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2007年9月

2007/09/30

世界のプリマバレリーナたちVol.2 ロパートキナのヴァリエーションレッスン

現代最高のバレリーナの一人であるウリヤーナ・ロパートキナが、お気に入りのヴァリエーションについて、レッスンと舞台映像で語るという趣向。それぞれのヴァリエーションのテクニックや表現方法などについて語り、自らお手本を見せながら、詳しく解説してくれます。

[演目] 「ライモンダ」3幕より ライモンダのヴァリエーション / 「ラ・バヤデール」2幕より ニキヤの踊り / 「パキータ」より パキータのヴァリエーション / 「瀕死の白鳥」
収録時間 : 約64分

このDVD、ヴァリエーションレッスンと銘打っているけど、バレエを学んでいる人にも、習っていなくて観る人専門にも非常に役に立つ素晴らしい内容です。作品や踊りについて語るロパートキナの言葉はとても重みがあるし、どのように役柄を解釈しているのか、その役を踊るにはどのような表現をすればいいのか、内面的なことを中心に深く語っています。ロパートキナはとても知的で、感受性の豊かな人だし、語彙もとても豊富です。あまりにも面白いので、メモを取りながら観てしまいました。


「ライモンダ」3幕。

実演映像では、マリインスキー特有の白いベレー帽みたいなのをかぶっている。手を鳴らさないのがロシア風。フォンデュの柔らかさ、クリアな上半身。この踊りは易しく見えるけど難しい。バレエのスタイルを守りながらも、民族舞踊的な要素があり、なおかつ上品に踊らないといけないからです。ライモンダの性格についてロパートキナは語ります。貴族の娘として慎み深く控えめ、礼儀正しく会話が上手。パ・ド・ブレで下がりながら人々を招くようにするしぐさに、会話の上手さが出ているとのこと。

しかし、終わりの方では、勇気があって強く情熱的という別の性格が現れてきます。ヴァリエーションの祭儀では情熱に溢れた動きをしているところに、その部分が見えてきます。民族舞踊風の中に清潔感があって美しいところが、ロパートキナがこの作品を気に入っている点なのそうです。パ・ド・ブレを、ビーズや真珠のようにきめ細やかに踊ること。ポーズからポーズへ変わる時の滑らかな手の動きがポイントとのことだそうです。改めて言うまでもありませんが、ロパートキナのパ・ド・ブレの滑らかさ、そして上半身のたおやかさは至宝と言うべきで、真珠のような滑らかな輝きがあります。


「ラ・バヤデール」2幕 ニキヤのヴァリエーション
舞台映像は、マリインスキー国際フェスティバルのもので、一瞬だけ映るソロルはニコライ・ツィスカリーゼ、ガムザッティはマリーヤ・アレクサンドロワ。花篭を渡されて笑顔を見せた時のロパートキナの表情が可愛らしいです。映像の品質があまり良くないのが残念だけど、見ごたえたっぷり。ニキヤの衣装だと、ロパートキナが非常に細い人であるのがわかります。スタジオでは、ロパートキナは、これを最も好きなソロのひとつだと語っています。いろいろな心の苦悩を表現できるから。愛を告白できない苦悩、失われた愛を取り戻せない苦しみなど、さまざまな苦しみがここにはあるとのこと。

ニキヤのソロは特殊なソロといいます。精神的に死んだようなな状態で美しく踊らなければならない、命が数時間しか残っていない切花と同じ、というロパートキナによる形容がとても素敵。ソロルから花が贈られた時にニキヤは生まれ変わり心を込めて彼に向かって走り踊る。しかし踊りが速くなり、感情の頂点で不安感と幸福感が交錯します。ロパートキナは、これは喜びの踊りではなく、ニキヤの最後の絶望の叫び、愛する人に捨てられた叫び、もがき苦しんでいる踊りだと思って踊っているそうです。美しいだけのコンビネーションに見えないように情熱を込めて踊っている。一つ一つの動きに意味があり、これは舞台俳優の演技と同じだとのこと。トウシューズでコンビネーションを練習したり、さまざまな練習方法についても触れていたけど、技術よりも物語の内容や苦悩の表現が重要だと語っていました。


「パキータ」
この演目は、マリインスキーの看板演目であり、バレエ団の特徴を示したものであるとのこと。舞台映像では、キラキラしたチュチュがとても美しいけど、ロパートキナもそれに負けない輝き。とても清潔感があって、音楽性豊か、ゆったりと鷹揚な踊りが素敵。「クリスタルガラスのような透明感のある純潔さ」と表現していましたが、まさにその通り。

簡単な動きを流れるようにつなぎ、コンビネーションが自然に結びつくようにする。パのつなぎ方とポーズが重要。そして何よりも、自分の中に音楽が鳴り響いているかどうか。動きの一つ一つと音の結びつきを感じるようにして、音楽が見えるようにしなければならない。上品な会話にたとえられる踊りとのこと。音楽性がいかに重要かを示すために、ロパートキナは、レッスンピアニストの横で、上半身だけの振りを見せてくれますが、本当に音と見事に融合していて、腕だけなのに、その腕から音楽が聞こえてくるようでした。


「瀕死の白鳥」
最も好きな作品のひとつだそうです。踊り手によって全然違う作品になっていきます。白鳥が弱っているのか強いのか、倒れているのか死を待っているのか、腕によってさまざまな表現ができるのです。腕は、白鳥が感じることを表わす生き物にならなければなりません。一人一人のバレリーナの腕はそれぞれ違うのだから、そこで異なる性格を生み出すことができます。立ちすくんだ姿ひとつでも、痛みなのか、それとも力尽きた瞬間なのか、違ったように見せることができるなど、自由な解釈と表現が可能な作品です。

この作品もまた、音楽をどのように感じるかによって、踊り手の気持ちも変わっていきます。どんな楽器を使用するかによっても影響されるので、たとえばチェロとハープだけの演奏だとドラマティックだし、オーケストラにチェロという編成だと叙情的な空気が溢れます。さらに、その日のバレリーナの音楽の受け止め方によっても踊りは変わるとのこと。毎回違う白鳥にならなければならないので、毎回新たな気持ちで踊らないといけないと感じているそうです。違う踊り手の「瀕死の白鳥」を観るのも面白いし、同じ踊り手の違う日の踊りを観るのも面白い。二度と見ルことができないような踊りを見せてくれるなら、とロパートキナは語ります。

「瀕死の白鳥」という短い踊りの中でも、一つ一つのポーズには意味があります。前かがみになればそれは白鳥が水面を見つめていることになるし、腕を曲げるのは心の傷を表わしているとのこと。オデットやオディールは決められたバレエの形があるけれども、この演目にはありません。バレエの形よりも、生きていることを表現することが大切とのことです。白鳥の動きの美しさより、気持ちや感情の表現を見せることが大切。何が起きているのかを心の中で感じていないと、この演目を踊ることはできません。バレリーナは、この踊りの中で自分の考え方を見せなければならないのです。

そして音楽を良く聴いて、オーケストラや指揮者と一体にならなければなりません。自分だけの物語を語るには、大勢のバレリーナたちが用いてきた技術を使うのは当然のことであり、彼女たちが、この名作に魂を注入してきたのです、という言葉は心に残りました。


このほかにも、インタビューでロパートキナはいろいろ語りました。バレエを習い始めた時のこと。ワガノワに入学した時にはホームシックでとてもつらかったこと。舞台に立つのは仕事をしているというだけではなく、強い情感を味わい、いろいろなことを感じる、物語が現実だと思えるほど良い踊りができた時には特に幸せだそうです。入団した当初の思い出は、コール・ドからいきなり抜擢された「ジゼル」の初舞台とのことです。

そして好きな役は、「愛の伝説」の女王メフメネ・バヌー。彼女の性格-普通の人間に近くて、いろいろな感情を感じさせることーに親しみを感じ、気に入っているそうです。踊りたい役は、現実にならないと困るので言わないそう。それから、この映像にも愛らしい姿を見せる娘マーシェンカ(マリアの愛称)ちゃんについても話しました。5歳の彼女にバレエを習わせますか?という質問には、彼女がやりたければ、とのこと。稽古中のママのチュチュと遊ぶマーシェンカちゃんの可愛いこと!黒鳥のPDDのグランフェッテの映像や、カーテンコールが最後に少し流れました。

最後にロパートキナからのメッセージ。

バレエを愛する方はその気持ちを持ち続けてください、人より上手になっても謙虚になってください。あなたの踊りでみんなに幸せな広がることを祈ります。踊る喜びを失わないでください、私自身もそうありたいと願っています。

*****
ロパートキナといえば、技術的には完璧で隙がなく、とても理知的な印象を受ける人。しかし、踊るに当たって、これだけきめ細やかに演技や表現について突き詰め、考えながら踊っているのは意外でした。人間の感情を踊りに反映させたいという強い気持ちがあるようです。言葉のないバレエで、踊りや動きによって物語を伝えていくことが役割と考えているそうです。キラキラと瞳を輝きながら語る様子を見ると、踊ることの幸せを感じているのがよくわかりますし、人柄もとても良さそうです。今まで、子育てなどでなかなか日本では観られませんでしたが、娘さんも大きくなってきたことだし、「白鳥の湖」以外の演目での彼女が観てみたいです。「ジゼル」や、「愛の伝説」が観られるといいなあ。


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2007/09/28

フェリ、ボッレ、ムッルの「真夏の夜の夢」(バランシン版)DVD/ ロイヤル・バレエ「シルヴィア」

Ballet Talkで知った情報ですが、ミラノ・スカラ座で収録された「真夏の夜の夢」(バランシン版)のDVDがようやく発売されるようです。

http://www.tdk-mediactive.com/frame_content.php?did=3~12&showme=everything&from_id=2789

出演がアレッサンドラ・フェリ、ロベルト・ボッレ、そしてマッシモ・ムッルという豪華版。特に最近のフェリの映像というのは貴重です!出演者の豪華さから、たぶん国内盤も出るのではないでしょうか。

Felix Mendelssohn-Bartholdy
A Midsummer Night's Dream
Teatro alla Scala, Milano, 2007

Titania - Alessandra Ferri
Oberon - Roberto Bolle
Titania's partner - Massimo Murru
Puck - Riccardo Massimi
Hermia - Deborah Gismondi
Helena - Gilda Gelati
Demetrius - Vittorio D'Amato
Lysander - Gianni Ghisleni
Hippolyta - Sabrina Brazzo
Theseus - Matteo Buongiorno
Bottom - Camillo Di Pompo
Moth - Sophie Sarrote

Pas de deux – Act Two - Marta Romagna, Mick Zeni

Soprano - Irina Kapanadze
Mezzosoprano - Kete van Kemoklidze

Choreography George Balanchine

リージョンALLです。
この公演については、amicaさんのエントリで詳しく紹介されています。

**********

もうひとつ、こちらも待望のDVD化です。
ダーシー・バッセル&ロベルト・ボッレ主演の「シルヴィア」(ロイヤル・バレエ、アシュトン版)がOpusArteから発売されます。ロイヤル・バレエがOpusArteを買収した成果の第一弾ですね。今後もいろいろ出してくれると嬉しいです。

Delibes - Sylvia (ROH)
http://www.opusarte.com/pages/product.asp?ProductID=218

Sylvia: Darcey Bussell
Aminta: Roberto Bolle
Orion: Thiago Soares
Eros: Martin Harvey
Diana: Mara Galeazzi

The Royal Ballet
The Orchestra of the Royal Opera House
Choreographer: Frederick Ashton

リージョンALLです。また、上記URLで動画を少し見ることができます。

2007/09/26

DVD「Return of the Firebird」

バレエ・リュスシリーズということで、今度はボリショイ・バレエの「Return of the Firebird」のDVDを観ました。ずっと前に買っていたのに、時間がなくて観られなかったのです。そういうDVDがいっぱい家に転がっています。

演目はミハイル・フォーキンによる「ペトルーシュカ」「火の鳥」「シェヘラザード」。
ロシア映画好きなら知らない人はいない、世界最大の規模を持つソビエトの映画スタジオ、モスフィルム・スタジオで撮影された映画仕立ての3本。監修は、アンドリス・リエパ。2002年制作の作品。全体的に、このアンドリス・リエパの独特の美意識がみなぎり、エキゾチックかつちょっとキッチュで、エンターテインメントしているところが魅力的な一本。

「ペトルーシュカ」
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー/ 美術:アレクサンドル・ブノワ
ペトルーシュカ:アンドリス・リエパ
踊り子:タチアナ・ベレツカヤ
ムーア人:ゲンナディ・タランダ
シャルラタン:セルゲイ・ペトゥホフ
悪魔:Vitaly Breusenko

ボリショイ・バレエといっても、「ペトルーシュカ」の群舞は、全員ボリショイってわけではなくて、キャラクターダンサーはRussian Seasons Folk Companyのメンバーだったり、さらには聾唖の俳優たち、コサックダンスのカンパニーからも出演しているとのこと。だからなのか、この「ペトルーシュカ」、カーニバルでの群舞、ざわめきが素晴らしく、いかにもロシアンでエキゾチックな感じだし、撮影が映画的なことも手伝って、怪しさ100倍。民族舞踊もとても本格的で見ごたえたっぷり。

ペトルーシュカは、メイクがまんまピエロという感じなのでちょっと感情移入しづらいけど、その分、一層哀れさや滑稽さが目立つ。身体の動きの人形っぷりも素晴らしい。バレリーナは、これまたメイクが派手かつセクシーすぎて、お人形という感じじゃない。日本人の小づくりで平面的な顔の方が、人形に見えてこの訳には合っているんじゃないかと思った次第。ムーア人を踊るのは、あのゲジミダス・タランダなんだけど、ムーア人メイクをしているとさすがに彼だとはちょっとわからなくて残念。カーニバルの悪魔の踊りのテクニックが非常に高度で、思わず身を乗り出しそうになるほどの鮮やかさ。セットは、パリ・オペラ座のビデオで見慣れたブノワのものを相当変えていて、新鮮だった。


「火の鳥」
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
美術:アレクサンドル・ゴロヴィン、レオン・バクスト
火の鳥:ニーナ・アナニアシヴィリ
イヴァン王子:アンドリス・リエパ
王女:エカテリーナ・リエパ
カシチェイ:セルゲイ・ペトゥホフ

