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2007年8月

2007/08/29

フリーデマン・フォーゲルの「ジゼル」動画

東京バレエ団の『ジゼル』に、怪我をしたマラーホフの代役で急遽出演することになったフリーデマン・フォーゲル(シュツゥトガルト・バレエ)。

彼の出演した2003年、第10回世界バレエフェスティバルでの「ジゼル」、アルブレヒトのヴァリエーション動画が、eプラスで観ることができます。

http://mv-theatrix.eplus2.jp/article/53053087.html

当たり前ですが、今よりも若~い、甘くて爽やかなアルブレヒトになっていますね。この4年間でどれくらい変わったか、観るのがとても楽しみです。私は9月9日の吉岡美佳さんの日に観る予定です。

こんな映像があるってことは、このときのバレエフェスティバルの映像もどこかに眠っているってことですね。出して欲しいな~というのはみんなの願いだと思います。

eプラスのサイトでは、現在は売り切れになっていますが、おそらく払い戻しもあることでしょう。(と思ったら今少しだけA席があるようです)

2007/08/28

小林紀子バレエシアター「コンチェルト」「ザ・レイクス・プログレス」「エリート・シンコペーションズ」

小林紀子バレエシアター第87回公演は、英国の香り漂う3作品のトリプル・ビル。どれもレベルの高い踊り、ユニークな作品ぞろいで非常に楽しめた。

【コンチェルト】
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ショスタコーヴィッチ (ピアノコンチェルト第2番ヘ長調)
1st Movement 高橋怜子 恵谷 彰
  3カップル 駒形祥子 冨川祐樹/萱嶋みゆき 佐々木淳史/小野絢子 冨川直樹
2nd Movement 島添亮子 中村 誠
3rd Movement  大森結城 高橋怜子 恵谷 彰 島添亮子 中村 誠

1st Movementは恵谷さんの生き生きとした踊りが印象的。跳躍もキレイ。上手なのにちょっと華がないのがもったいないな~と思って観ていた。高橋怜子さんは、小柄でほっそりとしていて、逆に華やかなタイプだから余計そう思えたのかもしれない。
来シーズンから新国立劇場にソリストとして入団する小野絢子さんが転倒してしまったのが惜しい。

2nd Movementは島添さんと中村さんのパ・ド・ドゥ。中村さんは人間バーとしてもっぱらサポート役に徹しているのだけど、それでも、腕や脚のポジショニングがとても正確で伸びやか、きれいなのがわかる。島添さんの繊細な持ち味が生きており、ゆっくりとしたテンポの、とても美しくしっとりとしたパ・ド・ドゥ。

3rd Movementは、大森結城さんのダイナミックな踊りを中心に、にぎやかなもの。間に合わなくて聞けなかったのだけど、この日の公演の前に、振付指導のジュリー・リンコンと、ファイナンシャルタイムズ紙のクレメント・クリスプ氏のトークショーがあった。それを聞いていた友達の話によると、、「最初はペアで振り付けたのに、開演30分前に男性が逃走したので、代わりがきかずに女性だけで踊った初演のまま踊られてる」とのこと。大森さん、相変わらずカッコいい。

【ザ・レイクス・プログレス~"レイク"放蕩児の生涯~】
振付:ニネット・ド・ヴァロア
音楽・ストーリー:ゲーヴィン・ゴードン

The Rake ヨハン・コボー
The Taylor 奥田慎也
The Jockey 八幡顕光
The Dancing Master 恵谷 彰
The Betrayed Girl 島添亮子
The Dancer 大和雅美
The Gentleman with a Rope 後藤和雄
The Card Player 中村 誠
The Violinist 澤田展生

ホガースという画家の連作の絵画「A Rake's Progress」を元に振付けられた作品。父の死により莫大な遺産を相続した青年が放蕩の限りをつくし、賭博に溺れ、借金を返すことができなくなり、挙句に最後は精神病院に収容されて短い生涯を閉じるというお話。元の絵画を忠実に再現した額縁のような美術で、舞台を狭く使って絵画の中の話という印象をうまく作っている。装置や衣装もロイヤルとバーミンガム・ロイヤルから借りたということでとても凝っている。バレエというよりは演劇的な作品だったけど、とっても面白かった。

1場では、赤い服を着て意気揚々とした青年レイク。恵谷さん演じる教師にダンスレッスンを受けるコボーは、さすがに脚捌きがめちゃめちゃ美しい。八幡さんが長髪のカツラをかぶったジョッキー、奥田さんが仕立て屋で新しい服を仕立てている。2場のThe Orgyでは、酒場でどんちゃん騒ぎするレイクご一行様。ダンサー役大和さんの、スカートを捲り上げたりお尻をつき出すはじけてパワフルな演技が爽快。借金取りに追われたレイクを助けようと肩代わりをする少女役の島添さん。薄幸そうで繊細、しかし芯の強い少女を熱演していた。4場の賭場で騙されすべてを失ったレイクは刑務所に入れられ、そして最後に行き着いたのは精神病院。

この6場、精神病院での出演者たちの演技がものすごくて、本来悲しいお話なんだろうけど、どこかブラックユーモアというか可笑しい。ロープに取り憑かれた男、ヴァイオリン弾き、自分を教皇だと思い込んでいる男、どいつもこいつもすっかり逝ってしまっているんだけど、なぜかいとおしい。特にロープに取り憑かれた男を演じた後藤さん、すごすぎ!いやあ狂っているけど楽しそう。カードプレイヤーの中村さんも、いつもの品の良い王子ぶりが嘘のようだし。ハゲヅラに半裸のコボーも、さすがに演技者としての実力はすごい。正気と狂気の間を行き来しながら虚空をじっと見つめ、彼を助けようとやってきた少女に全然気づかなくてうつろな状態。最後に、ようやく彼女の存在を認め、手と手が触れ合うけれども命が尽きるまでの、哀しさ、切なさ、欲にまみれた男の罪と罰そして許しを感じさせるリアルな演技にはゾクゾクした。

上演時間が短くて、お話が比較的サクサク進んでいくのだけど、このサクサク加減が、必要以上にこの話を悲劇的に仕立てないのが良い。もともとの絵画「A Rake's Progress」が、字の読めない庶民のための教訓話ということで、ちょっと可笑しくて哀しい寓話的な演出となっている。コボーだけでなく、密度の高い演技で作品を引き締めてくれたすべてのダンサーに拍手。

【エリート・シンコペーションズ】
振付:ケネス・マクミラン
音楽:スコット・ジョップリン
ピアノ:中野孝紀

12人の小さな管弦楽と2台のピアノのラグタイムバンドが舞台に上がっての、楽しい作品。楽団員も全員、出演者の衣装と似た派手派手なデザインのコスプレ。カラフルで可愛い全身タイツ衣装のダンサーが20名。これもロイヤルからの借り物。11曲で構成されている。

Stop-time Rag、Bethena-A Concert Waltz 高橋怜子、冨川祐樹
下手なカップル(The Golden Hours・難波美保・後藤和雄)
背の低い男性と背の高い女性のペア(The Alaskan Rag・楠元郁子・佐々木淳史)
女性のソロ(Calliope Rag・高畑きずな)

最初は男子チームと女子チームに分かれ、男子はみんなタバコをふかし、女子が集団で踊る。それから、踊っていない人たちはまわりに腰掛けて踊るカップルを見る。途中でゼッケンをつけてのダンス競技大会にもなる。

モデルばりのプロポーションを誇るダーシー・バッセルが主人公Jennyを踊った映像を観ていたため、日本人がこの全身タイツ&ポップな色彩の手描きペイント衣装を果たして着こなせるかと思ったのだけど、意外とみんな似合っていた。男性の一部には厳しい方もいたけど。Jenny役の高橋怜子さんは、小柄だけどスリムでプロポーションがよく、白に星印のついた衣装や帽子をかっこよく着こなしていた。Stop-time Ragでは、男性軍団を引き連れて、超いかしていてセクシーだった。さすがマクミラン、と思わせる難しいリフトでのポーズなど、柔軟性を生かしてとても素敵だった。パートナーの冨川さんもよく踊っていたと思うんだけど、顔が前に出すぎているのがちょっとイヤだった。メーンの役柄ではないんだけど、やっぱり中村誠さんはとびぬけてラインが美しく優雅。ミニスカートが似合う楠元さんの音楽性溢れる踊りも、それから可愛らしく子猫チックな高畑きずなさんも素敵だった。とにかくすごく楽しくて、観ている側も踊りだしたくなっちゃう演目だけど、もっとはじけて、音楽と一体化した踊りになるとさらに良くなるのでは、と思った。

なお、最終日を観た人の話では、ヨハン・コボーがこっそりと、同じ全身タイツ衣装を身に着けてこの演目に参加していたらしい!


このトリプル・ビルは、最近観たバレエの中でも抜群の面白さで、もう一日分チケットを取ればよかったと後悔してしまうほど。普段なかなか観ることができない作品であり、とても新鮮だった。ゲストのコボーはじめダンサーの質も、衣装、装置、音楽などプロダクションの質も非常に高く、空席があったのがもったいないとしか言いようがない。もっともっと宣伝されて、多くの人が観に行くべき公演だったと思う。今回新制作だった「エリート・シンコペーションズ」は近いうちの再演も予定されているので、とても楽しみ。そしてコボーは、コジョカルの付録ではない、独特の個性を発揮してくれてとても良かった。10月の「真夏の夜の夢」も楽しみ。


追記:下記nonkiさんのコメントにもあるように、初日にトークショーを行ったFinancial Timesのクレメント・クリスプ氏が、同紙にこの公演の批評を書いています。
「Definitely not lost in translation」
http://www.ft.com/cms/s/0/5a02e86e-5762-11dc-9a3a-0000779fd2ac.htm

The Kobayashi dancers need no such correction. They have a clean style, the choreography is well-shaped, and in the central duet (inspired by Lynn Seymour unfurling her ravishing line at the barre in a Berlin studio), Shimazoe displayed no less grace, the dance poured out in an exquisite cantilena.

大絶賛ですね。これを機会にもっと海外でも日本のバレエが知られればいいなと思います。

2007/08/27

朝日新聞にフェリインタビュー/婦人公論に加治屋百合子さん

朝日新聞の8月27日(月)夕刊に、アレッサンドラ・フェリのインタビューが載っていました。カラー写真つき。内容はasahi.comで読めます。

http://www.asahi.com/culture/stage/theater/TKY200708270181.html

印象的なのは、二人の娘さんについて、
「2人ともバレエが好きで、よく劇場に来ましたが、疲れた私の姿を見たせいか、ダンサーになる気はないみたい。母親として励まし、成長をしっかり見守りたい」 との言葉。ABTでの引退公演でも、去年のフリオ・ボッカの引退公演でも、愛らしい姿を見かけた二人の娘さんたちは、そう思っていたのですね。


shushuさんのサイトで教えていただきましたが、「婦人公論」では、最近ソリストに昇格したABTの加治屋百合子さんが、作家の角田光代さんと対談をしています。

角田光代の「ヒミツの話は蜜の味」
ゲスト= 加治屋百合子
10歳のとき、日本に帰るよりバレエを選びました

角田さんはバレエそのものは詳しくないようですが、このような雑誌の場合、そういう方によるインタビューの方が、一般人にわかりやすい視点の記事になるような気がしました。

ABTに入ってからよりも、そこに至るまでの話が多く登場し、特に10歳で上海バレエ学校に入学してからローザンヌコンクールでスカラシップを獲得するまでの苦労話について詳しく語られていました。今でこそ上海は、近代都市に生まれ変わったけど、当時はネズミが走り回る校舎、トイレも中国式で扉がなかったこと、冷たい水しか出なかったこと。身体が堅かったため一年間はストレッチばかりやっていたこと、早朝から夜遅くまで稽古に励んだこと、また唯一の日本人だったために言葉や差別があったことなど。テレビ「情熱大陸」に出演した時にも気の強さの片鱗が登場していましたが、並大抵の苦労ではなかったようで、本当に根性の人です。ローザンヌに出場した後、本当はロイヤルに留学したかったけど、ロイヤルはその年は男性を欲しがっていたため、カナダ国立バレエ学校を紹介されて留学したとのこと。中国では猛烈に身体を動かしていたのでいくら食べても太らなかったのに、カナダでは食事の関係もあって太ってしまったこと。そして入団したABTでは、さまざまな国からのダンサーがいるために、差別が無く、気持ち的にはとても楽だという話も面白かったです。

加治屋さんは、跳躍力があるために、そのようなテクニックを多く駆使する役が多いとのこと。たしかに、「ラ・バヤデール」の影の王国のヴァリエーション、「ドン・キホーテ」の花売り娘、「白鳥の湖」のパ・ド・トロワなどの持ち役は、跳躍が多いというわけですね。多分、違った持ち味、たとえば叙情的な役なども踊れるようになれば、きっとさらに飛躍できるんじゃないかって気がします。クラシック・バレエが好きということなので、きっと来年のABTの来日公演でも大活躍することでしょう。

「舞台芸術の世界」東京都庭園美術館

バレエ・リュス好きとしては、早く観に行かなくてはと思いつつ、バレエ公演続きでなかなか行けなかった展覧会「舞台芸術の世界」にようやく足を運んだ。東京都庭園美術館自体、大好きな美術館であり、以前もここで開催されたヘルムート・ニュートンなどの写真展に行ったり、それから、旧朝香宮邸である芸術品たるこの建物そのものを鑑賞するための催しにも参加したことがある。
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建築物もさることながら、アンリ・ラバンによるアール・デコ形式の内装が大好きなのだ。ラリックによる正面玄関のガラスレリーフ扉や照明器具なども本当にシックで美しい。時の止まった異界に連れて行ってくれるような、そんな素晴らしい環境でこそ、この展示は似つかわしいと思える。

観終わった後は、茶室を見たり、庭園を散策したり、都会の真ん中とは思えない静けさを堪能した。

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ディアギレフのバレエ・リュスで実際に使われた衣装、それから衣装デザイン画、版画、舞台装置のデザイン画、舞台上の人々を描いた作品、公演パンフレットなどの展示が行われていた。個人的に、ちょっとだけ残念だったのは、舞台芸術ということなので、舞台装置の一部とか、テキスタイルなどが展示されているのかなと思っていったのだけどそれが無かったこと。衣装の数が思ったほど無かったこと。でも、それを除けばかなり充実した展覧会だったと思う。

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今回の展覧会の目玉としては、やはりレオン・バクストとアレクサンドル・ブノワによるデザインだと思う。バクストは、この展覧会のイメージビジュアルにも使われている「ワツラフ・ニジンスキーのための衣装デザイン(上演されなかったバレエ『ペリ』より)」が、色彩感覚や模様などのテキスタイルデザインが素敵。あとやはりニジンスキーの「『ナルシス』のためのデザイン」が、モデルとなっているニジンスキーのムーヴメントが伝わってくるように生き生きとしているのもいい。「アンナ・パヴロワのための衣装デザイン『東洋の神秘』」も、意表をつくミニスカートで、エキゾチックで妖しいのにキュートなのがツボ。衣装の実物で言えば、「カルナヴァル」のアルルカンの衣装。アルルカンは黒白ダイヤ柄という印象が強かったのに、これはきれいな色使いなのだ。

Image5


何点かあった陶器による人形がとても美しい。中でも、建物の入り口にあって、出迎えてくれるニジンスキーの陶器「アルミードの館」の「奴隷」(ブノワによるデザイン)が完璧なまでの美という感じで、レプリカがあったら欲しいと思うほどだった。

ブノワのデザインといえば一番有名なのは「ペトルーシュカ」かな?「バレリーナ」の衣装が飾ってあって、これにはちょっと感激しちゃって何回も観に行ってしまった。流行のレギンスのようにはみ出したアンダーパンツや、ファー使いがすごく可愛いし、これを実際に着て踊ったんだと思うと感激。ペトルーシュカの3人のキャラクターのデザイン画があったけど、ブノワの描く絵は、とてもキュートなんだけど同時にものすごい寂寥感があって、観ていると泣けてくるほど。

肉筆ではなくて版画ではあるものの、ジョルジュ・バルビエによる有名なニジンスキーの一連の版画が観られたのも嬉しい。「シェヘラザード」の「金の奴隷」や「牧神の午後」の官能的な表情、どこか古代エジプトを思わせる構図などがとても個性的で粋。さらに耽美的で繊細なロバート・モンテネグロによるニジンスキーの版画集も、金を多用していてちょっと違った趣だけど魔力が伝わってくる。ニジンスキーの「黄金の奴隷」「薔薇の精」などの写真が掲載された写真集も、薄井憲二コレクションより展示されているけど、これらニジンスキーの写真と版画を見比べてみるのも興味深い。ニジンスキーは決して美男ではないし、プロポーションだって良いわけではない。背は多分低いし、太ももが非常に太い。それでも、黄金の奴隷はふるい付きたくなるくらいの野性的な官能があるし、薔薇の精では、両性具有的な色香が漂う。薄井憲二さんいわくところの「解き放たれた野獣の魅力」は言いえて妙。

