2/1 マリインスキー・オペラ「イーゴリ公」
プロローグと3 幕
指揮 : ワレリー・ゲルギエフ
演出 : エフゲニー・ソコヴニン
2001年版演出 : イルキン・ガビトフ
音楽監修(2007年) : ワレリー・ゲルギエフ
「ポロヴェッツ人の踊り」 振付 : ミハイル・フォーキン
装置・衣裳 : ニーナ・ティホーノワ/ニコライ・メルニコフ
装置復元 : ヴャチェスラフ・オクネフ
照明 : ウラジーミル・ルカセヴィチ
首席合唱指揮 : アンドレイ・ペトレンコ
楽曲指導 : イリーナ・ソボレワ
出 演
イーゴリ公 (プチーヴリの公) : セルゲイ・ムルザーエフ
ヤロスラーヴナ (その妻) : エカテリーナ・シマノーヴィチ
ウラジーミル (彼らの息子) : セルゲイ・セミーシクル
ガリツキー公 (ヤロスラーヴナの兄) : アレクサンドル・モローゾフ
コンチャーク汗 (ポロヴェッツ人の長) : アレクセイ・タノヴィツキー
コンチャコーヴナ (その娘) : ズラータ・ブルイチェワ
オヴルール (キリスト教徒のポロヴェッツ人) : ワシーリー・ゴルシコーフ
スクーラ (クドーク弾き) : グリゴリー・カラショーフ
エローシュカ (クドーク弾き) : アンドレイ・ポポーフ
ヤロスラーヴナの乳母 : エレーナ・ソンメル
ポロヴェッツ人の娘 : タチアーナ・パヴロフスカヤ
【ポロヴェッツ人の踊り】
: ポリーナ・ラッサーディナ
: イスロム・バイムラードフ
: エレーナ・バジェノワ
: ゲンナジー・ニコラーエフ
完全版の上演ではなかったけれども、それでも実質上演時間が休憩込みで3時間40分近く、休憩は1回しかなかったので非常に疲れた。しかもNHKホールの3階席は拷問椅子といってもいいほど狭かった。日曜日にもう一回観るのだけど、公演自体は非常に良かったのにあの席にまた4時間近く座るのかと思うとクラクラしてしまう。
「イーゴリ公」といえば「ポロヴェッツ人の踊り(ダッタン人の踊り)」。イスロム・バイムラードフが踊ると聞いて、いてもたってもいられなくなり、当初予定より一枚チケットを買い足した。サンクトペテルブルグ建都300周年記念ガラでの「ダッタン人の踊り」のバイムラードフさんがあまりにも素敵だったから。しかも、ジャパンアーツのキャスト発表を見たら、マリインスキーでも随一のゴージャスな美貌を誇るキャラクター・ダンサーのエレーナ・バジェーノワも踊るという。エレーナさん、先週末はワシントンでのマリインスキー・バレエの「ラ・バヤデール」でアイーヤ役で出演していたのに、今は東京にいるなんてすごい。もっと事前にキャストを発表してくれていたら、もっと良い席で観たのになあ。日曜日の席なんて、E席で3階の一番後ろの列なのだ。今日も3階の8列目だったけど。
そして、その「ポロヴェッツ人の踊り」だけど、もーーーーーーバイムラードフさんのあまりの切れ味鋭い踊りに鼻血が出そうだった。ザ・キャラクター・ダンサーというべき、シャープで激しい、炎のような踊りなのだけど、着地は美しく、もともと長い腕や脚をさらに長く見せるアクセントが効いて大きな動き。連続した跳躍も一回一回が高くてリズミカルで素晴らしいことこの上なし。弓を射るポーズもしなやかで、見得を切るさまがきまっている。ホント、観られて良かった!エレーナさんも本当につややかで美しかった。弓矢を持った男たちがいっせいにトゥールザンレールしたり、エキゾチックで官能的な衣装の女性ダンサーたちが柔らかく踊ったりと、群舞もとても見ごたえがあった。席は遠かったけど、でも正面だったから非常に良く見えた。もう一回バイムラードフさんが観られると思うととっても幸せ。もっといい席にすればよかった。(でも、高いのよね)
マリインスキー・オペラ来日公式ブログで、バイムラードフさんのインタビュー(写真つき)が載っています。
http://japanarts.cocolog-nifty.com/2008mariinsky_opera/2008/02/post_74a4.html
「だったん人の踊り」を躍らせたら世界一、と書いてあるけど、本当にその通り。
もちろん、ここでの合唱と踊りの融合も素晴らしかった。これぞ総合芸術。ブラボー。客席もものすごい盛り上がりぶり。