この作品でいよいよ、モスフィルム・スタジオを使って撮影したことの本領が発揮された。私の好きなロシア映画に「妖婆 死棺の呪い」というカルト作品があるのだけど、この映画に通じる、水木しげるのマンガに出てきそうな妖怪がいっぱい登場してキッチュなことこの上ない。悪魔カシチェイといい、その手下の怪物どもといい、笑っちゃうような素朴な造形が素敵。この作品は本格的なセットを使って怪しげな森の中を再現した上、特撮まで使っているんだけどこの特撮もチープ。このチープさが逆に魅力となっている。火の鳥を踊るのは、ニーナ・アナニアシヴィリ。ものすごいメイクをしているので、可愛い顔がわかりにくいのだけど、踊りの面では魅力を十二分に発揮している。華やかさ、ダイナミックさ、コケティッシュさ、そしてまさに火の鳥のような羽ばたき。ニーナのスターとしての輝き、オーラが眩しいほど。ちょっとしたおとぎ話の映画を観ているようで、楽しめた。乙女たちもさすがにみな美しい。


「シェヘラザード」
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ/ 美術:レオン・バクスト
ゾベイダ:イルゼ・リエパ
金の奴隷:ヴィクトル・ヤレメンコ
シャリアール王:アンドリス・リエパ
シャーザーマン:Gulam Poladkhanov
宦官長:Igor Mozzhkhin
オダリスク:Tatiana Genkel / エカテリーナ・リエパ/ Maria Komarova

イルゼ・リエパの絶世の美女ぶりにクラクラ。圧倒的に美しく、色っぽいんだけど女王様然とした気品もある彼女の輝きには目もくらむばかり。ところで、シャリアール王役のアンドリス・リエパとは兄妹だと思うんだけど、思いっきりキスシーンとか濡れ場っぽいところもあったりして、いいんだろうか?イルゼはこんなにも美人なのに、アンドリスはちょっとじゃがいもに似ていてあまりかっこよくないのだよね。「シェヘラザード」での黒髪の方が彼は二枚目に見えると思うのだけど。金の奴隷役、ヴィクトル・ヤレメンコは現在、キエフ・バレエの芸術監督を務めている方。ものすごく速くて7~8回は回っているピルエットといい、跳躍といい、テクニックは申し分ないのだけどちょっとタレ目で、金の奴隷を演じるには獰猛なセクシーさが足りないのが惜しい。これも映画仕立てなので、シャリアール王とシャザーマンが出発して砂漠を馬で走るシーンまで用意されている。この二人が、狂乱の宴の最中に帰ってきて虐殺を繰り広げるところは、首が飛んだりかなりすごいことになっているし。スタジオ収録ならではの舞台の切り取り方が面白い。シャリアール王に命乞いをしてから、金の奴隷の死体を見て動揺し、自害するまでのゾベイダの心の動きが手に取るようにわかるイルゼ・リエパの演技が素晴らしい。後年の「スペードの女王」で発揮された女優ぶりがここでも見られる。そして、彼女への愛憎を表出させたアンドリアスとの息の合い方は、さすが兄妹?


同じ作品でも、パリ・オペラ座の「ディアギレフの夕べ」や、マリインスキーの「Kirov Celebrates Nijinsky」とはまったく違った味わいで楽しめる一本。ロシアの土着性、エキゾチックさ、キッチュさが出ている上、映画仕立てなので、作品の違った魅力を感じられると思う。輸入版だけどリージョンALL。


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2007/09/25

映画「ニジンスキー」

東京バレエ団の「ニジンスキー・プロ」や展覧会「舞台芸術の世界」を観たこともあってまたちょっとしたバレエ・リュスのマイブーム。ちょっと前に観ていた映画「ニジンスキー」のビデオを引っ張り出して再見した。この映画、「愛と喝采の日々」「ダンサー」のハーバート・ロス監督作品なのだけど、ビデオもDVDも国内では出ていないので、ちょっと知る人ぞ知るという映画になっている。

「ニジンスキー」
1980年 イギリス
製作総指揮:ハリー・サルツマン
製作:スタンリー・オトゥール/ノラ・ケイ
監督 ハーバート・ロス
原作 ロモラ・ニジンスキー『その後のニジンスキー』
脚本 ヒュー・ホイーラー
撮影 ダグラス・スローカム
音楽 ジョン・ランチベリー
美術 ニコラス・ジョージアディス
配役 ディアギレフ(アラン・ベイツ)
   ニジンスキー(ジョルジュ・デ・ラ・ペーニャ)
   ロモラ(レスリー・ブラウン)
   フォーキン(ジェレミー・アイアンズ)
   カルサヴィナ(カルラ・フラッチ)
   チェケッティ(アントン・ドーリン)
   マリヤ・ピルツ(モニカ・メイソン)
   ガンズブルク男爵(アラン・バデル)
   ストラヴィンスキー(ロナルド・ピックアップ)
   バクスト(ロナルド・レイシー)

ニジンスキーを演じるのは、当時24歳でABTのソリストだったジョルジュ・デ・ラ・ペーニャ。アルゼンチンとロシアの血が入っているという彼は、ちょっとエキゾチックで甘いルックスのため実際のニジンスキーにあまり顔は似ていないけど、踊っている姿の妖しく両性具有的なところは通じるところがある。伝説的なニジンスキーを実際のダンサーが演じるのは、相当プレッシャーもあっただろうけど、テクニックは非常に高く、ニジンスキーらしさがある。ダンスシーンもふんだんに挿入され、「薔薇の精」などはかなり長くしっかりと捉えられている。彼の美しい「薔薇の精」を観て、ロモラが恋に落ちるという設定になっているのだけど説得力がある。他にとてもセクシーな「シェヘラザード」、「遊戯」「牧神の午後」「ペトルーシュカ」「ダッタン人の踊り」「カルナヴァル」など代表的なバレエ・リュス作品を見ることができるし、踊りのシーンは登場しないものの、「青神」の衣装合わせなども登場する。作品の挿入の仕方も、狂気に囚われつつあるニジンスキーが「ペトルーシュカ」を踊るなどかなりリンクしている。ラスト、拘束着を着せられ暗い部屋でぽつんとしているニジンスキーは、ペトルーシュカそのものである。「牧神の午後」では実際に舞台上でマスターベーションしていてかなり鮮烈な印象を残す。「春の祭典」はこの当時は復元されていなかったため、ケネス・マクミランが振付け、選ばれし乙女を踊るのは、現在ロイヤル・バレエの芸術監督であるモニカ・メイスン。シャトレ座での初演の大騒動についても再現されている。

ロモラ・ニジンスキーを演じるのは、「愛と喝采の日々」などハーバート・ロス監督作品でおなじみのレスリー・ブラウン。この映画はロモラの原作に基づいているのだけど、それにしても相当嫌な女として描かれている。グルーピーの走りみたいなもので、「薔薇の精」を観て「この男を私は絶対に手に入れる」と決意し、自分のお金や人脈を駆使して、実際にそれを実行し、その結果、ニジンスキーは破滅することになるのだから悪女の中の悪女だろう。それからカルラ・フラッチがタマラ・カルザヴィナを演じていたりとバレエ・ファンにはなかなか魅力的なキャスティング。ディアギレフを演じるアラン・ベイツは相当そっくりに変装している。ラスト近く、ロモラがニジンスキーを復帰させてと頼みに行ったところ、彼の新しい愛情の対象であるセルジュ・リファールが佇んでいるところなんて、なんと残酷なことよ。また、ミハイル・フォーキンを演じているのはジェレミー・アイアンズで、この映画が映画デビューということになっているようだ。

1917年のニジンスキーの最後の舞台が描かれておらず、最後は冒頭と同じ拘束着をまとった狂気のニジンスキーの姿で終わるなど、後半生はほとんど触れられていない。でも、彼が踊ったり生み出したりした作品を通じて、ニジンスキーという人物の前半性を知るには絶好の作品といえる。彼が活躍した1910年代の風俗も丁寧に描かれているし、同性愛的な描写もさらりとはしているものの、しっかりと表現されている。どのように彼が追い詰められ、狂気に蝕まれていったのか、といったところもわかりやすく演出されている。国内版のビデオやDVDが存在せず、輸入版の中古のビデオを買ったのだけど字幕がないのが残念。ぜひとも国内版DVD化を希望する作品。

詳しい説明は、鈴木晶さんのサイトにあるのでこちらもどうぞ。
http://www.shosbar.com/balletomania/dance&film/nijinsky.html

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2007/09/23

フェリ引退公演放送/ロベルト・ボッレとミラノ・スカラ座オペラ「アイーダ」

皆様昨日NHKで放送されたアレッサンドラ・フェリの「エトワール達の花束」Aプロの放映をご覧になったでしょうか?

「ヘルマン・シュメルマン」「シンデレラ」「フー・ケアーズ?」の3作品が放映されなかったのはちょっと残念でしたが、それ以外の演目はカーテンコールまできちんと放送し、撮影の仕方も正統的でさすがNHK!と嬉しかったです。また、その前の情報コーナーでは、記者会見、シチリア島タオルミナでの最終公演、ロベルト・ボッレとのリハーサルシーンまで紹介していたのがさらに嬉しい。記者会見では、マルセロ・ゴメス、ロバート・テューズリーのコメントを紹介。

タオルミナの公演会場は遺跡のような古い野外劇場で、幻想的な雰囲気があって素敵なところ。リゾートのようで、家族が見守る親密な雰囲気の中での公演というのがいい感じ。しかも、放送されなかった「カルメン」や「椿姫」の映像が少し観られただけでなく、フリオ・ボッカとの「マノン」沼地のシーンが観られたのが、ボッカファンの私にとっては涙がちょちょぎれるほど嬉しかったです。というか、このシーンを見ただけで思わず涙がボロボロ出てきました。ボッカとフェリの交わす視線のあまりの切なさと温かさに、ほんの一瞬の映像なのに胸が切り裂かれる思いでした。

記者会見の言葉では、「今、表現したいことと身体の動きが完全に一致している。この瞬間の感覚をずっと覚えていたい」とのこと。今回の放映を観ても、フェリの踊りはその通り、成熟と充実を感じさせるものでした。ジゼルだけはもう踊っていないということで不安定だったけれども、それ以外の3演目は彼女が表現するところの「マジカルな感覚」絶妙なバランスの上にあったと思います。

ロベルト・ボッレとのリハーサルシーンでは、「雲を掴もうとするようにして。雲は触れると逃げてしまうでしょう」と細かい指示を出していました。(素直に従うロベルトがかわいい)。ロベルトがインタビューで語ったところの、「観るものを物語の世界へ引き込む力」の強さでは、彼女の右に出る人は今後も出ないような気がします。彼女との共演があったことで、ロベルトもこれだけ素晴らしいドラマティック・ダンサーになったのだと思いました。一つ一つの演目が、ガラという抜粋とは思えないほど、ドラマティックなひとつの小宇宙を構成していました。この公演を観た時には未だ引退ということが信じられませんでした。が、こうやって映像で観ると、もう彼女の踊りを生で観ることは叶わないのだと実感し、愕然とします。「ロミオとジュリエット」での初々しくしなやかで愛らしいジュリエットを見るにつけ、これが引退を目前にした44歳のダンサーとは信じられませんでした。いや、信じたくない・・。

この公演を観たときの感想はこちらです。

*******

さて、この公演で、美しいだけではない、表現力、演技力の素晴らしいダンサーであることが改めて実証されたロベルト・ボッレですが、ミラノ・スカラ座のオペラ「アイーダ」に出演し、それがDVD化されました。ラメダス役のロベルト・アラーニャが観客の野次にキレて舞台を途中降板したことでも有名になった舞台で、演出は映画監督としても有名なフランコ・ゼッフィレリ。私はオペラはまったくの門外漢で、「アイーダ」も去年キエフ・オペラの来日公演を観に行ったという一回きり。でもアイーダは曲も有名だし、ロベルトが出ているので、ってわけで買っちゃいました。

ロベルトの出演シーンは4分程度。2幕の凱旋シーン。アイーダはホント舞台の上にぎっしりと歌手が並んでいて、舞台の上が狭いことこの上なし。エチオピアの奴隷たちの踊りに続き、ロベルトと、ミルナ・カマラMyrna Kamaraがジュッテしながら入ってきます。ミルナ・カマラは元ベジャール・バレエ・ローザンヌのダンサーで、98年の来日公演の「バレエ・フォー・ライフ」にも出演していたとのこと。引き締まった体で、テクニックもなかなか。で、ロベルトですが、身体をココアのような色に塗っているけどその肉体美ですぐに彼とわかります。この衣装が、「エクセシオール」よりも露出度が高く、パンツ一丁なのですがそのパンツがTバックというか褌とでもいうべきか、彼の美しいヒップも半分以上見えていて、動く彫刻さながら。大きな頭飾りをつけています。2日間の公演を編集したので、ロベルトの衣装、よく見るとカットによってちょっと違っているところがあります。狭いところでトゥール・ザン・レールしたりジュッテしたりしないといけないので踊りにくそう。女性と抱き合ったり上半身をのけぞらせるところなんかもあるけどちょっと意味はわかりませんでした。振付そのものは面白くはないのですが、ロベルトが完璧なまでに美しく、しかも美しいだけではなく端正でテクニックのしっかりしているダンサーであるのはよくわかります。最後にはしっかりと顔のアップもあり、瞳が美しいグリーンであるのがわかります。2幕最後のカーテンコールでも、一番中央に陣取っています。

プロダクションのよしあしはオペラ素人の私にはわかりませんが、ゼッフィレリ自身が手がけた美術はゴージャスであることには間違いがありません。演出はちょっといまいちな感じですが。また、コーラスにすごい迫力があり、質はとても高いと思います。アラーニャも決して出来は悪くないし、この出来で野次られたのは気の毒としか言いようがありません。時々ヘンなぐにゃりとしたエフェクトがかかっているのはいただけません。

ロベルトの登場シーンが短いので、熱心なファン以外にはお勧めできないですがこのDVD、HMVで買うことができます。フェリの引退公演TV放映で、彼の肉体美に魅せられてもっと観たい、という方ならOKかな?

ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]
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収録が行われた舞台をご覧になっていたamicaさんのサイトで、この公演の詳細な記述がありますので、ぜひお読みください。

2007/09/19

パリ・オペラ座、ローラン・プティ振付の「プルースト 失われた時を求めて」放映

France2というフランスのチャンネルのMusiques au Coeurという番組で、9月25日(月)の深夜1時25分より、パリ・オペラ座、ローラン・プティ振付の「プルースト 失われた時を求めて」が放映されます。主演はマチュー・ガニオ(サン・ルー)、マニュエル・ルグリ(シャルリュス男爵)、エレオノーラ・アッバニャート(アルベルティーヌ)、エルヴェ・モロー(若きプルースト)、ステファン・ビュヨン(モレル)。

PROUST OU LES INTERMITTENCES DU COEUR

http://guidetv.france2.fr/jsp/prog/fiche.jspx;jsessionid=F465F1FE708A74213FF64ECFB8D19025.frt8_2?idProg=20021011

日本では観られないので、DVD化を熱望します。

今年3月13日の公演の収録ですね。収録の時の様子は、チャコットの「Dance Cube」で紹介されています。

『デス・プルーフ in グラインドハウス』

連休で実家に帰ったら、父がタランティーノの新作「デス・プルーフ」が面白いので見に行けという。シドニー・ポワチエが出ているんだって。でも早速観に行ってシドニー・ポワチエの姿を探したけどどこにもいない。前半のバーでのガールズトークに登場するセクシーなDJ”ジャングル・ジュリア"を演じているのがシドニー・タミーア・ポワチエ。シドニー・ポワチエと「冒険者たち」の名女優ジョンナ・シムカスの娘だという。ったくお父さんったら。

アメリカでは、タランティーノ篇『デス・プルーフ』とロドリゲス篇の『プラネット・テラー』という2本の映画が『グラインドハウス』という1つのタイトルのもと同時上映された。でも日本では、この同時上映は限定公開で、一本ずつバラでの公開となってしまい、出張で日本にいなかったこともあって同時上映は見逃しちゃった。2本立てで上映されるB級アクション映画へのオマージュとして作られているこの作品、わざとフィルムに傷をつけたり、コマを落としたりの工夫がされている。

映画自体は、一言でいえば「く、くだらない」。でも、めっちゃ面白かった。どこを切ってもタランティーノ印で嬉しくなっちゃう。

前半エピソードは、3人の美女がバーでガールズトークを繰り広げる。延々と音楽についての薀蓄を語っているところや、男子の品定めについておしゃべりしているところを、キャメラは長廻しで捉えている。このトークが退屈という声もあるみたいだけど、「レザボア・ドッグス」でのマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」についての語りを思い起こさせて思わずニヤリ。しかも、トークのメンバーの中にいつの間にか、すっかりおっさんになってしまったタランティーノ本人がいるし。ラテン度濃い女の子たちの無駄にエロい肢体、特に脚を舐め回すキャメラ。中でも"バタフライ”ことアーリーンがカート・ラッセル相手に繰り広げるラップダンスのエロティックなことといったら、もう。音楽のセンスも最高にいい。

ところがこのカート・ラッセル演じる怪しげな”スタントマン・マイク”がとんでもない変態サイコ男なのだ。自慢のスタント仕様というか「デス・プルーフ(耐死仕様)」車で美女を惨殺することが彼にとっての何よりのエクスタシー。目をつけた女性を乗せては無残に殺戮することが快楽であり、セックスの代償行為、それどころかそれ以上の快感を伴うのだ。

最初に彼の毒牙にかかるのが、「プラネット・テラー」では片足マシンガンのヒロインを演じるゴス女優のローズ・マッゴワン。こちらでは金髪美女で、ものすごく可愛い。が、彼の車に乗せられたが最後、あまりにも無残な死が待っていた。そして残りの3人の女の子たちも・・・。

後半は14ヵ月後。次にマイクが目をつけたのはスタントウーマン二人に、ヘアメイク、そして女優の美女4人組。前半は音楽ネタなら、後半はカーアクション映画のマニアックトーク大会に。「アンジー(アンジェリーナ・ジョリー)が出ていた下らない映画じゃないほうの『60セカンズ』」について熱く語ったり。そして、スタントウーマンのゾーイ(本物のスタントウーマンで「キル・ビル」ではユマ・サーマンのスタントを務めたゾーイ・ベルが本人役で出演)は、「バニッシング・ポイント」について熱く語る。ついでに、「バニシング・ポイント」に登場したのと同じ白い車が売りに出ているのを知って、試乗し、ある大胆な行動に出るのだ。それは、映画と同じ、超高速で走行するクルマのボンネットにまたがることなのである!

そんな彼女たちをスタントマン・マイクが見逃すわけはなく、早速次の餌食としてデヘデヘ興奮しながら執拗に追い掛け回すのだが・・・ここであっさりとやられるような彼女たちではない!超ハイテンションのスリリングな決死のカーチェイスが繰り広げられる。そして驚愕の展開へとなだれ込むのだ。

超高速で走行するクルマのボンネットの上に横たわるゾーイの肢体を、ここでも舐め回すように撮影するキャメラ。だが、CGではなく実際に決死のスタントを美女が演じているとあればますます大興奮。命綱をCGで消しただけだというから本当にすごい。文字通り手に汗を握る展開。だけど、そこからとんでもない方向へ映画は逸脱しちゃう。さすがカート・ラッセルをここで起用しただけのことはある!いやはや参った。

カート・ラッセル、あそこまで狂っちゃって、そして行くところまで行っちゃって今後の俳優生命大丈夫か?と心配したくなるほど。クルマから突き出た女の子の足を、つばをつけた手で撫でる変態チックなところも怪しかったけど、期待以上のことをやってくれちゃったよ。これぞB級映画魂というもの。とってもキュートな女優役のリーの衣装がチアガール姿というのも、サービス精神満点でいいけど。強くてセクシーな女の子たち、最強。

興奮の坩堝と化した映画館の場内は、やがて大爆笑へ。いやあ、参った。く、下らないけど最高!スカッと爽快!ガールパワーは最高♪THE ENDのクレジットが入るタイミングも絶妙で開いた口がふさがらない。否が応でも「プラネット・テラー」への期待が高まってしまう。映画館で観るべき、体験すべき一本。

デス・プルーフ in グラインドハウス
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、ロザリオ・ドーソン
(2007年/アメリカ)

http://www.grindhousemovie.jp/

クリストファー・ウィールダンの公演にダーシー・バッセル、ジョナサン・コープが参加

9月18日より、ロンドンのサドラーズ・ウェルズで振付家クリストファー・ウィールダンの新カンパニーMorphosesが公演を行います。

http://www.sadlerswells.com/show/Morphoses-The-Wheeldon-Company

この公演には、アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー、ウェンディ・ウェーラン、アンヘル・コレーラ、マリア・コウロスキー、アレクサンドラ・アンサネッリ、サンフランシスコ・バレエからNYCBに移籍するゴンサロ・ガルシアなどのトップダンサーが参加するのですが、中でも注目は、引退したジョナサン・コープがウィールダンの新作「Fool's Paradise」に9月21日~23日のプログラム2において出演すること。

さらに、ニューヨークのシティセンターでの公演では、10月17日、18日に同じく引退したダーシー・バッセルがジョナサン・コープとともにウィールダンの新作「Tryst Pas」に出演します。

http://www.nycitycenter.org/events/event_detail.cfm?event_code=WDN08

ニューヨーク公演では、上記二人、コジョカル&コボー、ウェーラン、コウロスキー、ガルシアらに加え、さらにボリショイ・バレエのアナスタシア・ヤツェンコやバレエ・ボーイズのマイケル・ナンも参加。大変豪華な顔ぶれです。

Financial Timesのインタビューによると、ウィールダンはNYCBの常任振付家を退任した後、ロイヤル・バレエよりやはり常任振付家にならないかという打診があったが断ったとのこと。Morphosesはサドラーズ・ウェルズとシティ・センターの英米両劇場のレジデント・カンパニーとして3年間の契約を結んだそうです。

それとは別に、ウィールダンはオーストラリア・バレエ、サンフランシスコ・バレエ、ロイヤル・バレエ、カナダ・ナショナル・バレエ、デンマーク・ロイヤル・バレエ、そして古巣のNYCBにも新作をこれから創るとのことで、世界で一番売れっ子の振付家といえるでしょう。

Morphosesがいつか日本で公演を行う日が待ち遠しいです。日本ではコンテンポラリー作品の上演はなかなか難しいのが現状ですが。

追記:
http://news.bbc.co.uk/2/hi/in_depth/629/629/7000452.stm
にて、リハーサルのスライドショーとウィールダンのインタビューを聞くことができます。現代作品ではあるものの、女性のポアントにこだわったり、パ・ド・ドゥの形式を好んだりと古典バレエの様式やテクニックを使いながらエッジィな作品を作りたいと語っています。イギリスでは、現代のディアギレフという形容までされているようです。

2007/09/18

9/15 東京バレエ団「ニジンスキープロ」Bキャスト

Aキャストの方にもシャルル・ジュドが出演したため、BキャストはちょっとAキャストより地味な印象。しかし、東京での最終日の今日、マラーホフが舞台挨拶をするというおまけがあった。佐々木忠次氏よりまずは紹介。しかし相変わらず一言多いササチュー。マラーホフ、舞台挨拶するくらいなら休んでいて欲しい気もしたけど、ファンの前でお詫びをしたいという言葉からは、誠実でファンを大切にする人柄が伝わってきた。2月に元気な姿で踊って欲しいな~。

「レ・シルフィード」
プレリュード:吉岡美佳
詩人:フリーデマン・フォーゲル
ワルツ:長谷川智佳子
マズルカ:田中結子
コリフェ:高木綾、奈良春夏

「ジゼル」でも好印象だったフリーデマン、今回もとても調子が良かったようだった。目を伏せて夢を見ているような、甘い表情がとても魅力的。陶酔感や高揚感があって、ドラマティックさを、ともすれば退屈になりがちなこの作品に加えていた。吉岡美佳さんとの並びも、身長の釣り合いが取れていて良い。吉岡さんは、儚げな透明感があって空気の精のようだった。ワルツ、マズルカ、コリフェはAキャストの方が好み。私は西村さんの踊りがやっぱりとても好きなんだな、と思った。足音をまったくさせないで軽やかな長谷川さんのワルツも悪くないんだけど、ふくらみや音楽性については西村さんのほうが優れている。
フリーデマン、ここでも柔軟な身体を生かしたふくよかな表現、高く跳躍しているのに足音も小さめで夢の中の登場人物そのものだった。特に股関節の開き方がとても美しい。4月の「白鳥の湖」からわずか5ヶ月で何故こんなに良いダンサーに変貌することができたんだろう。そのヒミツが知りたい!
東京バレエ団のコールドはこの日も、とてもよく揃っていた。あとは、主役二人の作りあげた幻想的な世界をどうやって群舞も表現できるかが課題なんじゃないかと思った。

「薔薇の精」
薔薇:大嶋正樹
少女:高村順子

高村さんの少女はロリータそのものの愛らしさ。とにかく可愛い~。あのメイドっぽい帽子すら似合ってしまうところ、恐るべし。そして大嶋さんの薔薇。私の席が上手の端ブロックだったため、最初のポーズが見えなかったのが残念。最初の低めのアティチュードのまま回転するところがスムーズに行かなくて建て直しに時間がかかったのが惜しい。でも、持ち前のとても妖艶で両性具有的な雰囲気を生かして、色香溢れる薔薇の精を作り上げていてうっとりしてしまった。陶酔した表情も素敵。踊りについては、マティアスとはかなり振付が違っていて、トゥールザンレールが入っていなかった。無理をしなかったということなのだろうか。シェネ、アントルラッセ、アッサンブレ、ジュッテで構成したシンプルなもの。とても丁寧に踊っていて、アームスも柔らかかった。アッサンブレで着地するところのプリエの美しいこと。少女の足元に滑り込むところが素敵だった。大嶋さんならではの薔薇は作り上げているから、あとの課題はスムーズさ滑らかさと安定感だろうか。


「牧神の午後」
牧神:シャルル・ジュド
ニンフ:井脇幸江

この牧神を観るのも3回目だけど、観れば観るほど練られ熟成されて濃厚さ芳醇さが増している。ニンフたちのうごきもこなれてきた。ジュド様のエロスはとどまるところを知らない。この日が一番舞台に近い位置だったのだけど、井脇さんのニンフが視界に入った時の、ジュド様の表情の変化、欲望の光がキラリと目の中で光るのが見えた。二人が視線を交わした時の緊張感はものすごいし、ニンフを見つめる牧神の燃えるような情欲のたぎりでくらくらと息苦しくなる。ちょっと面白いなと思ったのが、井脇さん演じるニンフが去り、ニンフが残したスカーフと戯れる牧神のところにニンフたちが驚いて寄って来るところ。いけないことをしているのを親に見られてしまった中学生のような罰の悪い表情でちょっと笑ってしまった。
いずれにしても、このニジンスキー版「牧神の午後」をここまでエロティックに、しかも格調高く踊れる人はジュド様を置いてないことを確信。観られる機会を得たことに感謝したい。


「ペトルーシュカ」
ペトルーシュカ:中島周
バレリーナ:小出領子
ムーア人:平野玲
シャルラタン:高岸直樹

脇のキャストは、踊り子が西村真由美さんと河合眞里さん。悪魔は松下さん。馬丁が宮本さんと横内さんで、他のキャストは12,13日と同じ。西村さんの踊り子もお茶目で可愛い。前回「ペトルーシュカ」を上演した時には脇キャストまでキャスト表に書いていてくれたので、今回もそうして欲しかった。

この演目でも、座席の位置が災いし、テントの中から3体の人形が現れる時にペトルーシュカが他のダンサーたちの影に隠れ、まったく見えなかったのが残念。

今回初役の中島さんはとても頑張っていたと思う。白塗りメイクはイレールと同じだったけど、目の周りを黒く囲んでいて、より崩した印象で元の美貌はわからない。今までの人生でもさんざんいたぶられ、踏みつけにされてきたと思える、とてもかわいそうで惨めでエモーショナルなペトルーシュカを熱演。逆に言えば、より人間的で人形っぽさが足りなく思えた。内股や鬱々と内にこもる感じはよく出ていたけど、たとえば最初の3体の人形が前に歩み出てユニゾンで踊る時、足先がぴんときれいに伸びていた。全体的に、非常に踊りが美しくて、中島さんが優れたクラシックダンサーであるのはわかるんだけどペトルーシュカにしてはキレイすぎるのだ。初役ということで、とても気合と力が入っていたけど、もう少し抜いても良さそうだ。手先足先のぶらぶらさ、不恰好さがあまりない。ぺったんと倒れるところは上手だけど、おがくずの詰まった人形ではなくて、人間の男の子のようなのだ。人間らしいあまり、感情移入はしやすい。そういうアプローチがあってもいいとは思ったけどやはり今のままではペトルーシュカではない。踊り込んだらきっととても良い、周さんならではのペトルーシュカとなっていくのではと期待を持つことができた。