この展覧会の良い点は、展示品に関連する上演作品についての、なかなか詳しく丁寧な解説がついていること。バレエ・リュスの作品には、すでに上演されなくなってしまったり、失われてしまったり、滅多に上演されることがなくなったものが多い。神秘的で、妖しく、そして悲劇的な数々の寓話的作品。そういった未知の作品について、デザインを見ながら想像力の翼を広げる時間というのがこの上なく幸福である。「アルミードの館」や「雪娘」なんていったいどういう作品なんだろうか、と思う。「青神」は最近ニコライ・ツィスカリーゼが出演して復刻されたそうだけど。

また、ビデオで発売されていた「ディアギレフの夕べ」(Paris Dances Diaghilev)から、モニク・ルディエール出演の「ペトルーシュカ」、マニュエル・ルグリ出演の「薔薇の精」、シャルル・ジュド、マリ=クロード・ピエトラガラ出演の「牧神の午後」が毎日上映されている。このビデオ、現在は入手が困難のため、未見の方にはぜひお勧め。

asahi.comのこの記事に、展示作品の写真や解説があるので、そちらもぜひどうぞ。今週いっぱいは夜間開館で遅くまで開場している。

追記:バレエ・リュスに関する展示としては、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館で、2009年10月3日~2010年1月10日までDiaghilev and the Ballet Russes 1900-1939という展覧会が開催される。今回の展示品の中にも、ヴィクトリア&アルバート美術館から提供された収蔵品が多くある(ブノワによる「ペトルーシュカ」のデザインなど)。ものすごく先のことだけど行ってみたい。そう、2009年はバレエ・リュス100周年記念の年なのだ。

なお、バレエ・リュスとニジンスキーについては、「ICON 伝説のバレエダンサー ニジンスキー妖像」で、さらに多くの美しい写真や図版を観ることができる。薄井憲二さんや芳賀直子さんなど、今回の展覧会に関わったスタッフがこの本を作っているのだ。1913年の特別ガラのためのプログラムが美麗な色彩で復刻されて掲載されているのは、特に眼福である。熊川哲也さんのインタビューつき。

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芳賀 直子

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2007/08/25

マラーホフ、「ニジンスキーを踊る」「ジゼル」降板、代役発表

かねてから一部で噂されていたマラーホフの「マラーホフ、ニジンスキーを踊る」「ジゼル」降板と、代役が発表発表されました。マラーホフは膝の回復の具合が十分ではないために、降板となったとのことです。

「ジゼル」全幕 (9月7日、9日)フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ)

Aプロ (9月12日、13日)
 薔薇の精 マティアス・エイマン(パリ・オペラ座スジェ)
  ペトルーシュカ ローラン・イレール (元パリ・オペラ座エトワール)

Bプロ (9月14日、15日)
レ・シルフィード フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ)
牧神の午後 シャルル・ジュド (元パリ・オペラ座エトワール/ボルドー・バレエ芸術監督)

払い戻しは9月6日までNBSに電話をしてくださいとのことです。
また、マラーオフによる公開レッスンは予定通り実施されるとのことです。現時点では、来年2月の「マラーホフの贈り物」は予定通り出演とのこと。

詳しくは、
http://www.nbs.or.jp/news/news070825.html
まで。

かなり豪華な代役ですね。ルグリ公演で注目されたマティアス君に加え、イレールやジュドという元大エトワール、さらにはフォーゲルと見所は満載です。

バーミンガム・ロイヤル・バレエの件で問い合わせ

今日は小林紀子バレエシアターの「コンチェルト」「ザ・レイクス・プログレス」「エリート・シンコペーションズ」でした。3プログラムともとても面白くて楽しめました。こういう個性的な演目を上演してくれるこのカンパニーは貴重な存在です。

「エリート・シンコペーションズ」はダーシー・バッセルのイメージが強いので、あの衣装を日本人がどうやって着こなすのかな、と興味深く思っていました。が、日本人の女性というのもホントスタイルがよくなったようで、みんな素敵に可愛らしく着こなしていました。中村誠さんのラインの美しさも目を引いたし、大森結城さん、相変わらずカッコ良かったです。ラグタイムの音楽といい、キッチュで可愛い衣装といい、本当に楽しい作品です。

また時間があるときにもう少し書きますが、この公演、本当にお勧めです。明日、あさってもありますので、興味がある方はぜひどうぞ。「ザ・レイクス・プログレス」での、ヨハン・コボーの新しい側面が見られたのも良かったです。島添亮子さんの儚さのある演技力も、相変わらず素晴らしかったし。美術とか監修がしっかりしているので、安心して見られるプロダクションです。


さて、バーミンガム・ロイヤル・バレエの「コッペリア」、従来から予定されていた1月15日に加え、17日が吉田都さん出演と変更になったことは皆様ご存知かと思います。それに伴い、バレエの祭典会員宛に、希望日変更のお願いのお知らせ葉書がNBSより送られてきているということを、葉書を受け取った友達から聞きました。

私も、1月15日第一希望、17日第二希望で出している上、友達に追加で何枚か頼まれていたわけですが、NBSからは何の連絡もありません。そういうわけで、郵便事故などもありえることだし、心配なのでNBSに電話してみました。何しろ、NBSに連絡を入れないと、15日希望で出した人でも強制的に17日に変更させられるらしいということだそうで。

会員番号等を伝えて調べてもらったところ、「お客様はA会員なので、今回変更の対象にはなっていません」とのことでした。そのため、葉書が来なかったってワケです。一応、会員席で15日の分はなんとか入手できるということです。で、追加席について聞いたところ、「大変混み合っていますが、現時点ではなんともいえません。S席で依頼されている場合、A席に変更をお願いすることもあるかもしれませんが、その時になったら連絡します」ということだそうです。

別の友達が問い合わせた結果について教えてもらいました。アンケートに、混んでいても、日付変更不可に丸をした人と、どちらにも丸をしなかった人には、連絡が行かないとのことです。そのままでOKという事だそうです。
現時点で15,17日とも既に満席なので、会員以外で追加で取った分は、Aに変更でも可でない限り、Sは多分取れないとのことでした。

したがって、一般発売時に、15日、17日のS席はほとんど残っている可能性が無いってことですね。NBS、都さんの人気を見くびっていましたね。一昨年のロイヤルの来日の時に気がつくべきでした。

それと、この件については、該当者だけでなく祭典会員全員にお知らせを送るべきだったのではないかと思います。

2007/08/24

「21世紀に輝くエトワールたち−パ・ド・ドゥの魅力−」

2005年9月 パリ・シャンゼリゼ劇場にて収録

NHKのハイビジョンで放映された時とは、ちょっと演目が変わっている。このメンバーに加えて、ルシア・ラカッラとシリル・ピエールが「マ・パヴロワ」と「失われた時を求めて」より「囚われの女」を踊っていたのだけど、プティの権利が取れなかったのか、DVD化にあたり外されたラカッラ組が抜けた分、ブカレスト組の「ラ・バヤデール」と、シュツットガルト組の「眠り」、ABT組の「パキータ」が入った。結果的に、コンテンポラリー作品がひとつも無い、プティパ振付のものが大部分という映像になった。舞台袖のモノクロ映像が、演目の間につなぎとして登場するのだけど、そこにはラカッラやピエールが映っているものだから余計に違和感がある。

この映像を観た人が10人いたとしたら、10人全員が、「カメラアングル最悪」と言うであろう。ポアントだけのアップや顔のアップが非常に多く、フェッテのときに上半身しか映していなかったりして、そのときに脚がどうなっているのかめちゃめちゃ気になる。特にひどいのが「シルヴィア」で、前述のようなカメラワークだけでなく、マネージュやフェッテで天井カメラを使っているので、どれくらい高く跳んでいるのか、とか足先がどうなっているのか、とかもう全然わからないのだ。


ザ・グラン・パ・ド・ドゥ(Le Grand Pas de Deux)」
振付:クリスティアン・シュプック/ 音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ
アリシア・アマトリアン/ ジェイソン・レイリー シュトゥットガルト・バレエ

アマトリアンのこの演目は、先日もフェリの「エトワール達の花束」で上演されたばかり。導入部がちょっと劇仕立てになっていて、会場に牛のハリボテが運び込まれるところから、チュチュ姿のアマトリアンが劇場に入ろうとして入れてもらえなかったり、レイリーが楽屋で食事をしていたりといったところが登場するのは面白い。でも、せっかくオープニングでこういう趣向を出したなら、エンディングもそれなりの演出をして欲しかった気がする。

この間の公演でもそうだったけど、アマトリアンは技術も超一流でありながら、コメディエンヌとしてのセンスが抜群。表情もコミカルで可愛いし。ばか演目ではあるんだけど、高度な技術が伴わなければかっこつかないし笑えない。その点、この二人は言うことなし。牛と対話するのは、テューズリーの方が演技が笑えたけど。


シルヴィア」よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付:フレデリック・アシュトン / 音楽:レオ・ドリーブ
ゼナイダ・ヤノフスキー/ フェデリコ・ボネッリ(英国ロイヤル・バレエ)

それほど背が高くないボネッリに、ゼナイダは少し大きすぎる感じはするものの、ボネッリのサポートも上手で、とても美しいペア。ゼナイダは大柄なのにアシュトン独特のステップを見事に音にあわせて奏でている。すごく音楽的なバレリーナで、まるで楽器のように音と戯れる感じ。それにしても、クローズアップが多すぎの上、前述の通りボネッリのマネージュが天井からの撮影で何がなにやらわからなかったのが非常に残念。

ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/ 音楽:レオン・ミンクス
ロレーナ・フェイホ / ホアン・ボアダ (サンフランシスコ・バレエ)

一応超絶技巧が売りのペアなんだろうけど、期待したほどではない感じ。もちろん上手ではあるんだけど。ロレーナ・フェイホはちょっとバレリーナにしては胴が太すぎるのでは?これは、グランフェッテが天井カメラだったため、果たしてどんな風に回っているのかも全然わからないのが最悪だった。よって、このペアの技術に関しては正当な評価ができない。パリでも、フェッテのときに手拍子が入るんだとちょっとびっくりする。


海賊」より寝室のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ / 音楽:リッカルド・ドリーゴ/ 改訂振付:アンナ・マリー・ホルムス
イリーナ・ドヴォロヴェンコ / マキシム・ベロツェルコフスキー(アメリカン・バレエ・シアター)

ガラでこの場面を上演するのはとても珍しいんじゃないかと思う。マックス君はひたすらイリーナ様のリフト係になっていた。ものすごいラブラブオーラが溢れていて、情感豊かでドラマティック、濃厚なパ・ド・ドゥ。後で登場する「パキータ」でもそうなのだけど、イリーナのスターオーラはすごい。一挙一動が計算尽くされていて、自分を一番美しく、あでやかに見せる角度がわかって演じている。それが苦手と感じる人もいるんじゃないかと思うけど。


ラ・バヤデール」より幻想の場 グラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/ 音楽:レオン・ミンクス
コリナ・ドゥミトレスク / オヴィディウ・マテイ・ヤンク (ブカレスト・バレエ)

ビッグネームの出演者の中で、唯一聞いたことがないペア。しかしこの二人はなかなか実力派だと思った。ルーマニアのブカレスト・バレエということだけど、演技や踊りの質は完全にロシア風、それもボリショイ風味。解説書によればオヴィディウ・マテイ・ヤンクは83年生まれで収録時はまだ22歳と若い。跳躍力があってメリハリのあるダイナミックな演技。ルックスもなかなか見栄えがする。衣装がいまひとつなのが惜しい。コリナ・ドゥミトレスクはベテランのようだけど容姿も美しいし、安定した技術。ヴェールの踊りだけちょっと苦労していたけど、ここは誰でも苦労するから。ラ・バヤデールのこのPDDは大好き。


眠れる森の美女」よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/ 音楽:P・I・チャイコフスキー
アリシア・アマトリアン/ ジェイソン・レイリー (シュトゥットガルト・バレエ)

この二人の「眠り」だから悪いわけがない。アマトリアンの正統派お姫様を観るのはこの映像が初めてなのだけど、こうやってオーロラの衣装を着ていると、実はとてもお姫様っぽくて愛らしいルックスなのがわかる。ジュリエットも可愛かったけど、ジュリエットの衣装はまあ反則技だからね。「エトワール達の花束」ではフォーサイスとか「びよ~ん」だったし。キラキラオーラがあって、一つ一つの動きも優雅で素敵。ジェイソン・レイリーも非の打ち所が無い。二人の衣装は、先日の「ゴールデン・バレエ・コー・スター」でエレーナ・テンチコワ&フィリップ・バランキエエビッチが着用していたのと同じ、淡い花柄が入ったもの。しかし、「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」を観た後だと、いつアマトリアンが黒ぶちメガネをかけて「なんちゃって」とギャグを始めるんじゃないかとひやひやしてしまう(笑)


パキータ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/ 音楽:レオン・ミンクス
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/ マキシム・ベロツェルコフスキー(アメリカン・バレエ・シアター)

よく見慣れた、マリインスキー版やラコット版の「パキータ」と振付が違うので最初はちょっと違和感。結婚式のところだと思うけど、イリーナは真っ赤なチュチュで、ものすごく情熱的で濃ゆいパキータを踊っている。見得の切り方はアメリカン・ロシア風味。それにしても、この二人はプロフェッショナルの中のプロフェッショナルが踊っているという感じ。すごく完璧だし、ドラマティックだし、見せ所を心得ている。マックスはでしゃばることなく、嫁を立てながらも、決めるところはカッコよく決めて素敵なナイトぶりを発揮。で、くどいようだけど、上半身ばかりを追ったカメラワークのために、肝心の脚があまり見えない。イリーナが絶世の美女であるから、彼女のきれいなお顔を撮りたいという気持ちはわかるんだけど、脚を映してくれ~といらいらしてしまう。
この二人のバレエは、ホント最上級のエンターテインメントだなとしみじみ。二人が組んでいるところを生で見たくなった。一昨年の来日公演の時にはイリーナが育児休暇中、去年のバレエフェスはイリーナのみの来日だったのよね。

パフォーマンスのクオリティは非常に高いし、トップスターが揃った華やかな公演、最近の映像のために画質もきれい。演目もおなじみのものが多い。が、とにかく撮り方に問題があるのが困った映像。マリインスキー・バレエの「白鳥の湖」といい、「ディヴァイン・ダンサーズ」といい、最近はこうやって全身ではなく変に凝ったアングルでダンサーの一部分を切り取って撮影するのが流行っているのだろうか。普通に真正面から全身を映すのが何でダメなんだろう。映画じゃないんだからさー。

21世紀に輝くエトワールたち-パ・ド・ドゥの魅力-21世紀に輝くエトワールたち-パ・ド・ドゥの魅力-
アリシア・アマトリアン ジェイソン・レイリー ゼナイダ・ヤノフスキー

TDKコア 2007-08-08
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2007/08/23

8/22 ダンシング・フォー・エイズ・オーファン/Dancing 4 Aids Orphans ガラ

日曜日まで出勤したのに、仕事が終わらなかった上、落雷で電車が大幅に遅れたために、結局4演目しか見られなかったのだった。17000円も払ったのに。(入場料ではなく、寄付金という意味合いなのではあるけれども)

なんとか観られた「ジャポニズム」「ジゼル2幕PDD」「ドラキュラ」「レ・シルフィード」の4演目はいずれも素晴らしかった。

「ジゼル」。ホセ・カレーニョとスージン・カンという豪華でしかも滅多に観られない組み合わせ。で、この二人の舞台は、本当に素晴らしかった。スージン・カンは恐ろしく上半身が柔らかく、とても生きているとは思えないほど軽くて、浮遊しているようだった。もちろんホセのアルブレヒトはエレガントだし、得意の惰性で7回くらい回るピルエットの優雅なこと。リフトもさすがに上手いから、ジゼルは空中に浮いているようにしか見えない。いつかこの二人で全幕の「ジゼル」が観たい。スージン・カンといい、先日の「ゴールデン・バレエ・コー・スター」でのヤンヤン・タンといい、東洋人とジゼルは合っているのかも知れない。

「ドラキュラ」はリン・チャールズが振付、リン自身と小林洋壱さんが踊る。ドラマティックで妖しく独特の世界観を作り上げていた。リンはポアントで踊り、現役ダンサーそのものの、素晴らしいテクニックと濃厚なドラマを見せる表現力を見せていた。背中も足先も美しい。小林さんも、長身を生かしたデカタンスな雰囲気と演技力を見せていたし、非常にリフトの多い振付を見事にこなしていて魅力的だった。リンは身体のキープ力もすごくて、とても50歳をとっくに超えているとは思えない。

