新春の舞台いろいろ(新国立劇場ガラ、バーミンガムロイヤル「美女と野獣」)
帰国して6日に新国立劇場の新春ガラと「美女と野獣」のダブルヘッダー、7日に「美女と野獣」2回目を観ました。感想を書きたいところですが、時差ぼけによる睡眠不足や、寒い気候もあって風邪を引いてしまったので、しばらくお待ちください。
新国立劇場のニューイヤー オペラパレス ガラ公演は、10月の創立10周年記念ガラの方がお得感があったと思います。「こうもり」のグラン・カフェは、愛するマイレン・トレウバエフをはじめ、バリノフくんと江本拓さんがノリノリだったし、新春に相応しい華やかでとっても楽しい演目で、堪能しました。が、北米公演でも上演するという「アンド・ワルツ」ははっきり言って駄作。北米公演では「セレナーデ」「ドゥエンデ」との上演だそうだけど、この二つが傑作ながら、ややまったり気味のところへ、この退屈なコンテもどき作品を持っていくと、新国立劇場の魅力が全然伝わらない感じがしてしまいます。散漫で中途半端な作品。新国立劇場には素晴らしく美しいコール・ドがあるのだから、たとえば「ラ・バヤデール」の影の王国を上演するとか、「パキータ」「ドン・キホーテ3幕」などの華麗なグラン・パ・ド・ドゥを上演するとかすればいいのに。オペラファンも、「アンド・ワルツ」には確実に退屈していたように見えました。朝日舞台芸術賞を受賞した牧芸術監督は、振り付けには手を出さないで、芸術監督業に専念して欲しいです。これを見ると「椿姫」が傑作に見えるくらいなので。
オペラについては、佐野成宏さんの「トスカ」より「星は光りぬ」と、圧倒的な歌唱力の天羽明惠さんの「椿姫」より「ああそはかの人か」が特に素晴らしかったと思いましたが、他の演目も良かったし、定評のある合唱団も素晴らしかったです。最後2演目を見ないで中座しなければならなかったのが残念。
「美女と野獣」については、後で詳しい感想を書きますが、バレエというよりは、とても上質の舞台作品で、楽しめました。ゴシックでゴージャスな舞台装置や繊細な衣装も素晴らしいし、着ぐるみやマスクもセンスがよかったです。そして、イギリスのバレエ団ならではのキャラクターダンスは最高に可笑しかったです(おばあちゃん、最高!)。ブタ鼻のコションも笑えました。
そしてエリシャ・ウィリスの降板によりベル役を2日間に渡って踊った佐久間奈緒さん、素晴らしかったと思います。日本人には珍しく、はっきりした顔立ちで華があるし、ドラマティックな演技力も見事、さらに技術も確実で特に脚が強靭なようでした。ベルの揺れ動く心が手に取るようにわかって、最後に野獣が美しい王子に戻った時の戸惑う演技が素敵でした。野獣役、6日のイアン・マッケイ、7日のツァオ・チー も熱演でした。マスクですっぽり頭を覆い、分厚い着ぐるみを着て踊るのは大変だったと思いますが、身体を使っての感情表現が二人とも豊かで、孤独な野獣の哀れな気持ちが良く伝わってきて、思わず涙しました。イアン・マッケイは長身で顔が小さくプロポーションが美しい。ツァオ・チー は演技力が見事。二人ともハンサムなので、最初と最後しか顔が出ないのはちょっともったいないけど。あと、初日のワイルド・ガールを踊ったアンブラ・ヴァッロがとても生き生きとした表現力があり、動物的でちょっとセクシー、ちょっとせつなさを感じさせる魅力があって素敵でした。ワイルド・ガールというキャラクターがこの作品のツボなのではないかと思います。
あと一日ありますので、まだの方はぜひ観てください。照明が全体的に暗いのと、ダンスというより演技の部分が多いので、席は前の方が良いかと思います。初日は、祭典席であるにもかかわらず、席が非常に悪くて、1幕の照明が暗いので時差ぼけの頭にはつらかったです。しかもプログラムの引換券を持ってくるのを忘れてあらすじを読んでくるのを忘れちゃったので、何が起きているのか理解できなかったのです。筋を踏まえた上で見れば非常に面白いです。キャラクター紹介を読んでいくとさらにいいかもしれません。惜しいのは、最後のパ・ド・ドゥの振付がちょっと凡庸だったところ。王子が裸足なので難しい振付ができないのかしら。
佐久間奈緒さんのインタビューが毎日新聞に載っていました。
http://mainichi.jp/select/opinion/hito/news/20080106ddm003070078000c.html
堂々としたプリマぶりで、とても美しかったし、感情表現も繊細でいろいろな舞踊語彙を持っている人だと思いました。
« あけましておめでとうとざいます&帰国しました | トップページ | パリ一日目 »
「バレエ公演感想」カテゴリの記事
- KARAS APPARATUS 勅使川原三郎x佐東利穂子「幻想交響曲」(2019.07.19)
- 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』(2018.01.21)
- 勅使川原三郎 KARAS「イリュミナシオン-ランボーの瞬き- 」(2017.12.09)
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
新年早々世界を股に掛けてのバレエ鑑賞とは、羨ましいかぎりです。
「美女と野獣」は同じ日に観ていたんですね!
いわゆる「バレエ」を観に来たファンの中には、踊りの見せ場の少なさや演出について不満な方もいらっしゃったようですが、素直に楽しめましたよね。
おばあちゃん最高でしたね(笑)
投稿: く〜てん | 2008/01/13 08:46
く~てんさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。年末のバレエは本当に楽しかったのですが、その後悪性のしつこい風邪に悩んでいます。
「美女と野獣」実は初日は席が悪くて1幕は入り込めませんでしたが2幕からは凄く楽しんで、2回目はとっても楽しかったです!欠点があるとしたら、照明がちょっと暗すぎたことくらいでしょうか。マシュー・ボーン作品好きな人はたいてい皆さん気に入っていたようですね。
そうそう、おばあちゃんには爆笑♪コションも可笑しかったですね。
投稿: naomi | 2008/01/15 01:07