小出さんのバレリーナは、丸顔がとても可愛らしい。愛らしい笑顔を貼り付けた無表情で、可愛いんだけどあまりにも空虚で、ある意味とても怖い。 全然笑っていなかった長谷川さんのバレリーナとはまた違ったアプローチなのだけど、こちらの方がずっと人形っぽいなと思った。平野さんのムーア人は4日めとなったこともあり、完成度がとても高い。ドスンドスンという足音の響き方がきれいな音で響いている。より傍若無人で、カリカチャライズされているし、椰子の実の扱いひとつとってもこなれていた。

祭りの高揚感やはじけ方も、より羽目を外して自然な形になっていた。熊が入ってきた時や悪魔の登場の時の人々の反応や小芝居もアドリブ部分が増えてきた。東京バレエ団のメンバーはまとまりがよく、とてもいい雰囲気、世界を作り上げている。ぜひともこの作品は、2年に一回くらいの割合で上演して、東京バレエ団の代表的な作品のひとつにして欲しいと思った。どうせなら、「結婚」はじめ「シェヘラザード」や「ダッタン人の踊り」などもぜひレパートリーに入れて欲しい。「レ・シルフィード」などはどこでもやっているから外していいと思う。難しいかもしれないけど、ニジンスキー版「春の祭典」も合うのではないか。

***

今回の「ニジンスキー・プロ」、とてもよい企画だったと思う。マラーホフを欠いても、NBSの人脈と尽力で素晴らしい代役を得ることができたし、東京バレエ団にとってもまたとない成長の機会だったのではないだろうか。と同時に、マラーホフがこれらのプログラムに出演するところも見てみたいと切に思う。怪我が回復した折には、ぜひこの企画をマラーホフで実現して欲しい。特に成熟し、人間のダークサイドをも味わってきたベテランダンサーならではの表現を見せることができるペトルーシュカは、マラーホフで見てみたいとしみじみ思った。

2007/09/15

9/12,13 東京バレエ団「ニジンスキー・プロ」Aキャスト

2007年9月12日、13日 19:00開演 東京フォーラム ホールC

バレエ・リュスというかフォーキンの振付が大好きなので、とても楽しみにしていた公演。前回のディアギレフ・プロもとても楽しんだ。東京バレエ団の個性に合っている演目なんだと思う。マラーホフが降板してしまったのはとても残念だけど、代役もビックリするくらい豪華で、オーケストラの演奏を除けば満足度が非常に高かった。ディアギレフ作品の上演は、ぜひ定期的に行って欲しいと思う。プログラムにも載っていた「結婚」も再演して欲しい。

レ・シルフィード
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:フレデリック・ショパン

プレリュード: 小出領子
 詩人:木村和夫
ワルツ:西村真由美
マズルカ:奈良春夏
コリフェ:乾友子-田中結子

今回この演目に関しては、演奏がちょっとつらかった。とにかくスローテンポなので、踊っているほうも音にあわせるのが大変そうだし、まったりとしているので集中力を持続させるのが大変。小出さんのプレリュード、西村さんのワルツとも、音楽性が豊かで、まるで音符が踊っているよう。小出さんのとても丁寧な上半身は美しかった。そして西村さんの柔らかい腕の運び方、ふわっと上がるようなジュッテにはうっとり。この二人が跳びぬけて良かったと思う。マズルカの奈良さんは、よく跳んでいるのだけどこの二人と比較すると、ちょっと直線的というか柔らかさが足りず、ポアントの音も鋭い感じ。木村さんは、初日はちょっとサポートに失敗。緊張していたんだろうか。それでも、さすがにルルベで立っている時の足先の美しさ、ほっそりとした脚に高いジュッテは素敵だった。コール・ドもものすごくよく揃っている。12日、最後の方でコール・ドの一人が立ち上がるタイミングを間違えたのには、少々ビックリ。「レ・シルフィード」はよく上演される割にはあまり面白い演目ではないのだけど、小出さん西村さんの踊りで満足してしまった。


薔薇の精
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー (編曲:L.H.ベルリオーズ)

薔薇: マチアス・エイマン
少女:吉岡美佳

吉岡さん、あの年齢で少女役のロリータなフリフリ衣装の似合い方は犯罪的なほど。メイドみたいなキャップはちょっとやめた方がいいと思うけど。
マチアスくん、ちょっと薄めのピンクの衣装。腿の辺りに、グリーンで茎が描きこんである。彼は小柄という印象があったのだけど、こうやって全身タイツ系衣装を着ているのをみると、全体的にほっそりとしていて、手脚も長く顔が小さくバランスの良いプロポーション。彼は大変なテクニシャンなのだけど、同時にとてもしなやかで、優雅さを感じさせるところがオペラ座。ジュッテやアントルラッセはふわっと空を飛んでいるがごとく高いし、シェネはとても速いのに、それもまたエレガントなのだ。アティチュードのままくるくる4回転するところも、速くて正確でなおかつ美しい軌跡を描いている。惜しむらくは、トゥール・ザン・レールでものすごくよく回転しているし高さもあるのに、着地がちょっとだけずれたりするところがあるところ。急な代役でしかも初役だから致し方ないと思える。口を半開きにしたままで、表情も工夫しているのがわかるけど、元気が良すぎて色香や陶酔感を出すところまでは行っていない。朝露が滴るようなフレッシュなサマーローズといったところだろうか。でもとても爽やかで好感が持てる薔薇だった。次に彼がこれを踊るのを観る機会があるといいな。成長ぶりがみたい。1日目より2日目のほうがずっと良かったから。観ているうちに彼の魅力に、思わず心臓がドキドキしてしまった。
急造カップルなので、吉岡さんとの合わせ方も十分ではなくて、ばらばらな感じだったのも惜しい。吉岡さんは、ジゼルで見せた柔らかさが、ここではちょっと足りなかった。

牧神の午後
振付:ワツラフ・ニジンスキー/音楽:クロード・ドビュッシー
牧神: シャルル・ジュド
ニンフ:井脇幸江

ジュド様の牧神、あまりの直球な官能性に腰を抜かしそうになった。ビデオ「ディアギレフの夕べ」で彼の牧神は観ていたのだけど、年齢とともに色気が凄絶なまでに増して、犯罪すれすれのところまで行っている。一挙一動が完璧なまでに計算尽くされていて美しい。人間ではなく完全に獣神となっていた。ニンフを目にした時の表情の変化。射すくめるような、エロティックで鋭い視線には、腰が砕けそうになるほど。それにしても、50歳をとっくに超えている年齢なのに、身体のラインは美しいし、スローモーションのように片足ルルベの状態で立っているという過酷な振付なのにも関わらず、安定度も抜群ですごい。どうしようもなく動物的なのに、同時に神ならではの高貴さも持ち合わせているし、それでいてとても切ない。彼は咆哮することでしか思いを伝えられないのだから。

ニンフ役の井脇さんも、ゾクゾクするほどの美しさ。凛とした横顔を牧神に向けたときの、クールさの中に動揺を隠した表情に吸い込まれた。背中を反らせたまま静止して牧神と視線を交わすところはまさに絵画の中のようにドラマティックであるのに緊張感が漂い息もつけないほど。ジュド様と対等に渡り合える井脇さんの存在感は、すごい。

ジュド様で観ると、牧神の午後がこんなにドキドキさせられる、面白い作品であったことを再認識させられる。ラスト、ニンフの残した青いヴェールをいとおしげに触った後に岩の上に敷き、身を横たえて牧神は果てる。聖と俗がひしめき合う瞬間。卑猥さと純粋な愛が、高みへと昇華していくのを観た。これが3回も観られるなんてなんという幸せ。


ペトルーシュカ 振付:ミハイル・フォーキン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

ペトルーシュカ: ローラン・イレール
バレリーナ:長谷川智佳子
ムーア人:平野玲
シャルラタン:高岸直樹

うろ覚えなのですが、12日、13日の「ペトルーシュカ」
踊り子は高村順子さん、佐伯知香さん(佐伯さんは12日のみ?13日のもう一人は誰だったのだろう→河合眞里さんだった)
乳母は高木綾さん
御者は古川和則さん
馬丁が12日が長瀬さん松下さん、13日が宮本さん横内さん
ジプシーが奈良春夏さん、田中結子さん
悪魔が12日は小笠原さん、13日は松下さん

東京バレエ団は、日本のバレエ団の中では、モブシーンを演じるのがとても上手いところだと思う。日本人には賑わいの表現というのは難しいといわれているわけだけど、今回も群衆の中のダンサーたちは思いっきりはじけて、どこを見ていいのかわからないくらいの小芝居で楽しませてくれた。「ペトルーシュカ」は、ディアギレフ作品の中でも特に大好きなひとつ。ペトルーシュカの切なく哀しい物語もそうなのだけど、サンクトペテルブルグの街の賑わい、猥雑さ、色とりどりでとてもおしゃれで可愛い衣装、カラフルな音楽、一つ一つが魅力的なのだ。

町の踊り子、初日の高村さん佐伯さんの二人ともめちゃめちゃ可愛い。特に高村さんの可愛さは犯罪的ですらある。二人の衣装がまた鬼キュートで。いい感じに酔っ払っている古川さん。温かい雰囲気の高木さん、シャープな踊りのジプシー女二人、田中さんと奈良さん。奈良さんは、こういうセクシーでダイナミックな踊りのほうが向いているな。下手の方で2階から長いひげをたらした人。そのひげで遊ぶ子供たち。芸人たち。一体どこを見ればいいのかわからないほどの目くるめく世界。

そこへ登場した怪しげなシャルラタン(高岸さんの怪演ぶりが良い)。彼が身体を揺らしながら笛を吹いてしばらくすると、3体の人形が登場。ムーア人、バレリーナ、そしてペトルーシュカだ。上半身を固定したまま、3対の人形は細かくステップを踏み、歩み出る。

イレールのペトルーシュカを観られた幸せ。この一言に尽きると思う。

イレールが演じたペトルーシュカは、人間が演じている人形ではなくて、命を吹き込まれた人形そのもの。最初は、ペトルーシュカのメイクが、白塗りにずれた眉毛を描いているほかはイレールの美貌がそのままわかるようなものなので一瞬だけ戸惑ったけど、ぐいぐいとペトルーシュカの心象風景の中に引き込まれた。ぐにゃりとした人形ぶりは絶品。本当に中身にはおがくずしか詰まっていないように思える。だらんとした腕。内向きに曲げられた脚。丸められた背中。おびえたような気弱な表情。人々の喧騒の中でも、ひとり居心地が悪そうだ。バレリーナに恋をしたペトルーシュカは、シャルラタンに渡された木の棒を持ってムーア人を追い掛け回すも、体力に勝るムーア人に簡単に組み伏せられ、ぺたんと地面に落下する。この落下するときのイレールの脱力加減が絶妙。

次の場面は、殺風景なペトルーシュカの部屋。シャルラタンによって部屋に投げ込まれ、またもやぺたんと床に落下する。その部屋では暗闇の中、シャルラタンがにらみを利かせている肖像画だけが飾られ、まるで見張られているようでペトルーシュカはおののく。身体を内向きに折り曲げ、おがくずの詰まったみすぼらしい人形の自分が、人間の心を持ってしまったことを呪い鬱々としている。腕をぶらんぶらんさせながら苦悩させるペトルーシュカの姿は、とてもあの美しいイレール様とは思えず、すべてに見捨てられた哀れで孤独、でも無垢な魂に、胸が痛む。そこへ、愛しいバレリーナが入ってくるので突如狂喜するペトルーシュカ。はしゃいで、美しいトゥール・ザン・レールを2回見せる。ペトルーシュカの純真さを表現した、このシャープかつ柔軟な動きにはうっとりさせられる。が、あまりのペトルーシュカのはしゃぎっぷりに引いたバレリーナは出て行ってしまい、再びペトルーシュカはひとりぼっちに。うじうじと内にこもったペトルーシュカは、それでもなんとかこの部屋から出て行きたい、支配を逃れて自由になりたい、でも扉は閉まっている。仕方なく壁に体当たりすると、壁は破れるがそこに無残に引っかかってだらりと垂れ下がるペトルーシュカ。

打って変わって華やかなムーア人の部屋では、ムーア人が何とかして椰子の実を割ろうとしている。平野さんのムーア人は、単純化された動きが役柄にぴったりと合っていて、ガキ大将のようなワガママさもよく表現できているのだけど、ちょっと性格のよさが出すぎているのかもしれない。もう少しふてぶてしくてもいいかも。ドタドタとしたステップを身につけているのはさすが。バレリーナの長谷川さんは徹底的な無表情で、人形らしくこの役に、はまっていた。ムーア人のことが好きなバレリーナは、ムーア人に近づこうとするけど彼には恋するという感情が理解できない。そこへペトルーシュカが入ってくる。でもやっぱりムーア人には敵わなくて、さんざん痛めつけられ、ベッドの上を転げ周り逃げ回ることに。

再び町の広場では、祭りの喧騒が最高潮に。コサックダンスが繰り広げられ、スカーフ売りがやってきたり、熊が入ってきたりと賑やかでエキゾチックな宴。そしてカーニバルの悪魔。初日の小笠原さん、2日目の松下さん、二人とも、シャープでしなやか、大きな跳躍で目を引いた。前回公演の中島周さんの華麗な悪魔ぶりには及ばなくても、非常に魅力的なアクセントを作ることに成功。夜になってきて、雪が舞い降りる。冷たい空気が伝わってくる。

ムーア人に追い掛け回され、ぼろぼろのペトルーシュカが駆け込んでくる。慌てるバレリーナだけど騒ぐだけで何の役にも立たない。ペトルーシュカはムーア人に切りつけられ、あっけなく、3たびぺたんと倒れこむ。それから立ち上がり、人々に、「僕はこう見えても、人間の心を持っているんだ。命だってもっていたんだ」と訴えかけるように腕を差し出すけど、再び床に突っ伏して絶命。群集は大騒ぎするけど、シャルラタンは、こんなの単なるおがくずでできた人形ですよ、命なんかあるわけない、と抜け殻になったようなペトルーシュカの亡骸を指し示し、人々は納得して去っていく。