「レ・シルフィード」は中村祥子さん、スージン・カン、グレゴール・ハタラという豪華共演に加えて、林ゆりえさんや門沙也香さんも素晴らしく、コールドのレベルも高くて、そこらへんのプロのバレエ団よりよほど立派なものだった。祥子さんは非常にしなるつま先で強靭なテクニック、長身を生かしたキメのポーズも美しくて凛とした魅力。スージン・カンは、ジゼルのときに見せた浮遊感と柔軟さ、儚さがここでも生きていて夢幻の世界へと連れて行ってくれる。門沙也香さんは小柄なのだけど、とてもアラベスクが美しいし、テクニックもしっかりしている。足音の全然しない、よく揃った群舞もあり、見ごたえたっぷり。群舞の子達は、リン・チャールズが選んだ特に才能のあるバレエ少女たちで、留学中の子や、これから海外で活躍するダンサーもいるという。

マーラ・ガレアッツィとアレクサンダー・ザイツェフは怪我で出演なし(会場には来ていた)、予定されていた「じゃじゃ馬ならし」と「太陽に降る雪のように」は上演が無かった。

残念なことに、観客がもうあまりにもひどくて絶句。一番の間違いは、公演の間にパーティがあったことで、そのパーティでしこたま飲酒をした外国人の集団がいて、酔っ払って大騒ぎをしていたのだ。ジゼルのように息を潜めて静かに、幽玄な世界に浸りたい演目のに、大声でおしゃべりしている。ホセのヴァリエーションで、超絶技巧が決まるとまだ踊っている最中なのにヒューヒュー騒ぎ、うるさくて集中できない。しかも、踊っている最中なのにフラッシュを炊いて写真を撮りまくっている。アルブレヒトが倒れこんだ後、斃れたままの状態で拍手に応えるホセに対して、倒れている人がそんな反応をするのが可笑しいらしく、大笑いする。たまりかねた日本人の観客が注意すると、「文化の違いだよ」とか、「ダンサーだって日本人じゃないし」とか「楽しみ方を知らない」とか、逆切れして注意した日本人を罵倒し始める始末。せっかくの素晴らしい舞台が台無しだったし。ノーギャラで出演したダンサーたちにも失礼極まりない。

20日の公開リハーサルではあったらしい、ダンサーやスタッフとの交流が無かったのも残念。公演の休憩時間中にレセプションをやるのは、落ち着かないし、お酒を飲みすぎる人たちが出てくるので、良くないと思う。ダンサーやスタッフも顔を出せないし。

なかなかチャリティが根付かない日本で、このような、遠いアフリカの子供たちのために、一流のダンサーたちを集めてチャリティ・イベントを行うのは素晴らしいことだし、主催したリン・チャールズの苦労も並大抵のことではなかったと思う。公演の中身(ダンス)のレベルも非常に高かったし。会場で会った友人の話では、他の演目もとても良かったらしい。滅多に日本では上演できない「コンチェルト・バロッコ」観たかった。リン振付の「パエリア」も良かったらしい。でも、観客にあんな人たちを呼んでしまったら、せっかくの好企画も台無しになってしまう。

このような高い志を持った公演、今後もぜひ続けて欲しいから、直すべきところは改善して、しっかりと宣伝をして、次につなげていって欲しいなと思った。ベネトンから出ている特製Tシャツは可愛いので買って帰った。

2007/08/22

ルグリと輝ける仲間たち、若手ダンサーについて

今回、たくさんの有望な若手ダンサーが出演していたので、ちょっと調べてみました。情報源は、ダンソマニさんが中心です(いつもお世話になります)。

昨年12月20日(水)、21日(木)に、パリ・オペラ座の昇進コンクールがありました。

その昇進コンクールの結果を見ていたら、プルミエの試験では、ステファン・ビュヨンは2位だったようです。惜しかったですね。プルミエに上がったのは、「白鳥の湖」の映像でスペインを踊ったクリストフ・デュケンヌ。彼はもう35歳なんですね。(ステファン・ビュヨンは1980年生まれなので若い)デュケンヌは満場一致での昇進でした。
ちなみに4位が人気のフロリアン・マニュネ、6位が「MC14/22」では天使のように美しいのに悪魔のようなガムテープ男を演じたり、最近では「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」でアランを踊ったイタリア出身のシモン・ヴァラストロ。
規定演目がアルマンの2幕のヴァリエーションで、もう1演目は自由だけどみんなコンテ作品。
この年は最有力だったヤン・サイズがやはり怪我で出ていないのですよね。

スジェへの試験は、
1位のマティアス・エイマンは満場一致。この時点(12月)でまだ19歳。2位でやはり昇進したオドリック・ベザールが24歳。
コリフェは1位のアクセル・イボが21歳で昇進。3位(昇進できず)がマルク・モローで、6位がグレゴリー・ドミニャックだったんですね。


女子は、今年はプルミエへの試験はありませんでした。

コリフェ女子(昇進すればスジェ)では、シャルリーヌ・ジザンダネが4位(昇進できず)。3位が、「スーパーバレエレッスン」でおなじみのロレーヌ・レヴィ(昇進は2位までだったので残念でした)。

カドリーユ女子(昇進すればコリフェ)では、今回の出演者はいませんが、やはり「スーパーバレエレッスン」で活躍したエレオノーレ・ゲリノーが3位、 オバーヌ・フィルベールが4位と、昇進はできませんでしたがいい位置につけています。


昇進コンクールについてもっと詳しく知りたい方は、ダンソマニさん日本語版の該当スレッドへ。
http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?t=2427&postdays=0&postorder=asc&start=0


もう何回も観ているヌレエフ版の「白鳥の湖」を改めて観ていたら、今回のガラの出演者がたくさん出ていることに気づきました。特に1幕の男子のワルツは多い。オドリック・ベザール、マティアス・エイマン、グレゴリー・ドミニャック、アクセル・イボーはすぐわかりましたし、マルク・モローもいましたね。今回のルグリガラには出ていませんが、前回出演し、「アベルはかつて・・・」の振付家でもあるマロリー・ゴディオンも。
女子の方も、ワルツでマチルド・フルステーは目立つからすぐわかるし、ローラ・エッケもいます。マチルドは3幕のキャラクターダンスにも出ています。ソリストクラスで言えば、パ・ド・トロワにドロテ・ジルベール、ナポリにミリアム・ウルド=ブラム、そして小さな四羽の白鳥にドロテとミリアム、マチルドが出演。

シアターテレビジョンで放映されたドキュメンタリー「ミューズを導くセルジュ・リファール」には、まだオペラ座学校の最終学年在籍中のステファン・ビュヨンが、偉大なセルジュ・ペレッティとイヴェット・ショーヴィレに、現在やはりスジェのジュリアン・メイザンディとともに「騎士と姫君」というリファール作品の指導を受ける様子を見ることができます。ほっそりと若くてほっぺが赤く、めちゃめちゃかわいいです。このドキュメンタリーは、若き日のルグリやモニク・ルディエールの姿を見ることができたり、冒頭ニナ・ヴィルボワに指導を受ける、やはり若いときのイザベル・シアラヴォラがお顔、脚のラインとも女優のように美しかったり、見所の多い映像です。

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2007/08/21

「エトワールたちの花束」NHK教育「芸術劇場」放映の情報

NHKの芸術劇場のサイトに番組の中身の情報が載ったのでお知らせします。「エトワールたちの花束」からはAプロだけのようですね。2時間弱の放映のようなので、全部は放映しないのかもしれません。 挙げられている2演目以外に何がかかるのか、気になります。

http://www.nhk.or.jp/art/yotei/2006/20070921.html

9月 21日(金曜) NHK教育テレビ(22:25~0:40)

ゲスト: 吉田 都(バレリーナ)

★ 特集 
バレエ界の名花 フェリが残したもの
 番組では、8月2、3日に行われる最後の来日公演と、8月10日にシチリアの古代劇場で行われるラスト・パフォーマンスを取材した。


★公演コーナー
アレッサンドラ・フェリ 引退記念公演
 
<演目> 「ロミオとジュリエット」から「バルコニーのパ・ド・ドゥ」
(音楽:プロコフィエフ/振付:マクミラン)

「マノン」第三幕から「沼地のパ・ド・ドゥ」ほか
(音楽:マスネ/振付:マクミラン))

<出演> アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ
ホセ・カレーニョ
ジュリー・ケント
アリシア・アマトリアン ほか

<収録> 2007年8月2日(木) 東京文化会館

2007/08/20

ルグリと輝ける仲間たち Bプロ 8/12、13

個人的な好みの問題かもしれないけど、Bプロを観たところ、Aプロよりもずっと充実したプログラムに思えて、最初はAプロ1回Bプロ2回だったのが、結局13日は当日立ち見席で観ることにして、Bプロは3回観た。Aプロは「白の組曲」がつまらなかったのと、「扉は必ず・・・」や「椿姫」が不発だったのが痛かったわけで。

今回のガラは若手育成公演のため、まだまだ発展途上の人も多かったのだけど、逆にそういう若い子たちの成長を見守ることができるという、まるで母の心境のようになりました(笑)

◇第1部◇

○「タランテラ」[振付]ジョージ・バランシン
メラニー・ユレル アクセル・イボ(13日)、マルク・モロー(12日)

アクセルは白いバンダナだったけど、マルクは赤いバンダナを頭に巻いて登場。オープニングに相応しい、明るくて元気いっぱいの演目。アクセルはとにかく柔らかいし、脚もきれいに高くあがる。マルクはもう少しがんばれ、戸も思うのだけど、カドリーユでこれだけ踊れるのだから立派なもの。タンバリンを叩く音がバシっと気持ちよかった。メラニーは、赤いビスチェに白いチュチュ。ビスチェがちょっとサイズが小さいようで、胸がこぼれ出そうでちょっと気になった。特に12日は2列目で見ていたもので。ポアントでの2番プリエなどはさすがに見事に決まっていたし、華やかな雰囲気もあって楽しかった。


○「アベルはかつて…」 [振付]マロリー・ゴディオン [音楽]アルヴォ・ペルト「Spiegel im Spiegel(鏡の中の鏡)」
グレゴリー・ドミニャック ステファン・ビュヨン

繰り返し観ているうちに、大好きな演目になった。アルヴォ・ペルトの音楽も美しく、静謐で心に響く作品。とても、オペラ座現役の若手ダンサー(マロリー・ゴディオン)が作ったものとは思えないくらいの完成度。グレゴリーとステファンは、身長も体型も比較的似ているので、本当に兄弟のように見える。金髪で天使のように美しいグレゴリーよりも黒髪のステファンの方が色白で、踊っているうちに白い肌がピンク色に染まっていくのがとても妖しく魅惑的。11日も比較的前の方の席だったので、13日の立見席になって初めて、最初から白い布が地面に敷かれていることに気がついた。

若く美しく仲の良い兄弟。兄カインの動きを、弟アベルが模倣するように繰り返す。お互いに手を差し出したり、シメントリーな動きが続く。二人が跳躍するところも、美しくシンクロしている。兄カインは弟のことをとても大切に思っていて、いとおしむように彼をリフトする振付が何回か入る。時にはお互いの身体を重ねたり、見つめあったり。床に敷かれた白い布を二人が持ち、それを二つに破った時に、兄の分よりも弟の分の方が大きくなった。それは、神に与えられた恵みの量を象徴するもの。真面目な兄よりも無邪気な弟の方が、神に愛されているということなのだ。二人とも愕然とする。弟は弟で、兄よりもこんなに多くのものを受け取っていいのと戸惑う。じゃれあううちに、兄はその白い布を弟に巻きつけ、そうするうちに弟は息絶えてしまう。動かなくなった弟の姿を見て、自分の犯した罪の大きさにおののく兄。愛する弟をこの手であやめてしまった・・・なんということだ。果てしの無い苦悩にカインは沈んでいく。苦しみ、嫉妬などの感情を大袈裟に顔に出すことなく、あくまでも繊細でピュアな存在として普遍的な物語を踊った二人に拍手。


○「ドニゼッティ - パ・ド・ドゥ」(初演)[振付]マニュエル・ルグリ
ドロテ・ジルベール マチュー・ガニオ

本当にマチューはダンサーとしてすごく成長したのがわかる演目。この男性ヴァリエーションは一言で言えば鬼!ジュッテ・アントルラッセで跳躍したまま、そこでさらにアン・レールするという超絶技巧。マネージュも、間に挟むトゥール・ザン・レールが膝をそろえているという変わったものになっていたり。マチューの得意なアントルシャ・シスとパ・ド・シャのコンビネーション。とても高く跳んでいるし、つま先は美しいし、甲は高い。その美しさには本当に惚れ惚れとする。アレグロの得意なドロテも、軸足を変えてのフェッテなど、難しい技を楽々とこなしている。でもひょっとして、この二人って相性悪いんじゃないかと思ってしまった。カーテンコールでも、ちょっとぼーっとしているマチューを、ドロテが引っ張っていくなんてシチュエーションが。


○「オネーギン」[振付]ジョン・クランコ
モニク・ルディエール マニュエル・ルグリ

特に2列目で見た12日のモニクの演技が凄まじすぎて、もう途中からタチアーナに感情移入しすぎて涙が止まらなくなって困った。タチアーナの苦悩を、まるで自分自身の苦しみとして感じてしまうのだから。(当然、自分自身はそんな経験は実際にしたことが無いわけなのだが)今回、4回観ることができたわけだが、毎回少しずつ演技を変えているのがわかった。タチアーナのキャラクターも強くなったり、より繊細になったり、さまざまな演技の要素の組み合わせを変えてきているのが、モニクのすごいところだ。

ちらりと見えたオネーギンの走る姿を見て、心が揺らいでいるタチアーナ。この男に決して気を許してはいけない、愛してはいけないと思って、決して視線を合わそうとしないのに、わが身が引き裂かれるような苦しみに苛まれる姿を見て、滂沱の涙。ルグリも、走っていく姿が、18日に見た王子とはまったく違っていて、オネーギンというプライドは高いけれど現実社会に対応できない下級貴族の人物像を体現していた。タチアーナにすがりつく姿は、どう考えたって情けないはずなのだけど、その姿すら、エレガントで美しいのがルグリなのだ。二人とも相手をどうしようもなく愛しているのは同じなのに、残酷な時の流れによってその思いはすれ違い、どんなに愛してもどうしようもない、決して結ばれてはならない運命となってしまった。そしてお互いの立場がまったく違ってしまったことが、同じように苦悩しているように見える表情を見比べることでわかってしまう。それでも追いすがられ、熱烈に迫られるうちに、タチアーナも閉ざされた心の扉が開きかけ、あふれ出る想いは抗し難くなり、思わず身を任せそうになる。伸ばした指先、足先、しなる背中、全身で叫びたくなるような激烈な想いを表現している。

それでも、タチアーナは、愛の無い結婚生活を選び、すべての感情に再び鍵をかけ、決然とした、感情を殺した表情で先ほどは張り裂けそうな思いで読んだ手紙を破り捨て、オネーギンに出て行くように命令するのだ。手紙を突きつけられたときのルグリの悲しく、情けなく、それでもロマンティックな狂気をはらんだ表情は胸に迫るものがあり、動揺しながら走り去っていく後姿を見ると、その後を追いかけようとするタチアーナに再び感情移入をしてしまうのだ。ふらふらと舞台を彷徨い、顔を覆った後に、人生ただひとつの恋を葬って慟哭するタチアーナの姿は、悲しくも凛として美しい。こうやって思い出しても、泣けてくる。

モニク・ルディエールのダンサー人生の最後を、ルグリを相手にした「オネーギン」で観られたことに感謝。ここまで踊り手として、表現者として最高のものを見せていただいた至福と、それをもう二度と見られなくなる悲しみに、胸が切り裂かれつぶれる想いがした。

(つづく)

◇第2部◇

○「ビフォア・ナイトフォール」

第1パ・ド・ドゥ: メラニー・ユレル、マチアス・エイマン
第2パ・ド・ドゥ: エレオノーラ・アバニャート、ステファン・ビュヨン
第3パ・ド・ドゥ: ドロテ・ジルベール、オドリック・ベザール

3組のカップル: マチルド・フルステー、ローラ・エッケ、シャルリーヌ・ジザンダネ、
         アクセル・イボ、グレゴリー・ドミニャック、マルク・モロー

暗い照明の下、墨色のグラデーションにストラップだけ赤いキャミソールドレスの女性ダンサーたちと、上半身裸にやはり墨色のタイツの男性ダンサーたち。6組のカップルとなっていて、最初、女性の後ろに男性が立っているのかと思ったら、男性同士、女性同士のペアもあった。不穏な空気、内乱の予感といったものが漂う。
第一パ・ド・ドゥでは、やはりマティアス・エイマンの高度なテクニックが光る。彼はクラシックダンサータイプだと思うのだけど、なかなかどうして、こういうコンテンポラリーも合っている。そしてメラニーもなかなか良い。第二パ・ド・ドゥでは、コンテンポラリーが得意なエレオノーラがやっぱり魅力的。オフバランスでのバランスのとり方がうまい。このパ・ド・ドゥではステファンはサポートをすることが多かったのだけど、彼のサポートの上手さ、女性をきれいに見せるテクニックが光っていた。パ・ド・ドゥの終わりで二人が震えるようにうずくまっていた姿が印象的。第三パ・ド・ドゥでは、クラシックだと首がちょっと前に出すぎているオドリックの欠点が目立たず、彼のダイナミックなマネージュが映えてよかった。ドロテは、古典とコンテンポラリーで別の魅力を発揮できる人というのが明らかになったけど、本当に存在感が強い人なんだと思う。コンテンポラリーとはいえ、女性はポアント着用だし、技術的にはクラシックのテクニックも多用している。少なくとも「白の組曲」よりはずっと楽しんだ。


