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2007年10月

2007/10/31

ABT 2008年METシーズンラインアップ

ABTの2008年METシーズンラインアップ公式発表が出ました。5月19日から7月12日まで公演が行われます。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=207

新作として、オレンジ・カウンティ・パフォーミング・アーツセンター(OCPAC)との共同制作、トワイラ・サープ振付による作品があるそうです。音楽は、「シカゴ」「チャーリーとチョコレート工場」「シザーハンズ」など映画音楽や「デスパレートな妻たち」「シンプソンズ」で有名なダニー・エルフマンにより新たに作曲されるとのこと。(エルフマンがバレエ音楽を作曲するのは初めて)そして衣装は、「In The Upper Room」と同じ、ノーマ・カマリ。プレミアは7月3日です。

リバイバルとしては、ハロルド・ランダーの「エチュード」(トワイラ・サープ作品との同時上演)と、「メリー・ウィドー」。4月のマリインスキー・バレエのニューヨーク公演でも「エチュード」が上演されるので、比べてみることができますね。

それ以外の上演作品としては「海賊」「白鳥の湖」「ドン・キホーテ」「眠れる森の美女」「ラ・バヤデール」「ジゼル」とのこと。注目キャストとしては、「ジゼル」の初日がニーナ・アナニアシヴィリアンヘル・コレーラが主演するということですね。ニーナのジゼルは見たことがないので、一度見てみたいと思うのですが。初日は7月7日なので、おそらくこの「ジゼル」でシーズンを終えた後、来日公演となるものと思われます。

出演予定のプリンシパルは、ニーナ・アナニアシヴィリ、マキシム・ベロツェルコフスキー、ホセ・カレーニョ、アンヘル・コレーラ、エルマン・コルネホ、イリーナ・ドヴォロヴェンコ、マルセロ・ゴメス、デヴィッド・ホールバーグ、パロマ・ヘレーラ、ジュリー・ケント、ジリアン・マーフィ、シオマラ・レイエス、イーサン・スティーフェル、ディアナ・ヴィシニョーワ、ミシェル・ワイルス。

ヴィシニョーワは出演しますが、マラーホフの名前が見当たりませんね。

もう一点気になるのは、ロベルト・ボッレが先日の「エトワール達の花束」の時のダンスマガジンのインタビューで、またABTに呼ばれたと言っていたのですが、現在のところは予定されていないということです。まだ、半年以上先のことなので、調整中なのかもしれませんが。

来年はABTの来日公演があるので、多分METシーズンには行かないと思いますが、「ラ・バヤデール」は観たいんですよね。イリーナ・ドヴォロヴェンコのガムザッティが観たいです。去年は、ニーナがニキヤを踊りましたが今年も出演するのかしら?それと、ロベルトがゲスト出演するのだったら、踊り慣れたマカロワ版のバヤデールが一番可能性が高いのではないかと思われます。

それ以外の演目は正直なところあまり惹かれません。「ラ・バヤデール」と、あまり評判のよろしくない「眠り」以外は全部ABTで観たことがある演目というのもありますが。フェリが引退してしまったことで、マクミラン作品はもうしばらく上演されない気がします。マクミラン作品がないとすると、NYまでABTを観る動機付けが相当減ってしまったというか、これからはロンドンに行ったほうがいいのかなって気がしてしまいます。新作がトワイラ・サープ&ダニー・エルフマンだったり、「眠り」が出来の悪いディズニー風らしいということだったり、どうもABTの方向性って最近特に変になってきている気がします。

オープニング・ガラは5月19日とのことです。まだ半年以上先ですが、ニュースが楽しみです。

なお、現在ABTはシティセンターで秋のシーズンが上演中です。チューダーの「葉は色あせて」の写真がとても素敵なので、これは観てみたかったな。直接チューダーに振り写しをされたアマンダ・マッケローが指導をしているのだそうです。

Lafkentgomes7lg


参考記事
http://www.voiceofdance.org/Insights/insights.trans.col.cfm?LinkID=38500000000000351

後、美しいスライドショーがNew York Timesで見ることができます。

ミルピエとイーロによる新作
http://www.nytimes.com/2007/10/29/arts/dance/29amer.html?_r=1&oref=slogin

「葉は色あせて」「Ballo Della Regina」のレビュー。
http://www.nytimes.com/2007/10/30/arts/dance/30maca.html?_r=2&oref=slogin&oref=slogin


追記:キャスティングも出ていました。
http://www.abt.org/performances/Calendar_Top3.asp
をご覧ください。

今シーズン、エルマン・コルネホがようやくMETで王子様デビューします。6月11日マチネの「ドン・キホーテ」、6月18日ソワレの「眠れる森の美女」、7月10日の「ジゼル」です。相手役はすべて、シオマラ・レイエス。

また、数日、TBA(キャスト未定)の日があります。6月18日マチネの「眠り」6月26日の「ラ・バヤデール」などです。このあたり、ゲストが入ってくる可能性があるかもしれませんね。なんともいえませんが。ニーナは、「ドン・キホーテ」、「白鳥の湖」、「ジゼル」を踊ります。すべてアンヘル・コレーラがパートナーです。

2007/10/30

Kings Of The Dance/ラリ・カンデラキ/韓国バレリーナ騒動

一昨年アメリカで上演されて大好評だった「Kings Of The Dance」公演、今年はモスクワで開催されました。ニコライ・ツィスカリーゼ、アンヘル・コレーラ、ヨハン・コボー、イーサン・スティーフェルという当代きってのスターダンサーによる贅沢な公演です。

ヨハン・コボーは東京バレエ団の「真夏の夜の夢」を怪我で降板しましたが、この公演をごらんになったけいちかさんの「けいちかのおもちゃ箱」のBBSによると、4人で踊るウィールドン振付の「For 4」は、ドミトリー・グダノフが代役を務めたものの、「牧神の午後」」(Tim Rushton振付)はコボーが踊ったそうです。おそらくはアシュトンほど大変な振付ではなかったのでしょうね。けいちかさんの感想もぜひお読みください。

この公演のニコライ・ツィスカリーゼのとっても素敵な写真が、AFP通信社の写真ニュースサイト
http://www.afpbb.com/article/entertainment/news-entertainment/2304316/2288426
で見ることができます。会員登録(無料)をすれば、大画面でこれらの写真を見ることができます。

*********************

このAFP通信のサイト、なかなか面白いニュースを掲載してくれます。他のニュース媒体でも話題になっていますが、韓国国立バレエ団のプリンシパルであるキム・ジュウォンが、韓国版VOGUEで、同僚の男性ダンサー、イ・ジョンウォンとヌードになっている写真が掲載されたということで、減給処分となったそうです。上半身ヌードでトウシューズを履いたまま、男性ダンサーの膝の上に座っている写真なのだそうですが、かなり韓国で話題となったそうです。ヌードになったことが問題ではなく、事前の許可なしで雑誌に出たことを問われたそうなのですが(と聞くと、アンアンでのダルビッシュ選手のヌード騒動を思い出しますね)、VOGUEだったらきっと、アーティスティックな写真であるだろうに、儒教の国、韓国らしい出来事ですね。海外では、多くの有名バレリーナやバレエダンサーが、芸術写真で美しい裸体を披露しています。

この朝鮮日報の記事にある写真を見ると、キム・ジュウンさんはとても清楚な美人ですね。
http://www.chosunonline.com/article/20071024000048

キム・ジュウォンは、昨年、かの権威あるブノワ賞(Benois de la Danse)を受賞し話題になったという文字通りトップのバレリーナなのだそうです。

*********************

ところで、このAFP通信の方の記事についている写真が、キム・ジュウォンではなく、なぜか、グルジア国立バレエのラリ・カンデラキの「ジゼル」の写真なのです。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2303736/2288148

ラリ・カンデラキといえば、7月のグルジア国立バレエの来日公演で、アンヘル・コレーラと「ドン・キホーテ」で共演し、素晴らしいテクニックを見せてくれた素敵なバレリーナ。カンデラキは、韓国ユニバーサル・バレエのブダペスト公演に客演したとのことです。とても美しく幻想的な「ジゼル」の写真です。彼女にはいつか、日本でも「ジゼル」を踊って欲しいですね。

2007/10/29

NHKニューイヤー・オペラコンサート

新春恒例のNHKニューイヤー・オペラコンサート。
今回は「華麗なる異国趣味と永遠の名旋律」と題して、歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」や、歌劇「セビリアの理髪師」から「今の歌声は」など、馴染み深く、美しい旋律の数々を披露します。

とのことです。なかなか魅力的な出演者や演目なんですが、私の注目としては、「イーゴリ公」の「ダッタン人の踊り」が入っていることですね。谷桃子バレエ団出演とあるので、谷のダンサーで踊るのでしょうか?この日はミラノにいて日本にいないので見られませんが、毎年NHKで生中継で放送されるので、ちゃんと録画予約しなければ。楽しみですね。(もうひとつ恒例のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートには誰が出るんでしょうね)

http://www.nhk.or.jp/event/2007100401.html

公演日 2008年1月3日(木)
会場 NHKホール 
席種・料金 S席\8,500/A席\7,000/B席\5,000/C席\2,500
出演者 指揮:飯森範親 出演:臼木あい(S)/木下美穂子(S)/幸田浩子(S)/砂川涼子(S)/緑川まり(S)/森麻季(S)/小山由美(Ms)/林美智子(Ms)/佐野成宏(T)/樋口達哉(T)/福井敬(T)/水口聡(T)/甲斐栄次郎(Br)/黒田博(Br)/堀内康雄(Br)/彭康亮(Bs) 演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 合唱:二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部 バレエ:谷桃子バレエ団 司会:中條誠子アナウンサー

曲目・演目
プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」
ボロディン/歌劇「イーゴリ公」から「ダッタン人の踊りと合唱」
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」から「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」
サン・サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」から「あなたの声に心は開く」
ロッシーニ/歌劇「セビリアの理髪師」から「今の歌声は」
ジョルダーノ /歌劇「アンドレア・シェニエ」から「ある日、青空をながめて」
ほか

一般発売日 10/29(月)10:00

2007/10/28

10/24東京バレエ団「真夏の夜の夢」/「バレエ・インペリアル」

東京バレエ団
「真夏の夜の夢」/「バレエ・インペリアル」

2007年10月24日(水)19:00開演  ゆうぽうとホール

「バレエ・インペリアル」
吉岡美佳‐木村和夫
田中結子
大嶋正樹‐中島周  乾友子‐高木綾
ピアノ:志田明子 (「バレエ・インペリアル」)

幕が開くと斜めに舞台を横切るように男性ダンサーと女性ダンサーのコール・ド(群舞)がポーズしている。まず思ったのが、男性コール・ド、ちっちゃい・・・・。何しろ女性コールドより小さく見えるくらいなのだから。中には野辺さんのように背の高い人もいるにはいるのだけど・・・みんなプロポーションも悪いし髪形も変だし、つま先は汚いし。反面、女性群舞は統率が取れていて良く揃っているし、プロポーションもきれいな人が増えてきた。ただ、音に合わせようとするあまり踊りが小さくまとまってしまった感じがあったのが惜しい。全体的には、女性群舞はとても綺麗で良かったのではないかと思う。

ソリストは田中結子さん。うーむ、ちょっと踊りがパキパキしすぎていてあまり良くなかったのではないかな。ポアントの音はあまりさせていないのだけど、腕の使い方が直線的過ぎだし、音楽が聞こえてこない(26日の奈良さんのほうがよほど良かった)。吉岡さんが出てきて実感したのだけど、やっぱりその点吉岡さんはポールドブラが美しいし、繊細で透明感がある。少々不安定なところがなくもないのだけど、それがどこか儚い美しさにつながっていくのだ。木村さんは相変わらずつま先から脚のラインが素晴らしくきれい。それにしても、この間の「レ・シルフィード」もそうだったけど、いつもすごい悲壮感を漂わせて、切ない表情で女性ダンサーを追いかけているのね、木村さんは。夢なのか現なのか、とてもドリーミーな空気をまとって、彼女はどこに行ってしまったのか、と吉岡さんが去っていったあとをうっとりと追っていく木村さん。その後で4人の女性のコール・ドが登場してバランスしているのだけど4人のうち2人がぐらつく・・・。

田中さんと男性ダンサー二人のパ・ド・トロワ。中島さん、大嶋さんとプリンシパル二人を投入しているのに、この二人が踊っている時間がすごく短くてもったいなかった。しかも、この二人の美質が生かされたような振付ではなかったし。カブリオールは二人ともきれいだった。

