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« 新国立「くるみ」22日/サンフランシスコ・バレエの「くるみ割り人形」DVD化/NYCB、2,000回目のくるみ | トップページ | フリオ・ボッカの引退公演@アルゼンチン »

2007/12/24

マリインスキー・バレエ「くるみ割り人形」DVD(ゲルギエフ指揮)

改訂:ミハイル・シェミャーキン
改訂振付:キリル・シーモノフ
美術:ミハイル・シェミャーキン
指揮:ヴァレリー・ゲルギエフ
収録:2007年1月2日 マリインスキー劇場

シュタールバウム/ねずみの王様:ヴラジーミル・ポノマリョーフ
シュタールバウム夫人/ねずみのお妃:エレーナ・バジェーノワ
マーシャ:イリーナ・ゴールプ
フリッツ/ねずみ軍の指揮官:アントン・ルコーフキン
ドロッセルマイヤー:アントン・アダシンスキー
くるみ割り人形:アレクサンドル・クリコフ
王子になったくるみ割り人形:レオニード・サラファーノフ
昆虫男:エドゥアルド・グーセフ
クリズリュー、ねずみの枢機卿:アンドレイ・ヤーコヴレフ
雪の女王:エカテリーナ・コンダウーロワ
(ディヴェルティスマンの個別クレジットはなし)

ここ数日「くるみ割り人形」マイブームで、明日もモスクワ音楽劇場の「くるみ割り人形」を観るのだけど、入手してから観る暇がなくて寝かせていたマリインスキーの「くるみ」を観ることにした。すでに観た友人たちからは、奇抜だとか、マリインスキーのダンサーの無駄遣いとかさんざん聞かされていたので、相当ひどいものを覚悟していたのだけど、そこまでではなかった。でも、やっぱりマリインスキーのダンサーがもったいなく思えるプロダクションだと思う。

いきなり精肉工場のようなところから始まることからして、ブラックなこの作品。肉がぶら下がっていたり、子供が腸詰で遊んでいたり、赤ちゃんをバケツに入れていたり(!?)と。いつもながらとても艶やかで美しいエレーナ・バジェーノワのお母さん、それからお父さんは二人の子供たちにとっても冷淡。マーシャたちはとても裕福なおうちの子供のはずなのに、マーシャの髪はぼさぼさのお団子だし、まるで「シンデレラ」のような扱いを受けている。ねずみのならず者が台所を仕切っていたりする。そしてとても不気味なドロッセルマイヤー。デヴィッド・リンチの映画に出てくる死神のような感じだ。彼の役割はなんだかよくわからないけど、とにかく不穏な空気を最後まで撒き散らしている。ここの登場人物はとにかくみんな冷淡で、唯一マーシャの味方になりそうなフリッツも、ねずみ軍の指揮官になっちゃうし。そんな中でマーシャのたった一人の理解者が、くるみ割り人形だったってワケ。

セットも衣装もとてもシュール。個人的には、マスクを多用しすぎていて顔が全然わからないことと、せっかくのプロポーションの良いダンサーたちにファットスーツを着せてしまっていること以外は、このダークなセンスはそんなに嫌いじゃない。でも、マスクの人だらけなのは、本当につまらない!

振付は、中途半端なコンテンポラリー風で、マッツ・エックっぽいところも出てくる。足はフレックスだったり、6番だったり、2番プリエがたくさん出てきたり、床の上でごろごろしたり、でもクラシック的なところもあって中途半端。1幕のマーシャはポアントではなくバレエシューズだし。特にマーシャの振付は上半身を倒したり、すごく複雑で難しそう。そんな振付を、イリーナ・ゴルプは良く踊っていると思う。彼女はクラシックよりコンテ寄りが得意なので、この役は合っているのではないかしら。辛い境遇にめげずに元気いっぱいに生きるマーシャ像だった。

印象的なのは雪のシーン。合唱の子供たちも舞台に上がるのだけど、蝋燭をもって青白いゴスメイクに目もうつろ。がたがたと歩いていて、まるで亡霊のよう。そして雪の精たちの衣装が黒。床に寝転がって足をバタバタさせたり、ひえ~って思ってしまった。雪というよりブリザードの精(もしくはウィリ軍団)で、最初は調子に乗っていて一緒に踊っていたマーシャも、あまりのスピードに危うく死亡。雪の女王のコンダウローワ、すごく威厳があってカッコよくて素敵。

