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2007/09/03

ボリショイ・バレエ&マリインスキー・バレエ「ロシアバレエのスターたち」 Aプロ 9/1

前日まで香港出張で、現地での仕事が終わって速攻で帰途につき、金曜深夜に帰宅。へとへとの状態で土曜日マチソワ、日曜日マチネというハードなスケジュールだったけど、とっても楽しめた公演だった。オペラ座もいいけど、やっぱりロシアバレエは最高だな、と。特にマリインスキー側のダンサーにミスが目立ったり、バカンス帰りなのかこんがり日焼けした人も多かったけど、さすがの底力を感じた。

ボリショイ・バレエ&マリインスキー・バレエ
ロシアバレエのスターたち
プログラムA  9月1日

1部 ボリショイ編

エスメラルダ≫第2幕のパ・ド・ドゥ
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
エカテリーナ・クリサノワ&ドミートリー・グダーノフ (ボリショイ)

クリサノワの脚でタンバリンを叩く位置がとても高くてすごいな~と思った。でも、音はもっとバシっと鳴った方が迫力あっていいと思う。途中で音楽とずれてくるし、改めて難しい演目であることを実感。ルグリガラでのアクセル・イボー君の鳴らし方が気持ちよかったな。グダーノフはここでは地味。


マグリットマニア≫デュエット
<ポーソホフ振付/ベートーヴェン音楽>
ネッリ・コバヒーゼ&アルテム・シュピレフスキー (ボリショイ)

暗めの照明の中、ネッリちゃんとアルチョムの長身美男美女が繰り広げる世界。儚げなのに意志の強そうなネッリは真っ赤な長いドレスで、腰の辺りに深いスリットが入っていて、そこから覗く長く美しい脚がそれはそれはセクシーなこと。アルチョムは白いシャツに黒いパンツ、サスペンダーで、かなり日焼けをしている。アルチョムはもっぱらリフト&サポート専門で踊ってくれなかったけど、サポートそのものは上手になっていると思った。情念のこめられたドラマティックなパ・ド・ドゥで雰囲気は良かった。ラストに男性が去っていって、ぽつんと残された女性の心情の表現が秀逸。音楽はちょっとアヴァンギャルドなアレンジをしすぎな感じ。


海賊≫第1幕の奴隷の踊り
<プティパ振付/ドリゴ音楽>
ニーナ・カプツォーワ&アンドレイ・メルクーリエフ (ボリショイ)

この衣装は、新しいラトマンスキー版のものだろうか。なんかチロリアンっぽい可愛い衣装が海賊というのが不思議。ランケデムとギュリナーラのパ・ド・ドゥなのだけど、見慣れたものとはずいぶん違う感じ。白いヴェールで顔を覆ったギュリナーラがしばらく踊った後、ヴェールを外すと笑顔のカプツォーワ。とても可愛らしいのだけど、くりくりしたカールの髪型がまた不思議。カプツォーワの踊りは輪郭がはっきりとしていて良かったと思う。問題はメルクリエフで、奴隷商人のアクの強さがあまり出ていなかったのと、ヴァリエーションで超絶技巧をやろうとして思いっきり両手を付いてしまったこと。うむむむ。彼には期待をしているんだけど。


ジゼル≫第2幕のパ・ド・ドゥ
<コラーリ振付/アダン音楽>
スヴェトラーナ・ルンキナ&ルスラン・スクヴォルツォフ (ボリショイ)

ルンキナのジゼルといえば、非常に画質の悪い古い映像で、アルブレヒトがニコライ・ツィスカリーゼ、ミルタがアレクサンドロワというすごいキャスティングのものを観たことがあるのだけど、ツィスカリーゼがあまりにも濃い演技ですっかり食われてしまっていた。ところが、今回の彼女のジゼルは素晴らしかったと思う。系統としてはヤンヤン・タンに近い。夜の森のひんやりとした空気を客席まで伝えてくる、霊魂のような、生気のない浮遊感あるジゼル。静謐で繊細な表現で、短い時間の間にすっかり彼女の作り出す世界に引き込まれた。ジゼルという役を愛し、深い洞察を加えて踊っているのがわかる。全幕でぜひ観たい。スクヴォルツォフはサポートが非常に上手。