○「牧神の午後」[振付]ティエリー・マランダン
バンジャマン・ペッシュ

やっぱり面白い作品だな~って思う。でも、果たして他のダンサーが踊ったらどんな感じになるのだろうか。イタリアでイレールが踊ったというけど、どんな感じなのかおよそ想像できない。1日目より2日目、2日目より3日目と、ペッシュはすっごく乗っていて、本当に楽しそうに踊っていた。床にダイブしたり、丸めたティッシュをイメージしたチュールの塊に顔を埋めたり、四つんばいになって腰を振ったり、どれもこれも至福の表情をしているのだもの。彼は決して脚は長くないしプロポーションが良い訳ではないけれども、筋肉のつき方はとてもキレイな人だなって思った。そしてカーテンコール、一度目は牧神特有の平行にした腕だけを登場させてからカーテンの前に現れ、二度目は牧神ジャンプ(1度目と同じ腕のまま、横向きに飛ぶ)で登場。観客の反応もよく、とっても嬉しそうなペッシュだった。


◇第3部◇

○「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”[振付]ジョージ・バランシン
ローラ・エッケ オドリック・ベザール

この演目って、やっぱりすごく地味なので、ロパートキナのように内面からダイヤモンドのように輝く人が踊らないと厳しいものがあるのだった。バレエフェスでアニエスとジョゼが踊った時ですら、特に印象も何も残らなかったくらいで。13日、3日目にして、ようやく、ローラとオドリックの「ダイヤモンド」が見慣れてきて、こういう作品か、という全体像が見えてきたと思う。13日は立ち見で一番後ろで見ていたけど、それくらい距離があった方が把握しやすいのかもしれない。オドリックに関しては、首が前に出すぎというのがさんざん言われているわけだけど、それ以外の面、丁寧さやサポート、優雅さはこの3日間でずいぶんと進歩した気がする。まだまだ伸びしろはありそうだ。背が高く容姿もいいので、ホント、首の位置だけもう少し改善してもらえれば。ローラも、もともと気品とオーラはすごくあるひとなので、あとはもう少し精神性の高みを感じさせてくれれば。私は、彼女の少々長めの顔があまり好きではないのだけど、一般的に見れば美人だと思う。

○「ドリーブ組曲」[振付]ジョゼ・マルティネス
ミリアム・ウルド=ブラーム マチアス・エイマン

本当に可愛い二人!特にミリアムの可愛さといったらもう、とてもアニエスが着ていたのと同じ衣装を着ているとは思えないほど。袖のあたりにフリフリがついているというところが、アニエスの衣装と違っていたところだろうか。金髪に、紺色の髪飾りも映えていた。マティアスのスーパーテクニックは絶好調で、12日にあったマネージュでの失速も克服し、少しずつ角度を変えてのグランピルエットも疾風のようだった。大喝采。13日は会心の出来だったようで、ラスト、二人がシルエットになって舞台の奥に消えていく時、マティアスは嬉しそうにミリアムにキスをしていた。


○「さすらう若者の歌」[振付]モーリス・ベジャール
ローラン・イレール マニュエル・ルグリ

ヴォーカル入りの曲で踊られるバレエに抵抗があるため、この演目の魅力はついに私にはわからなかったけど、この二人の踊りは心を打つものがあった。やはり近い距離より、客席の一番後ろから観た方が、よく伝わってくるものがあったのではないかと思う。水色のユニタードのイレールは、どちらかといえば女性的というか弱さとか優しさがある役柄で、赤いユニタードのルグリが男性的で強い印象がある。体型がよく出るこの衣装だと、残念ながらイレールのお尻の形よりルグリの方がずっときれいな形をしているのがわかってしまう。また、たまにイレールのアンドォールが甘くなってしまっているのも見えてしまった。ルグリが現役バリバリで、完璧な踊りを見せているのとは、ちょっとステージが違ってきてしまった感じ。それでも、イレールの動きは美しい。偉大な二人のダンサーの、さまざまな出来事、花も嵐もを乗り越えての強い絆を感じることができた。踊るルグリを上手で見つめているイレールの嬉しそうな顔。そして、ルグリに手を引かれ、舞台奥へと去っていくイレールが、客席に視線を向けて手を伸ばしている姿、そのときの目が「さようなら」と観客に行っているようで、涙が出てきてしまった。


カーテンコールでの、ルグリ、モニク、そしてイレールの3人の並びを見ていると、万感の想いがこみ上げてくる。イレールに推されて一人、カーテンの前に立つルグリはあくまでも謙虚で、他のダンサーたちの方を向いて彼らを讃えていた。バレエを見なかった空白期間が長い私には、彼らに対する思い入れを語るような資格は無いのだけど、彼らが刻み付けてくれた感動は決して忘れないと思った。

2007/08/19

「白鳥の湖」でルグリ祭り終了

「白鳥の湖」全幕プロで、「ルグリと輝ける仲間たち」もついに終了。Aプロを観終わった時には、こんなに最後まで楽しめると思わなかったのですが、Bプロからどんどんハマっていって、終了した今日、えも知れぬ寂しさを感じています。夏も終わっちゃったな、と。

ルグリの王子は、完璧に王子でした。実は正直、3幕のヴァリエーション前半でのランベルセなどは小さくまとまっちゃっていてあれ、とは思ったのですが、それ以外はパーフェクト。佇まいから一つ一つのしぐさ、マイム、演技、すべてに気品が溢れる、王子の中の王子でした。立っているだけでも王子なのに、ひとたび動き始めたら、あまりにも優雅で、体で音楽を奏でているかのようなので、目が離せなくなります。その中で、3幕コーダのグランド・ピルエットは、アラスゴンドの脚の美しさもさることながら、至福の表情で王子のつかの間の喜びを表現していて、観ているこちらも至福の時でした。たっぷりの情熱も持ち合わせていて、こまやかに物語を語ることができるのですから、もう最強です。今回、ルグリの王子が観られて本当に幸せでした。パートナーをこの上なく美しく見せるサポートは、もはや神業と言ってもいいかもしれません。彼の王子を映像に残して欲しいけれども、それは叶わぬ夢なのでしょうか。バレエ界の資産として永久保存したくなるような、すべての王子像のクライテリアとなるような永遠の「白鳥の湖の王子」でした。

16日のオディールでミスをしてしまったドロテは、今回はフェッテも成功して「良かったね」と声をかけたくなりました。オデットは、勝気さが前面に出すぎているし、緊張感でやや堅くなり、儚さなどは感じられなかったけど、演技力があるのでドラマティックな造形ができていたと思います。16日のオディールで感じた目力の強さはオデットにも感じられました。2幕のラスト、別れのときに、どうしても離れたくないのと訴える情熱的な演技は、ドロテの強い個性や熱い想いが反映され、人間らしい体温のある、彼女なりのオデット像を作り上げていることがよくわかりました。ルグリは今日も先生モードでしたが、ドロテの演技に合わせた熱い王子で、見事に演技のキャッチボールができていました。
オディールはキャラクターに合っているということもあり、すごくできが良かった。16日よりもずっと吸引力があってキラキラしていました。とても可愛いのに、強い視線で悪女らしく、華やかで魅惑的でした。動きもメリハリがあって輪郭がはっきりしているので、ドラマが際立ちます。それに対するルグリの受けが的確だったので、映画を観ているかのように、台詞が聞こえてきそうな3幕となりました。16日はドロテはフェッテの失敗で意気消沈していたようでしたが、今日はうまくいったので(後半はやや失速していたけど)、自信が出たようで、勝ち誇って去っていく時の妖艶な表情にはゾクゾクしました。あんなに高笑いの美しいオディールを見たのは初めてです。

4幕では、ようやくオデットらしい儚げな部分や詩情も出てきました。この版はハッピーエンドなのですが、王子がロットバルトをやっつけ、倒れていたオデットが「私、生きている」と起き上がったときの、ドロテの嬉しそうな表情がとても美しかったです。これから経験を積んでいって、成長した彼女のオデットが観たいです。きっとできるはず。

ステファン・ビュヨンのロットバルトも、16日よりはかなり余裕があり、踊りも安定していました。トゥール・ザン・レール2連発も、1回目は着地に成功して、ちょっと喜んでいるのが見えてしまいました。16日はまったく笑わないロットバルトでしたが、薄笑いを浮かべてオディールの耳元で囁くビュヨンの表情が、酔ってしまいそうになるくらい官能的でした。青二才なロットバルトなのですが、こんなに美しく生まれたのになぜ悪の道に走ってしまったのか、これまでの彼の人生を知りたくなるような、そんな秘密の過去を感じさせました。ビュヨンは口元がとてもきれいなのですが、よく見ていると唇をなめる癖があるようで、王子に愛を誓わせるシーンでも唇をペろっと舐めていました。緊張していたのでしょうか?ロットバルトの被り物をしている時でも、真っ白な肌に唇が見えていると、とても妖しくて魅惑的でした。最後に王子に片方の翼をもがれて、上手へと去っていく時に、もがれた翼を自分で持って去っていくのはちょっと可笑しかったです。ヴァリエーションの時にマントを外すと、プロポーションの美しさが際立ちます。オペラ座のロットバルトの衣装は、肩幅が広く、ウェストは絞ってあるので、立ち姿がとてもセクシーに見えます。黒い巻き毛、濃いまつげに飾られたグレーの瞳、白い肌に薔薇色の頬に加えてしっかりと筋肉のついた肩や胸、細いウェストと容姿は映画スターのようで、本当に麗しい。背中を向けて立っていることも多いのですが、腹に一物アリ、という背中の立ち姿すら美しい。ダークサイドの妖しい美しさを感じさせる彼のロットバルトはまた観たいです。

東京バレエ団メンバーについて追記。トロワは小出さんも長谷川さんも良かったけど、古川さんはもっと踊れる人なのではと思ってしまいました。小出さんはそろそろオデットデビューを期待したいところ。

道化の松下さん。マティアスと比べてはいけないと思うけど、褒められているのが意外。たしかに、ポリーナ白鳥の時のあまりににもひどい爪先は少し改善されていたけどまだまだ。シェネするときに膝の間が空き過ぎている、ピルエットで膝が曲がっているなど、大嶋さんや古川さんだったら絶対にやらないミスが散見。ただ速く回ったり高く跳んでいればいいわけではありません!爪先だって油断して緩んでいる時もありました。到底褒められる出来ではありません。

これはあくまでも雑感なので、余裕があればまたちゃんと書き直します。

東京バレエ団『白鳥の湖』(全4幕)
2007年8月18日(土)15:00開演 ゆうぽうと簡易保険ホール

オデット/オディール:ドロテ・ジルベール
ジークフリート王子:マニュエル・ルグリ
王妃:加茂律子
悪魔ロットバルト:ステファン・ビュヨン
道化:松下裕次

[第1幕]
家庭教師:野辺誠治
パ・ド・トロワ:小出領子、長谷川智佳子、古川和則
ワルツ(ソリスト):西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子、前川美智子
[第2幕/第4幕]
四羽の白鳥:佐伯知香、森志織、福田ゆかり、阪井麻美
三羽の白鳥:西村真由美、高木綾、奈良春夏
[第3幕]
司会者:野辺誠治
チャルダッシュ
(第1ソリスト):乾友子、大嶋正樹
(第2ソリスト):森志織、福田ゆかり、高橋竜太、氷室友
ナポリ(ソリスト):高村順子、松下裕次
マズルカ(ソリスト):田中結子、坂井直子、中島周、横内国弘
花嫁候補たち:西村真由美、佐伯知香、高木綾、浜野香織、前川美智子、吉川留衣
スペイン:井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲


終演後家でバレエ友達と、パリ・オペラ座の映像「MC14/22 "ceci est mon corps"」を観ました。ステファン・ビュヨンが出ているからです。振付はプレルジョカージュ、暴力的な作品ですが、美しいビュヨンや、フォヴォラン、ヴァラストロ、イゾアールなどのダンサーを堪能できます。詳しい感想は、過去のエントリをご参照ください。ゆうさんのSide B-alletによると、OpusArteからDVD化されるとのこと(同時収録はマリ・アニエス=ジロ主演の「メディアの夢」。米国での発売日は9月25日。 

OpusArteのサイトでは動画を見ることができます。
http://www.opusarte.com/pages/productVideo.asp?ProductID=207&ProductVariationID=254

Angelin Preljocaj: Le Songe De Medee & Mc14/22Angelin Preljocaj: Le Songe De Medee & Mc14/22
L a n z a ,   ? Z a h m a l

2007-09-25
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2007/08/18

ローザンヌ・ガラ2007

マチューの王子やステファンのロットバルトは観たいけど、どうしても上野さんのオデットは観たくないのと、オハッド・ナハリン振付の「マイナス16」が観たかったので、この公演を観に行くことに。

ところが、これ、なんと18時開演で会社勤めの人には無理な時間帯。事前に上演順が発表になっていなかったため、朝に青山劇場に問い合わせの電話をしたら「演目が多いので、全部はお知らせできません」というかなりひどい対応。現地に行っても、キャスト表は配っていないし、それどころか掲示もしていないので、パンフレットを買わないと結局プログラムの順番がわからなかった。

仕事の関係でやっぱり開演時間に行くのは無理で、オープニングと、吉山シャールルイ・アンドレさんを観ることができなかった。吉山さんは今年のローザンヌコンクールでも、コンテンポラリーが素晴らしかったのでとても残念。彼は8月から、ヒューストン・バレエIIに入団するとのこと。たまには日本で踊って欲しいなあ。


◆オープニング 鈴木・クラシック・バレエ・アカデミー「水上の音楽」「グラズノフ組曲」

◆吉山シャールルイ・アンドレ
「Rubrix」 Ch: Matthias Sperling


◆河野舞衣
「グラン・パ・クラシック」

今年のローザンヌコンクールでも大評判だった河野さんの「グラン・パ・クラシック」。改めて観てみて、やっぱりとても良かった。プロと遜色ない。きれいに引きあがった身体が美しい。ちょっと腕が細すぎるところは難かもしれないけど、技術的にとても安定している。河野さんは9月よりミュンヘン・バレエに入団するとのこと。


◆菊池あやこ(ヴィルツブルグ・バレエ団)/遅沢佑介(フリー)
「白鳥の湖 第3幕より黒鳥のパ・ド・ドゥ」
 Mus: P. Tchaikovsky Ch: M.Petipa

残念ながらこれはあまりよくなかった。遅沢さんはまあまあ悪くないけど、菊池さんが問題。ふにゃふにゃしていて、オディールの凛とした所や魔力がまるで感じられない。オディールのヴァリエーションは、グリゴローヴィッチ版が採用している、短調の曲にあわせての難しい振付のほう。ヴァリエーションはまずまずだったが、問題はやはりコーダ。最初から32回回る気が無かったようで、フェッテが始まるところも違うことをやっていて途中からようやくフェッテに入るけど16回も回っていなかったのでは?経歴などを見ていると、古典を踊ったのは選択ミスと思える。


◆木田真理子/児玉北斗(レ・グラン・バレエ・カナディアン)
「Territoire」 Ch: Shawn Hownsell

この演目、音楽がアルヴォ・ベルトで、なんとルグリガラで上演された「アベルはかつて・・・」と同じ曲を使っているのだ。男女二人の踊りではあるけど、雰囲気もなんとなく似ているもので、ドミニャックやステファン・ビュヨンの幻影がちらついて困った。照明が暗く、女性はショートパンツ着用。雰囲気的にはちょっとキリアンっぽく、二人とも、非常に表現力があって、静謐な世界観を伝えていて良いパフォーマンスだったと思う。動き一つとっても、とても美しい。しかしながら、これはダンサーのせいではないのだけど3日前に観たばかりの「アベルはかつて・・・」を思い出しちゃってちゃんと観られていない。


◆中村かおり/Lucien Postlewaite
(パシフィック・ノースウエスト・バレエ)
「Kaori & Lucien」 Mus: Ch: Olivier Wevers

この二人のために振付けられた作品という。ドガの絵画にインスピレーションを受けたということで、茶色のビスチェ&眺めのチュールという中村さんの衣装は、ドガの絵に出てくる踊り子を思わせる。中村さんを生で見るのは初めてだけど、非常に個性が強く自分の世界を確立している感じ。テクニックも表現力も高い。ちょっと歯が目立ったのが気になったけど、アーティスティックでとても素敵だと思った。