だけど、ペトルーシュカの魂は、見世物テントの上にあり、シャルラタンを嘲笑しながら、身体をぶらぶらさせている。身を乗り出しながら振り子のように身体を左右に大きくゆらし、泣きながら笑い、再びだらりと垂れ下がって今度こそ魂までもが死んでしまった。お前たちに僕の気持ちがわかってたまるか、命を持って恋をすることはこんなに哀しく苦しく、しかし、かけがえのないことなのだと、今際の際にペトルーシュカは渾身の力で訴えかけていた。

イレールの凄まじいまでの演技力、身体コントロール力に驚愕。胸を締め付け、引き裂かれるような悲痛なペトルーシュカの心の叫びが聞こえてくるようだった。ペトルーシュカの魂が完全に憑依したようだった。インタビューで、この役を日本で演じるのは最初で最後でしょうとイレールは言っていたけど、できることならまた観る機会があることを願わずにはいられない。


素晴らしい公演だった。マチアス、ジュド、イレール、そして東京バレエ団の皆さん、ありがとう。

2007/09/12

FIGARO JAPON 9/20号 オペラ座連載とニューヨーク特集

FIGARO JAPON 9/20号から、パリ・オペラ座バレエ物語という連載が始まった。第一回は、ガルニエ宮の歴史から。というわけで、絢爛豪華なロビーや控えの間の写真が彩りを添え、そして4ページの記事の最後にはデフィレの写真が。マチュー・ガニオの、舞台の5%の傾斜についてのコメントが面白かった。「前方へ、つまり客席の暗がりへと引っ張られ、身体が不均衡になるので最初は怖かった。慣れたとはいえ、マネージュの時は、今でも傾斜を意識します。上にあがる時には身体を押し出すけど、下がる時にはそうすると加速してしまうでしょう。それに足の運びが難しい角度があるので、客席に向いているのが身体の前か、背中か、斜めかをマネージュしながら知っておく必要があるんです

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オペラ・ガルニエは一昨年の12月に行って内部は見学したものの、予定が合わなかったりチケットが取れなかったりで、バレエを観ることはできなかった。いつかは観られるといいな。

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さて、この号の特集はニューヨーク。フィガロでは定期的にニューヨーク特集をするのだけど、ページをめくっていると、とても懐かしい思いがしてしまう。とても細かいマップには、行ったことのあるお店がぎっしりと掲載されている。今年の6月にフェリのABT引退公演を観に行った時に、ミラノから来た友達とご飯を食べたタイムワーナーセンター内の「ランドマーク」も載っていた。セントラル・パークを一望できる、ガラス張りのレストランなのだけどお値段はとてもリーズナブル。あの時は実質2日半の間に4回も「ロミオとジュリエット」を観たので、全然どこへも行けなかったけど、いろいろとおいしいものも食べられて楽しかったなあ。早く「ロミオとジュリエット」の感想の続きを書かなくては。

去年の10月にもABTを観にNYに行った。やはり2日半しかなかったけど、NY在住の友達とやはりおいしいものをいっぱい食べたり、メトロポリタン美術館に入ったら30分で閉館しちゃったり、美味しいけど食べ過ぎたら絶対に太るFat Witchのブラウニーを買いに行ったら売りきれていて、翌日早起きしてもう一度チェルシーマーケットに行ったり。ソーホーでお買い物をしたりして満喫。そしてグランド・ゼロにも行った。そう、9月11日のテロはちょうど6年前のこと。未だ生々しい事件の痕跡を見て、用意されていたティッシュペーパーを使って涙を拭いたこと。こんな悲劇はもう二度と起きてはいけないのに、この世界では悲劇は何度も繰り返されている。今夜は、あのメモリアルセンターに生前の写真が飾られた犠牲者たちへ祈りを捧げて寝ることにしよう。

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今年の秋は、ニューヨークには行けない。来年の夏にはABTも来日するから、来年のMETシーズンにも行けないかもしれない。でも、ニューヨークは、懐かしい、第三のふるさとのようだ。またニューヨークに行きたいな。何回行っても決して飽きることのない場所。



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2007/09/10

9/9 東京バレエ団「ジゼル」

マラーホフの降板に伴い、急遽代役としてアルブレヒトを踊ったのはシュツットガルト・バレエのフリーデマン・フォーゲル。よくぞ代役としてきてくださったと感謝。春先の「白鳥の湖」では少々心もとなかった彼だけど、今回のアルブレヒトは成長が感じられて、良いパフォーマンスだったと思う。払い戻しは結構出たようだし、マラーホフと比べてはいけないのでしょうが、健闘していたし非常に好感が持てた。

ところで、この日は後藤晴雄さんがヒラリオン・デビューということでちょっと楽しみにしていたのに、サイトでのキャスト発表では木村さんがヒラリオン役に。後藤さんは公爵役だったので、怪我ではないと思うのだけど。木村さんの名人芸というべきヒラリオンがまた見られたのは良かったけど、後藤さんのも見てみたかった。

1幕
実は吉岡美佳さんのジゼルを観るのは初めて。背が高くてほっそりとしたプロポーションなので、フリーデマンとのバランスも良い。可愛らしいのだけど見るからに繊細というか神経質そうで、これは簡単に発狂しちゃうだろうなと思わせた。アームスの使い方も柔らかいし、はかなげで透明感が高い。村娘にしては少々姫オーラがでているほかは清らかで素敵なジゼルだった。
フリーデマンのアルブレヒトは、何しろ若い。若さゆえの過ちを犯してしまう青年だった。プレイボーイではなくて、だからといってジゼルを熱烈に愛しているという印象も受けない。優しいけど優柔不断で、お坊ちゃまで、頼りない男。お坊ちゃまではあるけど、あまり貴族的ではないし、演技はちょっと薄味なのだけど、でも彼ならではのアルブレヒト像はしっかり持っている印象。

パ・ド・ユイットが登場するのが、花で飾られた山車というのが今回の新しい趣向。そしてパ・ド・ユイットは磐石の布陣。今回は平野さんがいいな~と思った。とてもくっきりと踊るのだ。女性では佐伯さんが可愛くて、とてもキレイな弧を描く踊り。大嶋さんは心なしかほっそりした感じがした。

井脇さんのバチルド、恐ろしいほど美しい。そして、アルブレヒトを見る冷たいまなざし。彼は絶対バチルドには許してもらえないだろう。本当なの?と迫るジゼルに対して、「仕方ないんだ」と言いたげなアルブレヒト。彼の男としてダメダメなところがよく出ている。

ジゼルの狂乱のシーンは、神経質そうな吉岡さんだったからぴったりとはまっていた。最初のうちは糸の切れたタコのように、心もとなげで、自分はいったいどこにいて、何をしているのかわからない感じ。身振り手振りは大袈裟ではないのだけど、ねじが外れてしまったかのような演技で、かなり真に迫って怖かった(ほめています)。髪を解いた時気がついたのだけど、地毛でやっていたようで、肩くらいと短めの髪だったのがちょっと新鮮。

ジゼルが死んでしまって、初めて自分がジゼルを愛していたことに気がつくアルブレヒト。ヒラリオンを責める表情の真剣なこと。しかしそれを上回る濃くて報われない愛情を持っていたのが木村ヒラリオン。本当に彼のヒラリオンは至芸としかいいようがない。千万変化する表情も豊かだし、殺すんだったら俺を殺せ、と両手を広げて刀の前に身を投げ出す時の背中の反り、すごい。彼は本当にヒラリオンの人生を生きているんだというのが伝わってきて、感動的だった。

2幕
ミルタ初役の高木綾さん。若干ポアントの足音が目立ったものの、冒頭のソロからミルタらしく、アラベスクパンシェやパドブレもきれいで、冷たい空気を運んでくるようで良かった。しかも、表情はめちゃめちゃ怖い!ドゥ・ウィリの奈良さん、田中さんも、ヴァリエーションをきれいにまとめているし、美しかった。見せ場のひとつである、アラベスクのままウィリたちがずんずん進むところはとてもよく揃っており、ぐらつきも少なくて、やはり足音が大きめなこと以外はレベルが非常に高いと思う。ヒラリオンを死に追い込んでいくところ、ウィリ軍団の怖いこと怖いこと。素晴らしいチームワークだ。

ジゼルのウィリ・デビューのシーン。アティチュードのまま高速回転するところは、回転が正確で速かった。背が高く華奢な吉岡さんは、ウィリ姿もとても似合っていて美しい。軽やかで浮遊感もあるけど、同時に人間らしさというか体温も残した感じで、アルブレヒトに対しては、守ってあげなくてはという包み込むような想いが感じられた。何よりも容姿の美しい彼女のジゼル、かなり気に入った。

フリーデマンのアルブレヒトは、百合の花束を少し高い位置に持っていたので、花で顔が半分覆われて最初は見えなかった。歩く姿も美しいし、ジゼルのお墓の上に横たわる姿も絵になる麗しさ。1幕では少々薄味に感じられた演技も、ここに来てようやく熱烈な愛情へと変わっていったように見えた。リフトもとても上手で、持ち上げられる方の吉岡さんの上手さもあると思うのだけど、ふわっと上がっていてきれいだった。「白鳥の湖」で見られたヘタレさはどこへやら。立派に成長していて嬉しかった。アルブレヒトのヴァリエーションにしても、ジュッテアントルラッセは高いし、背中を柔らかく反らせてのバットゥリーといい、テクニックを相当磨いている。プロモーション用に公開されたバレエフェスの時の映像とは雲泥の差。背が高いから跳躍した時には本当に映える。アントルシャ・シスはやらなかったということは、脚さばき系は少し苦手なのかな?ピルエットも、バレエフェスや白鳥の時みたいに3回回るのがやっと、ってことではなくて6回回っていたし、斃れこむところもきれいに落ちていた。正直言って、彼がここまで踊れるとは思わなかったので、驚いた。役柄にも相当入れ込んでいたようで、気がつくと彼の目には涙が光っていた。

急造のペアというわけで、二人の間に流れる感情が、マラーホフが感じさせるような魂のふれあいとまではいかなかったものの、十分感動的で素敵なジゼルだった。ジゼルが消えてしまった後、床に散らばった花束をかき集めて、ジゼルの墓に捧げ、まるでジゼルを抱きしめるように横たわるフリーデマンの姿に思わず涙。

フリーデマン、来てくださってありがとう!そして吉岡さんのジゼルもまた観たいと思った。

ジゼル: 吉岡美佳
アルブレヒト:フリーデマン・フォーゲル
ヒラリオン:木村和夫

【第1幕】
バチルド姫:井脇幸江
公爵:後藤晴雄
ウィルフリード:野辺誠治
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
 小出領子 - 古川和則、高村順子 - 中島周
 長谷川智佳子 - 平野玲、佐伯知香 - 大嶋正樹
ジゼルの友人(パ・ド・シス):
 西村真由美  乾友子  高木綾 奈良春夏  田中結子  浜野香織

【第2幕】
ミルタ:高木綾
ドゥ・ウィリ:奈良春夏 - 田中結子

アレクサンドル・ソトニコフ
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2007/09/09

Swan Magazine(vol.9)2007年秋号

Swan Magazine(スワン・マガジン)の最新号は、新国立劇場バレエ団10周年を記念した、新国立劇場特集です。
新国立劇場のサイトでも、大きく告知されています。

シーズンスペシャルゲストのザハロワ&マトヴィエンコ「白鳥の湖」リハーサルシーン&インタビュー

作品フォトアルバム(開場以来の主要作品の舞台写真)

牧阿佐美芸術監督インタビュー

新人ダンサー(堀口純さん、寺田亜沙子さん)が案内する新国立劇場ガイド
  二人のブルーのワンピがとても可愛いですね。プチシューは私もよくいただいています。

お楽しみダンサー図鑑
  冒頭のページには、デフィレのように白い衣装で、大階段でポーズをとるダンサーたち。美しいですね。
  16人のソリストのインタビュー、アンケートコメント。
  大きく取り上げられているのは、本島美和さん、酒井はなさん、寺島ひろみさん、中村誠さん。
  それぞれのダンサーの、子供の時の写真が添えられていて、これがめっちゃ可愛い!マイレンの子供時代の写真は本当にかわいすぎ。

舞台を裏から支える劇場のお仕事
  衣装、バレエピアニスト、舞台監督のお仕事について

新国立劇場フリークの座談会

新国立劇場バレエ研修所について
  この記事のおかげで、昨日の研修所公開レッスンで研修生の見分けがつきました

Q&A、上演演目年表

****************

安珠さんのPhoto Essayは菊地研さん(牧 阿佐美バレヱ団)

パリ・オペラ座のエマニュエル・ティボーのインタビューが3ページ。これはファン必見ですね。大きく澄んだ目が印象的。ご両親との旅行をキャンセルしてまで井上バレエ団の「眠り」に参加してくださったとは、立派です。観にいけなくて残念。15歳で入団、17歳でスジェとスピード出世したのに、12年間もスジェのままでいたというのはいろいろと苦悩があったと思いますが、オペラ座が好きという気持ちが彼をここに留まらせたのですね。次のシーズンはクラシックの演目が極端に少ないのですが、「パキータ」のリュシアンを踊りたいと強く希望しているとのこと。実現するといいですね。

清里フィールドバレエ・レポート

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2007/09/08

新国立劇場バレエ研修所 第4期生「1年次」公開レッスン

急遽観に行くことになった新国立劇場バレエ研修所の公開レッスンだったけど、非常に面白かった。

今年の4月に入所したばかりの4期生は女性6名。年齢は17歳が4人と19歳が二人。入学条件が身長161cmということで背の高い、バランスのとれたプロポーションの人ばかり。

まずはクラシックレッスンということで、バーレッスン。最初はかなり緊張していた研修生たちも、少しずつほぐれてくる。時間の都合でやや短縮版。バーレッスンを見ていると実力のほどがわかるといわれているのも納得。この段階で誰が光っているかが明らかになってしまうのだ。内容としては一般的なバーレッスンだけど、さすがにみんな伸びやかにきれいに動いている。講師の新井咲子先生からは、名前を挙げての注意がされるし、ちゃんと研修生の身体に触って修正する。やっぱり、たまに背中が落ちていたり、引き上げが十分でなくてアプロンがなっていなかったるすることもあるもので。