ファラオの娘≫第2幕のパ・ド・ドゥ
<プティパ,ラコット振付/プーニ音楽>
マリーヤ・アレクサンドロワ&セルゲイ・フィーリン (ボリショイ)

フィーリンの脚をオペラグラスで観たら、けっこう傷や虫刺されが多かった。それはさておき、いつものことながら彼の脚捌きは天下一品で惚れ惚れする。5番、アントルシャ・シス、2番、アントルシャ・シス、5番と繰り返すところも、キレイな着地。あのタオールの衣装をあれ以上素敵に着こなせる人は他にいないだろう。そして、アレクサンドロワの姫オーラも光り輝くばかりで素晴らしい。ラコット特有の、上半身よりも下半身の細かいパに力点を置いた振付は、ダンサーにとっては本当に大変だと思うんだけどその大変さを微塵も感じさせないし、パートナーリングも完璧でユニゾンの動きがキレイに揃った踊り。最後の、鼻に手をやるきめポーズの堂々としてカッコいいこと。二人が作り上げる世界がなんとも信頼感溢れていていい感じなのだ。


パリの炎≫第4幕のパ・ド・ドゥ
<ワイノーネン振付/アサフィエフ音楽>
ナターリヤ・オシポワ&イワン・ワシーリエフ (ボリショイ)

ボリショイのロンドン公演、ドン・キホーテで一大センセーションを巻き起こした若手ペア。この二人でドン・キは観たかったな。なんといってもイワン君は18歳になったばかりで、ミーシャの再来と言われている逸材。ここでは若さが出たというか、超絶技巧は気持ちいいくらいにキマるんだけど少々雑な面が見受けられた。それと、致命的にプロポーションが悪いのが残念なところ。太ももの太さは、この間の「舞台芸術の世界」で見たニジンスキーを髣髴させる。それでも、ヴァリエーションでの身体を真横に近い斜めに傾けてのきりもみ状態トゥールザンレール連発は凄まじく、恐るべき新星が現れたことを印象付けた。グラン・ピルエットもすごかったけど、あまりにも回りすぎて途中からちょっとぐたぐたに。一方のオシポワも、まずはジュッテの高さにびっくり。彼女の方が経験がある分、確実と言うか丁寧に踊っている。飛び込んでいくダイブの思いっきりの良さは爽快。小柄だし正統派の美人ではないんだけど、ちょっと子豚ちゃんのようで愛嬌がある。これからのボリショイを背負って立つ二人に期待!


2部 マリインスキー編

ばらの精
<フォーキン振付/ウェーバー音楽>
イリーナ・ゴールプ&イーゴリ・コールプ (マリインスキー)

コルプの薔薇の精は、薔薇というよりラフレシアというのが定着していたけど、今回は彼も日焼けをしていて、怪しさ倍増。少女をどこかに売り飛ばしそうな人買いのおじさんのようだった。怪しく光る目、あの不穏な表情とぽかんと開いている口が挙動不審なのだ。驚異的に柔らかく美しいアームス、やはり柔らかい背中、高く上がるアントルラッセの後ろ脚、音のしない着地ときれいなつま先、彼の踊りは非常にしなやかで美しいのに、少女には悪夢のように映りそうだ。一方少女役のイリーナ・ゴルプは、衣装はフリフリ、縦ロールの髪型もお顔も可愛いのに、焼けた肌と青いアイシャドウで、ギャルのような少女だった。窓がないのが非常に残念。あと、薔薇が巨大でピンク色だったのには少々仰天した。


サタネラ~ヴェニスの謝肉祭より
<プティパ振付/プーニ音楽>
エフゲーニヤ・オブラスツォーワ&ウラジーミル・シクリャローフ (マリインスキー)

ジュリエットなどの演技には定評のあるオブラーツォーワを観るのは初めて。童顔で可愛いんだけどすごく小柄。やはり童顔王子様のシクリャローフとの並びは、あまりにも可愛らしくて大人が踊っていることを忘れるほど。初日、シクリャローフはサポートでかなり失敗をしてしまったとのことだけど、この日はとても慎重にやっていたので失敗はなかったけど精一杯な感じ。オブラーツォーワも、連続ピルエットは慎重に回っていた。ラストにシクリャローフががしっとオブラーツォーワに抱きつくところもまた可愛らしいけど、もうちょっと思い切りが必要だと思われた。