◆高部尚子/(谷桃子バレエ団)
「ロミオとジュリエット」 Mus: S.Prokofiev Ch: 坂本登喜彦

バルコニーなどの装置は一切無しで、シーンはバルコニーシーン。リフトも少しあって、振付の雰囲気は割りとマクミラン版に似ている。最後ロミオが去ってしまった後、ジュリエットは床の上に横たわり、亡くなった人のように手を身体の上に重ねている。高部さんのジュリエットが可憐で柔らかいのに驚く。


◆崔由姫/佐々木陽平(英国ロイヤルバレエ団)
「くるみ割り人形」第2幕よりパ・ド・ドゥ
 Mus: P. Tchaikovsky Ch: Peter Wright

崔由姫さん、金平糖の精の衣装がとってもよく似合っていて、笑顔がキラキラと可愛らしいこと!ほっそりとしていて手脚が長く、愛らしい顔は非常に小さくて恵まれたプロポーション。まさにおとぎ話の中のお姫様。上半身が柔らかくきれいで、音に乗って気持ち良さそう。ヴァリエーションのところでもう少し、というところはあったけど今後への期待は大。佐々木さん、思ったよりかっこよくて(失礼)笑顔が素敵。技術的に安定しておりサポートもうまい。彼のヴァリエーションは正確で、とても安心して観ていられた。


◆中村祥子/Ronald Savkovic(ベルリン国立バレエ団)
「Transparente」 Ch: Ronald Savkovic

中村祥子さんの美しいことといったら、もう。長身に真っ赤なビスチェドレス。足元はバレエシューズ。ものすごい目力とメリハリの利いた、スタイリッシュかつ色香あふれ、ドラマティックな動き。柔らかい背中、強靭なテクニック。二人が並んで椅子に座っているところから、最後はまた二人で並んで座っているという構成。あまりにも祥子さんが素敵かつ表現力豊かなので、この作品を振付けたというサフコヴィッチはほとんど観なかった。音楽はファドに、ベルリン国立バレエのソリストであるアルシャク・ガルミヤンが現代的なリズムを付け加えたもの。私は歌モノをバレエに使うのはあまり好きではないけど、この作品に関しては、エキゾチックさを上手く付け加えており、合っていたと思う。圧巻。

◆貞松・浜田バレエ団
「DANCE」(オハッド・ナハリン振付「Minus 16」より)
※平成17年度文化庁芸術祭舞踊部門大賞受賞作品
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振付:オハッド・ナハリン
振付指導:稲尾 芳文
音楽:L・アルメイダ他
衣裳・照明:オハッド・ナハリン
出演:上村未香/正木志保/山口益加/竹中優花/吉田朱里
佐々木優希/武用宜子/瀬島五月/安原梨乃/大江陽子
廣岡奈美/半井聡子/谷村さやか/角 洋子/小松原千佳
福田咲希/川村康二

今回一番楽しみにしていた作品。「Minus16」は、NDTIIがさいたまで上演したのがNHKで放映され、その録画を観たのだけどあまりの面白さにすっかりハマった。これが東京で上演されると聞いて絶対に観なくちゃと思ったのだ。若干アレンジを付け加えていた。

NDTIIが上演した時には、メンバーは男女混合だったのだけど、今回ユニークなことに一人を除いて全員が女性ダンサー。作品そのものは休憩時間から始まっている。そろそろ休憩も終わりかな、と席に向かおうとすると、客電も落ちていないし、観客たちが席に向かって歩いているような状態なのに、一人の女性ダンサー(瀬島五月さん)が踊っている。それも、ブルース・ブラザーズのような黒いスーツを着ていて、一瞬男か女かわからない感じ。この踊りの振付がとても奇妙で、下半身を低くしてちょっとがに股気味、肩をすぼめ、手は前にして左右にゆらゆらと身体を動かす。時には痙攣するようなコミカルな動きもあって目が離せない。インプロヴィゼーションのようなソロを5分くらい一人で踊っていると、舞台の後ろに次から次へと、同じ服装のダンサーたちが登場し(合計15人)、めいめいがばらばらの動きだけど同じように奇妙でコミカルな、関節をカクカクさせたような踊りを見せる。ものすごい迫力。普段彼女たちがクラシックバレエを踊っているとは思えない、大胆な動きから圧倒的なエネルギーが放出されている。幕が下りる。降りた幕の下から、瀬島さんとは違う女性ダンサーがひょっこりと顔を出し、台詞を言う(台詞の内容は失念)。幕が下りると、大音響の音楽。続いて、ヘブライ語と、それを日本語に訳した「狂気と正気を分ける細い線・・・疲労と優雅さの共存」の朗読があり、そしてユダヤ教の「過越しの祭り」(※乗越たかおさんの「コンテンポラリーダンス徹底ガイド」参照)で歌う神に捧げる数え歌がかかる。再び幕が開くと、舞台上には半円状に椅子が並べられ、先ほどの黒いスーツに帽子をかぶった女性ダンサーたち15人が座っている。彼女たちは一緒に歌をいたいながら、パーカッションのリズムに合わせてウェーブのように一人ずつ立ち上がり、左側の人と同じ振りをしていく。左から右に踊りは波及している。一番右側にいる人だけ(この人は男性)が地面にダイブ。このウェーブが何回も繰り返されるが、振付はどんどん複雑になり、一人ずつ背中を反らせてたり手足をぶらぶらさせたり、椅子の上に立ったり。そして一巡ごとに帽子を脱いで投げ、靴を脱いで投げ、上着を脱ぎ、パンツを脱ぎ、タンクトップとショートパンツになる。脱いだ靴や服は中央にうずたかく積まれている。この一連の動きが強烈に面白い!私は映像ですでに見ていたけど、初めて観る人だったらとても新鮮に思えるんじゃないだろうか。タンクトップとショートパンツになると、若い女性たちだな、とわかってくる。

タンクトップ姿になったダンサーたち4人が少し踊ったかと思うと、今度は、再びスーツを身に着けたダンサーたちが舞台を降り、観客を一人ずつ連れてきて舞台に上げる。ディーン・マーティンの「Sway」に合わせて、ダンサーと観客が踊る。思いっきり関節を曲げ、内股にして腰を振って大胆にコミカルに踊るダンサーたちと、戸惑いながらも一緒に踊る観客。時々ダンサーがごろんと床に転がることも。中にはおば様なのにとても踊りが達者な人がいたり、ノリノリな人もいたりして楽しい。客席からは手拍子。ひとしきり踊った後、観客は客席に帰っていくが、一人だけ中央にノリの良いおば様が残り、キメてくれて最高。

それから、この「ブルース・ブラザーズ」のようなスーツの格好でプリエやアラベスクなどクラシックバレエのレッスンのような動きをダンサーたちが見せたかと思うと、再び激しい音楽にあわせて思い思いに、自由奔放に踊る。上着を脱いで縄跳びの縄のようにする人。女の子なのにトゥールザンレールを決めたり、側転、バック転、カンフーキック、ジュッテ、とにかくパワフルで踊ることの楽しさがいっぱい伝わってくる。カーテンコールには、今回の振付指導をした稲尾芳文さん(バットシェバ舞踊団)も登場したが、彼も交えてパワフルなダンスが今一度。そしてカーテンが下りたと思っても、また上がってダンサーたちは踊りを続けている。ダンスの楽しさ、自由さ、奔放さ、エネルギーが伝わってきて、固定概念を破壊するような、本当に楽しい舞台だった。NDTIIの上演ではダンサーたちが一人一人自己紹介するというのもあったんだけど、それを割愛したのは正解。

カーテンコールでは出演者が全員集合。貞松・浜田バレエ団のメンバーはみんな、また面白いポーズを取る。帽子を取ると、みんな若い女の子の顔をしていてちょっと驚く。

「DANCE」が観られただけでも元が取れたのに、中村祥子さんや中村かおりさん、崔由姫さんなど素晴らしいダンサーを観ることができて満足度は高かった。前回の公演はNHKで放映されたんだけど、今回はなしなのだろうか。

2007/08/17

8/16ルグリと輝ける仲間たち 全幕特別プロ 『白鳥の湖』ガラ (簡単な感想)

遅くなってしまったので、本当に簡単に。

おいしいところはぜーんぶマティアス・エイマンの道化に持って行かれました。Aプロ1回、Bプロ3回観て、すごいテクニシャンだと思っていたけど、この道化は本当にすごかった。主役は道化?と思っちゃうほど。開脚ジャンプ、トゥール・ザン・レール、アントルラッセなどの跳躍がすご~く高いだけではなく、背中がものすごく柔らかくて、ジュッテ・アントルラッセで高く跳んでいる間にもびっくりするくらい背中が反って、脚が頭の上まで伸びている。グランドピルエットでは、しっかりとスポッティングしながらすごい速さで、ドゥミポアントでまわるまわる~演奏のほうを長くアレンジさせて延々と回り続け、最後は6回転のピルエットで超高速で止まれなくなっちゃったのはご愛嬌だけど、そのミスを演技でうまくカバー。ものすご~い拍手でショーストッパーと化していました。そうそう、この道化ちゃん、愛嬌がものすごくあって、観ていると思わずつられてニコニコしちゃう。舞台上にいる時には常に小芝居でこれがまた達者なこと。ロットバルトが出てくると本気で怖がったり、マチルドに色気を振りまいたり、ちょっとオカマっぽいけどめっちゃ可愛い!キャラクター作りもしっかりとしている。テクニック一辺倒ではなくて、優雅さもあるところがさすがオペラ座。いやはや、本当に彼は凄い!次に来た時には、最低でもプルミエには昇格しているんじゃないかな?背が低いので役柄が限られそうなのがちょっと心配。ちゃんと王子様も踊らせてあげて欲しいなと思いました。

みなさんが心配しているはずであろうロットバルトの3幕の衣装、アップリケではなかったし、あのひどい鉄兜でもなくて、オペラ座のヌレエフ版の衣装でした。見た瞬間に安堵。そしてその黒衣を着てマントを翻し颯爽と登場するステファン・ビュヨンが倒錯的なまでに美しい。カール・パケットの冷たい美しさとはまた別の、ばら色の頬が痛々しいまでの暗い美しさだった。邪悪さは断然カールだし、踊りもカールの方が上手いと思う。でも、これだけの純粋そうな美青年が一度も笑いを見せずに悪となって登場し、黒衣に長いマントで佇んでいるだけでも、もううっとり。黒鳥のくだりだけはヌレエフ版となっていて、ロットバルトのソロもしっかりある。ロットバルトがアッサンブレで着地する時の跳躍はきれいだし、マントの翻し方も様になっている(たまに失敗)。そして、オディールの耳元で囁いている様子がとてもセクシー。実はこれまた麗しいマチュー王子よりもロットバルトの方を真剣に見ちゃった。惜しむらくは、3幕のソロの後半、トゥールザンレール2連発(2回目はプレパレーションなし)x2回の着地が不安定だったこと。

パドトロワのアクセル君はサポートがまだ下手だったり、ぐらっとすることはあるものの、伸びやかな腕の使い方、身体のラインや深いプリエがとても柔らかくてきれい。気持ちいい踊りをする人だ。マチルドは通常のパ・ド・トロワの部分にひねった難しい跳躍を入れたりして、それを平然と踊っていた。可愛い顔してテクニックが強いのだ。シャルリーヌもなかなか良い。今回のガラで、舞台を重ねるたびに良くなっている。

オドリック王子は、演技があまり王子っぽくないし、首が前についていて猫背に見えるという欠点があるけど、長身で脚が長く美しく、お顔もハンサム。そして、ヌレエフ版特有の1幕終わりのソロはとてもよかった。体型は恵まれているから、アラベスクさせると実にきれいなラインを作るし、リハーサルで一生懸命練習していたマネージュも良かった。ホント、この人は姿勢の矯正さえしてくれれば!

ミリアム・ウルド=ブラムの白鳥は、ルグリ先生の指導が入ることが多かったけど、けっこう私の好みのタイプ。白鳥のお姫様然とした、気高い雰囲気を作るのに成功していたし、柔らかくクラシックな踊りをする可愛らしい白鳥だった。アームスの使い方も、腕をきれいに波打たせていたし、2幕の終わりでロットバルトが登場し、上手にはけていくときの、魔法にかかったように魂が消えた状態を上手に表現していたと思う。最初のマイムも丁寧でよかった。これからオペラ座でもオデットを踊らせてもらえるようになるといいね。

ドロテの黒鳥は艶やかで目力も強く、魅力的だった。とはいっても、まだまだ視線を引き寄せるだけのオーラは不足していた。フェッテで失敗。前半は3回のうち1回はダブルで回っていて、好調のように思えたのに、24回回ったところで止めちゃった。いったいなのがあったのかな。スタミナ切れ?可愛さのあるセクシーさが良かったんだけど、さすがに失敗には本人も少しショックを受けているように見えてしまった。

マチューの王子はやっぱり超~麗しくて、さすがの輝きはあった。お口をぽかんと開けていてちょっと馬鹿っぽいところもあるけど、ガラだから仕方ないところはあるとはいえ演技もまだまだだけど、王子はばか者だからいいのかな?彼は本当にテクニックはうまくなったなと実感。ミスも無かったし、伸びやかな動きが王子様そのものでエレガント。美しいつま先。何かが足りないんだけど。

というわけで、やはり王子の中の王子を演じられていたのがルグリ様。一人、完全に違うステージにいるのがわかってしまう。走り方ひとつとっても王子だし、サポートはシルクのようにスムーズで見事。演技は情熱的で心を打つものだったし、テクニックも完璧だし、若いものには負けていないどころか余裕でずば抜けている。王子の演技ってこういうものなんだなと。マチューも王子だけど、まだまだルグリ先生に教えてもらうべきことがいっぱいありそうに思えた。

それにしても、東京バレエ団版の2幕の振付は何とかならないものか。オデットと王子の踊りが観たいのに、コール・ドが邪魔。軍隊というかマスゲームのようなフォーメーションが何よりもイヤ。せっかくコール・ドはよく揃ってるし腕なども美しいのに。やはり軍隊の行進のような大きな足音も何とかして欲しいものだった。それと、3幕のセットがあまりにもお粗末で、いまどき、発表会のほうがマシな装置を使っていると思ってしまった。マティアスが着用した道化の衣装もあまりにも気の毒な感じ。プロダクションと振付の改定、切に望みます。

東京バレエ団では、西村真由美さんの大きな白鳥や花嫁候補が素晴らしかった。ふわっとして柔らかい踊りが優雅。彼女なら、きっととても美しく叙情的なオデットを踊れる気がする。大嶋さんのチャルダッシュは相変わらず色っぽい。それともちろん、井脇さんのスペイン!美しくも邪悪で素敵だった。アバニコ(扇子)が地面につくほど大きく反った背中。最近チームスペインに加わった奈良さんも背中が柔らかく、やはりアバニコが地面についていた。大柄で艶やかな美人がふたり揃っていると、この踊りの迫力も増す。木村さんが今回チームスペインに参加していないのが少々物足りない。

あとでまたちゃんと書きます(こればっかりですみません)

【第1幕】
ジークフリート王子:オドリック・ベザール
王妃:加茂律子
道化:マチアス・エイマン
家庭教師:野辺誠治
パ・ド・トロワ:マチルド・フルステー、シャルリーヌ・ジザンダネ、アクセル・イボ
ワルツ(ソリスト):西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子、前川美智子

【第2幕/第4幕】
オデット:ミリアム・ウルド=ブラーム
ジークフリート王子:マニュエル・ルグリ
悪魔ロットバルト:ステファン・ビュヨン
四羽の白鳥:佐伯知香、森志織、福田ゆかり、阪井麻美
三羽の白鳥:西村真由美、高木綾、奈良春夏

【第3幕】
オディール:ドロテ・ジルベール
ジークフリート王子:マチュー・ガニオ
悪魔ロットバルト:ステファン・ビュヨン
王妃:加茂律子
道化:マチアス・エイマン
司会者:野辺誠治
チャルダッシュ(第1ソリスト):長谷川智佳子、大嶋正樹
(第2ソリスト):森志織、福田ゆかり、高橋竜太、氷室友
ナポリ(ソリスト):高村順子、マチアス・エイマン
マズルカ(ソリスト):田中結子、坂井直子、中島周、横内国弘
花嫁候補たち:小出領子、西村真由美、乾友子、佐伯知香、高木綾、吉川留衣
スペイン:井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲

2007/08/14

8/14 毎日新聞夕刊にルグリのインタビュー

普段あまりバレエの記事が載らない(公演評は見たことがない)毎日新聞の8月14日付夕刊に、マニュエル・ルグリのインタビューが載っていました。

この「ルグリと輝ける仲間たち」については、若手の育成を眼目としていることもあり、「けいこよりも本番、初日より千秋楽。後輩が伸びる姿を見ると苦労も報われます」とのこと。

すごいなあ、と思うのが「最も育ったのは、私自身かもしれません」との言葉。立派な人ほど謙虚なのですね。出演者の決定から演目、指導、事務作業と一人で何役をこなしてきたそう。「この重責を果たすことが私を高めてくれました」