木村さんの終盤のソロは、5番と2番のアントルシャ・シスを繰り返すもの。この辺の脚捌系はお手の物。華やかで素敵な舞台だったけど、でも東京バレエ団に向いている演目かどうかはちょっと疑問を感じた。振付にあまり魅力を感じないのだ。チャイコフスキーのピアノ協奏曲2番を使っているのだけど、演奏にミスが多かったことも残念。


「真夏の夜の夢」
タイターニア:アリーナ・コジョカル
オベロン:スティーヴン・マックレー

パック:古川和則
ボトム:高橋竜太
ハーミア:西村真由美
ライサンダー:平野玲
ヘレナ:井脇幸江
デミトリアス:高岸直樹
村人:野辺誠治、松下裕次 、横内国弘、氷室友、長瀬直義
エンドウの花の精:高村順子
蜘蛛の精:長谷川智佳子
カラシナの精:乾友子
蛾の精:佐伯知香

指揮:デヴィッド・ガーフォース
オーケストラ:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
合唱:TOKYO FM 少年合唱団 (「真夏の夜の夢」)

ロイヤル・バレエから借りてきたという、深い森を表現した舞台装置が美しい。妖精たちが登場。ものすごく足音がばたばたしているのにはちょっと興をそがれたが、でもこういうばたばたした妖精っていうのもありなのかも。薄緑色の衣装はとっても可愛い。舞台奥でポーズをとるのが、オベロン役のスティーヴン。上半身の使い方、姿勢や腕のポージングがとても様になっている。貫禄すら感じさせるほどで、とても初役は見えない。

そこへ、インド人(実際には日本人だけど)のお小姓を伴ったアリーナのタイターニアが登場。小柄で愛らしいアリーナは妖精そのもので、金髪の巻き毛もよく似合うのだけど、オベロンと対峙する姿はとてもセクシーで、"女"の部分を感じさせると同時に、気の強さも現れている。いつものアリーナとはちょっと違った魅力。女王の貫禄がある。テクニック面はとても強く、前と後ろにバットマンを繰り返すところでも、驚くほど柔らかい背中と高く上がる脚のインパクトが強い。タイターニアという役では、こんなに脚を高く上げなくてもいいのでは、とも思うけどこれがぴったりと音に合っているところがすごい。二人でしばしお小姓の取り合いをする。対抗するマックレーのオベロンは、さすがにアリーナと比較すると若い感じなのだけど、少なくとも気概はアリーナには負けていなくて堂々と渡り合っている。マックレーは背は大きくないのだけど、腰の辺りから脚、特に太ももにかけてのラインがほっそりとしていて非常に美しい。身体能力に優れているようで、脚がきれいにすっと高く上がって気持ちいい。視線の送り方、見得の切り方も魅力的で、若草のような色気を感じさせる。あごに手を置くポーズも、背中を客席に向けながら腕を後ろに引くポーズも、どれもゾクゾクするほど素敵。

今日のパックは古川さん。明るくいたずらっぽくてひょうきんなキャラクターはパックにぴったり。よく体が動いていて楽しそうにぴょんぴょん跳ねているし、マックレーの演技への掛け合いやレスポンスが良い。会心の演技を見せてくれたと思う。開脚ジャンプも、脚が180度以上開いて高く跳んでいる。

そして2組の恋人たち―西村さんと平野さん、井脇さんと高岸さん。この4人の芸達者振りが素晴らしい。日本人のダンサーはコミカルな演技が苦手ということは、パックとこの4人にはまったく当てはまらないのが判る。特に女性陣二人は最高!踊りながらも演技をするというのはなかなか難しいことだと思うのだけど、それを見事にこなしているのが、この4人プラス1人なのであり、日本のバレエ界の至宝といってもいいくらい。個人的には、とっても可愛らしく、しょぼんとしたり、ふくれたり、驚いたりする表情が豊かな西村さんが特に素敵だった。踊りはいつものふんわりと鷹揚で美しいままなのに、笑える演技も達者なのよね。平野さんは、あんなにさわやかなハンサムで、踊りだって端正なのにいつもはキャラクテールが多いけど、久しぶりに二枚目半の役柄が見られて嬉しい。

キャラクテールで絶対に忘れてはいけないのが、ポアントを履いて踊るロバ、ボトム。身体能力が優れていて芸達者な高橋竜太さんだったので、安心して見ていられた。音に合わせてリズミカルに踊ったり跳んだりする姿が可愛い。しかも、今回のロバのかぶりものは、動きに合わせて口がパクパク動くのだ!この動くところがもう可愛くて可愛くて!パンツの丈が長いのか、ポアントはほんの先っぽしか見えていなかったけど、逆にヒヅメっぽく見えていいのかも。かぶり物を取った高橋さんの表情もコミカルでキュート。

そのロバ=ボトムに、惚れ薬をかけられたせいで恋してしまうタイターニア、甘える姿がとても色っぽくてドキドキしちゃった。小柄で愛らしいアリーナがセクシーモードになっているから、ますます見ちゃいけないものを見てしまった気分になっちゃう。ボトムとラブラブなアリーナを見て大慌てする妖精たち。彼女たちの表情が、またすっごく可愛い。妖精チームでは、軽やかで伸びやかな佐伯知香さんと、愛らしく芸達者な高村順子さんが良かった。

(つづく)

2007/10/25

「真夏の夜の夢」初日簡単な感想

パソコンの調子がどうにも悪くて、携帯から取り急ぎの投稿です。

スティーブン・マックレーのオベロン、とても良かったです。妖精王らしい威厳があって堂々としており、目線の使い方もばっちり。上半身が雄弁かつ優雅でなめらか、脚はほっそりと美しくてよくアンドゥオールしており、アシュトンの細かいパもほぼこなしていました。跳躍や回転などテクニックが達者なのは織り込み済みでしたが、身体がとても柔らかいのに驚きました。オベロンのメイクが良く似合うきれいな顔立ちをしています。

しかしマックレー君は予想以上に小柄で、カーテンコールの時に古川さんと並んでも小さかったので、アリーナ・コジョカル以外と組めるのかが少し心配です。アリーナとのパートナーシップも良かったと思いますが、最後のパドドゥは緊張しているのが伝わって来ました。ちょっと細かいミスもあったような。でも初役だとすれば、実に見事なパフォーマンスだと思います。

カーテンコールでも最初はちょっと堅かったようですが、アンソニー・ダウエルが舞台上に出てきたときにようやく緊張が解けて、嬉しそうな表情を見せてくれました。

アリーナは、堂々とした女王ぶりで、可憐なのだけど時には色っぽく、ちょっと姉さん女房のようなところもありました。大人の女性の強さを持っているけど、軽やかで、まさに妖精のようでした。金髪の巻き毛のカツラも良く似合います。アリーナを包んでいる空気が、もう人間のものではないのですから!さすがに経験の差か、存在感は際立っていたし、アシュトンのパの踊り方、脚捌きも正確で音楽性豊か、お見事です。小柄なのに体の使い方が大きいのですよね。若いマックレー君を巧みにリードしていて、素晴らしい舞台に仕上げてくれました。

ハーミア、ヘレナ、ディミトリアス、ライサンダーを演じた4人は実に楽しそうに演じていました。特に井脇幸江さんと西村真由美さんの掛け合いはかわいらしくて、はじけていて笑わせてもらいました。恋人ライサンダーは惚れ薬のせいでヘレナのほうを向いてしまって、お前なんか要らない!って邪魔モノ扱いされてふくれる西村さんの可愛いこと!この日の恋人たちのキャストは、高岸さんといい、平野さんといい、そしてもちろん井脇さんといい、濃いキャラの人が多くて、日本人とは思えないくらいノリが良く、面白かったです。

もちろんパックとボトムを忘れてはいけません!古川さんのパックは、いかにもいたずらっ子の妖精っぽい、お茶目でやんちゃでかわいいパックでした。跳躍もとても冴え渡っていたし、オベロンとシンクロするところのシェネもお見事。彼の持ち味に本当に合っていて、生き生きと演じていて気持ちよかったです。高橋竜太さんのボトムは、ポアント捌きが見事。小柄なせいか、ちょっとズボンの丈が長くてポアントが先っぽしか見えなかったのがちょっと残念だけど、持ち前の身体能力をいかしてコミカルにリズミカルに踊ってくれて、楽しかったです。

(続く)

昨日ご紹介した古川和則さんのブログで、終演後の三人の写真が載っています。アリーナの可憐なこと!古川さんのパックも、茶目っ気たっぷりでかわいく、すごく良かったです♪

2007/10/24

ロイヤルのロミジュリ/古川さんブログ/井脇幸江さん

話題のスティーヴン・マックレー君ではないのですが、ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエット」のジョン・ロス氏による写真がballet.co.ukにアップされていました。イヴァン・プトロフ君のロミオもかわいいですね。そして、ソリストに昇格した蔵健太さんが、ベンヴォーリオを演じています。さらに、マシュー・ボーン版「白鳥の湖」でザ・スワン/ザ・ストレンジャーを演じたトーマス・ホワイトヘッドがロイヤルに復帰してのパリス役です。なかなかワルそうなパリスだけど素敵ですね~。

http://www.ballet.co.uk/gallery/jr_royal_ballet_romeo_and_juliet_roh_1007

***********

小林十市さんのブログで知ったのですが、十市さんのルードラの後輩で、東京バレエ団の古川和則さんがブログを始められました。今東京バレエ団の公式ブログの更新が中止されていて残念なのですが、その分の情報をここで補うことができます。
http://kazunori-furukawa.blog.ocn.ne.jp/blog/
真夏の夜の夢の舞台リハーサルの模様や、パックのメイクをした古川さんの写真を見ることができて、とても楽しいです。パックのメイク、とっても似合っていますね。舞台稽古の写真でうっすらと見えるのは、マックレーくんのオベロンかしら?古川さんは20日に30歳となられたそうですね。おめでとうございます!

そしていよいよ明日は、「真夏の夜の夢」、古川さんのパックも、マックレー君のオベロンも、もちろんアリーナのタイターニアも楽しみですね。

***********

「真夏~」ではヘレナを踊る、古川さんの大先輩・井脇幸江さんが、ご自身の結婚と、9月のニジンスキー・プログラムでのシャルル・ジュドとの共演についてご自身のサイトで語っておられます。
ジュドさんとの共演がまるでひとつの奇跡のような、素晴らしいものになった理由がよくわかります。本物の芸術家というのは、こういう人のことをいうのだろうな、と思いました。とともに、それを見事に受け止めることができた井脇さんも、得難い、素晴らしいバレリーナであるということも。そんなかけがえのない芸術作品を見ることができたことに感謝したいと思います。

2007/10/23

海外バレエネタいろいろ

週末にかけての海外ニュースを色々拾っていたら、面白い記事がたくさんありました。

ロンドンはといえば、スティーヴン・マックレーのロミオデビューの記事がたくさん。(「ロンドン発 バレエ・ブログ」のNaokoさんのレビューもぜひ合わせてお読みください)

NBSのサイトには、マックレーくんのインタビューも掲載されています。ロミジュリの振付は一から1週間で覚えた、「真夏の夜の夢」も、もう完全に振りは入ったとのことで、いよいよ楽しみになってきましたね。

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ニューヨークはといえば、クリストファー・ウィールダンの新カンパニーMorphosesの公演の話題。New York Timesでは、2公演のみ復活したダーシー・バッセルとジョナサン・コープらの美しいスライドショー写真を見ることができます。2回も同じ新聞に批評が掲載されていることから、どれほど注目されていたかがわかるというものの。ただし、肝心の内容に関しては賛否両論あるようです。ウィールダンの振付家としての才能については文句はないけれども、感動が薄い、とかフォーサイスほど革新的ではない、とか女性ダンサーの使いかたが物足りない、とか。NY公演の出演者がとにかく豪華なことこの上なかったのだけど、将来彼が自分のカンパニーのメンバーを雇い入れた時に、このレベルの公演を打てるかどうかが問題なのでしょうね。

http://www.nytimes.com/2007/10/19/arts/dance/19whee.html?_r=3&ref=arts&oref=slogin&oref=slogin&oref=slogin

PonさんのAppluase!Applauseでも、レポートがありますのでぜひお読みください。

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NYといえば、もうひとつ注目の公演。BAMで行われたナチョ・ドゥアト率いるスペイン国立ダンスカンパニーです。演目は、新国立劇場が上演した「ポル・ヴォス・ムエロ」と、カストラート歌手をモチーフにした「Castrati」、そしてパリ・オペラ座のレパートリーにもなっている「White Darkness」。Village Voiceの記事では、「White Darkness」の美しい写真を観ることができます。批評を読むと、めちゃめちゃ観たくなります。