3つのグノシエンヌ
<マネン振付/サティ音楽>
ウリヤーナ・ロパートキナ&イワン・コズロフ (マリインスキー)

ピアノが舞台の上に配置され(ピアニスト:オルガ・ソボレーヴァ)、サティの東洋的で物悲しい、美しい曲が演奏される。演奏も非常に良かった。そして、完璧なる美の体現者としてのロパートキナを堪能。長い腕、すっとした立ち姿、リフトされる様子、一つ一つの動きやポーズが洗練されていて、美の化身としか言いようがない。凛としながらも決して冷たくないが、観ている側も居住まいを正したくなるような、張り詰めた緊張感が伝わってくる。一方のイワン・コズロフは非常に長身で、彫刻のように美しい肉体、金髪の美貌の青年。ロパートキナのパートナーとしてエイフマン・バレエから移籍したというだけあって、サポートが素晴らしい。夢見心地の時間をすごすことができる至福。


ディアナとアクテオン
<ワガーノワ振付/ドリゴ音楽>
エカテリーナ・オスモールキナ&ミハイル・ロブーヒン (マリインスキー)

前の演目のロパートキナがすごすぎたのでどうしても印象は弱くなってしまうけど、決して悪くはない。ロブーヒンはアニマル柄のパンツでまるでターザンみたい。去年のオールスターガラもBプロも「タリスマン」と、似たような系統の演目ばかりなのが少々気の毒。ダイナミックで豪快な踊りはマリンスキーでは異色な感じで、なかなか良いのでは。ラスタ・トーマスがよく見せるようなカンフーキックもあり。オスモルキナも小柄ながらプロポーションに恵まれたバレリーナで、難しい振付をやすやすとこなしていた。軽やかで爽やかな印象。


グラン・パ・クラシック
<グゾフスキー振付/オーベール音楽>
ヴィクトリア・テリョーシキナ&アントン・コールサコフ (マリインスキー)

テリョーシキナ姐さんの男前な踊りに惚れ惚れする。かなり押し出しが強く、アティチュードの脚もとても高く上げるのだけど、やりすぎ感や品のなさは感じさせず、カッコいい上に風格がある。実際には背は高くないのに、自分を大きく見せるすべを心得ている。テクニックも高く、片足ポアントで進んでいくところも天井から糸で吊られたようなバランスがお見事。コールサコフも着実な踊りで良かったと思うけど、プリマオーラ出しまくりのヴィーカ(テリョーシキナの愛称)にすっかり食われた感じ。彼はちょっと顔が大きい。音楽が相当編曲されていて、これ「グランパ・クラシックだっけ?」と一瞬思ってしまった。


チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
<バランシン振付/チャイコフスキー音楽>
アリーナ・ソーモワ&アンドリアン・ファジェーエフ (マリインスキー)

いやはやちょっとトンでもないものを見ちゃった感じ。これがバランシンとは到底思えない。ソーモワは必要以上に脚を高く上げたり、しなを作った動きをするのを改めて欲しいと切に思った。脚がとても長く、関節の可動域も広い上、大きく動くのでどうしても音に遅れる。ずばぬけた愛らしい美人でプロポーションも身体能力も人並みはずれているのに、この素材がもったいなさ過ぎる。フェッテも高い位置でしようとしているあまりバランスが崩れている。そのソーモワに引きずられて、ファジェーエフ苦戦。ソーモアとは対照的に、とてもエレガントで端正、素敵だったのだけど。ラスト、ソーモアがダイブするのも、ソーモアに勢いがなくて決まらず。ソーモワ、ただでさえ顎がとがっているのに、さらに突き出す癖があるのでさらにイジワルな印象も加わっていて損。


瀕死の白鳥
<フォーキン振付/サン=サーンス音楽>
ウリヤーナ・ロパートキナ (マリインスキー)

