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« 7/5 ハンブルク2日目 | トップページ | 7/5 ハンブルク・バレエ「ニジンスキー」(後編) »

2007/10/10

7/5 ハンブルク・バレエ「ニジンスキー」Nijinsky

ニジンスキー Nijinsky

振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン(プレリュード20番)
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(シェヘラザード)
ドミトリー・ショスタコーヴィッチ(ヴィオラとピアノのためのソナタ147番)
ドミトリー・ショスタコーヴィッチ(交響曲11番<1905年>)

ヴァツラフ・ニジンスキー:アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・ニジンスキー、妻:ヘザー・ユルゲンセン
ブロニスラヴァ・ニジンスカ、妹:ニウレカ・モレド
スタニスラフ・ニジンスキー、兄:コンスタンチン・ツェリコフ
セルゲイ・ディアギレフ:イヴァン・ウルバン
エレオノーラ・ベレダ、母:ジョエル・ブーローニュ
トーマス・ニジンスキー、父:カースティン・ユング
タマラ・カルサヴィナ、バレリーナ:ラウラ・カッツアニガ
レオニード・マシーン、若いバレエダンサー:ティアゴ・ボーディン

アルルカン(「カルナヴァル」):ヨハン・ステグリ、アントン・アレクサンドロフ
薔薇の精:ヨハン・ステグリ
黄金の奴隷(「シェヘラザード」):オットー・ブベニチェク
若い男(「遊戯」):ティアゴ・ボーディン
牧神(「牧神の午後」):オットー・ブベニチェク、カースティン・ユング
ペトルーシュカ:ロイド・リギンス

「レ・シルフィード」のシルフィード、「遊戯」の若い女性、「牧神の午後」のニンフ、「ペトルーシュカ」のバレリーナ:ラウラ・カッツアニガ
「遊戯」の若い女性、「春の祭典」の選ばれし乙女:ニウレカ・モレド

二人のバレリーナ:エレーヌ・ブシェー、バルボラ・コホトウトコヴァ


今回のハンブルク行きは、「ニジンスキー」を観るためのものであったことは言うまでもない。2005年のハンブルク・バレエ来日公演でこの作品を観てから、再びこの作品を観ることができる日を待ち望んでいた。あまりの衝撃にしばらく茫然自失していたこの作品を。しかしながら期待があまりにも自分の中で膨れ上がってしまって、再び観たとき実際どう思うのか、それも少しだけ心配だった。が、それは杞憂だった。

幸運だったのは、2005年に東京で観たときにニジンスキーを演じたのがイリ・ブベニチェクであり、今回はアレクサンドル・リアブコであったことである。二人のニジンスキーの演じ方はまるで違う。イリ・ブベニチェクのニジンスキーは純粋ゆえの凄惨な狂気を感じさせて、最初からニジンスキーの人格が憑依して突っ走っている凄みがあった。男性的なのに危ういニジンスキー像。サーシャはというと、男性的な部分よりも、より繊細で壊れやすく優しげなニジンスキーであった。ピュアさという意味では同質の部分もあったけど、より痛ましい。少しずつ少しずつ狂っていっている過程を見せられていると、胸が締め付けられそうになる。
ロモラを演じたのも、東京で観たアンナ・ポルカルポヴァではなく、へザー・ユルゲンセン(当初はアンナの予定だったようだが、怪我で急遽変更になったようだ)。ロモラの愚かさと母性、ファム・ファタル的で古典的な美しさを体現したアンナとはまったく違ったロモラ像となった。ヘザーのロモラは、強い意志とたくましさ、それとはりつめたような繊細さを併せ持っている。いずれにしても、ノイマイヤーは、ロモラを従来考えられていた浮ついた悪女ではなく、母親的な強さ、献身的な部分を持った女性として描いている。

<1幕1場>
最初から幕が開いている舞台の上には、ニジンスキーが最後の公演を行ったスヴレッタ・ハウス・ホテルのセット。いつのまにかピアノの演奏が始まり、ニジンスキーの舞台を観ようと集まった着飾った紳士淑女たちが入ってくる。バスローブに身を包んだ神経質そうなニジンスキー。真っ赤なドレスのロモラ。バスローブを脱ぎ、踊り始めるニジンスキー。音楽は止んでいるのに、不規則にめちゃめちゃに踊り始める。観客たちは戸惑い、ニジンスキーの踊りに興味を失う。そして彼の回想が始まる。