2幕のディヴェルティスマンは、まあそこそこなのと、なんじゃこれは、というのが混じっている。キャストで誰が誰だか載っていないので判別が難しい。スペインの片方がイスロム・バイムラードフさん。彼は相変わらず脚がきれい。中国の男性ソリストは小柄だけどすごく上手い(多分、アンドレイ・イワーノフ)。通常アラブの踊りは「蛇の踊り」といって、壷の中から蛇女が登場するのだけど、この蛇女が、バレエダンサーには珍しいダイナマイトバディで、ものすごくエロティックで妖しく美しく、見ごたえもたっぷり(エカテリーナ・コンダウローワかな?)。でも、トレパック(「ペトルーシュカ」となっている)はこれまた着ぐるみ足先フレックス系で面白くないし、葦笛にいたっては蜂なのだ。

くるみ割り人形に、マーシャがキスすると、マスクが取れて王子サラファーノフがやっと登場。(残り15分のところ!)この「くるみ」、マーシャと王子のキスシーンがやたら多い。そしてパ・ド・ドゥもやたら色っぽい雰囲気。王子のヴァリエーションは比較的普通の振付。サラファーノフの、グランド・ピルエット・ア・ラ・スゴンドは軸も安定しているし、足先もきれいに伸びていてお見事。スポッティングする顔の向きを少しずつ変えていっていて正確この上なし。このときは調子も良さそうで、高さはそんなにないものの、トゥールザンレールもきれいにキマっていて軽やか。ゲルギエフの指揮は、PDDの時はものすごく走っていて、通常考えられないくらいの速さだったけど、サラファーノフも、ゴルプも、音に良くついていっていて、すごい音楽性、と思った。こういう普通の振付を見ると、ほっとする。金平糖のソロは、往時のソロと比較するとやっぱりコンテ色が強い。ゴルプの持ち味と相俟って、お姫様っぽさは全然ないけど、こういうのもありとは思う。このパ・ド・ドゥだけは幸福感があるのだけど、豪華なケーキが画面に現れるラストには、これまた最悪に後味の悪い結末が待っているのだった・・・。

この作品には、冷戦時代のソ連の独裁者による恐怖政治に対する批判とか、子供たちは大人の犠牲者だというメッセージがあるのだそうだけど、ダークな描写に、子供が見たら絶対泣きそう・・・そもそもホフマンの原作はホラー色が強いものだし、こういう作品があってもいいとは思うんだけど。私もゴス的なこういう作品は嫌いじゃない。マリインスキーじゃなくて、どこかコンテンポラリー系のカンパニーが上演すれば、意欲的な作品なんだと思って楽しめるはず。でも、天下のマリインスキーがやるのには向いているとは思えないし、美しいプロポーションと古典の技術を持つダンサーには、合っていないんじゃないかしら・・・。もったいないお化けが出そう。

でも、サラファーノフ、ゴルプ、それからゲルギエフのファンだったらきっと楽しめるんじゃないかと思う。サラファーノフの出番は15分だけど、彼の持てるテクニックは存分に発揮されているから(短すぎて暴れる方もいるかもしれないけど)。ゲルギエフはご満悦のようで、カーテンコールの時の表情も実に楽しそうだった。

チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》
マリインスキー劇場バレエ団 ゲルギエフ(ワレリー) チャイコフスキー

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コメント

「白鳥の湖」に続き、ゲルギエフだし「くるみ割り人形」だからと、購入したDVDですが、クラシカルなものではなく、かなりシュールな出来栄えに、こういう作品も上演するのかと、少しびっくりしています。
サラファーノフもゴルプも、パ・ド・ドゥは素敵だったけれど、後は、観る人によりますね。
私は、こういうのも、有りだと思います。

くみさん、こんにちは。
くみさんは、これは古典だと思って購入されたんですよね?観た人の感想を聞いていなければそう思っちゃいますよね!なかなかお子様に見せるのは?なバージョンです。
私も、こういうのはありだと思うし、サラファーノフの若い映像を残してくれたのは良かったと思うんですけどね。ゲルギエフのファンには嬉しい映像でしょうね~演奏は良いですから。

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