私はオペラは不勉強なのだけど、今日の歌手陣はみな、大変実力のある人ばかりだと思った。広いNHKの3階の後ろの方でもよく通っている。イーゴリ公のセルゲイ・ムルザーエフは威厳があって深みのある声。ヤロスラーヴナのエカテリーナ・シマノーヴィチは、プログラムに書いてあったプロフィールによればまだまだ若そうだけど、高音域も非常に澄んでいて、豊かな声量ながらきれいに出る。特に後半になってからが圧巻。ヤロスラーヴィナは、一人ぼっちで不安にさいなまれながらイーゴリ公を待つ役柄なので、よるべなさや寂しさ、それと同時に妃ならではの堂々とした強さもなくてはならない、難しい役だと思うけど見事だったと思う。ウラージミル役のセルゲイ・セミーシクルは、とても甘く美しい声のテノールで、思わず聞き惚れてしまった。合唱がまた、すごく迫力があっていい。
演奏の方は、思ったよりは爆演ではなかったというか、意外と上品に仕上げてきたと思う。もう少し鳴らした方が好み(去年12月のレニングラード・オペラでの「イーゴリ公」のアニハーノフさんの指揮の方が、ずっと派手だった)。音響の悪いNHKホールだから仕方ないのか。とはいっても、今日はミスはほとんどなくて、美しい音色、演奏レベルは高かった。3階後方になってしまうと、オーケストラピットの中が全然見えないのが残念。ゲルギエフの指揮って見ているだけで面白いのだけど、当然この席ではまったく見えない。あまりメジャーな演目ではないけど、それぞれのアリアのメロディもみなエキゾチックで美しいし、1幕の前奏部分の響きが豊かですんばらしい。惚れ惚れとする。(が、このときに客席でおしゃべりをする人がいて、すごく頭にきた)
で、問題は演出。今回は、ゲルギエフ版とでもいうべき版で、順番なども相当入れ替えてみたりしているようだ。市販されているゲルギエフ指揮マリインスキー・オペラのDVDとも、順番が違うくらい。一言で言えば、休憩後の2幕~4幕があまりにも長く、メリハリに欠けていたので、人によっては退屈するのではないかと思った。実際、私の周りでは結構寝息も聞こえてきたし。4幕の一番最後にイーゴリ公が帰還するだけで、何も歌わないという演出は、ちょっと幕切れが唐突過ぎじゃないだろうか。それまでの、ポロヴィッツ人が攻めて来ることに対しての人々の恐怖感をこめた合唱が大変迫力があり、盛り上がっているのに、唐突な終わりに尻切れトンボ感あり。ガリツキー公の登場しているところが全体的に冗長。もう少しテンポ良くしてほしかった。12月のレニングラード国立オペラのは、3幕丸ごとカットで短かったけど、それくらい思いっきりばっさりやってもよかったのかも。
レニングラード国立オペラで見たときも思ったけど、コンチャーク汗ってイーゴリ公LOVEで、あんなに怖い顔(メイクがすごい)しているのに惚れ抜いていて、おっさんのやおい話になっているのだよね。
それでも、演奏、歌(ソリスト、合唱とも)、バレエとレベルは非常に高く満足度も高い。1幕ではお馬さんも2頭登場するし、衣装も非常に絢爛ゴージャスでロシアンな感じ。贅沢な公演だった。ただ、やっぱり「ポロヴェッツ人の踊り」のバイムラードフさんに尽きる!
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コメント
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naomiさん来てるの知らなかった〜
数年ぶりのオペラでやっぱり良いものは良いんだと感激しました。
分厚いコーラスがなんとも逞しく豪華。
ほんとに「上品」な仕上がりでもっと「荒々しい?」のかと思っていました。
バイムラードフさんブログの写真、素顔はかわいいんですね♪
メイクしてると別人!
すばらしい跳躍でしたね。
わたしももっと前で見たかった。
3階も一番前の席がら空きで、もったいなかったですね。
投稿: ずず | 2008/02/06 15:26
ずずさん、こんばんは
私も金曜日は急に思い立って見に行ったのです。ずずさんがイーゴリ公行かれるのは知っていたけど、どの日だったのかを聞くのを忘れちゃって残念(って多分私が取ったんだよね)!席はそんなに離れていなかったと思うのに。
私もオペラは完全に素人なんだけど、マリインスキーの実力を実感しましたね~。
バイムラードフさんは、エスパーダなども踊ったりする方なのですよ。長身で、あの衣装ではわからないと思うけど脚もとてもきれい。ホント、席が空いていてもったいなかったですよね~もう少し安ければなあ。
きっと来年の来日公演で、バイムラードフさんはまた見られるでしょうね
投稿: naomi | 2008/02/08 00:51