私がよく読んでいる面白いブログに、ボールルームダンスのダンサーでありながらバレエも好きというTonya PlankさんのSwan Lake Samba Girlというのがあります。このブログで、公演後のナチョ・ドゥアトのQ&Aセッションの模様がレポートされているのですが、かなりの波乱があったようです。「Castrati」の去勢のテーマにからめた、多分に政治的な問いかけをした女性がいたとのこと。ジェンダーを舞台で扱うことについて、理解できる観客とできない観客がいるということなのですね。

**************

イギリスのTelegraphに載った記事で、また興味深いものがありました。
230年のボリショイの歴史の中で、イギリス人としては史上二人目のボリショイ・バレエ学校の生徒Henry Perkinsくんが、イギリス政府からの児童扶助を打ち切られたというニュースです。彼がEU以外の学校に通っているということから、月額72.4ポンドの扶助を受けられなくなってしまったそうです。16歳のヘンリー君は2006年にボリショイ・バレエ学校に入学し、BBCが彼を追ったドキュメンタリーを撮影するなど、注目されている存在。しかし、ボリショイ・バレエ学校の学費は年間1万5千ポンドと非常に高額です。それでも、ロイヤル・バレエスクールよりは安いそうですが。子供がイギリスに住んでいない移民でも児童扶助が受けられるのに、なぜうちの子が、と両親は憤りを隠せない様子。移民の子供が一度もイギリスの土を踏んでいなくても、EUに住んでいれば扶助は受けられ、政府は月100万ポンドを移民向けの扶助に拠出しているとのこと。

移民問題はEU全体にも大きな影を落としており、少し前には、イングリッシュ・ナショナル・バレエのプリンシパル、シモーネ・クラークが移民政策に対して強硬に異議を唱えている極右政党・British National Partyの党員であったことが大きな話題となりました。願わくば、ヘンリー君は政治的なゴタゴタに巻き込まれることなく、ボリショイで大きく羽ばたいて欲しいですね。彼のボリショイでの日々を追ったドキュメンタリーは、10月23日火曜日夜10時35分よりにBBC1で放送されるそうです。

スティーヴン・マックレー君も、ヘンリー・パーキンス君も、イギリスの新聞では「ビリー・エリオット」になぞらえられる存在。やはりあの映画の影響でバレエを踊る男の子たちがいることを知った人が多いということなのでしょうね。

2007/10/21

アレクサンドル・メルニコフ オペラシティ・リサイタル

アレクサンドル・メルニコフ オペラシティ・リサイタル 

<日時>2007年10月16日(火)19:00開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
■シューマン:交響的練習曲 作品13
■スクリャービン:幻想曲 ロ短調 作品28
■スクリャービン:2つの詩曲 作品69
■プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第6番「戦争ソナタ」
<演奏>
■アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)

ジャパン・アーツの夢倶楽部会員というのになっていると、時々、会員向けにご招待の案内がある。いくつかの公演が列挙されていて、第3希望まで出すと、抽選でチケットが当たるってワケ。中にはオペラとかまであるけどさすがにそういうのは枚数が少なくて。というわけで、第2希望で出していたメルニコフのリサイタルチケットが当たった。恥ずかしながら、メルニコフもほとんど知らなかったし、スクリャービンという作曲家すら知らなかったんだけど、聴けてすごく良かった。未知の世界との出会いを体験するのって、幸せ~。

東京オペラシティ コンサートホールはそれほど大きい会場ではなく、シューボックス型で内装はすべて木でできている。天窓があるので昼間のコンサートはきっと気持ちがいいだろうな。

メルニコフは1973年生まれとまだ若手。去年のショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲でそのテクニックに思わず舌を巻いた天才ワディム・レーピンとのパートナーシップで知られていたとのこと。舞台に上がった彼は、かなり大柄で、どこか哀しげな大きな黒い瞳が印象的だった。やけに重苦しいオーラをまとった彼は、ピアノの前に座ると、しばし呼吸を整え、楽譜もなしに弾きはじめる。残念ながら、席が右側だったので、手がピアノの陰になってしまっていて良く見えない。しかし、凄いピアニストであるのはすぐにわかった。

■シューマン:交響的練習曲 作品13

「練習曲」というタイトルではあるけど、ピアノという楽器の持つ可能性を実感させられた。こんなにも一台の楽器で様々な音が出せるとは!ポリフォニックというかまるでオーケストラを聴いているかのよう。時には華麗かつ軽妙で、時にはヘヴィーで、全編を貫くのは哀愁漂う、歌うような旋律。かと思うと、笑っちゃうような、限界に挑戦するかのようなとんでもないバカテクが出現して、思わす唖然としてしまうほどの情熱的なエネルギーが放出されていて、いったいこの人何者!と思ったほど。ピアニッシモからフォルテッシモへのレンジが広い!
曲順は、主題矢印練習曲1~7、遺作変奏曲4,5、練習曲8~12。
もう、第一部を聴き終わったところで、私のほうがぜーぜーと息も絶え絶え。

■スクリャービン:幻想曲 ロ短調 作品28
■スクリャービン:2つの詩曲 作品69

スクリャービンという作曲家を、前述の通り知らなかったのだけど、素晴らしい~!とても気に入った。とてもドラマティックで神秘的で美しく詩的なのに、ちょっとジャズっぽいような軽やかさも同居。でも、時々メルニコフ独特のパッションが爆発する感じで鮮烈。ここでもポリフォニックで、豊かな裏メロディが聞こえてくるのがいい。

■プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第6番「戦争ソナタ」

これまたプロコフィエフ!ザ・ロシア!というアクの強い難曲なのだけど、ダイナミックで時には奇抜なメロディも飛び出し、強烈な印象。不協和音の嵐。ばらばらになりそうな音符たちを巧みに制御しつつも、時には振り切れてしまうようなパワフルでパッショネイトな奔流を作り上げていたメルニコフ、本当に凄いわ~。気持ちいいほどの切れ味。楽章の間ですでにブラヴォーが飛んでしまうほどだもの。4楽章は、もう凄まじいまでの力演。激しいことこの上ない曲を、さらに情熱のすべてを出し切って弾きまくってくれた。

アンコール
ショパン 24の前奏曲より No.6ロ短調
                 No.3 ト長調
シューマン:子供の情景より No.1「知らない国」

2度ものアンコールに応えてくれたメルニコフだけど、この2曲は打って変わって爽やか。最後にちょっとだけ笑顔を見せてくれたけど、大きな目を伏せ気味に、重い足取りに沈んだ風情でちょこんと礼をするところはなかなか可愛いかった。

会場でスクリャーピンのCDをお買い上げ。疲れていたのでサイン会には並ばなかったけど、サインもらえばよかったかな。。。

なんて私のつまらない感想を読むよりも、ぜひ「本日のムッシュー」のokamo-koさんの素晴らしいレポートをお読みください。ミハイル・プレトニョフ&東フィルとのプロコフィエフも素晴らしかったようです・・・嗚呼。聴き逃して後悔の真っ最中です。
ちなみに、今回のリサイタルにはテレビカメラが入っていました。放送されるのが楽しみです。クラシックの番組、あまりちゃんとチェックしていないから見逃さないようにしなくちゃ。

買ったCDはこちらですが、素晴らしい録音です。2006年と新しいです。ぜひともお勧め!
「Alexander Scriabin Piano Sonata.2, 3, 9, Etc」Melnikov
収録曲はスクリャービンの「前奏曲ホ短調」「ソナタ2番」「2つの詩曲」「幻想曲ロ短調」「アルバムの綴り」「2つの小品」「ソナタ3番」「5つの前奏曲」「皮肉」「ソナタ9番“黒ミサ”」「マズルカホ短調」
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1334005

パリ・オペラ座来日公演「ル・パルク」東京公演発表

愛知公演の情報だけ先に出ていましたが、楽天チケットのサイトに、東京公演について出ました。
キャスト等はまだ発表されていません。

■日仏交流150周年記念 パリ・オペラ座バレエ団 2008年公演
アンジュラン・プレルジョカージュ振付「ル・パルク」全3幕

<東京公演>
Bunkamuraオーチャードホール

5月23日(金)19:00 /5月24日(土)14:00
5月24日(土)19:00 /5月25日(日)14:00

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

S席:25,000円 A席:22,000円 B席:19,000円 C席:15,000円 D席:11,000円 E席:7,000円

http://ticket.rakuten.co.jp/pob/

発売日 2007年12月22日(土) 一般発売
先行発売 12月15日(土)10:00~

お問い合わせ 楽天エンタープライズ 03-6387-0140(平日10:00~17:00)

<愛知公演>
公演日 2008年5月29日(木)/5月30日(金)
【開場】18:15 【開演】19:00
会場 愛知県芸術劇場大ホール
料金 S\23,000 A\20,000 B\17,000 C\14,000 D\10,000 E\8,000

http://hicbc.com/event/nimf/about/31th/20080529/index.htm

▼お問い合わせ
CBCイベント事業部 TEL : 052-241-8118 (10:00-18:00 土・日・祝日休み)

▼ 一般発売
第31回名古屋国際音楽祭 チケット一般発売開始 12月11日(火


東京公演は、昨年の「白鳥の湖」「パキータ」と同じ値段の25000円という強気な価格設定ですね。あれからずいぶんとユーロは高くなっていますが・・。「ル・パルク」はコンテンポラリー作品の割には舞台装置も凝っていますが。作品はなかなか面白くて、私自身は好きなんですが、このお値段は本当に信じがたいほど高いですね。そうおいそれと買えません。しかもオーチャードホール。B席でも19,000円・・・。

そして、誰もが気になるのは、キャストのこと。発売前にキャストを出してくれないと、恐ろしくて買えません。ルグリさんがご自身のサイトで「ル・パルク」に出演と書かれているので、注目は、果たしていつルグリさんが出演するかということでしょうね。その日だけチケットが売れる気がします。いやはや、夜中にビックリしました。

ちなみに私、家人と年末にパリで「くるみ割り人形」「パキータ」を観に行くのですが、値段が一番高いお席で70ユーロと60ユーロでした。年末で航空運賃はべらぼうに高いのですが、日本の半額以下で観られる計算になりますね。

追記:24日、25日は新国立劇場のラ・バヤデールと重なっています。マイレンファンの私は楽日はパスすることになりそう。

2007/10/20

「マラーホフの贈り物」発売情報/ダンサーの怪我

バレエの祭典会員向けに案内が来ました。しかし、あまりにも未定の要素が多く、追加券を買うにも躊躇してしまいます。

出演者
ウラジーミル・マラーホフ、ポリーナ・セミオノワ、マリーヤ・アレクサンドロワ、イリーナ・ドヴォロヴェンコ、ヤナ・サレンコ、セルゲイ・フィーリン、マキシム・ベロツェルコフスキー、ズデネク・コンヴァリーナ

演目
Aプロ 
牧神の午後(ニジンスキー版)
パキータ(マラーホフ&ポリーナ)
ヴォヤージュ(マラーホフ)

Bプロ
「牧神の午後」(ロビンス版、マラーホフ&ポリーナ)
「これが死か」(マラーホフ、ポリーナ、サレンコ)
ソロ(未定)マラーホフ

Aプロ  会場:ゆうぽうとホール(五反田)

 2月9日(土)    6:00p.m.
 2月10日(日)   3:00p.m.
 2月11日(月・祝) 3:00p.m.

Bプロ  会場:東京国際フォーラム ホールC(有楽町)

 2月20日(水)   7:00p.m.
 2月21日(木)   7:00p.m.
 2月22日(金)   7:00p.m.

