ラトマンスキー、ボリショイの芸術監督を退任する意向/岩田守弘さんブログ
Ballet Talkのフォーラムによると、ロシアのイズベチア紙に掲載されたインタビューにて、ボリショイ・バレエの芸術監督であるアレクセイ・ラトマンスキーが振付に専念するために、契約を更新せず今年末に退任すると表明しています。
ラトマンスキーは振付活動に忙しく、今年に入ってもNYCBのために新作、ディアナ・ヴィシニョーワの2月のカリフォルニアでプレミアされる'Pierrot Lunaire" 、そしてグルジア国立バレエに新作"Bizet Variations"、さらにボリショイには今年7月にプレミアされる「パリの炎」の改訂振付という大活躍ぶりでした。
Izvestiya Jan 29 2008"Today the problem of leaking talent is over."
と題したこの記事は、興味深い内容が満載です。若手で最も期待されているのは、やはりナタリア・オシポワ、ほかにもイワン・ワシリエフをはじめエカテリーナ・クリサノワやデニス・サーヴィン、アンナ・ニクリーナを評価しています。その上、ザハロワ、アレクサンドロワ、ルンキナといったスターもまだ20代であるということが強みと。タイトルにもあるように、人材の流出は止まり、再び黄金時代を迎えつつあると考えているようです。最近ボリショイは、クリストファー・ウィールダンやトワイラ・サープの作品を上演したりと、コンテンポラリーにも力を入れていますが、ソヴィエト時代の作品やグリゴローヴィチの作品なども引き続き重視してきたつもりであるとのこと。
古典文学をベースにしたクラシック・バレエの新作という可能性は、という質問にも、ノイマイヤーやエイフマンのアプローチを参考に、今後は作り上げていきたいとのこと。
インタビュアーは、ザハロワについて、(そしておそらくは不仲を伝えられているツィスカリーゼについて)、いろいろと突っ込んだ質問をしていて面白いです。「ザハロワは美しく才能があるけど、冷たい、といっている批評家がいますがいかがですか」という質問に対しては、「そんなことはない。彼女が最高のバレリーナであるというのは、他のダンサーにとって不公平だから言わないけど、神に与えられた美しい肉体と、最高の教育の産物。今彼女に必要なのは、ドラマティックな女優として開眼できる、ドラマティックなプロダクションだと思う。成長していくキャラクターを示すことができる、古典文学のプロダクションは彼女に必要なものかもしれない」と答えています。だから、ザハロワは新国立劇場の「椿姫」を引き受けたんだろうなって思いました。
ラトマンスキーは芸術監督としての契約は更新しないけど、引き続き作品は提供していくつもりだそうです。ラトマンスキーについては、賛否両論いろいろあったわけですが、オシポワやワシリエフを発掘し、ザハロワをさらにトップスターにし、人材流出を止めて、パリやロンドンなど海外公演でも高い評価を得た功績は大きいといえることでしょう。220人の団員と20人の教師を率いて、4年間で24作品もの新作を上演するというのも、すごいことだったと思います。
追記:けいちかさんに教えていただきましたが、ボリショイ唯一の日本人団員、第一ソリストの岩田守弘さんのオフィシャルファンブログが始まりました。ロシアでの生活について、ツアーについてなど大変面白い内容です。必見!出演予定も書いてあります。
http://ibashika.exblog.jp/
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コメント
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ラトマンスキーは精力的に仕事をしていますね。ガラでしか観られない「パリの炎」の全幕は期待大です。
原典はクラシカルとキャラクターダンスが、ふんだんにあるようですから。
芸術監督は、どなたになるんでしょうね。
バレエもアブストラクトな作品が続いてくると、やはり物語バレエの新作が恋しくなるのかもしれません。
投稿: くみ | 2008/01/31 03:28
くみさん、こんにちは!
ラトマンスキーをめぐってはいろいろな意見がありますよね。グリゴロービッチ作品をあまり上演していなかったり、現代作品を増やしたり。ただボリショイは充実期にあるのは確かのようです。パリの炎は全幕見てみたいですね
投稿: naomi | 2008/02/02 13:48