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« FIGARO JAPON 9/20号 オペラ座連載とニューヨーク特集 | トップページ | 9/15 東京バレエ団「ニジンスキープロ」Bキャスト »

2007/09/15

9/12,13 東京バレエ団「ニジンスキー・プロ」Aキャスト

2007年9月12日、13日 19:00開演 東京フォーラム ホールC

バレエ・リュスというかフォーキンの振付が大好きなので、とても楽しみにしていた公演。前回のディアギレフ・プロもとても楽しんだ。東京バレエ団の個性に合っている演目なんだと思う。マラーホフが降板してしまったのはとても残念だけど、代役もビックリするくらい豪華で、オーケストラの演奏を除けば満足度が非常に高かった。ディアギレフ作品の上演は、ぜひ定期的に行って欲しいと思う。プログラムにも載っていた「結婚」も再演して欲しい。

レ・シルフィード
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:フレデリック・ショパン

プレリュード: 小出領子
 詩人:木村和夫
ワルツ:西村真由美
マズルカ:奈良春夏
コリフェ:乾友子-田中結子

今回この演目に関しては、演奏がちょっとつらかった。とにかくスローテンポなので、踊っているほうも音にあわせるのが大変そうだし、まったりとしているので集中力を持続させるのが大変。小出さんのプレリュード、西村さんのワルツとも、音楽性が豊かで、まるで音符が踊っているよう。小出さんのとても丁寧な上半身は美しかった。そして西村さんの柔らかい腕の運び方、ふわっと上がるようなジュッテにはうっとり。この二人が跳びぬけて良かったと思う。マズルカの奈良さんは、よく跳んでいるのだけどこの二人と比較すると、ちょっと直線的というか柔らかさが足りず、ポアントの音も鋭い感じ。木村さんは、初日はちょっとサポートに失敗。緊張していたんだろうか。それでも、さすがにルルベで立っている時の足先の美しさ、ほっそりとした脚に高いジュッテは素敵だった。コール・ドもものすごくよく揃っている。12日、最後の方でコール・ドの一人が立ち上がるタイミングを間違えたのには、少々ビックリ。「レ・シルフィード」はよく上演される割にはあまり面白い演目ではないのだけど、小出さん西村さんの踊りで満足してしまった。


薔薇の精
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー (編曲:L.H.ベルリオーズ)

薔薇: マチアス・エイマン
少女:吉岡美佳

吉岡さん、あの年齢で少女役のロリータなフリフリ衣装の似合い方は犯罪的なほど。メイドみたいなキャップはちょっとやめた方がいいと思うけど。
マチアスくん、ちょっと薄めのピンクの衣装。腿の辺りに、グリーンで茎が描きこんである。彼は小柄という印象があったのだけど、こうやって全身タイツ系衣装を着ているのをみると、全体的にほっそりとしていて、手脚も長く顔が小さくバランスの良いプロポーション。彼は大変なテクニシャンなのだけど、同時にとてもしなやかで、優雅さを感じさせるところがオペラ座。ジュッテやアントルラッセはふわっと空を飛んでいるがごとく高いし、シェネはとても速いのに、それもまたエレガントなのだ。アティチュードのままくるくる4回転するところも、速くて正確でなおかつ美しい軌跡を描いている。惜しむらくは、トゥール・ザン・レールでものすごくよく回転しているし高さもあるのに、着地がちょっとだけずれたりするところがあるところ。急な代役でしかも初役だから致し方ないと思える。口を半開きにしたままで、表情も工夫しているのがわかるけど、元気が良すぎて色香や陶酔感を出すところまでは行っていない。朝露が滴るようなフレッシュなサマーローズといったところだろうか。でもとても爽やかで好感が持てる薔薇だった。次に彼がこれを踊るのを観る機会があるといいな。成長ぶりがみたい。1日目より2日目のほうがずっと良かったから。観ているうちに彼の魅力に、思わず心臓がドキドキしてしまった。
急造カップルなので、吉岡さんとの合わせ方も十分ではなくて、ばらばらな感じだったのも惜しい。吉岡さんは、ジゼルで見せた柔らかさが、ここではちょっと足りなかった。

牧神の午後
振付:ワツラフ・ニジンスキー/音楽:クロード・ドビュッシー
牧神: シャルル・ジュド
ニンフ:井脇幸江

ジュド様の牧神、あまりの直球な官能性に腰を抜かしそうになった。ビデオ「ディアギレフの夕べ」で彼の牧神は観ていたのだけど、年齢とともに色気が凄絶なまでに増して、犯罪すれすれのところまで行っている。一挙一動が完璧なまでに計算尽くされていて美しい。人間ではなく完全に獣神となっていた。ニンフを目にした時の表情の変化。射すくめるような、エロティックで鋭い視線には、腰が砕けそうになるほど。それにしても、50歳をとっくに超えている年齢なのに、身体のラインは美しいし、スローモーションのように片足ルルベの状態で立っているという過酷な振付なのにも関わらず、安定度も抜群ですごい。どうしようもなく動物的なのに、同時に神ならではの高貴さも持ち合わせているし、それでいてとても切ない。彼は咆哮することでしか思いを伝えられないのだから。