バーを片付けた後は、岸辺光代先生にバトンタッチしてのアダージオやアンシェヌマン。かなり高度なことををやっている。バーがなくなるとやっぱり最初はちょっと大変。ポアントに履き替えてのアンシェヌマン。ポアントをすばやく履き替えることも、プロのダンサーには必要なことという注意が。中にはポアントに乗り切れなかったり、ランベルセの時のアティチュードの高さが足りないと注意される人も。細かいミスはあるけれども、やっぱりみんなすごくキレイ。プロの卵というか半人前なのだけど、入所後4ヶ月でここまで持ってこれているのはすごい、わりとすぐに舞台に立てそうだ。

最後に衣装に着替えて、グノーのワルツで豊川恵美子先生の作品をひとつ踊る。最初にソロを踊ったのが益田裕子さん。自然と目がひきつけられる、なんともいえない女らしい魅力のある人。そしてもう一人、注目は山田蘭さん。JJB出身で、長身、首が長くてプロポーションに恵まれている。ちょっと冨永愛に似た感じの和風の顔がまた個性的でいい。動きがのびのびしていて、ものすごく美しい。この二人は相当な実力者で、バレエ団に入団してもすぐに役が付きそう。

次はみわえりか先生による演劇指導。黒いハイネックノースリーブのトップスに、ぴったりしたパンツに着替えて、まずは空間の把握をするために自由に舞台の上を歩く。それから、声を出しながら歩き回る。お互いに声のキャッチボールを行う。
そして照明が暗くなり、一人ずつ、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を朗読する。一人が朗読している間、他の研修生たちは、効果音のように声を出していたり、場面に合わせて身体を動かしていたりするので、周りを見ているだけでもなかなか面白い。朗読が上手だったのは落ち着いた声でトップバッターを務めた山田蘭さんと、加藤朋子さん。

休憩の後は、キャラクターダンスの指導。これもなかなか面白かった。指導は、公演へのキャラクテールとしての出演でも知られているゲンナディ・イリイン先生。キャラクターシューズを履いた研修生たちは、キャラクターダンスのバーレッスン。そんなものを観る機会はいままで一度もなかったので、とても面白かった。キャラクターダンスのバットマンは5種類あるのだそう。クラシックばかり踊ってきた人には、普通のバーよりも難しいのではないかな。チャルダッシュなどキャラクターダンス独特のセンターレッスンを終えた後には、タランテラとスパニッシュの小品を踊る。タランテラは、イリイン先生によると、毒蜘蛛に咬まれた時に、痛みや痒みを振り払うために踊られた踊るなのだそうで、研修生が踊るスピードでは、痛みは振り払えないって(笑)やっぱり山田蘭さんが素晴らしかった。

最後に、スパニッシュのレッスン。小島章次先生のお手本は、人間楽器のようですごい。まずはカスタネットの打ち方を延々と練習。カスタネットを打ちながら足もフラメンコのように打ち付ける。そして、バーを握ってのサパティアードのレッスン。そして、最後には、セビリャナスという演目を踊る。研修生はみな赤いレオタードを着用していて、長い黒い巻き八枚はぎのスカート(指摘があり修正しました)は、彼女たちが自分で縫ったものだそうだ。

しめくくりとして、一人一人が今までのことや今後の抱負を語った。みんな初々しくて、好きなバレエをいい環境で学べる幸せを感じているようで、いいなあ。

このように、研修所で行われているレッスンを見る機会を作ってもらえるのは本当にいいことだと思う。しかも単なるバーレッスン&センターだけじゃなくて、キャラクターや演技の実習が見られたのが良かった。こうやってまだ入所したばかりの研修生を見ると、今後どのように成長していくのか見守っていきたいという気持ちになるし。彼女たちは、2年間のカリキュラムに取り組むことになるけど、修了後が楽しみ。その前に2月に1年次の発表会があるというのでこれも待ち遠しい。

4期生:加藤朋子、中村菜穂、間辺朋美、益田裕子、山田蘭、丸澤芙由子

2007/09/05

今後の更新について

ロシア合同ガラも終わり一息ついたところです。9月ですね。

ところで、現在、右腕の謎の痛みというかしびれに襲われておりまして、キーボードで字を打つのもつらい状態となっております。私本業がリサーチャーで、調べ物をして何十枚というレポートを執筆するのが仕事のため、字が打てなくなると仕事になりません。今週末にでも病院に行こうと思っているんですが。携帯なども左手で打っている始末ですし、今この文章も左手だけで書いています。ひどく痛いので、マウスを握ることすら困難な状態です。

というわけで、腕の状態が悪化しないように、ここの更新頻度を下げていこうと思っています。ブログをやめてしまうわけではないし、今週末~来週にかけて東京バレエ団のニジンスキープロを観に行くのでその感想も書きたいとは思っています。が、従来のように毎日は更新できない、メールやコメントのお返事もすぐにはできなくなると思いますので、ご容赦ください。お友達サイトにもなかなかお邪魔できなくなると思います。

まだ7月のハンブルク・バレエの感想とかも全然書いていないので、そのうちには書きたいんですけどね。


なお、カウンターが30万を突破しました。ブログ開設当初からつけているわけではないので、実際のところの総アクセス数は把握していないのですが、大体1日のユニークユーザーが600~1000人の間、アクセス数が1300~1500くらいです。いつもありがとうございます。毎度お返事は遅くなってしまって心苦しいのですが、とても励みになっておりますので引き続きコメント等つけていただければありがたく思います。また、間違いの指摘、ご批判などもコメントでご自由にどうぞ。堂々と書かれる分に関しては歓迎です。

私は基本的に辛口で書いておりますが、それは芸風(笑)なのでご理解いただければ幸いです。偉そうなことを語る資格など全然ないわけですが、その辺は大きな心で見守っていただければ。

ボリショイ・バレエ&マリインスキー・バレエ「ロシアバレエのスターたち」 Bプロ 9/1ソワレ&9/2マチネ

最初は9月2日だけ行くつもりだったのが、つい買い足してしまった。でもBプロは2回観られて満足!Aプロはテレビ放映されるけど、Bプロはカメラが入っていなかったようなので。
9月1日は、マチソワでダンサーの皆様もお疲れの様子だったけど、さすがに最終日はみんな力を出し切って素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。ロシアバレエはやっぱりいいな!


第一部 マリインスキー・バレエ

≪アルレキナーダ≫
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ&アントン・コールサコフ

アルルカンのようなアイマスクをつけたコールサコフはちょい悪キャラ。9月1日の方は、コールサコフがけっこう大きなミスをしてしまったけど、2日目のほうはほぼ完璧。非常に難易度の高いヴァリエーションを見事に決めてくれた。オブラスツォーワはここでも、白とピンクのチュチュでロリータっぽい愛らしさ。「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」の曲を使ったヴァリエーションも溌剌としていた。


≪病める薔薇≫
<ローラン・プティ振付/グスタフ・マーラー音楽>
ウリヤーナ・ロパートキナ&イワン・コズロフ

「薔薇の死」(Rose Malade)の題名でマイヤ・プリセツカヤが踊ったことが知られている、プティの作品。ウィリアム・ブレイクの詩を元にしており。音楽はマーラーのアダージェット。目に見えない、すべてを焼き尽くすような情熱を持った虫が内に秘めた、暗い情熱によって滅ぼされていく美の化身、薔薇の死を描いているとのこと。上半身裸に薄いグレーのパンツ姿のコズロフ、薔薇の花弁を思わせるピンク・シフォンのドレスをまとったロパートキナ。ロパートキナの髪には、緑色のいばらの冠。虫と言うにはあまりにも美丈夫で、大理石の彫刻が動いているかのようなコズロフが、ゆっくりとロパートキナを抱き上げ、リフトしたままいとおしむように彼女の身体を撫でる。腕を伸ばしたロパートキナはサポートされながらピルエット。美しい青年の姿をした虫の情熱に惹かれ、共鳴し、時にはシメントリーなムーヴメント、そして時にはリフトされながらゆっくりと回転する。長く優雅な腕をたおやかに動かす姿は、美の化身そのもの。薔薇と虫はくちづけを交わし、少しずつ虫の毒が薔薇を侵していく。虫に支配され、少しずつ弱って病んでいく薔薇。その朽ち果てていく様すら美しい。大きく背中を反らせ、コズロフの背中の上に持ち上げられて身体を伸ばしたかと思えば、背中越しから虫の激しすぎる情熱が、猛毒のように葉脈に回って来てしまう。生きようと強くあがいた薔薇は萎れ、美しい青年に折り重なるように、一枚一枚の花びらが散っていくように死んでいく。ロパートキナの姿態は人間ではなく、いくつもの花弁が重なりあい、棘を持った気高い薔薇という生き物そのものだった。白い腕は、花びらのようだった。濃厚なドラマの世界に浸る。


≪眠れる森の美女≫
<プティパ振付/チャイコフスキー音楽>
アリーナ・ソーモワ&アンドリアン・ファジェーエフ

問題のソーモワ登場。この人は何しろ容姿は姫そのもので愛らしいのだから、普通に踊ってくれさえすれば印象は悪くないはずなんだけど・・・。お姫様がそんなに高く脚を上げるものじゃありません、と叱りたくなってしまう。「眠り」なので、Aプロの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」ほどのひどいことにはなっていなくて、丁寧に踊ろうとしているのはわかるのだけど、それでもブンって脚を高々とグランド・スゴンドの位置に上げてすぐに下ろしたり、クネクネしたりヘンなアクセントをつけているので違和感がある。コーダで、デジレとオーロラがアラベスクプリエしながら、後ろに下がっていくところで、ソーモワが先にアラベスクをやめてしまうのも、あれ?と思ってしまった。コーダでのオーロラのソロは、一人でキャピキャピ踊っているのがとてもギャルっぽくて笑ってしまった。一点だけほめられる点があって、アラベスクしたときのバランスは実に見事だということ。
ファジェーエフはデジレ王子がぴったりのノーブルさでとても素敵なのだけど、ヴァリエーションのシェネが乱れて、少々調子悪そう。それでも、マリインスキーの良心というべきエレガントさ、立っているだけで王子の佇まいは貴重。


≪ジゼル≫
<コラーリ振付/アダン音楽>
オレシア・ノーヴィコワ&ウラジーミル・シクリャローフ

Aプロのルンキナのジゼルがとても素晴らしかったからどうしたものだろうと思ったけど、ノーヴィコワのジゼルもなかなかだった。たしかブノワ賞のガラでは、マチュー・ガニオと「ジゼル」を踊ったはず。真っ白な肌と漆黒の髪の正統派美人で、いかにもジゼルらしい容姿。儚げさや空気感、幽玄さはやはりルンキナの方が一枚も二枚も上手だと思われるけど、霊魂と言うよりは人間らしさを残していて、それでいて死の世界のひんやりしたところも感じさせてくれた。ヴァリエーションのスーブルソーでは、ちょっと身体をえびぞりさせすぎていて、生身の人間すぎると思ったけど、脚がとても強いようで、アントルシャのときもとても高く跳んでいるし、ぴょんぴょん跳ねる時の足音もしないし、技術的にも表現的にも高度で良かったと思う。脚はルンキナより強くて、上手だったのでは。

そして問題のシクリャーロフ。やはりリフトでは安全第一ととても慎重にやっていたけど、うまくコトが運んでよかったね!と思ったらヴァリエーションでミス。1日は、思いっきりふらついて、自分がいったいどこにいるのか状況も把握できないくらい動転していたし、2日は、トゥールザンレールの着地失敗。アルブレヒトのヴァリエーションでドサっと音が聞こえてきそうなくらい倒れこみ、このまま最後まで立ち上がれないんじゃないかと思うほど。でも、彼はジュッテとかはとても高いし、背中も柔らかいし、素材はとても良い。その上、少女漫画の王子様さながらの美少年ぶり。ミルタやウィリたちに簡単に呪い殺されそうだけど!


≪イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド≫
<フォーサイス振付/ウィレムス音楽>
イリーナ・ゴールプ&イーゴリ・コールプ

いやはや変わった「イン・ザ・ミドル~」だった。これが「イン・ザ・ミドル」なのか!別の作品みたいと思うほど。クラシック得意のダンサーが踊るものだから、シャープさは全然なくて、柔らかくて緊張感があまりない。コルプもゴルプも身体能力に優れ、可動域がひろく柔軟性に優れているのだけど、それが作品の勢いをそいでいる印象が強かった。日焼けしていて小柄なゴールプはセクシーで目力が強くフェミニン。そして個性派コルプは、ここでも強烈に怪しかった。まだらに染めた金髪ソフトモヒカンヘア。やはり焼けた肌。そして、あの不穏な表情と怪しげな口元、ギラギラ光る目。イリーナちゃんに襲い掛かって、パクっと食いつきそうな感じ。豹のようにしなやかだし身体のラインもとても美しいのに、ここでも人買いのおじさんか吸血鬼のようだった。作品全体ではなく、わずか4分だけの上演だったのがもったいなかった。この二人の濃厚な世界をもっと味わいたかった。


≪タリスマン≫
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
エカテリーナ・オスモールキナ&ミハイル・ロブーヒン

このコンビは去年のマリインスキー来日公演でも、同じ演目を踊っていたはず。ロブーヒンのパジャマのような水色の衣装がとても気の毒な感じ。風をはらませるためにあんなにだぶだぶなんだろけど、マッチョなロブーヒンが着るとプロポーションが悪く見えてしまうよ。踊りそのものは、ロブーヒンは前半絶好調でダイナミックなジュッテをバシバシきめるけど後半少し乱れてくる。それでも、カンフーっぽいアン・デダンのトゥール・ザン・レールはかっこよかった。オスモルキナは、小柄で華奢だけど脚が長く、ここでも軽やかに踊っていて好印象。フェッテは一瞬アテールになっちゃったけど、持ち直した。1日ソワレでは、ちょっと長いこの演目の途中で観る側の自分がスタミナ切れを起こして少々つらかったけど、二日目は、ダンサーたちの調子も良かったようで楽しめた

≪瀕死の白鳥≫
<フォーキン振付/サン=サーンス音楽>
ウリヤーナ・ロパートキナ

あまりの素晴らしさに、表現する言葉が見つからない。気高く強い白鳥の最後の輝きを、指先まで行き届いた表現で踊りきったロパートキナ、肩から出ているのは白鳥の翼そのものだった。死を迎える前に一瞬視線を上に向けるのがたまらない。また涙が溢れた。


≪海賊≫
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
ヴィクトリア・テリョーシキナ&レオニード・サラファーノフ