(演奏は録音テープ使用)
S席¥16,000  A席¥14,000


まだ未定の部分が多いですね。
地方公演では、フォーゲルやオシポワ、ワシリエフの名前も出演者の中に入っていたんですが、彼らはどうなんでしょう・・・アレクサンドロワ&フィーリンの参加は嬉しいことですが、若手は出なくなっちゃったのかしら。 会員券および追加席の申し込みは30日(火曜)必着とのことです。マラーホフの怪我の加減が気になります。

一般発売は11月17日(土)だそうです。

****************

ダンサーの怪我といえば、朝日新聞に興味深い記事が載っていました。asahi.comで読めます。

ダンサー孤独な健康管理 熊川哲也さん 靭帯断裂から5カ月

熊川さんのインタビューが中心ですが、マラーホフ、新国立劇場の湯川麻美子さん(コメントつき)、芸術家の健康を支援するNPO法人「芸術家のくすり箱」、医師の葦田ひろみさんの話しも載っています。熊川さんは、復帰時期は当初、「手術から6カ月後」としていたが、「6カ月後の自分と相談して決める」とのことで、手術そのものはうまく行ったようです。ちょっと一安心しました。

ダンサーの体の動きや生活事情を知る医師が少ないという事実もありますが、より長く順調なキャリアをダンサーが送ることができるよう、このあたりの取り組みが進んでくるといいですね。健康な身体あってのダンスなのですから。

マリス・リエパ メモリアル・ガラ

ballet.co.ukのフォーラムを見ていたら見つけた情報。

2008年2月24日に、ロンドン・コロシアムでマリス・リエパを偲んでのガラ「Flight」が開催されるそうです。

まだサイトに情報は載っていませんが、

English National Operaのサイトでチケットを扱う予定。
www.eno.org
Box office 020 78459500

ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエット」のプログラムの広告」に載っていたという出演者が超・豪華です。

マリーヤ・アレクサンドロワ、フェデリコ・ボネッリ、アリーナ・コジョカル、ウラジミール・テレヴィアンコ、ヴィヴィアナ・デュランテ、セルゲイ・フィーリン、ヨハン・コボー、イワン・コズロフ、サラ・ラム、イルゼ・リエパ、アニエス・ルテステュ、ウリヤーナ・ロパートキナ、デヴィッド・マッカテリ、ジョゼ・マルティネス、マルク・ペレトーキン、セルゲイ・ポルーニン、タマラ・ロホ、ヴィクトリア・テリョーシキナ、ニコライ・ツィスカリーゼ、イワン・ワシリエフ、イーゴリ・ゼレンスキー。

世界バレエフェスティバル並か、それ以上の豪華な顔ぶれですね。なじみのない名前、セルゲイ・ポルーニン君は、2006年のローザンヌ・コンクールで1位になって、今年ロイヤルに入団したばかりのウクライナ出身のダンサーです。このイベントに呼ばれるほどの将来性があるということなんですね。

2007/10/19

スティーヴン・マックレー/「真夏の夜の夢」DVD

ロイヤル・バレエでのスティーヴン・マックレーくんのロミオ・デビューは大成功だったようです。7日間で役を覚えたのだそうです。奇しくも、ジュリエット役のコジョカルも、ジュリエット・デビューのときは代役で、同じく7日間しか準備期間がなかったそうです。

以下のTimesの記事では、写真を見ることができます。

http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/stage/dance/article2679379.ece

21歳のマックレーは舞台上ではさらに若く見えて、小柄で愛らしいコジョカルとはぴったりだったようですね。短い生を駆け抜けていった恋人たちとして鮮烈な印象を残したようです。

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ロイヤル・バレエといえばロベルト・ボッレが10月15日に「ラ・バヤデール」でソロルを踊っていますが、そのロベルト、そしてアレッサンドラ・フェリ、マッシモ・ムッルの「真夏の夜の夢」(バランシン版)のDVDのamazon.comでの発売日が11月20日に決定したようです。まだamazon.co.jpには出ていませんが近日中に出ることでしょう。

Mendelssohn - A Midsummer Night's DreamMendelssohn - A Midsummer Night's Dream
Alessandra Ferri , 㠀 Roberto Bolle , 㠀 Massimo Murru , 㠀 Riccardo Massimi , 㠀 George Balanchine

TDK 2007-11-20
Sales Rank :

See details at Amazon
by G-Tools


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最近すっかり抜けているのか、先週土曜日にバットシェバ舞踊団のチケットを取ったのですが、ダブルブッキングしてしまいました。2月2日(土)には、マリインスキー・オペラの「イーゴリ公」のチケットを取っていたのです。間抜け~。幸いにも、バットシェバ舞踊団のチケットは引き取り手がすぐに現れ、日曜日のチケットを取り直したのですが。まだ全然良席が残っていました。もったいない・・・。絶対に面白いはずなので見に行ってくださいね。

ぴあ

「テロファーザ」のNew York Timesの批評がこちらにあります。
http://www.nytimes.com/2006/07/22/arts/dance/22bats.html

オハッド・ナハリンとバットシェバ舞踊団は、11月12日にニューヨークのグッゲンハイム美術館において、新しい舞踊言語GAGAのデモンストレーションを行うそうです。これも面白そうですね。
http://www.guggenheim.org/education/worksandprocess/schedule.html

と思ったら、このGAGAのワークショップは神戸ビエンナーレでも先日行われたようです。
http://www.sensewheel.org/biennale2007/DC/

2007/10/17

ヨハン・コボー「真夏の夜の夢」降板、代役に新星マックレー

今月24日から上演される、東京バレエ団公演『真夏の夜の夢』に、タイターニア役のアリーナ・コジョカルとともにオベロン役で出演が予定されていた、英国ロイヤル・バレエ団のヨハン・コボーは、リハーサル中に脚を捻挫したため出演が不可能になりました。
代わって同じ英国ロイヤル・バレエ団のソリスト、スティーヴン・マックレーが、オベロン役を演じるとのこと。

http://www.nbs.or.jp/TokyoBallet/blog/index.php?ID=130


コボーのオベロンも楽しみにしていたので、降板は本当に残念ですが、いち早く注目のマックレイ君が観られるのは嬉しいです。コボーの怪我も早く良くなりますように。

マックレー君といえば「ロミオとジュリエット」の初日でコボーの代役を演じることになって大注目の新星、ロイヤルの唯一の星といってもいいほどの存在ですね。ソリストが初日を勤めるのは前代未聞のことだそうです。

ちょうど、彼の出身国オーストラリアの新聞に、紹介記事が載っていました。ローザンヌ・コンクールでタップダンスを踊って話題になった彼です。まだ入団3年目、21歳。写真を見ることもできます。

http://www.smh.com.au/news/arts/rooty-hill-to-covent-garden/2007/10/12/1191696171878.html

この記事によると、ロミオの代役に決定したのは、コジョカルが彼を気に入ったとのこと。ローザンヌコンクールに出場したのは、別のコンクールで優勝してロイヤルバレエスクールに入学できることになったものの、学費が払えなくて困っていたからだそうで。タップダンスを踊って鮮烈な印象を残した彼は、晴れて奨学金を手にして入学できることになったそうです。最初のブレイクは、2005年に佐々木陽平さんが怪我して代役に入った「シンフォニック・ヴァリエーションズ」。入団3年目にしてソリストと出世は非常に早いです。ロミオを踊ることになった時には、わずか2週間、一日8時間のリハーサルで役を覚えたとのこと。そして、「真夏」のオベロンをはじめ3つの演目と同時平行してというからなかなか大変です。

「このたびのスティーヴン・マックレーの出演は、元ロイヤル・バレエ団の芸術監督で『真夏の夜の夢』オベロン役の初演ダンサー、本公演のリハーサル指導者でもあるアンソニー・ダウエルの推薦によるものです。マックレーはロイヤル・バレエ団が期待する若手ソリストで、今シーズンのロンドン公演に抜擢されオベロン役を準備中でした。今回の舞台にはダウエルの入念な指導を受けて臨み、ロンドンに先駆けてデビューを飾ります。どうぞご期待ください。」

とのことなので期待できそうですね。初役をどのように踊ってくれるのか、24日が楽しみです。パリ・オペラ座のマチアス・エイマンといい、若手の活躍が目立って嬉しいですね。

2007/10/16

吉田都さん、「英語でしやべらナイト」/マトヴィエンコ夫妻レニングラード国立バレエへ?

10月22日月曜 23:00〜にNHK総合テレビで放送される「英語でしゃべらナイト」に、吉田都さんが出演するそうです。楽しみですね!バレエの歩き方の実演もあるそう。

http://www.nhk.or.jp/night/nextpgm.htm

Kバレエには次はいつ出演されるのかしら?とりあえずは12月2日のスターダンサーズ・バレエの公演での「ロミオとジュリエット」バルコニーシーンが楽しみです。

*******

デニスとアナスタシアのマトヴィエンコ夫妻が揃ってレニングラード国立バレエことミハイロフスキー劇場にプリンシパルとして迎えられたようです。(が、ロシア語自動翻訳なので自信なし)

ミハイロフスキー劇場のサイトをみると、現在ダンサーのところにはこの二人、そしてゲストプリンシパルとしてイーゴリ・コルプの名前しかありません。いろいろ気になります。デニス・マトヴィエンコのプロフィールには、2007年 ミハイロフスキー劇場のプリンシパルに、と書いてあります。アナスタシアのほうは、2001年にキエフ・バレエ(シェフチェンコ劇場)のソリストに、としか書いていませんが。

冬からの日本公演にマトヴィエンコやコルプは参加するんでしょうか?マトヴィエンコはボリショイには引き続きゲストとして出るのかしら?
とにかくレニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)の冬公演の男性キャストを早く出して欲しいですよね。

そしてキエフ・バレエの来日公演にはマトヴィエンコ夫妻は出るのかしら?

ルジマトフが芸術監督となって以来、予想外のことがいろいろ起きています。たしかにレニングラード国立バレエは、男性ダンサーは弱いですが、女性ソリストはかなりレベルが高いので、何も外部から女性ダンサーのゲストを呼ばなくても、という気がします。

なお、ユーラさんの「ロシアのバレエ団情報」でミハイロフスキー劇場の副芸術監督クリギンさんのインタビューが紹介されています。併せてお読み下さい。

世界のプリマバレリーナたちVol.1 ヴィシニョーワのヴァリエーションレッスン

マリインスキー・バレエのディアナ・ヴィシニョーワが自ら選んだ、4つのヴァリエーションのレッスンと舞台映像で構成。自らお手本を見せながらテクニックや表現方法を語る。恩師であるコワリョーワ先生立ち合いのもと、2007年、ワガノワ・バレエ・アカデミーにて収録。 

[演目]
「白鳥の湖」より オデットのヴァリエーション
「ドン・キホーテ」1幕より キトリのヴァリエーション
「ジゼル」2幕より ジゼルの登場
「眠れる森の美女」1幕より オーロラのアントレとヴァリエーション


「ロパートキナのヴァリエーションレッスン」と同時期に買ったのだけど、時間がなくて今まで観られなかった。Vol.1ということは、この先も期待していいのかしら?

ヴィシニョーワの個性がずいぶん出ている一本になっている。最初と最後は、サンクトペテルブルグの街を案内。お天気は悪そうだけど、運河の多い美しい街で、ヴィシニョーワがこの街、そしてマリインスキー・バレエを心から誇りに思っているのがよくわかる。

今までヴィシニョーワって良くも悪くもディーヴァっぽいイメージが強かった。だけどこのDVDを見て思うのは、彼女はとても気が強く負けん気があるけど、可愛らしい人なんだなということ。自分の思い入れが強い作品を紹介しているからだと思うけど、実に嬉しそうに生き生きと、作品について熱心に語っている。話しているだけではなくてもう少し踊って、って思わないこともないんだけど好きな作品やバレエについて話し始めると止まらないんじゃないかなって。ロパートキナのヴァリエーションレッスンの方は、お手本をきっちりと撮影して語りは完全に別録りだったようだだった。こっちは同録で、お手本を見せながらも踊っているものだから、途中で話すのにも息が切れちゃっているし、お手本も途中までで終了になっている。このあたり、二人の性格の違いがよく出ている。

「白鳥の湖」より オデットのヴァリエーション

「白鳥の湖」のニ幕終盤のオデットのヴァリエーション。両腕をゆっくりと下ろすところから始まる。ヴィシニョーワの腕の動きは独特で、かなりクネクネしているので私はちょっと苦手なのだけど、自分の中に確固としたオデット像を持っていて、そのオデット像自体は去年のマリインスキー・バレエの公演で観たときにかなりのインパクトを受けて新鮮に感じた。ヴィシニョーワはなかなかオデットを踊る機会に恵まれず、初めてオデットを踊ったのがパリ・オペラ座、セルゲイエフ版を初めて踊ったのが新国立劇場で、なかなかマリインスキーでは踊らせてもらえなかったのだ。それだけに、自分なりの役作りの思い入れとともに、オデットというのはある程度踊る人の自由な解釈で踊っていいのよ、と話していたのが印象的。「ここはこういうポーズでもいいし、こんなのでもいいと思います」なんて感じでいろいろポーズを作ってくれたりして。さすがに一つ一つのポーズはとても綺麗だし、重心をすごく前に持っていって、白鳥特有の胸の形を作るところは惚れ惚れするほど色っぽい。背中が柔らかいのでアラベスクもさすがに美しいし。ワガノワ・アカデミーの稽古場の床が堅そうで、ポアントの音もかなりしていたけど踊りにくくないのかなと少しだけ心配になった。