少年時代のニジンスキーと、妹ニジンスカ、兄のスタニスラフが仲良さそうに踊る。服部有吉さんがいなくなってしまってどうなるのだろう、と思っていたスタニスラフ役。今回演じているコンスタンチンは、服部さんほどではないにしても小柄で童顔、すこしふっくらとしていて、服部さんの繊細さや狂気はないけれども、まじりけのないいたいけな純粋さを感じさせ、却って痛切な感じがする。

ホテルのセットの、白いバルコニーのようなところに、黒いシルクハットをかぶったディアギレフが佇んでいる。初めて観た時も思ったけど、実際には醜男で有名だったディアギレフを、金髪美形のイヴァンに演じさせるのは反則である。満足げにニジンスキーを見守るディアギレフ。そんなディアギレフに対する愛情を隠そうともしないニジンスキー、彼のほうへと駆け寄り抱き合う。

ニジンスキーが踊ったさまざまなキャラクターたちがかわるがわる踊る。「カルナヴァル」のアルルカンから始まり、「レ・シルフィード」のシルフィード、「遊戯」のテニスラケットを持った若い男女たち。

<2場>
ここでホテルのセットはどけられて、またニジンスキー、ニジンスカ、スタニスラフがレッスンをしている場面に。厳しい訓練の中で才能を示していくニジンスキー。バレリーナであった母も回想に登場する。「シェヘラザード」の音楽に乗って薔薇の精、そして黄金の奴隷が登場。薔薇の精を踊ったヨハン・ステグリの妖しい魅力にはノックアウトされた。ほっそりとしていてしなやかで中性的、咲き始めたばかりの、つぼみがこぼれるようなフレッシュな香りを放って柔らかく牝猫のように跳躍する。花びらを飛び散らせるかのように。オットーの黄金の奴隷は、ニジンスキーの有名な写真を連想させるような、圧倒的な官能性でむせかえるよう。野生の豹のような獣性とねっとりとした色香。半開きの眼と口が作りあげる陶酔しきったナルシズムはあまりにも鮮烈。

ディアギレフと「遊戯」の青年とニジンスキーのパ・ド・トロワ。タマラ・カルサヴィナが繰り広げる様々な踊り。ニジンスキーは、自分ならではのオリジナルな舞踊言語を創り上げようと葛藤する。

クライマックスのひとつである、船の上でのパ・ド・トロワ。イリが演じたニジンスキーは、扇子を片手に、素肌に黒いジャケットが過剰なまでにセクシーだったけど、サーシャはあくまでも禁欲的。そしてヘザー演じるロモラには凛とした強い意志が感じられる。ニジンスキーとロモラが視線を交わした時、ふたりは恋に落ちる。牧神のいでたちをしたオットーが、牧神の振付の通りに下手から歩んでくる。椅子に腰掛けていたロモラは、白いドレスに「牧神の午後」のニンフが使っていたのと同じショールをまとっている。ロモラはまずニジンスキーではなく牧神と踊る。ロモラは人間としてのニジンスキーではなく、ニジンスキーが踊ったキャラクターである牧神や、薔薇の精や、黄金の奴隷に恋しているのだ。牧神は背中を弓なりに妖しく反らし咆哮する。彼はセックスの申し子なのでここでもむせ返るような色香を放っている。次にニジンスキーとロモラのパ・ド・ドゥ。ロモラは足先をフレックスにしたりと、必ずしもクラシックな踊りではないけれども、クラシックのテクニックを必要とする難しい振付。床の上を転がったり、相手をかわるがわる変えたり、3人が絡み合う踊り。牧神とロモラが踊る最中、ロモラが落としていったショールの香りを嗅ぐニジンスキー。これはもちろん「牧神の午後」を意識したものである。ロモラとニジンスキーが踊っている間、絶えず牧神は、あの牧神歩きで舞台の上を歩んでいる。彼は、ニジンスキーの影というか別のペルソナなのだ。ニジンスキーの人格はこの時点で分裂をし始めている。ストイックで張り詰めたサーシャは、牧神の強烈なキャラクターに人格を乗っ取られそうになっていて痛々しく、見ているほうも胸が苦しくなってくるが、彼の踊りは情に流されることなく、あくまでも端正で美しい。ロモラはニジンスキーのジャケットを脱がして、情熱的に愛を迫る。椅子に座っているロモラの膝の上に、幸福そうに頭を乗せるニジンスキー。そして牧神は、例のクライマックスのポーズをして果てている。

そんな余韻を破るように、壁を蹴破るのは美しくも邪悪なディアギレフだ。もちろん、彼は二人の関係を好ましく思っていない。二人の結婚式が行われるが、絶対権力者であるディアギレフはすべてを奪って去っていく・・・。

(続く)

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