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« 新国立劇場バレエ団2008/2009シーズンラインアップ | トップページ | 情報いろいろ(ボリショイの「スパルタクス」、ソフィアン・シルヴ、フィガロのオペラ座連載 »

2008/01/20

レニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)「バヤデルカ」1/11 その1

ニキヤ(バヤデルカ):オクサーナ・シェスタコワ
ソロル:イーゴリ・コルプ
ガムザッティ:オリガ・ステパノワ
大僧正:マラト・シェミウノフ
ドゥグマンタ(藩主):アレクセイ・マラーホフ
マグダヴィア(苦行僧):ラシッド・マミン
アイヤ(ガムザッティの召使い):ナタリア・オシポワ
奴隷:ドミトリー・シャドルーヒン
隊長・ミハイル・ヴェンシコフ
ジャンペー:エレーナ・コチュビラ、ユリア・カミロワ
黄金の偶像:アントン・プローム
マヌー(壷の踊り):エレーナ・ニキフォロワ
インドの踊り:アンナ・ノヴォショーロワ、アンドレイ・マスロボエフ
太鼓の踊り:アレクセイ・クズネツォフ
グラン・パ:
 イリーナ・コシェレワ、エレーナ・コチュビラ、タチアナ・ミリツェワ、ユリア・カミロワ
 アレクサンドラ・ラトゥースカヤ、エレーナ・シャリコワ、サビーナ・ヤパーロワ、マリア・リフテル
 デニス・モロゾフ、ニコライ・コリパエフ
幻影の場面 ヴァリエーション:
 エレーナ・エフセーエワ、タチアナ・ミリツェワ、エレーナ・コチュビラ

指揮:ミハイル・パブーシン
管弦楽:レニングラード国立歌劇場管弦楽団

「バヤデルカ」2日目は、去年ルジマトフ相手に素晴らしいニキヤを踊ったシェスタコワと、コルプの競演。コルプのインタビューによれば、これが初顔合わせになるとのことだったけど、化学作用とでもいうべきだろうか、相性がとてもよく、二人の演技の相乗効果で昨日の舞台がすっかり霞むほどの、濃厚なドラマが繰り広げられる舞台となった。

登場のところでは鋭いジュッテで飛び込んでくるコルプのソロル。弓を片手に、勇壮な戦士そのもの。虎狩りからj帰ってきたところだけど、彼自身が優雅なベンガルタイガーのようだ。

シェスタコワのニキヤは儚げで幸薄そうな中にも、芯の強さが感じられる凛とした神の巫女。ほっそりとした腰、優美な姿態。ヴェールを外したときのニキヤの慎ましやかでいながらも神々しい美しさにくらりと来た大僧正が、立場もわきまえずに迫ってきたとき、一度目は軽く交わすが、二度目は「いけませんわ」と毅然と断る姿からも、それは伺える。

苦行僧(マミンさんの踊りも素晴らしい)の合図で密会するソロルとニキヤ。二人に現れた歓喜の表情の幸福感といったら。初々しく頬を赤らめるニキヤ、そして先ほどまでの勇ましさはどこへやら、一人の恋する男になって想いのすべてをニキヤへと注ぎ込んでいるソロル。お互いを、自分の失われた欠片であるかのように感じて、激しく求め合い、熱く舞い上がっているのが伝わってくる、陶酔感あふれるパ・ド・ドゥでは、コルプが見事なサポートを見せてくれた。このスパークするような二人を覗き見てしまった大僧正が、嫉妬の炎をたぎらせるのももっともなこと。シェミウノフの大僧正は、自分の身分を忘れ、激しいジェラシーに気も狂わんばかり。

このように濃ゆいキャラクターが入り乱れる中、ガムザッティが登場する。ステパノワのガムザッティを見るのは初めてだけど、なるほど、ガムザッティ役が良く似合う華やかさを持っている。ボリショイのアレクサンドロワタイプで、藩主の娘としてどこに出しても恥ずかしくないようにきちんと育てられた、姫としての風格を備えている堂々たる美女。ラジャに娘を紹介すると言われて気が進まない様子のソロルも、ひとたびヴェールを外したガムザッティのゴージャスな美貌を見るや、くらりときてついついOKしてしまうけど、一方で「あっちゃ~これはまずいことになったぞ」と頭を抱えてしまう。この「しまった・・・」という演技をコルプは明確に演じていて、ソロルという男の優柔不断さを体現していた。彼のそういった一面が、悲劇を招く原因となってしまうわけだ。

大僧正が、ラジャにソロルとニキヤの関係を耳打ちする。そんな小娘は消してしまえ、とニキヤ殺害を持ちかけるラジャに、大僧正は動揺。え、殺すんですか!何も殺さなくてもとうろたえる。大僧正はニキヤに恋焦がれているのだ。そしてこのやり取りを立ち聞きしていたガムザッティは、ソロルとニキヤの関係を知って、やはり衝撃を受けて、苦しむ。誇り高い娘がプライドを傷つけられたということもあるけど、勇ましく立派な戦士である、愛する婚約者がほかの女を想っているという事実にも傷ついたのだ。ガムザッティも、ソロルを真剣に愛しているのだ。