華奢で童顔、モンチッチ・ヘアのサラファーノフは奴隷姿になるとますます僕ちゃんという感じだけど、さすがに超絶技巧をバシバシ決めてくれていた。1日ソワレは正直言ってコーダのマネージュが低かったり、本調子ではないかなと思わせたけど、2日目は復活。グラン・ピルエットでもすごいスピードで軸もキレイなまま、10数回回っていたし、トゥール・ザンレールも高くて鮮やかだった。華奢なだけに、跳躍している時に身体がとてもしなやかできれいだな、と思わせてくれるのがいい。
何よりも素敵だったのがテリョーシキナ。彼女は決して美人ではないのに、堂々とした存在感、貫禄があってカッコいいことこの上なし。バランスも驚異的に安定している。フェッテはほとんどシングルだけど、腕をアンオーに上げたりしているのに非常に安定していて、あと10回くらい余裕で回れそうな感じ。ピケでの足のポジションは正確だし、パッセの位置も高い。高々と上げられたアティチュードの脚にも品格があって女王様のよう。これから大物になること間違いなし。

第2部 ボリショイ・バレエ

≪ばらの精≫
<フォーキン振付/ウェーバー音楽>
ニーナ・カプツォーワ&イワン・ワシーリエフ

Aプロの「パリの炎」で度肝を抜いたイワンくんなのだけど、「薔薇の精」の全身ピンクタイツを着こなすには、プロポーションがあまりにもかわいそうだった・・・特にAプロのコルプが、顔はともかく身体のラインの美しい人だったから。イワンくん、身長は175cmと言うからすごく小さいわけではないのだけど(ABTのエルマン・コルネホも「薔薇の精」を踊る人だけど身長165cm)、太ももが太く、脚が短いのよね。こればっかりは本人はどうしようもないから気の毒なわけだけど。最初は1階の前方で見たので、少々ビックリしてしまったほど。2回目は3階席だったので、もう少し違和感が少なかった。技術的にはもちろんすごい人で、飛び込んでくるときや飛び去っていく時の跳躍も高いし、トゥールザンレールも3回転しているんじゃないかと思うくらい回っている。役作りも一生懸命研究したみたいで、肩を上げ気味にしているところは丁寧にやっていたし、アームスも頑張っていた。ただ、表情の作り方がまだまだで、薔薇の香りがふっと漂って少女の甘美な夢の中に忍び込むという感じにはならない。一言で言えば小鬼系。パックなんか躍らせたらぴったりなんだろうな。イワンくんがもう少し大人になってから観たい。一方、カプツォーワの少女はすごく可憐で、ロリータという感じで良かった。


≪ライモンダ≫アダージョ
<プティパ振付/グラズノフ音楽>
ネッリ・コバヒーゼ&アルテム・シュピレフスキー

残念なことに2幕のアダージョだけで、キャスト表には7分と書いてあったけど7分も踊っていなかったのでは?ボリショイの「ライモンダ」特有の、ジャン・ド・ブリエンヌの長い白いマントをまとったアルチョムが美しい~。これでもう少しお肌が白ければ(焼きすぎ)言うことなかったのだけど。ネッリちゃんもほっそりとしたプロポーションに上品な美貌の持ち主なので、絵に描いたような騎士と姫。アルチョムはサポートは頑張っていたし、パートナーシップも良かったと思う。が、やっぱりアダージョだけなのは残念。


≪白鳥の湖 「黒鳥のパ・ド・ドゥ」≫
<グリゴローヴィチ振付/チャイコフスキー音楽>
エカテリーナ・クリサノワ&ドミートリー・グダーノフ

Aプロで影の薄かったグダーノフだったけど、彼の王子はエレガントで良かったと思う。高く跳躍しても足音は全然しないし、足先もきれいだった。ヴァリエーションは、チャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲。クリサノワのオディール、1日ソワレでは髪の羽飾りが一本落ちてしまった。テクニックも強くて好感の持てる黒鳥。私はグリゴローヴィッチ版のオディールのヴァリエーションは、パ・ド・シスの5番の曲といい、アティチュードからピルエット、ピケターンの難易度の高い振り付けといい、通常のヴァリエーションより好きなのだ。ここでの踊りはほぼ完璧。フェッテは、1日ソワレでは途中ちょっと不安定になってしまったが、2日は、腕をアロンジェに上げてのダブルを織り交ぜて、とてもかっこよかった。ちょっとエキゾチックな顔立ちなので、余計に黒鳥の衣装が映える。ガラだし、舞台装置一切なし、照明も特に工夫があったわけではないので、ドラマ的な部分を表現するのはちょっと無理だったと思う。


≪スパルタクス≫
<グリゴローヴィチ振付/ハチャトリアン音楽>
スヴェトラーナ・ルンキナ&ルスラン・スクヴォルツォフ

ボリショイ編では、トリのドン・キと並んでこの日のクライマックス。この二人の「スパルタクス」は去年のインターナショナル・スターズ・ガラで観ていて、そのときもなかなかだったのだけど、そのときよりもずっとエモーショナルで良かった。ルンキナの表現力がまず素晴らしい。儚げで脆さも感じさせながら情感に溢れ、意志の強さと凛とした部分が伝わってくる。奴隷の衣装が被虐的でまた美しさ倍増。ルンキナは若手だと思っていたけどもう20代後半で、少し生活感が出てきた感じがまた、スパルタクスの妻フリーギアという役柄に合う。フィギュアのビールマンスピンのように脚を頭上で持ったりするのもとてもキレイ。そしてスパルタクスのスクヴォルツォフ登場。彼はイレク・ムハメドフをスマートにした感じで、少し雰囲気が似ている。スパルタクスがすごくよく似合う!1日ソワレは、例の片手逆さリフトの持続時間がちょっと短かったけど、2日目は完璧。すごく高々と持ち上げていて、リフトされているルンキナの方も脚のポジションをクペにしたままでポーズを維持。ハチャトゥリアンのドラマティックなスコアをいい演奏で聴けたのも良かった。全幕が観たい。

≪ミドル・デュエット≫
<ラトマンスキー振付/ハーノン音楽>
ナターリヤ・オシポワ&アンドレイ・メルクーリエフ

芸術監督ラトマンスキーの作品で、あまりよい評判を聞いていなかったのだけど意外と面白かった。暗い照明の中浮かび上がる男女。黒いタンクトップのメルクリエフと、黒い、腰までのミニワンピのオシポワ。オシポワの髪型が、ドレッド編みこみをまとめたもので可愛かった。オシポワとメルクリエフは向かい合っていて、オシポワは背中を舞台に向けていることが多い。二人は手をつないでいて、オシポワがクールに複雑なパを繰り広げる。全身ゴムマリというかバネのような身体で、深いプリエから飛び上がったり、オフバランスしたりしてとてもカッコいい。それをサポートするメルクリエフも相当大変なはず。少しだけ、それぞれのソロもあるのだけど、オシポワはジュッテの高さもさることながら、後ろ足がはるかに頭上を越してしまうほどの驚異的な背中の柔らかさを見せた。きっと彼女の「ドン・キ」のカスタネットのソロは凄いだろうな。ラスト、一人ずつ倒れこむけど、また立ち上がって最初の動きへ。本来は何組かのカップルが踊るらしく、ここでペア交代するらしい。
ベースギターの音が効いているミニマルな感じの音楽も耳に残る。人によってはとても退屈する演目であるとは思うけど、私はけっこう気に入った。

≪ドン・キホーテ≫
<ゴールスキー振付/ミンクス音楽>
マリーヤ・アレクサンドロワ&セルゲイ・フィーリン

千両役者登場。この二人の素晴らしさについては、今更語るまでもない。スターの輝きでピカピカしている。フィーリンのバジルは、バジルにしてはエレガントだけど、見得の切り方、顔のつけ方、ポーズ、一つ一つが美しくキマっていて大人の色気炸裂。Aプロのサラファーノフのように超絶技巧を入れるわけでなく、きわめて正統派のテクニックで、力を抜くところは抜いて余裕たっぷりに決めている。ピルエットの回数がすごいとか、すごく高く跳んでいるとか、そういうのがなくても、キレキレのいかしたバジルを踊ることはできるんだということを実感。そしてマーシャのキトリも気風が良い姉御風で素敵。不安になるようなところはひとつもなく、堂々としていて素敵。指をパッチンと鳴らしているところもかっこいい。フェッテにしても、曲調が変わるところでダブルをひとつ入れただけで残りはシングルなんだけど、音にぴったりと合っているし、恐るべき安定度。まだ10回くらい余裕で回れそうだ。パートナーシップも完璧で、お互いに対する敬意、信頼感が伝わってくる。当初は「グラン・パ・クラシック」を踊る予定で、演目変更になった時に「またドン・キか。ドン・キももう飽きたな」と思ったけど、この二人のドン・キは格別。いいものを見せていただいた。

フィナーレは、なんといってもルンキナを片腕さかさまリフトしたまま舞台を一周したスクヴォルツォフがすごかった。めいめいのダンサーたちが、見せ場を少しずつ披露していて、目がいくつあっても足りないけど楽しいフィナーレ。そして最後は、ダンサーが見えなくなるほどの大量の紙吹雪とリボン。女性陣のチュチュの上にも雪のように降り積もっていた。紙ふぶきを集めてオーケストラピットに降らせていたお茶目なアクサンドロワ。お互いに紙ふぶきを掛け合ってはしゃぐダンサーたち。カーテンコールでは、リボンを身体に巻きつけていたダンサーも。あのクールそうなロパートキナですら、リボンで遊んでいるから可愛い。幕が閉じた後も、緞帳の向こうで盛り上がっている声が聞こえたのが嬉しい。本当に素晴らしい、楽しい公演をありがとう!またこの企画は実現して欲しい。

2007/09/03

ボリショイ・バレエ&マリインスキー・バレエ「ロシアバレエのスターたち」 Aプロ 9/1

前日まで香港出張で、現地での仕事が終わって速攻で帰途につき、金曜深夜に帰宅。へとへとの状態で土曜日マチソワ、日曜日マチネというハードなスケジュールだったけど、とっても楽しめた公演だった。オペラ座もいいけど、やっぱりロシアバレエは最高だな、と。特にマリインスキー側のダンサーにミスが目立ったり、バカンス帰りなのかこんがり日焼けした人も多かったけど、さすがの底力を感じた。

ボリショイ・バレエ&マリインスキー・バレエ
ロシアバレエのスターたち
プログラムA  9月1日

1部 ボリショイ編

エスメラルダ≫第2幕のパ・ド・ドゥ
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
エカテリーナ・クリサノワ&ドミートリー・グダーノフ (ボリショイ)

クリサノワの脚でタンバリンを叩く位置がとても高くてすごいな~と思った。でも、音はもっとバシっと鳴った方が迫力あっていいと思う。途中で音楽とずれてくるし、改めて難しい演目であることを実感。ルグリガラでのアクセル・イボー君の鳴らし方が気持ちよかったな。グダーノフはここでは地味。


マグリットマニア≫デュエット
<ポーソホフ振付/ベートーヴェン音楽>
ネッリ・コバヒーゼ&アルテム・シュピレフスキー (ボリショイ)

暗めの照明の中、ネッリちゃんとアルチョムの長身美男美女が繰り広げる世界。儚げなのに意志の強そうなネッリは真っ赤な長いドレスで、腰の辺りに深いスリットが入っていて、そこから覗く長く美しい脚がそれはそれはセクシーなこと。アルチョムは白いシャツに黒いパンツ、サスペンダーで、かなり日焼けをしている。アルチョムはもっぱらリフト&サポート専門で踊ってくれなかったけど、サポートそのものは上手になっていると思った。情念のこめられたドラマティックなパ・ド・ドゥで雰囲気は良かった。ラストに男性が去っていって、ぽつんと残された女性の心情の表現が秀逸。音楽はちょっとアヴァンギャルドなアレンジをしすぎな感じ。


海賊≫第1幕の奴隷の踊り
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
ニーナ・カプツォーワ&アンドレイ・メルクーリエフ (ボリショイ)

この衣装は、新しいラトマンスキー版のものだろうか。なんかチロリアンっぽい可愛い衣装が海賊というのが不思議。ランケデムとギュリナーラのパ・ド・ドゥなのだけど、見慣れたものとはずいぶん違う感じ。白いヴェールで顔を覆ったギュリナーラがしばらく踊った後、ヴェールを外すと笑顔のカプツォーワ。とても可愛らしいのだけど、くりくりしたカールの髪型がまた不思議。カプツォーワの踊りは輪郭がはっきりとしていて良かったと思う。問題はメルクリエフで、奴隷商人のアクの強さがあまり出ていなかったのと、ヴァリエーションで超絶技巧をやろうとして思いっきり両手を付いてしまったこと。うむむむ。彼には期待をしているんだけど。


ジゼル≫第2幕のパ・ド・ドゥ
<コラーリ振付/アダン音楽>
スヴェトラーナ・ルンキナ&ルスラン・スクヴォルツォフ (ボリショイ)

ルンキナのジゼルといえば、非常に画質の悪い古い映像で、アルブレヒトがニコライ・ツィスカリーゼ、ミルタがアレクサンドロワというすごいキャスティングのものを観たことがあるのだけど、ツィスカリーゼがあまりにも濃い演技ですっかり食われてしまっていた。ところが、今回の彼女のジゼルは素晴らしかったと思う。系統としてはヤンヤン・タンに近い。夜の森のひんやりとした空気を客席まで伝えてくる、霊魂のような、生気のない浮遊感あるジゼル。静謐で繊細な表現で、短い時間の間にすっかり彼女の作り出す世界に引き込まれた。ジゼルという役を愛し、深い洞察を加えて踊っているのがわかる。全幕でぜひ観たい。スクヴォルツォフはサポートが非常に上手。


ファラオの娘≫第2幕のパ・ド・ドゥ
<プティパ,ラコット振付/プーニ音楽>
マリーヤ・アレクサンドロワ&セルゲイ・フィーリン (ボリショイ)

フィーリンの脚をオペラグラスで観たら、けっこう傷や虫刺されが多かった。それはさておき、いつものことながら彼の脚捌きは天下一品で惚れ惚れする。5番、アントルシャ・シス、2番、アントルシャ・シス、5番と繰り返すところも、キレイな着地。あのタオールの衣装をあれ以上素敵に着こなせる人は他にいないだろう。そして、アレクサンドロワの姫オーラも光り輝くばかりで素晴らしい。ラコット特有の、上半身よりも下半身の細かいパに力点を置いた振付は、ダンサーにとっては本当に大変だと思うんだけどその大変さを微塵も感じさせないし、パートナーリングも完璧でユニゾンの動きがキレイに揃った踊り。最後の、鼻に手をやるきめポーズの堂々としてカッコいいこと。二人が作り上げる世界がなんとも信頼感溢れていていい感じなのだ。


パリの炎≫第4幕のパ・ド・ドゥ
<ワイノーネン振付/アサフィエフ音楽>
ナターリヤ・オシポワ&イワン・ワシーリエフ (ボリショイ)

ボリショイのロンドン公演、ドン・キホーテで一大センセーションを巻き起こした若手ペア。この二人でドン・キは観たかったな。なんといってもイワン君は18歳になったばかりで、ミーシャの再来と言われている逸材。ここでは若さが出たというか、超絶技巧は気持ちいいくらいにキマるんだけど少々雑な面が見受けられた。それと、致命的にプロポーションが悪いのが残念なところ。太ももの太さは、この間の「舞台芸術の世界」で見たニジンスキーを髣髴させる。それでも、ヴァリエーションでの身体を真横に近い斜めに傾けてのきりもみ状態トゥールザンレール連発は凄まじく、恐るべき新星が現れたことを印象付けた。グラン・ピルエットもすごかったけど、あまりにも回りすぎて途中からちょっとぐたぐたに。一方のオシポワも、まずはジュッテの高さにびっくり。彼女の方が経験がある分、確実と言うか丁寧に踊っている。飛び込んでいくダイブの思いっきりの良さは爽快。小柄だし正統派の美人ではないんだけど、ちょっと子豚ちゃんのようで愛嬌がある。これからのボリショイを背負って立つ二人に期待!