「ドン・キホーテ」1幕より キトリのヴァリエーション

ワガノワの生徒としては異例のローザンヌコンクール出場後、初めて全幕の主演をしたのがこの作品とのこと。
通称カスタネットのソロと呼ばれている1幕のスピーディなヴァリエーション。キトリのシグネチャー的な踊りとして大きなインパクトを与えなければならないところ。あとで登場する「眠り」の1幕の登場シーンと同様、ここでの出来が舞台全体の完成度を左右するというからけっこうプレッシャーが大きい。よく「ドン・キホーテ」の舞台写真で使われる、キトリが大きく背中を反らせて跳躍するところは実はあまり難しくないとのことだけど、プリエをあまり深くすると綺麗に跳べないそう。音にぴったりと合わせてリズミカルに踊るのが何よりも難しいとのこと。アクセントをつけるポーズは、踊る人の裁量に任されている部分が多いそう。この場面は三段のティアードスカートで踊るのが一般的なのだけど、「スカートの見せ方も大事です」と言ってさっと作ってくれたポーズが、ラインもキレイにカッコよく決まっている。でも最後のシェネのところはあまりにも速く回りすぎて、マイクが飛んじゃって慌てていたのが可愛い~。
ヴィシニョーワは、どちらかといえばドラマティックな役柄を好んで踊るので、キトリのイメージはあまりないけれども、彼女のキトリも機会があれば観てみたいなと思った。

「ジゼル」2幕より ジゼルの登場

「ジゼル」は、ヴィシニョーワが最も愛する作品のひとつということだそうで。ウィリとなったジゼルが、右腕アロンジェ、アティチュードで高速回転するヴァリエーション。顔のつけ方も、通常の回転とは異なり、スポッティングというよりは、顔は動かさないで回らないといけないのでかなり難しい。腕、アティチュードにした脚も動かさないで、片脚の動きだけでの回転で、しかも音楽とぴったりと合わせて踊らなくちゃいけないものだから。
「でも、難しいのは1幕です」ということで、日常生活の中の表現をしながらも、特にパートナーと息をぴったり合わせなくてはならないところが大変とのこと。作品を愛するあまり、ジゼルとしてデビューする予定を2回も延期して、納得のいくところまで完成させてから出演したそうで。ヴィシニョーワのジゼルは、表現にかなりクセがあるので、好き嫌いが分かれるとは思うけど。


「眠れる森の美女」1幕より オーロラのアントレとヴァリエーション

「この作品を踊るために、バレリーナは血を流します」というほど、厳格な踊り方が決められていて難易度の高い踊り。この登場シーンが上手くいくかどうかで作品の質が決まるわけで、どんな名バレリーナでも、ここを踊るには非常に緊張するとのことで、ヴィシニョーワも、登場の曲が流れ出すと一瞬心臓が止まりそうになるそう。
「白鳥」や「ドン・キホーテ」はある程度、バレリーナが自分流に踊ることが許されているけど、「眠れる森の美女」は、特にペテルブルグ派は厳密な決まりがあって、それを逸脱することは許されなくて、それが本当に難しいとのこと。アントレのところでの細かい前や後ろのアティチュードを音楽に合わせるのが特に大変だそうで。オペラ座(ヌレエフ版)とマリインスキーの違いも、パ・ド・シャを実演して説明。
でも、ヴィシニョーワのお茶目なところは、ヴァリエーションについて表現するところで、「いたずらもしますよ」と後ろにポアントでぴょこぴょこと進み、1回転すると「かわいい」とほめられて喜んでいたりするのだ。ものすごくつらい踊りでも、そのつらさを微塵も見せないで幸福感で満ち満ちた16歳の姫を演じなければならない。だったら、そのつらいところを楽しく見せるための工夫のひとつなんだろうな、って思った。

インタビューでは、これから踊ってみたいのは「愛の伝説」と語っていて、ロパートキナと同じだ、と思ったのだった。来年には、若い振付家とともに、ニューヨーク(とオレンジカウンティ)で自分のプロデュース公演を行うのが楽しみで仕方ないといった風情。舞台で見るヴィシニョーワとはまた違った姿を見られたのがよかった。


世界のプリマバレリーナたちVol.1 ヴィシニョーワのヴァリエーションレッスン世界のプリマバレリーナたちVol.1 ヴィシニョーワのヴァリエーションレッスン
ディアナ・ヴィシニョーワ

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2007/10/14

パソコン不調につき

ここ数日自宅のパソコンでのインターネット接続がひどく遅いために、繋いで調べ物をするのがちょっと大変な状態。

ブログの更新はある程度は携帯で出来るんですが結構面倒というか大変。メールもパソコンからはなかなか送れなくて。OSの問題みたいなので再インストールになるかも…

携帯の機種変をしたのですがキーが小さくてちょっと失敗したかも。

したがってまたメールのお返事など遅くなるかもしれませんがご容赦下さい!

小林恭バレエ団「バフチサライの泉」10・13

原作 アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
   (叙事詩 「バフチサライの泉」)
台本 ニコライ・ヴォルコフ
音楽 ボリス・アサフィエフ
振付 小林 恭
指揮 磯部省吾
演奏 東京ニューシティ管弦楽団
ギレイ汗(タタールの王)  小林 貫太
マリヤ(伯爵令嬢)     宮内真理子(新国立劇場バレエ団)
ザレマ(ギレイ汗の愛妾)  下村由理恵
ワズラフ(マリヤの婚約者) 黄 凱(東京シティバレエ団)
ヌラリ(タタール軍の隊長) 大嶋 正樹(東京バレエ団)

コミック「SWAN」などに登場して、いつかは観たいと思っていたけどなかなか観る機会のなかった作品。しかも上記のような豪華キャスト。小林恭バレエ団は、去年観た「シェヘラザード」もとてもよかったので、期待していた。

見ごたえたっぷりで十分楽しめたと思う。やはり主要キャストの充実振りが作品の格を高めていた。さらに、舞台装置や衣装もなかなか豪華でオーケストラつき、多くの公演をやるメジャー国内バレエ団に引けを取らなかった。

冒頭と最後に登場することから、物語の主役はギレイ汗であるのだけど、実際には彼に翻弄される登場人物たちの運命がテーマとなっている。激しい情念を持つザレマ、清らかなマリヤ、この魅力的な二人の女の運命を狂わせてしまったギレイ汗は、なかなか感情移入のしにくいキャラクターだ。だからこそ、演技力が求められている役なのだ。

プロローグ。泉の前でうなだれるギレイ汗。去年の小林恭バレエ団で小林貫太さんは「ペトルーシュカ」でタイトルロールだったのでわからなかったけど、背が高く、タタール人のスキンヘッドも似合うハンサム。

1幕は、ポーランドの公爵邸のお屋敷で展開される。一人娘マリヤの誕生日を祝う宴。マリヤ役の宮内真理子さん、婚約者、子爵ワツラフの黄凱さん、二人とも純白の衣装が似合ってキラキラと輝く美しさ。まさに貴公子を絵に描いたような黄凱さんは、長い脚、ラインの美しさが際立つ。宮内さんは愛らしく清潔感があって姫そのもの。柔らかく軽やかな踊り。幸せな二人を祝福する宴は、チャルダッシュやマズルカなど民族舞踊中心に展開する。男性ダンサーのダイナミックな見せ場もある。その宴を物陰から伺うタタール軍の兵士たち。華やかな宴のクライマックスでワツラフは竪琴をマリヤに贈り、その音色に乗ってマリヤは美しく舞う。しかしそこへ攻め込むタタール軍。屋敷は炎に包まれ、男たちはためらいもなく殺され、女たちはさらわれる。公爵すらも無慈悲に殺されてしまう。累々と死体が横たわる地獄絵図。最後に残ったのが、逃げ惑うワツラフとマリヤ。ギレイ汗はついにワツラフも殺してしまうのだが、茫然とするマリヤのヴェールを取り、あまりの美しさに打たれ、彼女を連れて帰る。

2幕はクリミアタタールのバフチサライ宮殿のハーレム。ギレイ汗の愛妾ザレマと、女たちが彼を待っている。ザレマの下村由理恵さんはさすがの存在感。美しくセクシーで、誇り高く百戦錬磨の女という感じ。踊りのテクニックも見事なもので、鋭いジュッテ、回転もキレがあり素晴らしい。だがギレイ汗の態度がおかしい。駆け寄るザレマを完全に無視している。連れて来られたマリヤの姿-白いヴェールに覆われ、しっかりとワツラフの形見の竪琴を抱えているーを見て、一同は何が起きたのかを悟る。別室にマリヤが連れて行かれた後、ザレマ、そして第二夫人、さらに女たちはギレイ汗の歓心を買おうと身をくねらせ妖艶に踊る。しかしギレイ汗の心は一向に動く気配はない。まったく関心を払わず、、アヘンなのか水タバコなのか、パイプをくわえてプイとしている。ザレマは、宮殿の中での自分の立場が一瞬にして変わってしまったのを悟る。女たちはそんな彼女をあざ笑う。下村さんの受けの演技力がここで際立つ。立っているだけでかもし出す複雑な心境。愛していた男の突然の心変わりに戸惑い苦悩し、自分の何がいけなかったのかを責める。それに対して、容赦なく彼女をいたぶる後宮の女たち。残酷な場面である。最後にたった一人残され、苦しみのあまり横たわる下村さんには思わず涙してしまう。
ザレマの後に踊る第二夫人の山本みささんが、すらりと背が高くてプロポーションがきれい、踊りも大きい上細かい演技も達者でなかなか魅力的だったと思う。

3幕は、マリヤの寝室。ギレイ汗は彼女への愛を訴え迫る。しかし、悲しみに沈むマリヤは、ワツラフのことだけを思っているおり拒絶する。リフトを多用した美しいパ・ド・ドゥの中で、宮内さんはマリヤの清らかさ、気高さを体現していた。ギレイ汗も、一途で気高い彼女にはついに何もすることができなくて去る。寝入ったマリヤの元へやってくる人影は、ザレマ。ザレマは、マリヤに「彼を返して」と懇願するが、異国の言葉を解しないマリヤは、ザレマが何を言っているのかわからない。跪いて思いのありったけをザレマが訴えても、何を言っているのかわからないのだ。マリヤも、ザレマに「私をここから出して」と訴えるけど、これもまた通じない。ベッドの横にギレイ汗の帽子が落ちているのを見つけたザレマは逆上。ナイフを出してマリヤに襲い掛かる。止めに入ったギレイ汗たちだが、結局ザレマはマリヤの背中を一突きで殺してしまう。柱にしがみついて絶命するまでの宮内さんの演技は、とてもリアルだった。ギレイ汗は、ザレマにナイフを向けるが、「どうぞ私を殺してください、さあ」と両手を十字架のように広げ、身を投げ出すザレマの姿に、どうしても彼女にとどめをさすことはできない。ザレマにしてみれば、愛するギレイ汗の手で殺されるのなら本望だったのに。それにしても、下村さんのドラマティックな演技はさすがである。身体全体が演技をしているというのは、彼女のことだ。一つ一つの動きに無駄がなく、身体が言葉を話しているかのようだ。

4幕は、断崖にある刑場。マリヤ殺しの罪でザレマが処刑されようとしている。深く沈みこむギレイ汗。彼を少しでも元気付けようと、人質の女たちを捧げたり、食べ物や酒を持ってきたりするが、彼の気持ちは一向に晴れない。愛する女を殺され、もう一人の女はその罪で処刑されようとしているのだから無理はないのだが・・。断崖に立たされたザレマは、命乞いはしないが最後にギレイ汗に視線を送って「許して」と訴えている。だけど彼の心は動かず(それどころか一瞥もせず)、彼女はあっさりと突き落とされて絶命する。ギレイ汗を鼓舞させようと、隊長ヌラリとその部下たちが、鞭を片手に激しく勇壮な踊りを見せる。ヌラリ役の大嶋さんのカッコいいこと!彫りの深い顔立ち、筋肉質の身体で、タタール人の扮装が実に良く似合う。相当身体を絞り込んだようで腰などはほっそりとしているのだけど、柔らかい背中、高い跳躍、しなやかさとワイルドさ、惚れ惚れとするほど素敵。それでいて親分思いの健気なところがいい。群舞の男性たちもパワフルでここは見ごたえたっぷりだった。そんな男たちの力みなぎる踊りを見ても、ギレイ汗の気持ちは沈みこんだままだ。気がつけば愛した女たちはもうこの世にはいなくて、自分は一人ぼっちなのだから。しかも、二人とも自分の所為で死に追いやられたのだから・・・絶対的な強さ、権勢を誇ったギレイ汗はもうここにはいなかった。