嬉しいのが「座長としての活動には一旦幕を引くが、また新たな形で皆さんに会える日を楽しみにしています」という発言。まだまだ踊ることに対しての意欲は十分のようです。

とりあえずは16日のガラと18日の「白鳥の湖」が楽しみです。

8/12 ルグリと輝ける仲間たち レッスン見学

というわけで、今日は当日立ち見券でBプロをまた観てしまいました(笑)。ゆうぽうとの立ち見は、視界が開けて非常に見やすくて良かったです。「さすらう若者の歌」はこれくらいの距離で観た方が却って良かったというのがわかりました。尻上がりにみんな良くなっていって、本当に良い公演でしたね。最後にはルグリからのメッセージボードが下がり、トリコロールの紙テープが舞っていました。カーテンコールもいつまでも続くような感じ。7日連続公演、お疲れ様でした!感想はまた後ほど。

さて、12日のレッスン見学会、ごくごく簡単な報告です。

ストレッチ→バーレッスン→センター(アダージオ、アンシェヌマン、ヴァリエーション)という流れです。バーレッスンは、私たちが教室で習うのと基本的には同じパターン。わりと好きなタイミングで自由にやっていた。演奏は生ピアノだけど、ピアノは舞台袖にあって見えず。当たり前だけど、本当にみんな美しい。特に女子はみんな脚が高く上がること。センターの途中で、女子はポアントに履き替えて、フェッテなどの練習をしたりしていました。また、ルグリ先生にいろいろと相談したりする人や、まったり休む人も。男性ダンサーは、一分丈パンツで素敵なおみあしを露出している人多し。

というわけで、ダンサー別に簡単なコメントです。

●ルグリ
黒いパンツだったのを、途中で脱いで赤いアディダスのジャージに水色のトップス。途中でジャージを捲り上げる。腕立て伏せをする姿もエレガントだし、プリエひとつとっても、とても柔らかく美しい。

●ペッシュ
今回一番の不思議ちゃん。フードのついたパーカーを着用し、脱いだり着たり。フードを頭にかぶってたりしている姿がかなり可愛かった。エレオノーラと仲良しのようで、センターの時には上手でエレとおしゃべり。ついでに、膝枕もしてもらっていた!
レッスンが終わり、レベランスをした後、一人手を振りながら観客席に向かって満面の笑みでおどけながら舞台を横切っていました。ひょうきんな方です。

●エレオノーラ
ジャージの上にスカート上のものを着用。上はタンクトップ。

●マチュー
DANZAのグレーのTシャツ。観客席に向かってニコニコと笑みを絶やさないで感じが良い。やはりプリエなどが人一倍エレガント。アクセルと仲が良さそうで、シャルリーヌと3人、一緒におしゃべりをしていた。前日にレッスンを見た人の話によると、前日着ていたTシャツと、ペッシュが今日着ていたTシャツは同じだったらしい!

●アクセル
とても身体が柔らかく、きれいな踊りをする人。彼はうまくすれば伸びるのではないかしら。

●オドリック
白いヘアバンドを頭に巻いていた。後半は、「ビフォア・ナイト・フォールズ」のマネージュやトゥールザンレールの練習もしていたけど、女の子組にまじってアダージオも踊っていた。かなり練習熱心。マネージュはとても豪快。

●マチルド
練習熱心といえばこの人。中央に陣取ってひたすら練習、練習。男子に混じってのピルエットは3回転、4回転は当たり前。後半はフェッテの練習を2回。2回目は全部ダブルで回ってみる。エシャッペもとても上手。小柄で華奢だし、すっぴんだと子供みたいにかわいい。

●マティアス
途中、片足だけ黒いレッグウォーマーで覆っていた。キティちゃんのTシャツ(笑)アントルシャ・シスの練習では人一倍高く跳んでいるし、トゥール・ザン・レールもすごい。ドリーブ組曲の、あの逆回転マネージュ(時計と反対に回りながら、右足からのアンドゥオール回転)も練習していた。

●ステファン・ビュヨン
同じくアントルシャ・シスが高くて美しい。トゥール・ザン・レールも!ピルエット・アンドォールもなんだか柔らかくてエレガント。

●シャルリーヌ
マチルドと同じく練習熱心で男子に混じって踊る。フェッテの練習を一生懸命やっている。

●ドロテ
パッチワークのような色鮮やかなレッグウォーマーが可愛い。しかも、ジャン・マリー・ディデールと柄違いのお揃い。なんでも、これはミカエル・ドナールの手編みによるものとのこと。途中でそれを脱ぐと、「ドニセッティ・パ・ド・ドゥ」の時にはいていたような、足首までの黒タイツに、
アラベスクの美しさは特筆もの。そして、遠目で見るすっぴんの彼女は本当にモニクに似ている。

●ローラ・エケ
バーレッスンではとても美しかったけど、身体が先に出来上がったのか、センターでは早々にいなくなってしまった。

●マルク・モロー
白いヘアバンドに一分丈パンツ。女子に混じったり、ソロでアッサンブレなどのアンシェヌマンの練習。

●ミリアム
黒いパーカーにスカート、小柄で可愛い。やはり練習熱心。アラベスクが柔らかくとてもキレイ。この人は鳩胸なのね。

●グレゴリー
牛のマーク(お肉の看板)のTシャツがかわいい。

●メラニー
途中でタランテラの練習をしていて、ルグリさんにアドバイスをもらっていた。

●ローラン・ノヴィ
バレエマスターで、バーレッスンやセンターの順番の指示。いろいろとアドバイスも。ノースリーブから出ている二の腕が素敵。

●ジャン・マリー・ディディエール
現役の人といっても通るくらいほっそりとして美しいスタイル。バーレッスンはダンサーと一緒にフルメニューを行っていた。

12時半スタートで終了は1時35分。最後にみんながレベランスをすると、拍手が起こり、緞帳が下りた。近くでランチを食べに行ったら、2部のみに出演するダンサーが入ってきてちょっと驚く。

私のようなへなちょこ大人バレエ組が見ても面白かったので、本格的にバレエに取り組んでいる人だったらすごく勉強になるのではと思う。こういう機会がまたあればいいな。

今日のおまけ:ティエリー・マランダンの「牧神の午後」の動画(バレエ・ビアリッツのサイトより)
http://www.balletbiarritz.com/gb/0306faune.html
ダイジェストですが雰囲気は伝わると思う。


2007/08/13

更新情報、オーストラリア・バレエネタほか

「ルグリと輝ける仲間たち」のBプロも今日までですね。猛暑の中、7日間連続公演のダンサーの皆様はお疲れ様です。明日、あさっては休めるといいですね。
観る側にとっても、連日35度を超える暑さで体力を使うと思われます。皆様、お体には気をつけて。

というわけで、私も全然舞台のレポート等追いついておりません。昨日のルグリガラの前のリハーサル見学は大変面白かったです。こういう機会、これからもあるといいな。9月にマラーホフの「ジゼル」公開リハーサルというのはあるのですが、東京バレエ団の「ラ・シルフィード」のチケットを買わなかったために、これは観られません。残念。

更新情報として、「エトワール達の花束」Bプロ、「椿姫」の感想だけまだ書けていなかったのを、なんとか書き終わりました。また、9月21日(金)NHK芸術劇場(夜22時45分~)において、「エトワール達の花束」のダイジェスト版の放映があるそうです。まだ詳細はサイトでは明らかになっていませんが、楽しみですね。

*************

最近読んだ記事で面白かったのは、The Australianというオーストラリアの新聞の、オーストラリア・バレエの来日公演についての記事。タイトルも、「AB(Australian Ballet) wows dance-mad Tokyo」。まあ、話半分で読んだ方がいいとは思いますが、この来日公演、バレエ団にとっては大成功だったとのことです。特に面白いな、と思ったのは、かのNBS佐々木忠次氏と、ダンマガ編集長三浦雅士氏のコメントがあること。三浦氏は今回の公演、特に「白鳥の湖」を大絶賛し、また佐々木氏は、大使館のパーティで、3年後にはまた招聘したいとのこと。実際、バレエ団側も今から2010年の再来日に向けて交渉に入っているとのことです。

ちょっと笑っちゃったのが、佐々木氏を形容するのに、東京バレエ団に隣接された自宅には、彼が招聘したダンサーやオペラ歌手の写真が多く飾られ、また衣装もたくさん展示されていると書いてあること。一度そのご自宅を拝見させていただきたいものですよね。きっとすごいお宝がありそうです。

また、公演会場で配られる、数え切れないほど多くのチラシを元に、東京でこの夏、非常に多くの来日バレエ公演があることも書いてあります。

オーストラリア・バレエのサイトでも、今回の東京公演の成功についての記事があります。このように、日本での反響を好意的に取り上げてくれるのはうれしいですよね。

*************

まだ全然感想は書けていませんが、オーストラリア・バレエの「白鳥の湖」「眠れる森の美女」は本当に面白かったです。で、オーストラリア・バレエのサイトでは、「白鳥の湖」の2005年のイギリスツアーを追ったドキュメンタリー「On The Wings of A Swan」が販売されているのですね。注文したところ、早速届きました。PALで2枚組みです。まだ観る時間がないのですが、楽しみです。

また、オーストラリア・バレエ情報としては、来日公演でも大活躍した日本人シニア・アーティストの藤野暢央さんが、12月15日、16日の井上バレエ団「くるみ割り人形」のゲスト、王子役で出演されるそうです。これも楽しみですね。

2007/08/12

「愛と喝采の日々」今なら1000円

飄々としてポジティブな人柄がにじみ出ていてとっても面白い、小林十市さんのブログを愛読しているのですが、その中で知ったこと。

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以前この作品のレビューも書いていますが、何しろ全盛期のミハイル・バリシニコフの「海賊」や「ロミオとジュリエット」「ジゼル」などが観られて、バレエファンには見逃せない作品です。お話そのものはちょっと笑っちゃうところもありますが。

1000円なら絶対に買って損はありません。ミーシャがアイドルの十市さんならずとも、まだの方はぜひ。

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8/11 ルグリと輝ける仲間達Bプロ

明日も観に行くので(明日は公開リハーサルも見学)、今日の感想はざっと。
全体的に、Aプロより内容は充実していて楽しめたと思う。しかしこれを見るにつけ、オペラ座は今やすっかりコンテンポラリー・カンパニーなのね。コンテンポラリーの方が出来が良いダンサーが多い気がする。気に入ったのは、予想外のことだったけど、第二部の2作品。(もちろん「オネーギン」が今日も素晴らしかったのは言うまでない)

2007年8月11日(土)15:00開演 
ゆうぽうと簡易保険ホール

――第1部――
「タランテラ」
メラニー・ユレル アクセル・イボ

トップバッターの二人はとても元気がよく、ぴちぴちした踊りでよかったと思う。よく男前と形容されるメラニー・ユレルだけどやっぱり男前(笑)。テクニックは強いと思うので、こういう音に合わせてはじけるような踊りはとてもよく似合っている。逆にたおやかさはあまりないけど、それは彼女の個性ってことで。アクセル君も、Aプロよりずいぶんしっかりとしていた。タンバリンを叩く音がびじっとしていて、いい音だった。客席を暖めるにはいい演目。

「アベルはかつて…」
グレゴリー・ドミニャック ステファン・ビュヨン

男性二人のパ・ド・ドゥ。前回のルグリガラでも観たはずなのだけどすっかり忘れていた。聖書のカインとアベルの話を下敷きにしたもので、今回は出演していないマロリー・ゴディオンの作品。上半身裸で白いゆったりとした長いパンツを穿いた二人。ユニゾンで踊ったり、アリメントリーに踊ったり。親しげな二人の間にいつしか亀裂が。シーツのような白い布が登場し、それが大きい方と小さい方の二つに引き裂かれる。そして、カインはアベルを(シーツで絞めて)殺してしまう。
なんといっていいのか、形容するのは難しいけど美しい作品だった。音楽もとても素敵。

「ドニゼッティ - パ・ド・ドゥ」(初演)
ドロテ・ジルベール マチュー・ガニオ

虹色といっていいくらいものすごく派手な、同じ柄の衣装の二人。ドロテは、足首までの黒いタイツにチュチュ。古典の技巧がこれでもかっていうくらい盛り込まれていた。ドロテのフェッテは途中から軸足を変えて方向転換するし、マチューのマネージュも、途中にパ・ド・シャみたいに脚を曲げたトゥール・ザン・レールが入っている。おそろしく高度なテクニックがてんこもり。ドロテは、ジュッテで舞台を横切る時にすごく高く跳んでいて、足が強いんだなって思う。マチューは毎度のことながら、つま先と、5番の入り方は本当にきれい。3年前のことを思うと成長振りは本当に目覚しい。にもかかわらず少し物足りないのはなぜなんだろう。アクが足りないのかなあ。

「オネーギン」
モニク・ルディエール マニュエル・ルグリ

Aプロ初日も素晴らしかったけど、今日はもっとぐっと来た。Aプロは上手だったのでモニクの方、今日は下手だったので(祭典A席なので、左右に振り分けられる)、ルグリを中心に観ていたのだけど、それでもモニクさまの演技には本当に胸が詰まる。揺れ動く感情と毅然とした決意。しかし、それでもオネーギンを追い出した後で彼の後を追い、ふらふらと歩みだして顔を覆い、悲しみと少女時代との訣別を見せた気高い表情には涙するしかない。そして改めて見ると、技術的にも未だ素晴らしく、一センチ単位で動きが計算されているし、背中も柔らかければ、足先も美しい。このパ・ド・ドゥが面白いのは、前半はオネーギンとタチアーナは決して視線を交わさないことであり、パ・ド・ドゥでも、背中を向けたタチアーナとそれを追うオネーギンのやり取りになっていることだ。彼に心を決して許してはならないというタチアーナの思い、それが揺らぐところがドラマというわけである。そしてタチアーナに背中を向けられながらも彼女の足元に懸命にすがりつくルグリ。オネーギンのプライド、後悔、熱情、情けなさを感じさせ、オネーギンという人物を実在の人のように立体的に生きていた。

【休 憩】
――第2部――
「ビフォア・ナイトフォール」
第1パ・ド・ドゥ: メラニー・ユレル、マチアス・エイマン
第2パ・ド・ドゥ: エレオノーラ・アバニャート、ステファン・ビュヨン
第3パ・ド・ドゥ: ドロテ・ジルベール、オドリック・ベザール
3組のカップル: マチルド・フルステー、ローラ・エッケ、シャルリーヌ・ジザンダネ、
アクセル・イボ、グレゴリー・ドミニャック、マルク・モロー

退屈な作品だったらどうしよう、と思ったけどこれが案外面白かった。とともに、現在のオペラ座はコンテンポラリー的な作品の方がしっくり来ていると思ってしまった。Aプロでいまひとつだったエレオノーラも、この作品では輝いているし現代的な魅力を発揮できている。暗い背景の中、墨色のグラデーションの長いキャミソールドレスの女性ダンサーたち。音楽もドラマティック。ひそかに贔屓のアクセル君がのびのび踊っていて良かった。それからやっぱり際立っているのがドロテ。彼女は遅かれ早かれ、必ずエトワールになるだろうなって確信した。

「牧神の午後」
バンジャマン・ペッシュ

どんな作品になるのか一抹の不安はあった。でも、この作品を振付けたティエリー・マランダンのバレエ・ビアリッツは観に行ったことがあって、とても面白かったから大丈夫かな、と。で、蓋を開けてみたらこれがすごく面白い!白いブリーフ一丁のペッシュが下手にあるベッドの上に横たわり、自分の腕をぺろりと舐めたり、腰を動かしたり、かなりセクシーな動きをする。ベッドの上を離れて、ニジンスキーの「牧神の午後」のような腕の動きをさせたり、走り回ったり。ベッドを離れてから気がついたのだが、それはベッドではなく、巨大なティッシュボックスなのだった!そして舞台の2箇所に、くしゅくしゅした泡立てネットのようなものが置いてあるんだけど、そこに頭を埋めたりする。ティッシュボックスからシーツのように大きなティッシュペーパーを引き出して、その上に横たわる。それが、ニジンスキー版「牧神」のニンフのヴェールと同じようなアイテムってわけかな。最後には、またティッシュボックスの上にまたがったかと思うと、ティッシュの取り出し口の中に頭を突っ込み、そしてその穴に落ちていく。落ちていくときに、青く光るティッシュボックス!かなりユーモラスで、エッチで、斬新。私は結構気に入った。

追記:いつも貴重な情報と提供してくださる「ロンドン発バレエ・ブログ」様によると、この作品、ローラン・イレール様!も踊られたそうです。観てみたいですね。目のやり場に困りそうですが(笑)

【休 憩】
――第3部――
「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
ローラ・エッケ オドリック・ベザール

ローラ・エケはかなり気品のある踊り方をする人で、長い首や均整の取れたスタイルは美しいのだけど、踊りそのものはあまり印象に残らず。それはオドリックも同じ。ロパートキナとか、ヴィシニョーワとか、ヘザー・ユルゲンセンとか、素晴らしい「ダイヤモンド」を観ているから、いくら比較しちゃいけないと思っても気の毒。