ニンフ役の井脇さんも、ゾクゾクするほどの美しさ。凛とした横顔を牧神に向けたときの、クールさの中に動揺を隠した表情に吸い込まれた。背中を反らせたまま静止して牧神と視線を交わすところはまさに絵画の中のようにドラマティックであるのに緊張感が漂い息もつけないほど。ジュド様と対等に渡り合える井脇さんの存在感は、すごい。

ジュド様で観ると、牧神の午後がこんなにドキドキさせられる、面白い作品であったことを再認識させられる。ラスト、ニンフの残した青いヴェールをいとおしげに触った後に岩の上に敷き、身を横たえて牧神は果てる。聖と俗がひしめき合う瞬間。卑猥さと純粋な愛が、高みへと昇華していくのを観た。これが3回も観られるなんてなんという幸せ。


ペトルーシュカ 振付:ミハイル・フォーキン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

ペトルーシュカ: ローラン・イレール
バレリーナ:長谷川智佳子
ムーア人:平野玲
シャルラタン:高岸直樹

うろ覚えなのですが、12日、13日の「ペトルーシュカ」
踊り子は高村順子さん、佐伯知香さん(佐伯さんは12日のみ?13日のもう一人は誰だったのだろう→河合眞里さんだった)
乳母は高木綾さん
御者は古川和則さん
馬丁が12日が長瀬さん松下さん、13日が宮本さん横内さん
ジプシーが奈良春夏さん、田中結子さん
悪魔が12日は小笠原さん、13日は松下さん

東京バレエ団は、日本のバレエ団の中では、モブシーンを演じるのがとても上手いところだと思う。日本人には賑わいの表現というのは難しいといわれているわけだけど、今回も群衆の中のダンサーたちは思いっきりはじけて、どこを見ていいのかわからないくらいの小芝居で楽しませてくれた。「ペトルーシュカ」は、ディアギレフ作品の中でも特に大好きなひとつ。ペトルーシュカの切なく哀しい物語もそうなのだけど、サンクトペテルブルグの街の賑わい、猥雑さ、色とりどりでとてもおしゃれで可愛い衣装、カラフルな音楽、一つ一つが魅力的なのだ。

町の踊り子、初日の高村さん佐伯さんの二人ともめちゃめちゃ可愛い。特に高村さんの可愛さは犯罪的ですらある。二人の衣装がまた鬼キュートで。いい感じに酔っ払っている古川さん。温かい雰囲気の高木さん、シャープな踊りのジプシー女二人、田中さんと奈良さん。奈良さんは、こういうセクシーでダイナミックな踊りのほうが向いているな。下手の方で2階から長いひげをたらした人。そのひげで遊ぶ子供たち。芸人たち。一体どこを見ればいいのかわからないほどの目くるめく世界。

そこへ登場した怪しげなシャルラタン(高岸さんの怪演ぶりが良い)。彼が身体を揺らしながら笛を吹いてしばらくすると、3体の人形が登場。ムーア人、バレリーナ、そしてペトルーシュカだ。上半身を固定したまま、3対の人形は細かくステップを踏み、歩み出る。

イレールのペトルーシュカを観られた幸せ。この一言に尽きると思う。

イレールが演じたペトルーシュカは、人間が演じている人形ではなくて、命を吹き込まれた人形そのもの。最初は、ペトルーシュカのメイクが、白塗りにずれた眉毛を描いているほかはイレールの美貌がそのままわかるようなものなので一瞬だけ戸惑ったけど、ぐいぐいとペトルーシュカの心象風景の中に引き込まれた。ぐにゃりとした人形ぶりは絶品。本当に中身にはおがくずしか詰まっていないように思える。だらんとした腕。内向きに曲げられた脚。丸められた背中。おびえたような気弱な表情。人々の喧騒の中でも、ひとり居心地が悪そうだ。バレリーナに恋をしたペトルーシュカは、シャルラタンに渡された木の棒を持ってムーア人を追い掛け回すも、体力に勝るムーア人に簡単に組み伏せられ、ぺたんと地面に落下する。この落下するときのイレールの脱力加減が絶妙。