エピローグ
冒頭と同じ、泉に取りすがり苦悩し、ひとり佇むギレイ汗。彼の脳裏には、マリヤ、そしてザレマの美しい姿が去来する。

ギレイ汗の心情に感情移入するのが難しい作品ではあった。どんなにザレマが愛を懇願しても見向きもしなければ葛藤することもない、踊るシーンも少なければ感情表現も抑え目のギレイが主人公というのはカタルシスに欠けるところがある。小林貫太さんも健闘していたと思うけど、前回のこのバレエ団の「バフチサライの泉」では父上の小林恭さんがギレイ汗を演じていたくらいだから、相当の演技力が必要とされる難しい役なのだ。この描き方では、ギレイ汗は単なるダメ男にしか見えないのが、かなり損な感じ。しかし、その分、ザレマという激しく情念深いキャラクターが鮮やかに描かれていて、下村さんの演技力もあって非常にドラマティックだったと思う。1幕のクラシックバレエのところはあまり振付に工夫はない。だが4幕の男たちの群舞は血湧き肉躍るものだったし、完成度の高い舞台だった。


追記:全然関係ないけど、10月14日の秋華賞に「ザレマ」という3歳馬が出走した。ダンスインザダークの仔という血統で、「バフチサライの泉」のザレマから名前を取ったそうです。

2007/10/13

ハンブルク3日目

ハンブルクはとても美しい街なのだけど、観光スポットは皆無といっていいほど。ドイツ人にとっては人気のある観光地ということなのだけど、それは街自体がとても美しく、お金持ちっぽい雰囲気があるからなのかもしれない。デパートやブランドショップも充実しており、買い物にはいいのだけど、ユーロが高いのがちょっと厳しいところ。しかし、7月というのに気温が14,5度と低く、持ってきている服が全然対応できないので、H&MやZARAのように安いお店で、スーツやシャツ、靴などを買い込んだ。ユーロ高といっても、このあたりは結構安い。お土産用には、チョコレートを買い込む。

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とてもおしゃれなパッケージで、味も美味しい、お店自体も可愛いチョコレート屋さんが、スターツオーパの近くにあった。

ショッピングセンターも大きくてデザインがスタイリッシュ

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スターツオーパの並びにある、バレエ書籍もたくさん扱っている古書店。ドイツ語が読めればなあ。

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7月というのに寒いため厚着の人も多い。

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かわいい男の子が街角でヴァイオリンを弾いていた

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観光する、という場所ではないけれども、のんびりと過ごしたり、生活するにはとてもいい場所だと思う。しかもハンブルク・バレエが観られるわけだし!

2007/10/12

7/5 ハンブルク・バレエ「ニジンスキー」(後編)

2幕

Menschen, Innenbilder
ショスタコーヴィッチの交響曲11番「1905年」のオープニングと重なるように、大きな光の環ふたつが吊り下げられ登場する。これは一種の狂気のメタファーだ。狂気に陥ったニジンスキーが描いた絵の中に、環が多く登場していた。ニジンスキーよりも先に狂ってしまった兄スタニスラフが環の周りで踊っている。服部有吉さんのあまりにも凄まじいソロが鮮烈な印象をいまだに残しているため、コンスタンチンはやや不利だったと思う。跳躍力もあるし、テクニック的には申し分はないのだけど、本当に狂ってしまった人の不規則な動きをそのまま再現したような、常軌を逸していて、鋭利なナイフのような切れ味のある動きを見せた服部さんが凄すぎて。そしてサーシャも、ユニゾンのように、しかしやはり不規則に踊る。よく身体が壊れないものだ、と思うほどの激しい動き。スタニスラフの死。

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Der Krieg
ここから、軍靴の足音が聞こえてきて、一人ずつ登場する舞台の上のダンサーたちも、カーキ色の軍服を着用している。ニジンスキーが創り上げたキャラクターたち、アルルカンや黄金の奴隷も衣装の上から軍服を羽織っている。ロモラは、白衣を着た精神科医(カースティン・ユング)と不貞を働いている。あるいはそれは狂気に苛まれてきたニジンスキーの妄想なのかもしれない。戦争に巻き込まれ、ニジンスキーは敵国人として捕らえられている。子供時代、マリインスキー時代、戦争。様々な妄想、回想が彼を苛む。

軍服の男たちは激しく踊る。その中に、身体をぐにゃりと曲げて不恰好にぶらぶらと踊るペトルーシュカがいる。ペトルーシュカを踊るのは、ロイド・リギンス。実にペトルーシュカのメイクが良く似合っていて、いつもは端正なロイドなのにすごく情けない感じ、しかしロイドであるという存在感は強烈なので一層哀れに映る。激しく踊る男たちに、ニジンスキーは数を大声でカウントしている。そのカウントする様子は、「春の祭典」の初演で怒号の嵐の中、舞台袖で必死にカウントを取っていたニジンスキーの姿に重なる。男たちの群舞の指揮を執るのは、「春の祭典」の「選ばれし乙女」ニウレカ・モレド。ニウレカはこのシーズンをもって引退するというのだが、彼女のパッショネットでエキセントリックな踊りは鮮烈で忘れがたい。そして男たちは撃たれ斃れていく。「1905年」で民衆に軍隊が発砲し人々が斃れていく音と見事にシンクロしている。戦争という狂気と、ニジンスキーという個人に起こった狂気が混沌とともに交じり合う。

完全に狂ってしまったニジンスキーを橇に乗せ、赤いドレスのままのロモラは引きずって歩く。悪妻と世界中から後ろ指を指される彼女は、それを跳ね返せるだけの強さを持っている。自分がこの男を支えなければ、彼はもう生きていけない。へザーの凛として強い個性が生きている。哀しい夫婦愛がここにある。サーシャは焦点の合わない目で虚空を見つめていて、妻の愛にも反応できない。華奢な身体で、持てるすべての力を振り絞ったロモラは、ニジンスキーに罵られながらもずりずりと橇を引きずり続ける。

いつのまにか、冒頭のスヴレッタ・ハウスへと戻っている。華やかな観客たちの中には、例のキャラクターたち・・・ペトルーシュカ、黄金の奴隷、薔薇の精、軍服を羽織ったアルルカンや牧神が混じっている。兵士たちの死体が山を作っている。上半身は裸、軍服を思わせるズボンを着用したニジンスキーは、まず黒い長いじゅうたんを横に引き、次に十字架を作るのように、赤いじゅうたんを縦に引いて、狂ったように踊り始める。「今から、"戦争"を踊ります」と高らかに宣言して。ここからエンディングまでの数分間のサーシャの踊りは、未だかつて観たことがないほどの激しいものだった。完全にニジンスキーというキャラクター(実在したニジンスキーではなく、ノイマイヤーが作り出したニジンスキー)が憑依していた。激しい回転、トゥール・ザン・レール。サーシャ独特のナイーブさと繊細さが極限まで高まって、ついに針が振り切れたかのようだった。2本のじゅうたんをまさに十字架のように身体に巻きつけ、殉教者のように崩れ落ちた。


サーシャはカーテンコールの間中、自分本来のキャラクターに戻れていなかったようだった。いつもは優しげでエレガントなサーシャが、別人格のままエキセントリックでかつ茫然と存在していた。こんなに凄まじい体力と精神力を使う作品に主演した彼が、この4日間毎日主役級で舞台に立っていたというのだから、超人としか言いようがない。翌日の「ジュエルズ」のエメラルドでも主演していたのだ。

再び、「ニジンスキー」のあまりにも圧倒的な情報量、激しすぎるパワーに打ちのめされた。アレクサンドル・リアブコは本物の天才だ。こんなにもナイーブで優しげな彼のなかに、これほどまでの感情の奔流が眠っており、それが噴出し昇華した様子を目の当たりにしてしまうと、どうしていいのかわからなくなる。「ニジンスキー」という作品の凄さはわかっていたはずなのに、頭を何回も殴られたかのような衝撃で全身が痺れた。また「ニジンスキー」が上演される時には、万難を排して地球上のどこへでも観に行かねばならない。

作品の解説はこちらへ

2005年2月の来日公演の感想はこちらへ

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2007/10/10

7/5 ハンブルク・バレエ「ニジンスキー」Nijinsky

ニジンスキー Nijinsky

振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン(プレリュード20番)
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(シェヘラザード)
ドミトリー・ショスタコーヴィッチ(ヴィオラとピアノのためのソナタ147番)
ドミトリー・ショスタコーヴィッチ(交響曲11番<1905年>)

ヴァツラフ・ニジンスキー:アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・ニジンスキー、妻:ヘザー・ユルゲンセン
ブロニスラヴァ・ニジンスカ、妹:ニウレカ・モレド
スタニスラフ・ニジンスキー、兄:コンスタンチン・ツェリコフ
セルゲイ・ディアギレフ:イヴァン・ウルバン
エレオノーラ・ベレダ、母:ジョエル・ブーローニュ
トーマス・ニジンスキー、父:カースティン・ユング
タマラ・カルサヴィナ、バレリーナ:ラウラ・カッツアニガ
レオニード・マシーン、若いバレエダンサー:ティアゴ・ボーディン

アルルカン(「カルナヴァル」):ヨハン・ステグリ、アントン・アレクサンドロフ
薔薇の精:ヨハン・ステグリ
黄金の奴隷(「シェヘラザード」):オットー・ブベニチェク
若い男(「遊戯」):ティアゴ・ボーディン
牧神(「牧神の午後」):オットー・ブベニチェク、カースティン・ユング
ペトルーシュカ:ロイド・リギンス

「レ・シルフィード」のシルフィード、「遊戯」の若い女性、「牧神の午後」のニンフ、「ペトルーシュカ」のバレリーナ:ラウラ・カッツアニガ
「遊戯」の若い女性、「春の祭典」の選ばれし乙女:ニウレカ・モレド

二人のバレリーナ:エレーヌ・ブシェー、バルボラ・コホトウトコヴァ


今回のハンブルク行きは、「ニジンスキー」を観るためのものであったことは言うまでもない。2005年のハンブルク・バレエ来日公演でこの作品を観てから、再びこの作品を観ることができる日を待ち望んでいた。あまりの衝撃にしばらく茫然自失していたこの作品を。しかしながら期待があまりにも自分の中で膨れ上がってしまって、再び観たとき実際どう思うのか、それも少しだけ心配だった。が、それは杞憂だった。

幸運だったのは、2005年に東京で観たときにニジンスキーを演じたのがイリ・ブベニチェクであり、今回はアレクサンドル・リアブコであったことである。二人のニジンスキーの演じ方はまるで違う。イリ・ブベニチェクのニジンスキーは純粋ゆえの凄惨な狂気を感じさせて、最初からニジンスキーの人格が憑依して突っ走っている凄みがあった。男性的なのに危ういニジンスキー像。サーシャはというと、男性的な部分よりも、より繊細で壊れやすく優しげなニジンスキーであった。ピュアさという意味では同質の部分もあったけど、より痛ましい。少しずつ少しずつ狂っていっている過程を見せられていると、胸が締め付けられそうになる。
ロモラを演じたのも、東京で観たアンナ・ポルカルポヴァではなく、へザー・ユルゲンセン(当初はアンナの予定だったようだが、怪我で急遽変更になったようだ)。ロモラの愚かさと母性、ファム・ファタル的で古典的な美しさを体現したアンナとはまったく違ったロモラ像となった。ヘザーのロモラは、強い意志とたくましさ、それとはりつめたような繊細さを併せ持っている。いずれにしても、ノイマイヤーは、ロモラを従来考えられていた浮ついた悪女ではなく、母親的な強さ、献身的な部分を持った女性として描いている。

<1幕1場>
最初から幕が開いている舞台の上には、ニジンスキーが最後の公演を行ったスヴレッタ・ハウス・ホテルのセット。いつのまにかピアノの演奏が始まり、ニジンスキーの舞台を観ようと集まった着飾った紳士淑女たちが入ってくる。バスローブに身を包んだ神経質そうなニジンスキー。真っ赤なドレスのロモラ。バスローブを脱ぎ、踊り始めるニジンスキー。音楽は止んでいるのに、不規則にめちゃめちゃに踊り始める。観客たちは戸惑い、ニジンスキーの踊りに興味を失う。そして彼の回想が始まる。

少年時代のニジンスキーと、妹ニジンスカ、兄のスタニスラフが仲良さそうに踊る。服部有吉さんがいなくなってしまってどうなるのだろう、と思っていたスタニスラフ役。今回演じているコンスタンチンは、服部さんほどではないにしても小柄で童顔、すこしふっくらとしていて、服部さんの繊細さや狂気はないけれども、まじりけのないいたいけな純粋さを感じさせ、却って痛切な感じがする。