「ドリーブ組曲」
ミリアム・ウルド=ブラーム マチアス・エイマン

個人的には、Aプロのジョゼ&アニエスより気に入った。ミリアムは小柄なので、アニエスと同じ衣装とは思えないくらい、チュチュが長く見えた。若い二人にはとても似合っていて、アニエス&ジョゼとは別の魅力を感じた。ミリアムの踊りのタイプはアニエスのクールさとは打って変わって、柔らかく暖かく愛らしかった。そしてマティアス・エイマン!最初のヴァリエーションは本当にすごかった。彼の跳躍力は本当にすごいし、回転もお見事。マティアスはまさにヴィルトゥオーゾ的なクラシックダンサーだ。この演目は、逆回転マネージュが特徴的なのだけど、さすがにそれはちょっと難しかったようで、かなり慎重に踊っていてスタミナも失速した感じ。ジョゼは左脚からのアン・デ・ダンで踊っていたけど、マティアスは右脚からだった。

「さすらう若者の歌」
ローラン・イレール マニュエル・ルグリ

イレールは引退してあまり踊っていないというわりには、ピルエットもキレイだし、トゥール・ザン・レールも決まっていた。彼は今でも本当に美しいダンサーだ。でもベジャールが苦手な私にはかなりつらい演目だった。この半分の長さだったら、楽しめたと思うんだけど振付が単調な割に長い演目なのだ。それでも、ラスト、舞台奥に歩きながら正面を向いて観客の方へ目をやり、腕を伸ばしたイレールの表情は素晴らしく、これでお別れになってしまうのかなと思うと涙が出た。

カーテンコールでルグリ、イレール、モニクの偉大なる3人が並んだ様子は圧巻。歴史の一ページを見るような思いがした。

2007/08/11

8/6「エトワール達の花束」Bプロ―さようなら、フェリ

■エトワール達の花束 8月6日(月)Bプロ<東京文化会館>

泣いても笑っても、フェリの公演はこれで最後。先週のAプロでは、これでおしまいということが信じられず、ただただ目の前で繰り広げられる極上の世界に酔いしれ、時には涙もしたのだけど、本当にこの日が正真正銘の最後になってしまった。

「シンデレラ物語」ノイマイヤー/プロコフィエフ 

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

実はこの演目、7月にハンブルクで観たばかりである。そのときのキャストは、ヘザー・ユルゲンセンとイヴァン・ウルバン。二人とも良かったけど、ドイツに到着した当日で時差ぼけもあり、実のところあまりぴんと来ない作品であった。ところが、今回観たパ・ド・ドゥは素晴らしかった。最初に登場するのはサーシャ。オレンジを玩びながら、シンデレラを待っている。白いシンプルなドレスのシンデレラ、愛らしいシルヴィアが入ってくるが、すぐに二人で踊るわけではなく、シンデレラはちょっと躊躇する。こんな幸せが私に与えられていいの?って。ひとりずつ、ばらばらに踊っていた二人がついに、一緒に踊り始めた時のきらめく幸福感。流麗で情感溢れる踊り。サーシャの誠実さを反映したような、なめらかで愛情溢れるリフト。どこまでも端正なムーヴメント。この二人で、もう一度「シンデレラ・ストーリー」全幕が観たい!シルヴィアのパッと輝く表情が印象的。こちらまで微笑みたくなる。


「カルメン」 プティ/ビゼー 

アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ

黒い上下のマタドール衣装で後ろ向きに現れたロベルト、鼻血が出るほど色気溢れる美しさ。鼻血が出そうなくらい。がっしりとした上半身に、すらりとした筋肉質の長い脚。水も滴るいい男という表現がぴったり。そしてソロ。これがまたやばすぎるくらい素敵。弓なりになる肢体の曲線美。アプロンを保った、正面を見据える視線。切れ味鋭いサバティアード。きっとロベルトはフラメンコを踊っても様になるだろう。うっとりしたところへ、カーテンから今度はフェリの脚が。黒髪ショートカットにビスチェのフェリは小悪魔的で、とっても愛らしい。同じようなビスチェの衣装だった新国立劇場での「こうもり」では少し太ってしまっていたのだけど、今回はすっかりスリムで、絶妙な曲線を描く美脚にすっかり魅せられる。さすがの色男、ロベルトもフェリのファムファタル的な魅力にはメロメロになってしまう。フェリは何よりも視線の送り方が見事で、天使のような無垢さと、男を翻弄し破滅させる魔性を併せ持ったカルメンをコケティッシュに演じていた。やわらかくしなる背中でしなだれかかる官能。これが、もう引退する44歳のダンサーとはとても思えない。ラスト、二人が床に重なり合い、フェリが脚を地面から垂直に伸ばしているライン、ずっと観ていたかった。うっとり。

この演目の動画は、7月に開催されたラヴェンナでのフェスティバルのサイトで見ることができます。ロベルトのホセ、もうたまりません。
http://www.ravennafestival.org/zoom_video2_hi.php?id=200

「アポロ」 バランシン、ストラヴィンスキー 

パロマ・ヘレーラ
ホセ・カレーニョ

ホセ・カレーニョのアポロは写真では何回も見たことがあったのだけど、実際に踊るのを観るのは初めて。冒頭、上手で佇んでいる姿はさすがに彫刻のように美しい。だがホセ、前半は身体が重たそうでちょっと精彩を欠いていた。けっこう「アポロ」って振付が奇抜なので美しく魅せるのは難しいのだと思う。でも、後半は突然神がかり的に良くなって、さすがホセだわ、素敵だわ、と思った。パロマのテレプシコーラは実のところあまり印象に残っていないけど、てきぱきとした小気味よい踊りを見せてくれていた。


「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」 フォーサイス/ウイムレス

アリシア・アマトリアン
ロバート・テューズリー

アリシアのものすごい身体能力がここでも発揮され、見ごたえがあった。キレキレのしびれるようなパフォーマンス。あの驚異的な股関節。オフバランスを多用した振付なのに絶妙のバランス感覚。柔軟性。2003年の世界バレエフェスティバルでも観ているはずなんだけど、そのときよりもずっと進化していて、カッコいいのなんの。緩急自在、スピード感とスローモーション。この人に不可能なことなんて無いんじゃないかと思うほど。一方受け手側のテューズリーも、サポートをはじめ実にうまい。バランスのとり方、切れ味鋭い脚のムーヴメント。息もぴったり合っているし、同じテンションで動いているのでスリリングな一編に仕上がった。素晴らしい!


「メドウ」 ルボヴィッチ/ ブライヤーズ

ジュリー・ケント
マルセロ・ゴメス

この作品、去年ABTのシティセンターシーズンで2回観ている。一回目はデヴィッド・ホールバーグとステラ・アブレラで、そしてもう一回がこのマルセロとジュリーで。実際には30分くらいの演目で、女性ダンサーがポーズを取ったまま天井から降下し、ラストも吊られて天高く上っていくというもの。深海を思わせるライティングと紗幕の元、わらわらとした群舞もあるのだけど、時差ぼけの頭にはまるで拷問のような退屈さであった。今回はガラということでパ・ド・ドゥにアレンジしてあるのだけど、やっぱり退屈な作品だと思う。マルセロが、ポーズをとったままの形のジュリーをひたすらリフトしているだけの振付で、彼が踊る場面はほとんど無い。ジュリーのポーズはとても美しいし、彼女の細い肢体のフォルムの美は感じられる。そして、マルセロのリフトの上手さもよくわかるが、振付の変化に乏しいのだ。カウンターテナーを使った、宗教音楽っぽい音楽も好きになれない。この二人だったら、もっと別なものを見せて欲しかったと思う。


「マノン」第一幕より寝室のパ・ド・ドゥ マクミラン/マスネ

アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ

「カルメン」の妖艶さとはうってかわったフェリの可愛らしいこと!マノンは自分の欲望のままに生きて死んでいった女性なのだけど、フェリのマノンは罪なほどイノセントで、悪いことをしているという意識はまったくない天然のファム・ファタル。ちょっと甘えたようにベッドの支柱に身体をからませたり、首をかしげた顔も、必要以上の色気はなく、小悪魔というよりは純粋すぎるあまりモラルも踏み越えそうな存在となっていた。恋する少女の高揚感を、腕、背中や足先のしなやかな動きで体現していた。一方のロベルト。テーブルで手紙をしたためる姿からも、嬉しさを隠せなくて、人の好さそうな、眩しい笑顔を浮かべている。彼も歓びを全身で表現するのが巧みな上、表情からも、心底マノンに惚れ抜いていて、幸せで幸せで仕方ないというまっすぐな想いが伝わってきている。マクミランの難しいリフトもスムーズにこなし、大きな身体からは信じられないくらいの流麗な動き。デ・グリューの誠実で朴訥な人柄が伝わってくる。あまりの幸福感に、最後の曲の盛り上がりのところで涙がこぼれ始めた。だって、フェリのマノンを見るのもこれが最後なのだから。ここまで可憐なマノンを演じられるのは、フェリしかいないのに、これで永遠に封印されてしまうなんて・・・。
 
【休憩】

「ロミオとジュリエット」第二幕のパ・ド・ドゥ アモディオ/ベルリオーズ 

アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ

日本で初めての上演という、アモディオ版の「ロミジュリ」。ジュリエットのもとに、ティボルトを殺してきてしまったロミオがやってくる。白いドレスで一人踊るジュリエット。そこへやってきたロミオとの間は、最初はぎこちない。歓びと苦悩が交互にやってくるような、複雑な感情が表出する。二人でいる幸福感に酔いしれ、陶酔しながらも、次の瞬間には、この時間がもう二度と来ることはないことを知ってしまっての引き裂かれるような苦しみに慟哭する。ジュリエットを空中で振り回したり、さかさまに持ち上げてのリフトなど、難易度の高いリフトを多用した熱烈な愛情表現。ロベルトのあの眩しい笑顔が少しずつ曇っていく様子を見ると、胸が引き裂かれそうになる。少女だったジュリエットが、大人への階段を急速に上り始め、悲しみ、苦しみ、秘めていた情熱を鮮烈に放ちながら毅然と決意をする様子が繊細に、透明感を持って描かれている。やがて、これが結果的に永遠の別れとなってしまうシークエンスとなり、ロミオは去っていく。ガラにしては少々長すぎたきらいもあるけれども、生の感情をこれだけぶつけて踊ることができるフェリの演技力の根源を見せられた思いがした。


「ドン・キホーテ」グランパ・ド・ドゥ プティパ/ミンクス

パロマ・ヘレーラ
ホセ・カレーニョ

正統派クラシックバレエの魅力を堪能したパ・ド・ドゥ。「アポロ」の前半では少し調子が悪そうだったホセだが、得意のバジルでは絶好調だった。キメのポーズの優美さ。後ろ脚をアティチュードに保ったまま、自由自在にスピートをコントロールし、惰性で回転させながらフィニッシュはぴたっときまるピルエットは芸術品。バジルなのにこれだけ美しい人もいないのでは。マネージュでは、体を斜めに倒して高く跳躍する。決して自己主張が強かったりするわけではないのに、その端正な印象はしっかり残る。パロマもかなり好調のようで、長~いバランスを決めてくれるし、ヴァリエーションでは小気味よいエシャッペ。フェッテも、安心してみていられる安定度で、ダブルを織り交ぜて軸のブレも無くきれいに決めてくれた。それにパロマは、髪に挿した赤い薔薇や、キトリの衣装が実によく似合う!ブラボー!


「マーキュリアス・マニューヴァース」 ウィールドン/シュスタコヴィーチ 

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

クリストファー・ウィールダンの日本初上演作品。美しいショスタコーヴィチのピアノ協奏曲に乗せて、グレーに、臙脂色のラインの入ったワンピースのシルヴィアと、グレーの上下のサーシャ。ウィールダンの作品はいつも、どうやって表現していいのかうまい言葉が見つからなくて困ってしまうのだけど、音楽の使い方が見事だし、二つの肉体が絡み合うフォルムの美しさも天下一品。その上、シルヴィアもサーシャも、音楽性の豊かさで言えば今回出演しているダンサーの中でももっとも優れており、流麗でよどみない動きには自然と目が吸い寄せられる。言葉は見つからないけど、とにかく美しいし、音楽が聞こえてきそうな踊りだった。


「ル・グラン・パ・ド・ドゥ」 シュブック/ロッシーニ 

アリシア・アマトリアン
ロバート・テューズリー

多分、最後の「椿姫」を除けばもっとも観客に受けていた作品なのではないかな。とってもコミカルな作品なのだけど、高度なテクニックとユーモアのセンスを持ち合わせたダンサーが出演していないと、ギャグなども全部すべってしまう。その点、アリシアもテューズリーも文句なしに素晴らしかった!きれいなチュチュを身につけながらも、度の強いメガネをいじるポーズからして大爆笑!彼女は本当に芸達者だ。ふざけたりわざと猫背になったりしながらも、リフトされているときにはきちんと身体をコンロールしてびしっとキメる。スポッティングの美しいピルエットも見事だし、脚が5時55分の位置まで上がる柔軟性と、プリエの形の正確さ。テューズリーにブンブン振り回されたり、ズルズル引きずられたりするところもとてもきれい。一方、普段はとても端正な印象のテューズリーも、面白すぎ!アリシアを物理的には振り回しながら、実際のところは振り回されて慌てている感じが可愛い。そして、チュチュを着た牛との対話。牛が一瞬、アリシアに見えちゃったのかしら?アントルシャ・シスのつま先はあんなに美しいのにね。楽しかった~。「眠れる森の美女」など有名な作品の一部を引用したりの遊び心も楽しい。


「真夏の夜の夢(ザ・ドリーム)」 アシュトン/メンデルスゾーン 

ジュリー・ケント
マルセロ・ゴメス

大好きなマルセロが妖精王オベロンを踊るというのだから、これが興奮せずにはいられるだろうか!何しろマルセロのオベロンを観るのは初めてなのだから。そしてマルセロのオベロン、これがまたすごくカッコいい。オベロンのメイクも、ものすごくよく似合っていて、役に完璧になりきっている。彼は演技力のあるダンサーで、毎回、まったく違ったキャラクターになる切ることができている。大柄な身体は、妖精王の尊大さ、威厳を出すのにぴったり。だけど、アシュトン特有の細かいパを見事に、軽やかに踊っている。跳躍もきれい。今回初めてちゃんと踊るマルセロを観たよ。美しい~。美しいといえばジュリー・ケント。何回か書いているけど、実はジュリーは私の好みのダンサーではない。が、このタイターニアは見事だった。ジュリーにはタイターニアの衣装や、カールさせた髪がとても似合っていて、おとぎ話の絵本から抜け出たような非現実的なまでの美しさがあるのだ。アシュトンのステップはジュリーも見事だった。オベロンとタイターニアはこれくらいの美男美女が演じなくては!夢のように美しく、ファンタジックなパ・ド・ドゥ。この二人で全幕が観たい。


「椿姫」第三幕のパ・ド・ドゥ ノイマイヤー/ショパン、ピアノ演奏:浅野菜生子

アレッサンドラ・フェリ
ロベルト・ボッレ

ついにフェリ最後の演目がやってきてしまった。心の準備もできていないというのに。幕が下りている状態で、上手、緞帳の前に沈痛な表情で座り佇んでいるのは、ロベルト演じるアルマン。その姿そのものが、映画のポスターにでもなりそうな、ドラマ性をはらんでいる。そして幕が開き、黒いヴェールに黒衣のフェリ=マルグリットのシルエットが浮かび上がり、ゆっくり、ゆっくりと黒いヴェールを外す。アルマンが振り向き、ゆっくりと歩み寄る。許して欲しいと懇願するマルグリット。素直には受け容れられないアルマン。二人並んで、脚をロン・デ・ジャンブさせる。ロベルトが作り上げたアルマンの造形は、とても若く、時には感情をストレートにぶつける。アルマンは怒っている。それでも、怒っている中でも、マルグリットへの情熱を隠せない。そして、それは荒々しいわけではなく、常に優しさと誠実さのオブラートに包まれている。だけど、時に裸の感情が露出して心に突き刺さる。フェリのマルグリットは、美しいけど、同時にもはや若くない女の憐れさ、人生最後の恋をあきらめようとしてあきらめられない哀しみを、痛ましいほど感じさせた。時々ぐらつく、もたつくなど技術的に不安定なところが見られたけれども、それは、マルグリットの人物像と重なって、一層痛ましく思える。溜めのある独特の動きやアクセント。柔らかすぎるほど柔らかい背中。アルマンの若さ、まっすぐさの対比としての老いが、老いゆえに一層美しい青い炎のような最後の輝きを発していた。黒いドレスの下の、白いランジェリードレスは総レースで、肌が透けて見え、マルグリットのよるべなさ、頼りなさをフェリの華奢な身体が語っていた。