次の場面は、殺風景なペトルーシュカの部屋。シャルラタンによって部屋に投げ込まれ、またもやぺたんと床に落下する。その部屋では暗闇の中、シャルラタンがにらみを利かせている肖像画だけが飾られ、まるで見張られているようでペトルーシュカはおののく。身体を内向きに折り曲げ、おがくずの詰まったみすぼらしい人形の自分が、人間の心を持ってしまったことを呪い鬱々としている。腕をぶらんぶらんさせながら苦悩させるペトルーシュカの姿は、とてもあの美しいイレール様とは思えず、すべてに見捨てられた哀れで孤独、でも無垢な魂に、胸が痛む。そこへ、愛しいバレリーナが入ってくるので突如狂喜するペトルーシュカ。はしゃいで、美しいトゥール・ザン・レールを2回見せる。ペトルーシュカの純真さを表現した、このシャープかつ柔軟な動きにはうっとりさせられる。が、あまりのペトルーシュカのはしゃぎっぷりに引いたバレリーナは出て行ってしまい、再びペトルーシュカはひとりぼっちに。うじうじと内にこもったペトルーシュカは、それでもなんとかこの部屋から出て行きたい、支配を逃れて自由になりたい、でも扉は閉まっている。仕方なく壁に体当たりすると、壁は破れるがそこに無残に引っかかってだらりと垂れ下がるペトルーシュカ。

打って変わって華やかなムーア人の部屋では、ムーア人が何とかして椰子の実を割ろうとしている。平野さんのムーア人は、単純化された動きが役柄にぴったりと合っていて、ガキ大将のようなワガママさもよく表現できているのだけど、ちょっと性格のよさが出すぎているのかもしれない。もう少しふてぶてしくてもいいかも。ドタドタとしたステップを身につけているのはさすが。バレリーナの長谷川さんは徹底的な無表情で、人形らしくこの役に、はまっていた。ムーア人のことが好きなバレリーナは、ムーア人に近づこうとするけど彼には恋するという感情が理解できない。そこへペトルーシュカが入ってくる。でもやっぱりムーア人には敵わなくて、さんざん痛めつけられ、ベッドの上を転げ周り逃げ回ることに。

再び町の広場では、祭りの喧騒が最高潮に。コサックダンスが繰り広げられ、スカーフ売りがやってきたり、熊が入ってきたりと賑やかでエキゾチックな宴。そしてカーニバルの悪魔。初日の小笠原さん、2日目の松下さん、二人とも、シャープでしなやか、大きな跳躍で目を引いた。前回公演の中島周さんの華麗な悪魔ぶりには及ばなくても、非常に魅力的なアクセントを作ることに成功。夜になってきて、雪が舞い降りる。冷たい空気が伝わってくる。

ムーア人に追い掛け回され、ぼろぼろのペトルーシュカが駆け込んでくる。慌てるバレリーナだけど騒ぐだけで何の役にも立たない。ペトルーシュカはムーア人に切りつけられ、あっけなく、3たびぺたんと倒れこむ。それから立ち上がり、人々に、「僕はこう見えても、人間の心を持っているんだ。命だってもっていたんだ」と訴えかけるように腕を差し出すけど、再び床に突っ伏して絶命。群集は大騒ぎするけど、シャルラタンは、こんなの単なるおがくずでできた人形ですよ、命なんかあるわけない、と抜け殻になったようなペトルーシュカの亡骸を指し示し、人々は納得して去っていく。

だけど、ペトルーシュカの魂は、見世物テントの上にあり、シャルラタンを嘲笑しながら、身体をぶらぶらさせている。身を乗り出しながら振り子のように身体を左右に大きくゆらし、泣きながら笑い、再びだらりと垂れ下がって今度こそ魂までもが死んでしまった。お前たちに僕の気持ちがわかってたまるか、命を持って恋をすることはこんなに哀しく苦しく、しかし、かけがえのないことなのだと、今際の際にペトルーシュカは渾身の力で訴えかけていた。

イレールの凄まじいまでの演技力、身体コントロール力に驚愕。胸を締め付け、引き裂かれるような悲痛なペトルーシュカの心の叫びが聞こえてくるようだった。ペトルーシュカの魂が完全に憑依したようだった。インタビューで、この役を日本で演じるのは最初で最後でしょうとイレールは言っていたけど、できることならまた観る機会があることを願わずにはいられない。


素晴らしい公演だった。マチアス、ジュド、イレール、そして東京バレエ団の皆さん、ありがとう。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

急な代役を立てて臨んだ舞台だったのに、とても貴重な公演になりましたね。
マティアスの身体能力の高さと、顔の小ささ、適応能力の高さで、若々しい「薔薇の精」を観られたかと思うと、ジュドの「牧神の午後」では、野生の本能丸出しの、円熟味を感じさせる猥雑さ。
そして、イレールの細やかな「ぺトルーシュカ」の表情。。体の柔軟さが醸しだす悲哀。
100年経っても、今なお新しいバレエ・リュスの香りを感じました。

くみさんこんばんは。お返事遅れすみません。

ホント、くみさんの一言感想、的確ですね♪

怪我したマラーホフが観られなかったのは残念だけど思いがけないプレゼントをもらった気がします。

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