ホテルのセットの、白いバルコニーのようなところに、黒いシルクハットをかぶったディアギレフが佇んでいる。初めて観た時も思ったけど、実際には醜男で有名だったディアギレフを、金髪美形のイヴァンに演じさせるのは反則である。満足げにニジンスキーを見守るディアギレフ。そんなディアギレフに対する愛情を隠そうともしないニジンスキー、彼のほうへと駆け寄り抱き合う。

ニジンスキーが踊ったさまざまなキャラクターたちがかわるがわる踊る。「カルナヴァル」のアルルカンから始まり、「レ・シルフィード」のシルフィード、「遊戯」のテニスラケットを持った若い男女たち。

<2場>
ここでホテルのセットはどけられて、またニジンスキー、ニジンスカ、スタニスラフがレッスンをしている場面に。厳しい訓練の中で才能を示していくニジンスキー。バレリーナであった母も回想に登場する。「シェヘラザード」の音楽に乗って薔薇の精、そして黄金の奴隷が登場。薔薇の精を踊ったヨハン・ステグリの妖しい魅力にはノックアウトされた。ほっそりとしていてしなやかで中性的、咲き始めたばかりの、つぼみがこぼれるようなフレッシュな香りを放って柔らかく牝猫のように跳躍する。花びらを飛び散らせるかのように。オットーの黄金の奴隷は、ニジンスキーの有名な写真を連想させるような、圧倒的な官能性でむせかえるよう。野生の豹のような獣性とねっとりとした色香。半開きの眼と口が作りあげる陶酔しきったナルシズムはあまりにも鮮烈。

ディアギレフと「遊戯」の青年とニジンスキーのパ・ド・トロワ。タマラ・カルサヴィナが繰り広げる様々な踊り。ニジンスキーは、自分ならではのオリジナルな舞踊言語を創り上げようと葛藤する。

クライマックスのひとつである、船の上でのパ・ド・トロワ。イリが演じたニジンスキーは、扇子を片手に、素肌に黒いジャケットが過剰なまでにセクシーだったけど、サーシャはあくまでも禁欲的。そしてヘザー演じるロモラには凛とした強い意志が感じられる。ニジンスキーとロモラが視線を交わした時、ふたりは恋に落ちる。牧神のいでたちをしたオットーが、牧神の振付の通りに下手から歩んでくる。椅子に腰掛けていたロモラは、白いドレスに「牧神の午後」のニンフが使っていたのと同じショールをまとっている。ロモラはまずニジンスキーではなく牧神と踊る。ロモラは人間としてのニジンスキーではなく、ニジンスキーが踊ったキャラクターである牧神や、薔薇の精や、黄金の奴隷に恋しているのだ。牧神は背中を弓なりに妖しく反らし咆哮する。彼はセックスの申し子なのでここでもむせ返るような色香を放っている。次にニジンスキーとロモラのパ・ド・ドゥ。ロモラは足先をフレックスにしたりと、必ずしもクラシックな踊りではないけれども、クラシックのテクニックを必要とする難しい振付。床の上を転がったり、相手をかわるがわる変えたり、3人が絡み合う踊り。牧神とロモラが踊る最中、ロモラが落としていったショールの香りを嗅ぐニジンスキー。これはもちろん「牧神の午後」を意識したものである。ロモラとニジンスキーが踊っている間、絶えず牧神は、あの牧神歩きで舞台の上を歩んでいる。彼は、ニジンスキーの影というか別のペルソナなのだ。ニジンスキーの人格はこの時点で分裂をし始めている。ストイックで張り詰めたサーシャは、牧神の強烈なキャラクターに人格を乗っ取られそうになっていて痛々しく、見ているほうも胸が苦しくなってくるが、彼の踊りは情に流されることなく、あくまでも端正で美しい。ロモラはニジンスキーのジャケットを脱がして、情熱的に愛を迫る。椅子に座っているロモラの膝の上に、幸福そうに頭を乗せるニジンスキー。そして牧神は、例のクライマックスのポーズをして果てている。

そんな余韻を破るように、壁を蹴破るのは美しくも邪悪なディアギレフだ。もちろん、彼は二人の関係を好ましく思っていない。二人の結婚式が行われるが、絶対権力者であるディアギレフはすべてを奪って去っていく・・・。

(続く)

2007/10/09

7/5 ハンブルク2日目

ハンブルク二日目は、ハンブルク・バレエのダンサーの写真展が行われているというので、それを観に行く。写真展は、パーク・ハイアットホテルに隣接したショッピングセンターの中のギャラリーで、写真展の点数は20点ほど。写真家の名前はレベッカ・ホッペ。(リンク先で、今回の写真を数点観ることができる) そう、気がついた方もいらっしゃるかと思うけど、ニジンスキーの写真をたくさん撮った『バレエ・リュス写真集』の写真家エミール・オットー・ホッペの孫娘とのことである。

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会場の外観 (写真はすべてクリックで拡大します)

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美しい背中とチュチュのポスター

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モノクロームでダンサーの肉体を大理石の彫刻のように静謐に捉えた写真が、時が経つのを忘れさせてくれるようである。比較的最近の写真が多く、今年の新作「パルツィヴァル-エピソードとエコー」のものもある。ヨハン・ステグリの「薔薇の精」の写真が特に美しかった。

そこから市庁舎まで歩く。見学時間ではなかったので、中は少ししか見られなかったけれども、市庁舎とは思えないくらいクラシックで美しい建物だ。

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市庁舎の前の広場には、ものすごい数の屋台が出ている。ちょうど「シュツットガルト・ワイン祭り」というのをやっているので、ちょうど昼時ということもあり、軽く食事をすることにした。私は膵臓が悪いために禁酒中なのだけど、せっかくなのでちょっとだけいただく。本場で飲むドイツワインはすっきり爽やかでとても美味しい。ズッペというスープを飲んだり、タルトを食べたり、美味しいものを堪能。平日なので、スーツ姿のビジネスマンもランチタイムにちょっと一杯楽しんでいるのが微笑ましい。

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ワインの屋台で埋め尽くされた広場

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アルスター湖には白鳥がたくさんいる。

それから電車で少し移動し、旧市街の方へ。地元在住のまた別の知人に案内してもらって、聖ミヒャエル教会へ。聖ミヒャエル教会は、1762年建立のバロックナ教会。132メートルの高さがあり、アルスター湖など市内を一望できる展望台がある。お天気はとてもよかったのだけど、風が強くてかなりスリル満点。内部はとても美しく、パイプオルガンもとても立派。一日一回、正午にパイプオルガンの演奏があるとのこと。展望台を降りた後は、倉庫街を散策。運河がある倉庫街は、倉庫ばかりではなく、出版社などのメディア企業(ドイツのメジャーな出版社はハンブルクに本社があるところが多いそうだ)、それからレストランやお化け屋敷などの遊戯施設、博物館、ライブハウスなどもあったりして、とても瀟洒な感じのところである。水がある街ってやっぱり雰囲気があって素敵。

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聖ミヒャエル教会

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倉庫街

ドイツはオーガニック・コスメでも有名なところである。そのお友達に教えてもらってショッピングセンターの中の大きなドラッグストアに連れて行ってもらい、ヴェレダやラヴェーラなどのコスメを買い込んだ。

そして、いよいよこの晩は、待ちに待った「ニジンスキー」である。

2007/10/08

7/4 ハンブルク・バレエ「シンデレラ・ストーリー」A Cinderella Story

ハンブルク・シュターツオーパー(州立劇場)での最初の演目。シュターツオーパーは、ヨーロッパによるある壮麗なオペラハウスとは違い、モダンでシンプルな外観。内装も余計な飾りは一切ないけれども、白を基調とした広々としたロビーで、着飾った観客が多い。階段の踊り場には、さまざまなバレエ演目の写真が飾ってある。
劇場の内部は、あまり広くないため、後ろの方の席でも見やすいのではないかと思われた。

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「シンデレラ・ストーリー」A Cinderella Story
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:プロコフィエフ
美術・衣装:ユルゲン・ローズ

シンデレラ:ヘザー・ユルゲンセン
父:ロイド・リギンス
母:ラウラ・カッツァニガ
継母:ジョエル・ブーローニュ
姉:カロリナ・アゲイロ、エレーヌ・ブシェー
青い鳥:アントン・アレクサンドロフ、ピーター・ディングル、ステファノ・パルミジャーノ、アレクサンドル・リアブコ
王子:イヴァン・ウルバン

ほとんど壁しかないような、シンプルなセット。冬のような寒々しく荒涼とした風景の中での、シンデレラの母の葬儀から始まる。木の苗を植えるシンデレラ。お話そのものとしては、アシュトン版などで見られるシンデレラの物語をなぞっているのだけど、このシンデレラは父親に対する思慕の念が人一倍強く、二人の絆が強調されている。アシュトン版での、いるのかいないのかわからない父親像とは大違いだ。もちろん、継母や姉たちはイジワルなんだけど、シンデレラには、天使のように見守ってくれている存在がある。それは仙女ではなく、四羽の青い鳥。青いメタリックな、袴のような広がったパンツに、上半身裸。顔の大部分も青い半透明のマスクのようなもので覆われているのか、青いペイントで塗られているのかほとんど隠れている。青い三編みを背中に垂らしている。たくましく、優しい。そんな出で立ちなので最初はわからなかったのだけど、ひときわ美しく跳ぶ青い鳥がいて、それがリアブコだった。

舞踏会のシーンでの鏡の使い方、モダンな雰囲気の姉や継母たちの衣装、スタイリッシュな演出である。あまりにもクールかつスタイリッシュすぎて印象に残りにくい部分はあるわけだが。

ノイマイヤーの振付だから、ただのシンデレラの物語で済むはずはない。シンデレラと王子は、ひと目で恋に落ちたのか?いろいろな解釈ができるけど、少なくともシンデレラはそんなことはないと思った。ガラスの靴を見つけてシンデレラにようやく出会えた王子に求婚されても、シンデレラはすぐにYesとは答えられない。ためらう。つらい毎日の中で、シンデレラは、唯一の支えである父親を愛している。シルクハットと戯れるシンデレラが可愛い。ためらいがちの、シンデレラと王子のパ・ド・ドゥがとても切なく美しい(このパ・ド・ドゥは、「エトワール達の花束」で、リアブコとシルヴィア・アッツィオーニが踊った)。イヴァン・ウルバンの王子も、ただのチャーミングなだけの王子ではない。王子の衣装ひとつとっても、ラストシーンでは王子のような服ではなく、普通のシャツにサスペンダー、等身大の青年の姿だ。王子は一度はNoと言われて旅に出て、帰ってきてようやく承諾を得ることができる。

二人の真心の象徴としてのオレンジも象徴的に使われている。「シンデレラ・ストーリー」という題名はもちろん逆説的なものである。シンデレラの人物像は、ただの甘い夢に舞い上がる幸運な娘ということではなく、さまざまな痛みや喪失を経て成長した、自分の意思をしっかりと持っている強い現代的な女性であるということが明快に打ち出されている。へザーの持つ凛としたまなざし、きりっとした姿勢によく現れていた。プロポーズから何年も後、シンデレラが自分から王子を愛せるようになって、やっとハッピーエンドが訪れるのである。母親の葬式の時に植えた苗が、大きな木に育っており、その木の下で二人は結ばれるというところがとても素敵。

この日はハンブルクに到着したばかりで、時差ぼけがつらく、あまりきちんと観られなかったのだけど、白いドレスが似合うヘザー・ユルゲンセンの、神々しいまでの美しいライン、そして繊細な演技力はしっかり見届けることができた。


終演後は、一緒に行った友達のそのまた友達で、現地在住の方のご案内でホテルの近くのドイツ居酒屋へ。白ソーセージやザワークラウトなどの良く知られたドイツ料理が美味しかったのは言うまでもないけど、パンにラードのようなものの塗ったものなど、ちょっと変わっている料理も楽しめた。

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ハンブルク旅行記7/3~4

ようやく指の怪我も治ってきました。夏の間ずっと忙しくて(今も忙しいけど)、気がつけば3ヶ月も経ってしまった。ハンブルク行きの記録を少々書きます。時間があまりにも経過しちゃったので、覚えていないこともいっぱいあるのですが。

7月3日、仕事を終えてから成田空港へ。夜9時55分に成田を経つエールフランス。このエールフランス夜便は、仕事をしてから空港にいけるし、パリに到着するのが翌日早朝なので、休みがあまり取れない身には非常にありがたい便なのだ。問題は、エールフランスの拷問椅子なのだけど、今回はあっさり眠れて、気がつけばシャルル・ド・ゴール空港。朝4時にパリなのだ。空港内のお店ももちろんどこも開いていないので、ハンブルク行きの便が出発する7時半まで、ひたすら暇つぶし。ハンブルク行きの便の乗客は、ほとんどがビジネスマン風。飛行機はとっても空いていた。

