「BALLERINA マリインスキー・バレエのミューズたち」
「ロシアが世界に誇る三大プリマ・バレリーナ ザハロワ、ロパートキナ、ヴィシニョーワに 今注目のマリインスキー・バレエのホープ、ソーモワ、オブラスツォーワをくわえた豪華キャスト陣による、ロシアバレエ界初の ドキュメンタリー大作」
といううたい文句なので、ロパートキナやヴィシニョーワ、ザハロワがたっぷり見られるかと思ったら、それはちょっと違っていた。実際には、ソーモワとオブラスツォーワが成長する様子を中心に、前述3人についても、彼女たちの大先輩としてちょっと取り上げてみましたという風。したがって、これら3人の映像を観たいと思ってこのDVDを買った人はちょっと裏切られた気分になっちゃうかも。ただし、マニュエル・ルグリがヴィシニョーワとパリ・オペラ座で「マノン」を踊った時のリハーサル映像や、インタビュー(3回も登場!)があるから、ルグリのファンにとっては嬉しい驚きがあるかもしれない。
アリーナ・ソーモワがワガノワの卒業公演で「パキータ」を踊り、マリインスキーへの入団が決定するところから始まる。この頃のソーモワは今みたいな金髪ではなくてブルネット、垢抜けなくて素朴な印象。芸術監督のワジーエフは相当彼女を気に入ったようで、妻のチンチコワを教師としてあてがう。入団してただ一人、全米ツアーに同行させるなど、彼女に対する期待は並大抵のものではない。ルグリがインタビューで語っていたように、パリ・オペラ座は厳格な階級主義で、階級に応じた役柄が当てられるが、周囲が手を差し伸べて助けてくれる。ところが、マリインスキーでは、若手でもどんどん大きな役を与えるから、すごく大変だけど早く育つと。(でも、未熟なバレリーナの主演を見せられる観客の方はたまったものではないけど・・・)
いずれにしても、ソーモワは入団2年目くらいで早くもオデットを踊ることになって猛特訓を受けさせられている、その様子がたっぷりと収められていた。(だったら、なんであのヘンなクセ-脚を毎回6時のポーズまで上げてしまう-を直さないのかなあ。この映像の頃はそれほどクセはなかったのに)
もう一人の若手バレリーナとして登場するのが、ソーモアのひとつ先輩のエフゲーニャ・オブラスツォーワ。とても可憐な彼女は、稽古場の近くに実家があって、空き時間があると帰ってくるほど家族と仲がよい。ソーモワがオデット型なら、小柄なオブラスツォーワはジュリエット型というわけで、演技力の方はなかなかあるようだ。「ロミオとジュリエット」や「愛の伝説」のシリンの映像が少し流れるけど、若いのにドラマティックな役に深みがある。彼女が着ているワンピースがとても可愛い。そして、彼女はセドリック・クラピッシュ監督の映画「ロシアン・ドールズ」に出演して、映画に出るという夢をかなえたという。映画の中での結婚式のジェーニャ(オブラスツォーワ)の花嫁姿も実にキュートだった。
ロパートキナは、大きな怪我をして2年間休み、その間に結婚や出産をして、復帰を遂げるという時期に撮影がされていた。大きなブランクがあっても、焦りを微塵も感じさせないところがさすが。ほんの短い映像だけど、「シェヘラザード」と「ダイヤモンド」「愛の伝説」が観られたのは良かった。ロパートキナのショートヘア、とてもよく似合っていて素敵。シルエットで映る「瀕死の白鳥」も、美の極致としか言いようがない。彼女がリハーサルをしているところや舞台に出演していると、他のバレリーナたちが集まってきて凝視しているのがなんとも印象的だった。
ヴィシニョーワって、ワガノワ史上最高の点数をとった人だったと聞いてちょっと驚いた。
ヴィシニョーワは国際的に活躍するプリマというわけで、前述したようにオペラ座での客演が取り上げられる。ルグリが、彼女の演技力や知性を褒め称えている中で、「脚をちょっと高く上げすぎるけどね」と言っていたのがちょっと笑えた。ルグリってよほど語るのが好きなのか、ここでも話し出したら止まらなくなっていて、ファンにとっては嬉しい驚きがあるのではないかしら。ヴィシニョーワも語り好きなので、この二人は相性がすごくよさそう。ヴィシニョーワとイーゴリ・コルプの「マノン」リハーサル映像が最後にちょっと出てくるのも嬉しいおまけ。
ザハロワは登場時間がちょっと短くて。素顔で出てくるザハロワは本当に美人。すでにこの段階から、スターオーラがすごい。ゼレンスキーとの「白鳥の湖」のリハーサルシーンはかなり貴重。他にも、マリインスキーのクラスレッスンの様子などはたくさん見ることができる。
インタビューでは、他に、ワガノワの校長であるアルティナイ・アスィルムラートワ(今でも美人)やワレリー・ゲルギエフも登場する。ダンスのシーンが短くてぶつ切りなのは残念だけど、ドキュメンタリーとしてはなかなか面白かった。フランスで制作された作品なので、ナレーションはフランス語だった。
なお、映画館ユーロスペース1で、2007年11月3日から16日までこの作品がレイトショー公開されるとのこと。
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コメント
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こんにちわ。
DVD買うのをけちり、昨日、朝(土、日は朝も上映)観てきました。ドキュメンタリーとしては、解りやすく、真実味があり、感動すらしました。
ロパートキナの、音無しで窓辺で踊るシーン、私もゾク~としました。ルグリ先生、よくしゃべること!(笑)。が、バレエの場面が切れ切れで、なんか消化不良の気分。
けちったのに帰りに映画代の10倍近い服を買ってしまい、なにがなんだか ^^;。
投稿: マーキー | 2007/11/04 10:42
こんにちわ。
naomiさんのレビューを見て思わずポチッとしちゃいました。
おまけに買いそびれていた、ロパ&ヴィシのヴァリエーションレッスンも一緒に・・・
今週はロシアウィークにしま~す!!
おっと、土曜日はKでした。
投稿: F | 2007/11/05 17:39
マーキーさん、
あの駅から遠いユーロスペースまで行かれたのですね!確かにとってもわかりやすくて、マリインスキーってこんなところなんだ、ってのが良くわかりましたよね。ロパートキナのあの窓辺の瀕死の白鳥、ひたすら美しかったですね。
そうそう、ものすごく素晴らしいバレエのシーンがあるのに、それが切れ切れなので、もっと見せて!と欲求不満になっちゃう。
でもお洋服買えたのはいいな~!
投稿: naomi | 2007/11/06 02:06
Fさん、こんばんは。
お買い上げ、ありがとうございます(笑)とTDKコアの手先になっています。
この3本とも、見ごたえあって楽しめると思いますよ~きっとバレエの実技の方にも役に立つことでしょう。
K-Balletは祥子さんの白鳥かしら?それともカルメン?羨ましいです。。。観に行きたいんだけどさすがにもうお金がないです。
投稿: naomi | 2007/11/06 02:09