途中からひたすら涙、涙。気高い魂が消えていく様子に、胸をずたずたに切り裂かれるようだった。決してくねくねしない、シンプルで流麗な動きだけなのにどうしてこんなにも魂を揺さぶるのだろう。死すべき運命と戦いながらも、最後には受け容れて死んでいく、その哀しさと滅び行くものの美しさを、たった4分間で表現できるロパートキナは至高の存在。翼を折りたたみ、最後に視線を上に向けて息をつき、静かに死んでいく姿に、さらに涙腺を刺激された。


ドン・キホーテ
<ゴールスキー振付/ミンクス音楽>
オレシア・ノーヴィコワ&レオニード・サラファーノフ (マリインスキー)

サラファーノフはプチ不調感があった。もちろん、彼の身体能力のすごさはこれまでも立証済みの通りで、この日だって平均点は軽く上回っていて悪いわけではない。アダージョでもすでに180度開脚横っ飛びのような超絶技巧は見せるし、ヴァリエーションでのマネージュ、アティチュードのままの跳躍も高くきれいだし、得意の連続5回ものトゥール・ザン・レールも毎回ばっちり決まって、本当に凄いのだけど、それでもはじけ方に元気がなかったように思えた。ノーヴィコワはキトリを踊るにはお姫様すぎるところもあるけど、溌剌とした可愛いキトリ。フェッテでは若干もたつくところもあるけど、ダブルも織り交ぜてきっちりと回りきった。


このガラのお楽しみは、フィナーレ。トリのドン・キホーテが終わると、ダンサーたちがいっせいに集合し、女子が前、男子が後ろになって並ぶ。お互いのパートナーの手をとって舞台上を走りながら一周した後で、全員がはける。と思ったら、ロパートキナがコズロフと踊り、それからさまざまなダンサーたちが登場して、自分の演目の中の見せ場を披露。ジゼルだったら、ヴァリエーションでアルブレヒトがジゼルをリフトするところ、薔薇の精だったらラストの飛び去っていくところといった感じで。印象的だったのは、オシポワがワシリエーフのところに勢いよくダイブするところ。ダイナミックで生きがいい!ワシリエーフの超絶技巧も、ここのが一番凄かったかも。とても楽しいフィナーレで、中には本番より張り切って超絶技巧を見せる人も。そして最後には、みんなで集合写真風に集まって、後列の3人の女性はリフトされ、前列ではロパートキナらが正座をして座り、みんなで舞台に向かって手を振る。なんとも可愛いエンディング。


カーテンコールでは、それぞれ連れて来た二人の指揮者、それからラトマンスキー、ワジーエフと二人の芸術監督も登場した。他の回には芸術監督二人は出てこなかったので、これはテレビ収録用?NHKのカメラが入っていた。公演終了後、ソワレのチケットを買い足す友達とチケット売り場にいたらNHKのカメラを向けられそうになったので慌てて断った。しかし放映の方は楽しみ!10月5日の「芸術劇場」とのこと。


この回で特に気に入った演目は、ロパートキナの2演目と、「ジゼル」、「グラン・パ・クラシック」のテリョーシキナ、そしてインパクトの大きさでは「パリの炎」。演目ではなくダンサーでいえばやはりこれぞプリンシパルの踊りという感じのフィーリン&アレクサンドロワ。「ファラオの娘」自体はあまり面白くない演目なのだけど、踊る人が素晴らしければ楽しめてしまう。やっぱりプリンシパルというのは別格の存在であることを実感。ロパートキナ&フレンズという印象の強かったAプロだった。

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コメント

さすがのベテラン勢から、若手のダンサーまで、一気に観られて楽しかったです。
こういうことができるのも、招聘先が一緒になったから。
ダンサーさん同士は、ロシア語で仲良さそうにしていたのが印象的でした。
気に入った演目は、同じですね。
今後の一押しはワシリエーフくんかな。

くみさん、こんばんは。
土曜日はお疲れ様でした!
ジャパンアーツさん今回頑張りましたね。けが人も一人も出なくて、ブログでも楽しい情報を提供してくださって、招聘元の鏡だな~って思いました。二つの大バレエ団の交流があったようなのも良いですよね。
ワシリエーフくん、本当にすごい才能の持ち主だと思うので、温かく見守りたいです。来年のボリショイの来日が楽しみですね。きっと彼のバジルが観られることでしょう。

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