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« 9/12,13 東京バレエ団「ニジンスキー・プロ」Aキャスト | トップページ | クリストファー・ウィールダンの公演にダーシー・バッセル、ジョナサン・コープが参加 »

2007/09/18

9/15 東京バレエ団「ニジンスキープロ」Bキャスト

Aキャストの方にもシャルル・ジュドが出演したため、BキャストはちょっとAキャストより地味な印象。しかし、東京での最終日の今日、マラーホフが舞台挨拶をするというおまけがあった。佐々木忠次氏よりまずは紹介。しかし相変わらず一言多いササチュー。マラーホフ、舞台挨拶するくらいなら休んでいて欲しい気もしたけど、ファンの前でお詫びをしたいという言葉からは、誠実でファンを大切にする人柄が伝わってきた。2月に元気な姿で踊って欲しいな~。

「レ・シルフィード」
プレリュード:吉岡美佳
詩人:フリーデマン・フォーゲル
ワルツ:長谷川智佳子
マズルカ:田中結子
コリフェ:高木綾、奈良春夏

「ジゼル」でも好印象だったフリーデマン、今回もとても調子が良かったようだった。目を伏せて夢を見ているような、甘い表情がとても魅力的。陶酔感や高揚感があって、ドラマティックさを、ともすれば退屈になりがちなこの作品に加えていた。吉岡美佳さんとの並びも、身長の釣り合いが取れていて良い。吉岡さんは、儚げな透明感があって空気の精のようだった。ワルツ、マズルカ、コリフェはAキャストの方が好み。私は西村さんの踊りがやっぱりとても好きなんだな、と思った。足音をまったくさせないで軽やかな長谷川さんのワルツも悪くないんだけど、ふくらみや音楽性については西村さんのほうが優れている。
フリーデマン、ここでも柔軟な身体を生かしたふくよかな表現、高く跳躍しているのに足音も小さめで夢の中の登場人物そのものだった。特に股関節の開き方がとても美しい。4月の「白鳥の湖」からわずか5ヶ月で何故こんなに良いダンサーに変貌することができたんだろう。そのヒミツが知りたい!
東京バレエ団のコールドはこの日も、とてもよく揃っていた。あとは、主役二人の作りあげた幻想的な世界をどうやって群舞も表現できるかが課題なんじゃないかと思った。

「薔薇の精」
薔薇:大嶋正樹
少女:高村順子

高村さんの少女はロリータそのものの愛らしさ。とにかく可愛い~。あのメイドっぽい帽子すら似合ってしまうところ、恐るべし。そして大嶋さんの薔薇。私の席が上手の端ブロックだったため、最初のポーズが見えなかったのが残念。最初の低めのアティチュードのまま回転するところがスムーズに行かなくて建て直しに時間がかかったのが惜しい。でも、持ち前のとても妖艶で両性具有的な雰囲気を生かして、色香溢れる薔薇の精を作り上げていてうっとりしてしまった。陶酔した表情も素敵。踊りについては、マティアスとはかなり振付が違っていて、トゥールザンレールが入っていなかった。無理をしなかったということなのだろうか。シェネ、アントルラッセ、アッサンブレ、ジュッテで構成したシンプルなもの。とても丁寧に踊っていて、アームスも柔らかかった。アッサンブレで着地するところのプリエの美しいこと。少女の足元に滑り込むところが素敵だった。大嶋さんならではの薔薇は作り上げているから、あとの課題はスムーズさ滑らかさと安定感だろうか。


「牧神の午後」
牧神:シャルル・ジュド
ニンフ:井脇幸江

この牧神を観るのも3回目だけど、観れば観るほど練られ熟成されて濃厚さ芳醇さが増している。ニンフたちのうごきもこなれてきた。ジュド様のエロスはとどまるところを知らない。この日が一番舞台に近い位置だったのだけど、井脇さんのニンフが視界に入った時の、ジュド様の表情の変化、欲望の光がキラリと目の中で光るのが見えた。二人が視線を交わした時の緊張感はものすごいし、ニンフを見つめる牧神の燃えるような情欲のたぎりでくらくらと息苦しくなる。ちょっと面白いなと思ったのが、井脇さん演じるニンフが去り、ニンフが残したスカーフと戯れる牧神のところにニンフたちが驚いて寄って来るところ。いけないことをしているのを親に見られてしまった中学生のような罰の悪い表情でちょっと笑ってしまった。
いずれにしても、このニジンスキー版「牧神の午後」をここまでエロティックに、しかも格調高く踊れる人はジュド様を置いてないことを確信。観られる機会を得たことに感謝したい。


「ペトルーシュカ」
ペトルーシュカ:中島周
バレリーナ:小出領子
ムーア人:平野玲
シャルラタン:高岸直樹

脇のキャストは、踊り子が西村真由美さんと河合眞里さん。悪魔は松下さん。馬丁が宮本さんと横内さんで、他のキャストは12,13日と同じ。西村さんの踊り子もお茶目で可愛い。前回「ペトルーシュカ」を上演した時には脇キャストまでキャスト表に書いていてくれたので、今回もそうして欲しかった。

