)日本人ならではのバレエのスタイルを早く確立してもらいたいと思います。

ずずさん、
私もサレンコ&コンヴァリーナペア、良かったと思います。特にBプロでコンヴァリーナ君が化けましたね!ドンキ、すごく良かったですlovely
ヤーナちゃんはたしかにシェスタコワタイプかもしれません。ジゼルとか似合いそう。こういう若手を発見するのが、ガラの醍醐味ですね。

peluさん、こんばんは。
本当にロビンス版の牧神の午後はマラーホフに合っていましたね。彼の美しさ、耽美性が生きていて。やっぱりマラーホフはいくつになっても美しい。
バレエ・インペリアル、「真夏の夜の夢」で見たときにはまだ大丈夫だったのですが、今回、録音テープがひどかったこともあって私も睡魔との闘いでした。上演時間が長くて途中で帰った方もいたようだったので、ホント、無理して白鳥やインペリアルを入れることはなかったですよね。

そう、新国立についてもおっしゃるとおりだと思います。一応、牧先生は、日本ならではのバレエを目指してはいるようなんですが。

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