1幕のクライマックス、ガムザッティとニキヤの対決。ステパノワのガムザティは、大人の分別もあって、ややニキヤに理解がある優しい女性。ソロルを私に譲ってと言えば、きっとニキヤは身を引いてくれるわと思って説得を試みる。ところが、シェスタコワ演じるニキヤは、一途で芯の強い女。神に仕える巫女ならではの潔癖さを持ち合わせており、ガムザッティが優しい言葉や宝石で翻意を試みても、耳を貸そうとはせず、彼は聖なる火の前で愛を誓ったのよと言い張るニキヤに困り果てる。その強情な様子にガムザッティはついかっとなってニキヤを問い詰め、追い詰められたニキヤがナイフを振り上げてしまったときに、ようやく、この女はやはり消さなければならないとガムザッティは思ったのだ。そしてソロルへの一途な愛情のあまり我を忘れてナイフを、位の高い姫に向けてしまったニキヤは、アイヤに止められてようやくことの重要性に気がつき、なんてことをしてしまったのと走り去る。誇り高く賢い姫が、修羅に変貌し、ニキヤをこの世から消すことを誓う。今までの、強さの中にも分別と優しさを秘めたガムザッティは消えうせ、殺意がドレスを着たように仁王立ちし、燃えるような瞳で立ち尽くしていた。


2幕の婚約式。キャラクターダンスやイリーナ・コシェレワ、エレーナ・コチュビラ、タチアナ・ミリツェワ、ユリア・カミロワという豪華なパ・ダクシオンは眼福。それから、プロームくんのブロンズ・アイドルは、後半ちょっと疲れが見えたものの、跳躍などは大きく、脚もとても高くまっすぐ上がっていて、とてもきれいだった。ガムザッティのステパノワによるヴァリエーションは見事。彼女の踊りは大きく、胸がすくように気持ちよい。イタリアン・フェッテも堂々としていてアティチュードのポーズも輪郭がはっきりとしている。婚約の喜びを全身で表現しているのだ。フィニッシュのフェッテの安定感もさすが。ソロルも、複雑な心境であるはずなのに、ここでのヴァリエーションはまさにヴェルトゥオーゾというような、美しく男らしく勇壮な舞だ。弓を片手に持って踊るのでバランスをとるのもそんなに簡単ではないだろうに、彼自身の身体が弓のように美しく反り、山なりに高く上昇しては柔らかく着地するジュッテ、足の裏が頭上に見えるほど高く上がるしなやかなジュッテ・アントルラッセ、そして下手へとはけていく前の、長い時間静止したルルベでのアラベスク・バランスの絶対的な美。シンクロして踊るときに女性ダンサーよりも後ろ脚が高く上がるのだもの。こんなにも雄雄しく勇ましい戦士だけど、その心は情けないチキンであるというのが、なんともバヤデルカの奥深いところで。

ガムザッティとソロルの前で、悲しみに沈んだニキヤが舞を奉納するシーン。シェスタコワの佇まいは、ニキヤという女性が実在していたらこんな姿かたちをしているのではないかと思わせるようだった。愛する男性を奪われる苦しみで引き裂かれそうな心を必死で取り繕って、哀しみを湛えながらも心を込めて踊っている。滑らかなパンシェ、深々と反らした背中。柳のようにしなやかで儚げな腕からは、まるで涙が伝って流れ落ちていくように見えている。そんな恋人ニキヤの姿を、小心者で、自責の念でいっぱいになりながらも優柔不断なソロルはとても正視などできない。彼女に背中を向けて、自分の心を押し殺して無になって座っている。隣のガムザッティは、ソロルが上の空なのをしきりに気にしていて、自分の方を見てほしいと話しかけている。ガムザッティも、この情けない男の犠牲者なのだな、と思わせた。見た目は迫力があるステパノワなのだけど、その堂々たる風格の下で、いじらしい女心も持ち合わせているのだ。ソロルは落ち着かない様子で、知らん顔で斜め上を所在無げに見たり、手で口を隠したり、顔を覆ってみたり立ち上がったり。しかしそれでも、ニキヤの姿は正視できない。

花かごを手渡しされたニキヤは、それがソロルからの贈り物であると聞いて喜ぶ。踊りながらソロルの方へと駆けていく。それに呼応するかのように、思わずニキヤの方へとソロルは腕を伸ばす。彼は、毒蛇の存在に気がついていたのだろうか?「だめだ、そこには毒蛇がいるんだ」と言っているかのようだ。それを見ていたガムザッティが少し傷つき、「私のほうもちゃんと見てよね」とにらみ付ける。そしてソロルはガムザッティの手を取り、口づける。その姿を踊りながら見ていたニキヤは、自分の中で何かが壊れるのを感じて、どんどん激しく踊っていく。それは、自分の中の愛が殺されたのを見た瞬間であり、愛する人に踏みにじられた断末魔の苦しみを、毒を盛られる前から感じていたかのようだった。そして毒蛇がニキヤの首に噛み付く。ニキヤは、あなたがやったのね!とガムザッティを指差す。ガムザッティは、そうよ、わたしがやったのよと堂々と頷く。しかしその姿には、罪の意識も見え隠れする。そんなときでも、毒に苦しむニキヤの姿を正視できず、思わずその場を逃げ出そうとして、隊長に阻止されるソロルって本当に最低な男だ。ニキヤの心がばらばらに砕け散っていく。大僧正が解毒剤をニキヤに渡し、ほかの人たちは、それを見ないように顔を背ける。ニキヤはソロルのもとへと駆け寄る。ソロルは、「だめだ、それは飲んじゃいけない」という表情をしてニキヤへと近づこうとするが、ラジャらに阻止される。ついに毒がまわって事切れるニキヤは、彼女を抱き止めようとしたソロルの腕の中で、するりと崩れ落ちる。ニキヤの亡骸を強く抱きしめ、泣き崩れるソロル。あの柔らかい背中を大きくそらしたままの姿で、幕が下りるまで静止。死んでからこんなに激しく慟哭しても、もう遅い・・・。

(つづく)

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