空港からハンブルク中央駅まではバスで、そこから地下鉄で無事にホテルの最寄駅に到着してホテルへ。ドイツ語はまったくわからないけど、それでもなんとかなるものなんだわ。友達と合流し、一休みした後は、ハンブルクの数少ない名所であるハンブルク美術館 (Hamburger Kunsthalle) へ。

この美術館で一番有名な絵画はパウル・クレーの「黄金の魚」 。青い水の中に浮かぶ金魚のようなお魚さんが可愛い。海をテーマとした特別展をやっていたみたいで(解説は全部ドイツ語だからよくわからない)、特にマックス・ベックマンのような表現主義的な作品が多くて、なかなか強烈なものも。(水兵の絵とか) ピカソやルノワールもあるにはあるけど、すごく有名な作品はあまりなくて、あと有名なものとしては私の大好きなムンクの「マドンナ」くらいだろうか。けっこう改装工事などをしていて、思ったほどたくさんの作品は見られなかったのが残念。

7月というのに、ハンブルクはひどく寒い。持ってきた服ではとても対応できそうにない。らっきょうのようにひたすら重ね着をする。市街地の中心部には、アルスター湖という大きな湖があって、その周りを取り囲むように建物が建っている。クラシックで華麗な建物が多く、鈍色の空と相俟って、きわめてヨーロッパ的な風景。



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市の中心にあるアルスター湖。



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こんな感じのオープンカフェやレストランがたくさん。

2007/10/07

10/2 新国立劇場開場10周年記念 ガラ公演

新国立劇場開場10周年記念 オペラ・バレエ ガラ公演

主催:文化庁芸術祭執行委員会/新国立劇場
2007年10月2日(火)19時 新国立劇場オペラ劇場(オペラパレス)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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■プログラム

・ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》より「前奏曲」

▲第1部 バレエ「セレナーデ」

振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー(「弦楽のためのセレナーデ」ハ長調 作品48)
指揮:渡邊一正

新国立劇場バレエ団
ソリスト:寺島まゆみ、厚木三杏、西山裕子、逸見智彦、森田健太郎

「セレナーデ」を見るのは本当に久しぶり。そして、プロポーションが美しく良く揃っている新国立劇場バレエ団にはとても合っている演目だと思った。幕が開き、青白く幻想的な照明の中、右腕を高く上げて六番ポジションで立っている17人のバレリーナたち。一斉にゆっくりと1番ポジションに足を動かす時の陶酔感。ひとつの美の極致。(それにしても、弦楽のためのセレナーデをCMに使った馬鹿は死んででいいと思う)

通称ジャンピングガールという、ジュッテで何度も横切る役を踊るのは、寺島まゆみさん。彼女の跳躍力には驚嘆するばかり。ふわっと高く浮かび上がるように踊る。ものすごい体力を使いそうなのに、最後までスタミナ切れをすることなく、美しく舞っていた。厚木さんは、ラインの美しさにうっとり。3人のダンサーが交差するところでのアラベスクは、完璧だった。西山さんは、途中で転んでしまう難しい役。繊細かつエモーショナルな演技で、パ・ド・ドゥもとても印象的。逸見さんのダイナミックで伸びやかな踊り、森田さんのサポートのうまさ、それぞれのダンサーの美質が生かされていてとても素敵なパフォーマンスだったと思う。ガラにしては少々地味な演目で、オペラファンにはちょっと受けが悪かったようだけど、夜の闇に溶けてしまいそうな、夢のようなバランシンワールドを堪能できた。また機会があれば近いうちに上演して欲しい。


▲第2部 オペラコンサート

指揮:フィリップ・オーギャン
エレナ・ツィトコーワ
アルベルト・クピード
大村博美/林 美智子/渡辺敦子/中村恵理/村上公太/町 英和
新国立劇場合唱団

・ワーグナー《タンホイザー》より「歌の殿堂をたたえよう」新国立劇場合唱団
・J.シュトラウスⅡ世《こうもり》より「僕はお客をよぶのが好きだ」ツィトコーワ
・ヴェルディ《アイーダ》より「清きアイーダ」クピード
・レオンカヴァッロ《道化師》より「鳥の歌」大村博美
・ロッシーニ《セビリアの理髪師》より「今の歌声は」林美智子
・モーツァルト《フィガロの結婚》より「恋とはどんなものかしら」ツィトコーワ
・ヴェルディ《リゴレット》より四重奏「美しい乙女よ」渡辺敦子/中村恵理/村上公太/町 英和
・ビゼー《カルメン》より「行進曲と合唱」新国立劇場合唱団
・ビゼー《カルメン》より「ハバネラ」ツィトコーワ
・プッチーニ《蝶々夫人》より「ある晴れた日に」大村博美
・プッチーニ《トスカ》より「星は光りぬ」クピード

▲アンコール
・プッチーニ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」クピード
・ヴェルディ《椿姫》より「乾杯の歌」大村&クピード

オペラに関しては、私は完全に素人なのだけど、素人にもわかりやすい有名なアリアばかりを持ってきたので、とっても楽しむことができた。新国立劇場は、まずコーラスのレベルがかなり高い。「カルメン」の合唱は大変な迫力だった。歌い終わった瞬間に客席から「うまい!」という掛け声が出たほど。一番受けていたのは、豊かで艶のある声のクピード。「星は光りぬ」が感動的だった。ビヴラートが効いており、ずっとフォルテッシュモで歌っているので、ちょっと好き嫌いはあるでしょうが、オペラのアリアを聴いた、ということを実感させてくれる。歌手としての力量だと、大村博美さんが艶やかで素晴らしかった。林美智子さんはとても可愛らしい歌い方をする人。そしてエレーナ・ツィトコーワは、とてもスリムな美人。「こうもり」での黒いパンツスーツもかっこよかったけど、「カルメン」での波打つ金髪と、同じ色のドレスが、女優のように色っぽくて華やか、絶世の美女風。視線の使い方にはぞくぞくした。ガラでもしっかりと役柄を演じており、メゾソプラノの歌声も安定していた。「リゴレット」の4重唱も楽しく、この演目にしか出ない歌手の方の独唱も聞いてみたいと思った。

アンコールの「誰も寝てはならぬ」は、トリノオリンピックのパヴァロッティを思い出して少ししんみりしたけど、クピードのスケールの大きな歌声に包まれて胸が熱くなったし、ラストの「乾杯の歌」でガラに相応しい華やかさ賑やかさを感じ、満足感いっぱいで会場を後にした。それにしても、オペラのブラボーってバレエの時の10倍くらい出るものなのだね。

2007/10/04

マラーホフの贈り物演目少し決定/バットシェバ舞踊団来日

おかげさまで指は少し良くなってきました。怖くて絆創膏剥がせないんですが。かなり固定しているのでタイプが上手くいかないんですよね。最近の絆創膏はかなりハイテク。

昨日の新国立劇場のガラはとても良かったです。これで5000円はお得でしたね。バレエももちろんですが(寺島まゆみさん、厚木三杏さん、西山裕子さんが素晴らしかった)、オペラのアリア集も聴き応えたっぷりでした。

そのガラで配られていたチラシから。

<東京バレエ団 ノイマイヤー・プログラム>
まずはNBSニュース。表面は、ダンスマガジンの広告にもあった、東京バレエ団のノイマイヤー・プログラム。「時節の色」「スピリング・アンド・フォール」ですね。すでにキャストも一部出ているようで、日程は

3月22日(土)、23日(日)ゆうぽうと です。新国立劇場の「カルメン」と重なると思いましたが重なりませんでした。公演中止になってしまったタッチキンバレエとはかぶっていました。料金、開演時間は未定です。
実は「時節の色」は観たことがないんですよね。どんな作品なんだろう。

予想される配役
「時節の色」 
男 高岸直樹
時 木村和夫(3/22)、後藤晴雄(3/23)
想い出:斎藤友佳理
男のさまざまな季節:大嶋正樹、中島周、平野玲
冬:井脇幸江-平野玲 田中結子-中島周
春、夏:吉岡美佳

「スプリング・アンド・フォール」
小出領子ー後藤晴雄(3/22)
長谷川智佳子ー木村和夫(3/23)


<マラーホフの贈り物>

おなじくNBSニュースから。すでに発表されていたロビンス版の「牧神の午後」に加え、ニジンスキー版の「牧神の午後」それから、「パキータ」(東京バレエ団の共演)、「これが死か」(ベジャール振付)が上演されることになりました。「牧神の午後」の2ヴァージョンが見られるのは面白いですよね。どうせならマランダン版の「ティッシュの精牧神の午後」もやったらさらに面白かったかもしれません(笑)

追記:unoさんのエントリからの情報ですが、大分公演のキャストに、ボリショイのイワン・ワシリエフ&ナタリア・オシポワの名前があります。(会場iichiko総合文化センターのサイトをご覧ください)先ほど放送されていたロシア合同ガラでの「パリの炎」凄かったですね。また彼らが観られると思うととても嬉しいです。ぜひ「ドン・キホーテ」やって欲しいですね。

<バットシェバ舞踊団「テロファーザ」>

ダンスマガジンにも広告が出ていましたが、オハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団(イスラエル)がやってきます。乗越たかおさんのブログに来日のことが触れられて以来、いつになるのかとても楽しみにしていました。11年ぶりの来日だそうです。

2008年2月2日(土)18時、3日(日)15時 神奈川県民ホール 全席指定5000円。

神奈川県民ホールは、一昨年のリヨン・オペラ座、昨年のスペイン国立ダンスカンパニーと優れたコンテンポラリー・カンパニーをこの時期に招聘していますね。しかもお値段が安いのが嬉しいところです。今回上演される「テロファーザ」はもちろんオハッド・ナハリン振付作品で、昨年のニューヨーク、リンカーン・フェスティバルで絶賛されたとのことです。チケット発売は10月13日。

ぴあ
イープラス

2007/10/03

FALL FOR DANCEで加治屋百合子さんメドーラ・デビュー

休むといいつつ、携帯でエントリを上げてみました。ご心配をおかけしています。


恒例となったニューヨーク秋のダンスイベントFALL FOR DANCE。世界中のトップカンパニーの小品がなんと10ドルで観られるというお得感からすごいチケット争奪戦が繰り広げられたようです。

先日はマリインスキー・バレエのイスロム・バィムラードフとエカテリーナ・コンダウローワによる「ミドル・デュエット」が絶賛されていました

そしてNew York Timesのこの記事に、いきなり加治屋さんの写真登場。(NYTはこのたび有料サービスを終了、すべての記事が無料で見られるようになりました)

ABTは「海賊」のPDDでFALL FOR DANCEに参加。アリにエルマン・コルネホ、そしてシオマラ・レイエスの代役として加治屋百合子さんがメドーラを踊りました。(シオマラちゃんは、夏の怪我が長引いているのでしょうか?ちょっと心配です)

加治屋さんは急きょの代役で準備不足のところもあったようです。しかしながら、小柄なのにシティセンターの舞台が狭く感じられるほどの大きな跳躍など完璧なテクニックを誇り、ヌレエフの再来と評されたエルマン以上の大喝采を浴びたとのこと。ガラとは言えABTでのメドーラ・デビューは大成功だったようで、批評家アレイステア・マッコーリー氏にも褒められています。特にフェッテは素晴らしかった様子。
素晴らしいことですね!ABTの全幕「海賊」で加治屋さんのメドーラが観られる日も遠くないのかもしれません。


なお、DANZAの最新号に加治屋さんのインタビューが掲載されています。プロフィールのお写真はちょっとお化粧が濃すぎますね。とても可愛い方なのに。

2007/10/02

またしばらく休むかも

おかげさまで腕の状態は少し良くなってきたんですが、まだ医者には行けていません。私はここ1年ほど膵臓が悪くて通院しているんですが、仕事がここしばらくあまりにも忙しくてそちらの通院も行けていません。

さらに、今日会社で右手中指指先をざっくりと切ってしまって大量出血し、ひどく痛むため、ますます字を書くことが困難になってしまいました。

携帯で書く分には、親指さえ使えれば大丈夫なので、気力があれば携帯から更新するかもしれません。コメントも携帯からつけるつもりです。が、ここしばらくあまりにも疲れていて、著しく集中力や注意力が散漫になっているため、更新ペースはまた落とす予定です。申し訳ありませんがご了解ください。

明日は新国立劇場のガラに行ってきます。

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