2部 マリインスキー編

ばらの精
<フォーキン振付/ウェーバー音楽>
イリーナ・ゴールプ&イーゴリ・コールプ (マリインスキー)

コルプの薔薇の精は、薔薇というよりラフレシアというのが定着していたけど、今回は彼も日焼けをしていて、怪しさ倍増。少女をどこかに売り飛ばしそうな人買いのおじさんのようだった。怪しく光る目、あの不穏な表情とぽかんと開いている口が挙動不審なのだ。驚異的に柔らかく美しいアームス、やはり柔らかい背中、高く上がるアントルラッセの後ろ脚、音のしない着地ときれいなつま先、彼の踊りは非常にしなやかで美しいのに、少女には悪夢のように映りそうだ。一方少女役のイリーナ・ゴルプは、衣装はフリフリ、縦ロールの髪型もお顔も可愛いのに、焼けた肌と青いアイシャドウで、ギャルのような少女だった。窓がないのが非常に残念。あと、薔薇が巨大でピンク色だったのには少々仰天した。


サタネラ~ヴェニスの謝肉祭より
<プティパ振付/プーニ音楽>
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ&ウラジーミル・シクリャローフ (マリインスキー)

ジュリエットなどの演技には定評のあるオブラーツォーワを観るのは初めて。童顔で可愛いんだけどすごく小柄。やはり童顔王子様のシクリャローフとの並びは、あまりにも可愛らしくて大人が踊っていることを忘れるほど。初日、シクリャローフはサポートでかなり失敗をしてしまったとのことだけど、この日はとても慎重にやっていたので失敗はなかったけど精一杯な感じ。オブラーツォーワも、連続ピルエットは慎重に回っていた。ラストにシクリャローフががしっとオブラーツォーワに抱きつくところもまた可愛らしいけど、もうちょっと思い切りが必要だと思われた。


3つのグノシエンヌ
<マネン振付/サティ音楽>
ウリヤーナ・ロパートキナ&イワン・コズロフ (マリインスキー)

ピアノが舞台の上に配置され(ピアニスト:オルガ・ソボレーヴァ)、サティの東洋的で物悲しい、美しい曲が演奏される。演奏も非常に良かった。そして、完璧なる美の体現者としてのロパートキナを堪能。長い腕、すっとした立ち姿、リフトされる様子、一つ一つの動きやポーズが洗練されていて、美の化身としか言いようがない。凛としながらも決して冷たくないが、観ている側も居住まいを正したくなるような、張り詰めた緊張感が伝わってくる。一方のイワン・コズロフは非常に長身で、彫刻のように美しい肉体、金髪の美貌の青年。ロパートキナのパートナーとしてエイフマン・バレエから移籍したというだけあって、サポートが素晴らしい。夢見心地の時間をすごすことができる至福。


ディアナとアクテオン
<ワガーノワ振付/ドリゴ音楽>
エカテリーナ・オスモールキナ&ミハイル・ロブーヒン (マリインスキー)

前の演目のロパートキナがすごすぎたのでどうしても印象は弱くなってしまうけど、決して悪くはない。ロブーヒンはアニマル柄のパンツでまるでターザンみたい。去年のオールスターガラもBプロも「タリスマン」と、似たような系統の演目ばかりなのが少々気の毒。ダイナミックで豪快な踊りはマリンスキーでは異色な感じで、なかなか良いのでは。ラスタ・トーマスがよく見せるようなカンフーキックもあり。オスモルキナも小柄ながらプロポーションに恵まれたバレリーナで、難しい振付をやすやすとこなしていた。軽やかで爽やかな印象。


グラン・パ・クラシック
<グゾフスキー振付/オーベール音楽>
ヴィクトリア・テリョーシキナ&アントン・コールサコフ (マリインスキー)

テリョーシキナ姐さんの男前な踊りに惚れ惚れする。かなり押し出しが強く、アティチュードの脚もとても高く上げるのだけど、やりすぎ感や品のなさは感じさせず、カッコいい上に風格がある。実際には背は高くないのに、自分を大きく見せるすべを心得ている。テクニックも高く、片足ポアントで進んでいくところも天井から糸で吊られたようなバランスがお見事。コールサコフも着実な踊りで良かったと思うけど、プリマオーラ出しまくりのヴィーカ(テリョーシキナの愛称)にすっかり食われた感じ。彼はちょっと顔が大きい。音楽が相当編曲されていて、これ「グランパ・クラシックだっけ?」と一瞬思ってしまった。


チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
<バランシン振付/チャイコフスキー音楽>
アリーナ・ソーモワ&アンドリアン・ファジェーエフ (マリインスキー)

いやはやちょっとトンでもないものを見ちゃった感じ。これがバランシンとは到底思えない。ソーモワは必要以上に脚を高く上げたり、しなを作った動きをするのを改めて欲しいと切に思った。脚がとても長く、関節の可動域も広い上、大きく動くのでどうしても音に遅れる。ずばぬけた愛らしい美人でプロポーションも身体能力も人並みはずれているのに、この素材がもったいなさ過ぎる。フェッテも高い位置でしようとしているあまりバランスが崩れている。そのソーモワに引きずられて、ファジェーエフ苦戦。ソーモアとは対照的に、とてもエレガントで端正、素敵だったのだけど。ラスト、ソーモアがダイブするのも、ソーモアに勢いがなくて決まらず。ソーモワ、ただでさえ顎がとがっているのに、さらに突き出す癖があるのでさらにイジワルな印象も加わっていて損。


瀕死の白鳥
<フォーキン振付/サン=サーンス音楽>
ウリヤーナ・ロパートキナ (マリインスキー)

途中からひたすら涙、涙。気高い魂が消えていく様子に、胸をずたずたに切り裂かれるようだった。決してくねくねしない、シンプルで流麗な動きだけなのにどうしてこんなにも魂を揺さぶるのだろう。死すべき運命と戦いながらも、最後には受け容れて死んでいく、その哀しさと滅び行くものの美しさを、たった4分間で表現できるロパートキナは至高の存在。翼を折りたたみ、最後に視線を上に向けて息をつき、静かに死んでいく姿に、さらに涙腺を刺激された。


ドン・キホーテ
<ゴールスキー振付/ミンクス音楽>
オレシア・ノーヴィコワ&レオニード・サラファーノフ (マリインスキー)

サラファーノフはプチ不調感があった。もちろん、彼の身体能力のすごさはこれまでも立証済みの通りで、この日だって平均点は軽く上回っていて悪いわけではない。アダージョでもすでに180度開脚横っ飛びのような超絶技巧は見せるし、ヴァリエーションでのマネージュ、アティチュードのままの跳躍も高くきれいだし、得意の連続5回ものトゥール・ザン・レールも毎回ばっちり決まって、本当に凄いのだけど、それでもはじけ方に元気がなかったように思えた。ノーヴィコワはキトリを踊るにはお姫様すぎるところもあるけど、溌剌とした可愛いキトリ。フェッテでは若干もたつくところもあるけど、ダブルも織り交ぜてきっちりと回りきった。


このガラのお楽しみは、フィナーレ。トリのドン・キホーテが終わると、ダンサーたちがいっせいに集合し、女子が前、男子が後ろになって並ぶ。お互いのパートナーの手をとって舞台上を走りながら一周した後で、全員がはける。と思ったら、ロパートキナがコズロフと踊り、それからさまざまなダンサーたちが登場して、自分の演目の中の見せ場を披露。ジゼルだったら、ヴァリエーションでアルブレヒトがジゼルをリフトするところ、薔薇の精だったらラストの飛び去っていくところといった感じで。印象的だったのは、オシポワがワシリエーフのところに勢いよくダイブするところ。ダイナミックで生きがいい!ワシリエーフの超絶技巧も、ここのが一番凄かったかも。とても楽しいフィナーレで、中には本番より張り切って超絶技巧を見せる人も。そして最後には、みんなで集合写真風に集まって、後列の3人の女性はリフトされ、前列ではロパートキナらが正座をして座り、みんなで舞台に向かって手を振る。なんとも可愛いエンディング。


カーテンコールでは、それぞれ連れて来た二人の指揮者、それからラトマンスキー、ワジーエフと二人の芸術監督も登場した。他の回には芸術監督二人は出てこなかったので、これはテレビ収録用?NHKのカメラが入っていた。公演終了後、ソワレのチケットを買い足す友達とチケット売り場にいたらNHKのカメラを向けられそうになったので慌てて断った。しかし放映の方は楽しみ!10月5日の「芸術劇場」とのこと。


この回で特に気に入った演目は、ロパートキナの2演目と、「ジゼル」、「グラン・パ・クラシック」のテリョーシキナ、そしてインパクトの大きさでは「パリの炎」。演目ではなくダンサーでいえばやはりこれぞプリンシパルの踊りという感じのフィーリン&アレクサンドロワ。「ファラオの娘」自体はあまり面白くない演目なのだけど、踊る人が素晴らしければ楽しめてしまう。やっぱりプリンシパルというのは別格の存在であることを実感。ロパートキナ&フレンズという印象の強かったAプロだった。

2007/09/01

パリ・オペラ座バレエ団公演 島根大学付属小記者が取材/eclatにオペラ座特集/テレビ放映情報

3日間ほど香港に出張に行っていて、ご無沙汰してしまいました。忙しくて中華料理すら食べなれなかった出張でした。

さて、山陰中央日報に、「パリ・オペラ座バレエ団公演 島根大学付属小記者が取材」という記事が載っていて、なかなか面白いので紹介します。自らもバレエを習っている島根大学付属小学校の7人の児童が2日間にわたり「ルグリと輝ける仲間たち」の松江公演の舞台裏を取材したものです。

朝からの舞台仕込や衣裳部屋、クラスレッスンや本番のリハーサルまで取材するという貴重な機会ですが、しっかりレポートされていて読み応えがありました。特に床について書いてあったのは、さすがバレエを習っている子達ならではの視点です。

面白かったのが、ルグリ、ルディエール、ルテスチュの3人に取材して引き出してきた5つの話。
(以下引用)

 1つ目は「舞台前には油っぽい物や甘い物を食べるのはさけること」です。アニエス・ルテステュさんが言われるには、こういう物を食べると筋肉がこわばるからだそうです。

 2つ目は「本番前や本番中にチョコレートを食べるようにしていること」です。チョコレートを食べることによって、ストレスを軽くしているそうです。

 3つ目は「人生ではすべてのバランス、調和をとることが大事」と、モニク・ルディエールさんが言われたことです。

 4つ目は「公演で見た演目の本など、何でも幅広く本を読み、バレエの興味をふくらませてください」と、私たちに言われたことです。

 5つ目は、マニュエル・ルグリさんに「いろんな所でいろんな人に会うことも大切なこと」と言われたことです
(引用終わり)

3人のエトワール/元エトワールのお話もとても興味深いのですが、これらのお話を引き出せた小学生の子たちも賢いなって思いました。ルグリと、生徒の子達が写っている記念写真が掲載されていますが、男の子も一人写っていますね。将来のスターがこの中から生まれるかも?

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オペラ座といえば、9月1日に新しく創刊される「eclat」(エクラ)という集英社の女性誌に、オペラ座の特集が載っているようです。
http://www.s-woman.net/eclat/index2.html

サイトにて、ちょっとだけオンラインで立ち読みできるのですが、アニエス・ルテステュとエルヴェ・モローの「椿姫」の美しい写真が1ページどーんと載っていました。

アニエスとマチューのインタビューも載っているそうなので、読むのが楽しみです。

追記:買いました。どんと重い雑誌です。記事は「パリ・オペラ座と街歩き」の加納雪乃さんによるものですね。登場するダンサーの人選がいかにも。
ガルナエ内など、とても美しい写真が多い8ページカラー。マチューとアニエスのインタビューは各1ページずつ。アニエスは衣装の話が興味深かったです。

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テレビ放映情報です。

「新日曜美術館 アートシーン ▽舞台芸術の世界」
▽舞台芸術の世界~ディアギレフとロシアバレエと舞台デザイン 
NHK教育テレビ 9月2日(日)午前9:45~午前10:00(15分)
    (再放送) 同日同CH 午後8:45~午後9:00

先日私も観に行ってきた「舞台芸術の世界~ディアギレフとロシアバレエと舞台デザイン」の紹介です。

「世界の小さな国「モナコ公国」」
NHK BS1   9月3日(月)午後9:15~午後9:25(10分)
モナコのバレエ団でプリンシパルを目指す若きバレリーナが登場するそうです。

また、10月5日金曜夜のNHK教育テレビ「芸術劇場」にて、現在公演中の「ボリショイ&マリインスキー合同ガラ」が放映されるとのこと。楽しみですね。

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