この演目でも、座席の位置が災いし、テントの中から3体の人形が現れる時にペトルーシュカが他のダンサーたちの影に隠れ、まったく見えなかったのが残念。

今回初役の中島さんはとても頑張っていたと思う。白塗りメイクはイレールと同じだったけど、目の周りを黒く囲んでいて、より崩した印象で元の美貌はわからない。今までの人生でもさんざんいたぶられ、踏みつけにされてきたと思える、とてもかわいそうで惨めでエモーショナルなペトルーシュカを熱演。逆に言えば、より人間的で人形っぽさが足りなく思えた。内股や鬱々と内にこもる感じはよく出ていたけど、たとえば最初の3体の人形が前に歩み出てユニゾンで踊る時、足先がぴんときれいに伸びていた。全体的に、非常に踊りが美しくて、中島さんが優れたクラシックダンサーであるのはわかるんだけどペトルーシュカにしてはキレイすぎるのだ。初役ということで、とても気合と力が入っていたけど、もう少し抜いても良さそうだ。手先足先のぶらぶらさ、不恰好さがあまりない。ぺったんと倒れるところは上手だけど、おがくずの詰まった人形ではなくて、人間の男の子のようなのだ。人間らしいあまり、感情移入はしやすい。そういうアプローチがあってもいいとは思ったけどやはり今のままではペトルーシュカではない。踊り込んだらきっととても良い、周さんならではのペトルーシュカとなっていくのではと期待を持つことができた。

小出さんのバレリーナは、丸顔がとても可愛らしい。愛らしい笑顔を貼り付けた無表情で、可愛いんだけどあまりにも空虚で、ある意味とても怖い。 全然笑っていなかった長谷川さんのバレリーナとはまた違ったアプローチなのだけど、こちらの方がずっと人形っぽいなと思った。平野さんのムーア人は4日めとなったこともあり、完成度がとても高い。ドスンドスンという足音の響き方がきれいな音で響いている。より傍若無人で、カリカチャライズされているし、椰子の実の扱いひとつとってもこなれていた。

祭りの高揚感やはじけ方も、より羽目を外して自然な形になっていた。熊が入ってきた時や悪魔の登場の時の人々の反応や小芝居もアドリブ部分が増えてきた。東京バレエ団のメンバーはまとまりがよく、とてもいい雰囲気、世界を作り上げている。ぜひともこの作品は、2年に一回くらいの割合で上演して、東京バレエ団の代表的な作品のひとつにして欲しいと思った。どうせなら、「結婚」はじめ「シェヘラザード」や「ダッタン人の踊り」などもぜひレパートリーに入れて欲しい。「レ・シルフィード」などはどこでもやっているから外していいと思う。難しいかもしれないけど、ニジンスキー版「春の祭典」も合うのではないか。

***

今回の「ニジンスキー・プロ」、とてもよい企画だったと思う。マラーホフを欠いても、NBSの人脈と尽力で素晴らしい代役を得ることができたし、東京バレエ団にとってもまたとない成長の機会だったのではないだろうか。と同時に、マラーホフがこれらのプログラムに出演するところも見てみたいと切に思う。怪我が回復した折には、ぜひこの企画をマラーホフで実現して欲しい。特に成熟し、人間のダークサイドをも味わってきたベテランダンサーならではの表現を見せることができるペトルーシュカは、マラーホフで見てみたいとしみじみ思った。

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コメント

こんにちわ。
ニジンスキーのごくわずかな舞踏人生の間に残した素晴らしいものに、百年経った今なお、私は、惹きつけられたのでした!この、時代を超えて今後も踊り継いでほしい作品群を、2つのキャストで観られたのは幸運!と思います。
が、やはり、挨拶するマラーホフの姿を見て、どうしても彼の踊るのを観たいと切に思ってしまいました。贔屓の私が言うのでは説得力ゼロとは思いますが、ニジンスキーを一番原型に近く踊れるのは、マラーホフではないかと。。。。勝手な意見、失礼しました。(恥)

ニジンスカの「結婚」は東京バレエ団のレパートリーに入っては
いるんですが、(98年初演だそうで)だいぶ長いこと
やってないようですね。

あの長い髪の毛のシーンと、愛だ恋だなんて
甘い感情の付け入る隙のない結婚の
重い感じも、是非みてみたいのですが。

「レ・シルフィード」の音楽のテンポがゆっくりでしたが、その音楽の長さを余すところ無く使いきった、フォーゲルの丁寧な踊りは素晴らしかったです。
長身で手足が長いことを活かして、ポーズも長くキープして、幻想的に軽やかな詩人になりきっていました。
「ぺトルーシュカ」の中島さんは、確かにしゃっきっとしてましたね。
もう少し、みじめったらしく、てれてれとしたところが表現できれば、もっと良かったです。
初役続きですが、頑張って欲しいダンサーの一人です。

マーキーさんこんにちは♪

たしか2009年がバレエリュス100周年でいろいろまたイベントがあるようですが、100年経っても古びないのがすごいですよね。

マラーホフファンならずとも、彼のペトルーシュカや牧神はぜひ観てみたいものだと思います。成熟したダンサーが美しさや見せかけのテクニックを放棄しての表現をどう観せるのか、興味は尽きませんよね!
来年の贈り物でやってくれないかな…

とりもとさん、こんにちは。

「結婚」の東京バレエ団による初演はみてないんですよね。オペラ座のプラテル&ベラルビや、ロイヤルのゼナイダ・ヤノウフスキーが出ている映像を観ただけです。でもストラビンスキーによる斬新な音楽、独特の様式美、批評性や現代性と傑出した作品ですよね。一度は生で観たいです!

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