ロベルトのアルマンは、マルグリットの服を脱がせる時にも決して乱暴にはならずに優しく脱がしていくが、愛情表現そのものは激情をはらんでいる。背中を大きく反らせ、腕を上げては左右に下ろしていって後ずさるポーズのエモーショナルで美しい軌跡。それに対して、ついに、どうしようもなく情熱的に燃え盛り、火花を放っていくフェリ。愛を交わし終わった後の、ロベルトのマネージュの鋭さは、そのまま、アルマンの想いを表わしていた。最後まで、対等のアーティストとして対峙する二人だけど、演技ではなく、二人の実在する人間の愛の形を覗いているようだった。しばし佇むフェリ。キスをした後、二人は向かい合って視線を送りあう。その彼女を抱き上げて回転させながらリフトするロベルト。フェリの脚先は美しい造形を保ったまま。このあたりから、万感の想いが押し寄せてきて胸がいっぱいになっていく。どうしようもなく涙が流れ落ちてきて、視界に雨が降ったようになってきてしまった。フェリのバレリーナ人生の最後がやってきてしまった。最後に二人は抱き合ったまま床に倒れ、幕。マルグリットの情熱と、フェリの最後の情熱がひとつになって散った瞬間だった。

カーテンコールでは、ダンサーたちが「こうもり」の曲に乗って登場。一人一人に赤い薔薇の花束が主催者から贈られるが、それらの花束はすべてフェリに捧げられた。一人一人のダンサーとハグを交わすフェリ。ロベルトとはあくまでも軽いハグだったのが印象的。Aプロでもあった、暗いステージの中央に佇むフェリに、赤い花びらが落ちてくる素敵な演出が行われたけど、紙テープ飛ばしはなし。幾度も幾度もカーテンコールは繰り返される。ジュリー・ケントも涙でぐしゃぐしゃになっている。最後に、緞帳の前で子供のように涙を流し、くしゃくしゃになった顔を覆って、さっとカーテンの向こうにフェリは消えていった。

フェリ、あなたのジュリエットやマノンやマルグリットは、決して忘れないよ。ありがとう。


追記:「エトワールの花束」NHK芸術劇場の放映が決定しました(内容詳細は不明)

9月21日金曜日22:45~、NHK教育テレビ「芸術劇場」です。

2007/08/09

「ルグリと輝ける仲間たち2007」Aプロ8/7

2007.8/7(火)18:30 ゆうぽうと簡易保険ホール
「ルグリと輝ける仲間たち2007」Aプロ

さて、ルグリと輝ける仲間達初日。前日フェリのフェアウェル公演を観てしまったためか、さすがに素晴らしい「オネーギン」以外は消化不良で終わった。ひょっとして、私はパリ・オペラ座のバレエがあまり好きではなかったのかも、と思ったくらい。でも、「オネーギン」が<神>級に素晴らしかったので、よしとする。

「オネーギン」、ジョゼがセクシーな「三角帽子」、愛らしいマチルド・フルステーが情感豊かな「スパルタクス」、それ以外はいまひとつだった。
「椿姫」なんか、違う幕の部分とはいえ、やはりフェリの「椿姫」の次の日に観てはいけない演目であった。

第1部
「白の組曲」(振付:リファール)
シエスト:乾友子、高木綾、奈良春夏
テーム・ヴァリエ(パ・ド・トロワ):ローラ・エッケ、オドリック・ベザール、アクセル・イボ
セレナード:マチルド・フルステー
プレスト(パ・ド・サンク):シャルリーヌ・ジザンダネ、松下裕次、氷室友、辰巳一政、長瀬直義
シガレット:アニエス・ルテステュ
マズルカ:マチアス・エイマン
アダージュ(パ・ド・ドゥ):ミリアム・ウルド=ブラーム、マチュー・ガニオ
フルート:メラニー・ユレル
東京バレエ団

「白の組曲」は演目自体と音楽がつまらない上、東京バレエ団の男性ダンサーが、スタイル、技術とも激しくオペラ座の人たちに見劣りしていて邪魔だし(東京バレエ団の女性ダンサーたちは非常によかった。アームスがみな美しい)、退屈だった。
オドリック・ベザールの踊りが硬く、これでスジェ?と思ってしまった。もう少し上手な人だと思ったのに。一緒に踊っていたコリフェのアクセル・イボの方が伸びやかで良かったが、逆に柔らかすぎてふにゃふにゃ。
アニエス・ルテステュはさすがの貫禄で大物感があったけど、この人も柔軟さを感じさせない。最近ロシア系のメソッドのダンサーを見ることが多かったからか、オペラ座のダンサーの上半身の動かし方が好きになれない。脚はさすがにみんな強く、正確で素晴らしいのだけど。
メラニー・ユレルも上手なんでしょうが硬い。注目のマティアス・エイマンはさすがに素晴らしい。ダイナミックな跳躍力、音楽性、華があって場が盛り上がった。お気に入りのマチルドも、ひときわ人目を引く魅力がある。それに比較すると、技術も表現もさすがにレベルの高いミリアム・ウルド・ブラム&マチュー・ガニオが、地味だった。

冒頭と最後のフォーメーション、真っ白な衣装は美しかったけど、それだけの作品だった。きっと別の演目で見れば、ダンサーたちももっと魅力的に見えたのではないかと残念に思う。
それにしても東京バレエ団の男性は、みんな小柄だ。同じバレエ団の女性ダンサーたちより小さいのでは?

第2部

「扉は必ず...」(振付:キリアン)
エレオノーラ・アバニャート マニュエル・ルグリ

アッバニャート、去年の夏に見たオーレリとはまったく違うけど、悪くはない。だけど、緩急やタメがあまりなくて、フェミニンだけど平面的な表現、ルグリとの間にケミストリーが無いのと、オーレリにあったスリルや淫靡さ、ユーモア感覚が弱かった。ルグリのやさぐれ感は素敵。


「スパルタクス」(振付:グリゴローヴィチ)
マチルド・フルステー ステファン・ビュヨン

フリーギアの悲しみ、愛、歓び、様々な感情を繊細に、時には雄弁に表現した華奢で儚げなマチルドはよかったけど、ビュヨンは微妙。この演目の売りである片手リフトに相当苦労していたし、スパルタクスには逆立ちしたって見えない。ニコラ級のダンサーじゃないと難しそうだ。


「ドリーブ組曲」(振付:マルティネス)
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス

演目としては、どこかで見たような振り付けの寄せ集めのようで、退屈。同じ音楽を使っている「コッペリア」のグラン・パ・ド・ドゥを見せて欲しいと思った。アニエスはとてもうまいし美しいのだけど、表現がちょっと冷たい。アニエスが踊ると見せかけて、実際に踊るのはジョゼだったり、ジョゼの逆回転(時計回りに回っているけど、左足から回る)マネージュがちょっと面白いくらい。とても美しくスタイリッシュな衣装、以前はベルベットの部分が紺色だったけど今回は紫。紺の方がきれいだった。


第3部

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(振付:バランシン)
ドロテ・ジルベール マチュー・ガニオ

ドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオのキラキラコンビ。キラキラ感はピカイチ。ドロテはアレグロは得意のようで、とても元気の良い溌剌とした踊り、音にぴったり合った動きはさすが。観ていて気持ちいい。ただし、もうちょっと軽やかでもいいのではないかな。
3年前にこのルグリガラで観たマチューは、「これでエトワールなんてありえない」と思ったが、さすがに成長の跡が見られ、エトワールにふさわしい踊りになっていたと思う。端正なムーヴメント、ふわっと高く上がるジュッテ、美しい脚のラインとつま先。実にきれいなダンサー。ただ、コーダの、ドロテが勢いよく飛び込むところで、がっしりとはキャッチできていなかった。
全体的にバランシンらしさが希薄な気がする。マチューはひょっとして音楽性が弱いのかもしれない。だけど、 若くて美しいスター二人の競演は、ガラらしくて華やかで良かった。これくらいのレベルのものを、どの演目にも要求したいなって思ってしまう。


「椿姫」第2幕より(振付:ノイマイヤー)
エレオノーラ・アバニャート バンジャマン・ペッシュ

「白のパ・ド・ドゥ」だし、完全に別物と思えばいいんでしょうが、ペッシュが重たい荷物のようにアッバニャートをよっこらしょっと運んでいるのはちょっと問題だと思ってしまった。幸福感があまり伝わってこなくて、何だか必死に振付をこなしている感じがしていた。
最前列で見ていた友達の話では、リフトのたびにアッバニャートの髪が引っ張られて抜けてしまって、かわいそうだったとのこと。ペッシュ自身の演技は情熱的で悪くなかっただけに、リフトが残念。

「三角帽子」より粉屋のファルーカ(振付:マシーン)
ジョゼ・マルティネス

楽しみにしていた「三角帽子」。真っ赤なシャツが細身に良く似合うジョゼ、じゃなくてホセ・カルロス・マルティネス。バレエとサパテアード(靴音でリズムを打ち出す技巧)が見事に融合して素敵。指パッチンもよく鳴るし、しびれる。脚が長いので、フラメンコ独特の脚を揃えて弓なりにしたポーズがかっこよく決まる。もう少しキレキレにラテンしてもいいと思うけど、この上品さがジョゼ。
惜しむらくは、この「粉屋のファルーカ」のシーンがあまりにも短いこと。素敵だわ~と思っているうちに終わってしまう。今度上演するときには、ぜひ粉屋の女房の踊りも入れて欲しいと思った。


「オネーギン」(振付:クランコ)
モニク・ルディエール マニュエル・ルグリ

そして真打、「オネーギン」(手紙のパ・ド・ドゥ)。
モニク・ルディエールは今回のルグリガラを最後に、踊りを封印するという。だが、その決断はあまりにももったいないと思った。今まで登場してきた女性ダンサーたちと、明らかに格が違う。たぶんもう50歳くらいなんだと思うけど、身体のコントロールなどのテクニックは衰えていないうえ、タチアーナというヒロインそのものとして舞台上に存在しているのだ。
それに、ルグリとの栄光のパートナーシップそのままに、演技のテンションが同じ位置にある。オネーギンを前に迷い、ためらい、感情に押し流されそうになりながらも、ついには未練を断って手紙を破き、部屋から出て行くように命令する。その時の激しい慟哭、ふらふらと扉の前から舞台の前方までよろめき、涙をこらえて少女時代の恋を永遠に封印する、悲しみと決意、苦悩が入り混じった表情。シュツットガルト・バレエのマリア・アイシュヴァルトも素晴らしかったけど、ルディエールはやっぱりすごすぎた。
そのルディエールの演技を受け止めるルグリも、さすがに見事なもの。オネーギンという男のどうしようもなさ、おろかさ、それを自覚しながらも一縷の望みに賭けてすがりつく様子、迫ってくる老い、後悔、様々な要素を内包した複雑な人物像を体現していた。これがガラの一部だなんて信じられない。これこそ、観たいと思っていたもの。
これを観ることができただけでも、チケット代の価値は十分あったと思う。このようなドラマをつむぐことができるダンサーが、今どれほどいるのだろうか。しかもフェリは引退してしまったのだし。

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バレエダンサーというのは難しい職業だと思う。演技力というのは、キャリアに比例して深まっていく。ルディエール、ルグリ、フェリの領域に達した頃には、少しずつ体力、技術が衰えてきてしまう。だが、ルグリのように、技術的にも未だ頂点にいるというのに、オペラ座をまもなく引退しなくてはならないとはなんということだろう。

フェリの「エトワールたちの花束」を観たときにも思ったのだが、今のバレエの流れとして、とにかく技術重視、見た目重視となっていて、演技力に優れたダンサーというのは時代に取り残された存在になってきているのではないかという危惧を感じる。演劇的なバレエというものも生き続けて欲しい、演技力もダンサーの資質として評価して欲しいと切に願う。

とにかく、モニク、そしてマニュエル、ありがとう。
マニュエルも、引退前に今一度、念願である「オネーギン」の全幕に主演してくださいますよう。

「ダンシング・フォー・エイズ・オーファン」イベントに行ってきました

先日ご紹介した「ダンシング・フォー・エイズ・オーファン」の横浜でのイベントに行ってきました。リン・チャールズの挨拶、それから出演者のうちホセ・カレーニョ、中村祥子さん、グレゴール・ハタラが挨拶をし、そしてリン・チャールズが指導するバレエ少女たちによるミニパフォーマンスなどがありました。

Dancingforaidsorphans

日本でバレエのチャリティ公演が開催されるのは、今回が初めてだったとのことで、実現にこぎつけるまでには並々ならぬ苦労があったようです。アフリカのエイズ孤児といっても、日本では遠い国のこととして関心が低いようですし。でも、横浜港開港150周年記念イベントとして、横浜市の後援をはじめ、協賛社もかなり現れたとのことでよかったです。それにしてもリン・チャールズはいまだにとても素敵な方ですね。中村祥子さんのスタイルの良さにもビックリ。

ゲストの方も、ふたを開けてみるとさらに豪華になり、上記3名の他、スージン・カン、アレクサンダー・ザイツェフ(シュツットガルト・バレエ)、マーラ・ガレアッツィ(ロイヤル・バレエ)、大石麻衣子、セバスチャン・アジミール(ライプツィヒ・バレエ)、小林洋壱(東京シティバレエ)、林ゆりえ(スターダンサーズ・バレエ団)、フェイ・ルン、サン・ヤウ(香港バレエ団)などが出演されます。演目ごとの出演者も明らかになり、

「コンチェルト・バロッコ」(振付:ジョージ・バランシン)中村祥子&小林洋壱(21・22日)、、林ゆりえ(21日)、門 沙也香(22日)
「ラフマニノフ・パ・ド・ドゥ」(振付:ウヴェ・ショルツ)大石麻衣子、セバスチャン・アジミール
「ジャパニズム」(振付:三谷梨央) 三谷梨央、クリスチャン・マルティヌ
「ブルジョワ」(振付:ベン・ヴァン・コーウェンバーグ) グレゴール・ハタラ
「トゥーランドット」(振付:ナタリー・ウィア)フェイ・ルン、サン・ヤウ
「太陽に降り注ぐ雪のように」マーラ・ガレアッツィ、アレクサンダー・ザイツェフ
「じゃじゃ馬ならし」(振付:ジョン・クランコ)スージン・カン、アレクサンダー・ザイツェフ
「アベ・マリア」(振付:イゴール・ペリー) ホセ・カレーニョ (21日のみ)
「Ich habe geliebt A ber パ・ド・トロワ」(振付:リン・チャールズ)門 沙也香(21日)、小林洋壱(21・22日)、グレゴール・ハタラ(21・22日)、林ゆりえ(22日)
「パエリア」(振付:リン・チャールズ)林ゆりえ(21日)、門 沙也香(21日)
「ドラキュラの最後の愛」(振付:リン・チャールズ) 小林洋壱、リン・チャールズ
「ジゼル 第二幕パ・ド・ドゥ」 ホセ・カレーニョ、スージン・カン (22日のみ)
「レ・シルフィード」(振付:ミハイル・フォーキン)中村祥子、グレゴール・ハタラ、スージン・カン、林ゆりえ、門 沙也香 他

といった具合です。びっくりするくらい豪華ですね。バランシン財団の協力を得て、滅多に上演できない「コンチェルト・バロッコ」が上演されますし、クランコの「じゃじゃ馬ならし」がスージン・カンとアレクサンダー・ザイツェフ、さらに「ジゼル」がスージン・カンとホセ・カレーニョ。これは本当に貴重です。

というわけで、ちょっとお高いですがチケット買ってしまいました。6時に横浜に行くのは仕事の関係上無理なのですが、できるだけ早く出てなるべく多くの演目が見られればいいな。

公色サイトはこちらです。
http://www.dancing4aidsorphans.org/jp/index3_jp.htm

東京新聞に紹介記事が出ていました。

チケットはぴあで買えます。ホールがあまり広くないので、安い席で十分だと思います。その分、別口で寄付できれば。
http://search.pia.co.jp/perform.htm?pcd=379446&sheetNo=205288

2007/08/08

折原美樹さんのブログに、ニジンスキー・ガラのレポート

ハンブルク・バレエの「ニジンスキー・ガラ」に出演したマーサ・グラハム舞踊団の折原美樹さんが、ご自身のブログで、7月15日の「ニジンスキー・ガラ」の舞台裏をレポートされています。アレッサンドラ・フェリやロベルト・ボッレ、さらにジジ・ハイヤット一家(私も客席でみかけましたが)などとの貴重な写真も。ガラの公演内容についてはまた追って書いてくださるそうです。

2007/08/07

ダンシング・フォー・エイズ・オーファン

今日は「エトワール達の花束」のBプロ。フェリを観る最後の舞台でした。「椿姫」の途中から涙が止まらなくなってしまって、何も見えなくなってしまうんじゃないかと思うほど。カルメン、マノン、ロミオとジュリエット、どれも素晴らしかったです。マノンのあの幸福なシーンの終わりですら、涙が伝ってきちゃって・・・。

また感想はゆっくり書きますが、椿姫ではもうとても冷静に観ていられる状態ではなく、最後に見せたあまりの激情に胸を引き裂かれる思いでした。これが最後だなんてとても信じられない。カルメンで見せた美しい脚のライン、柔らかい背中、身体のコントロール力、そして、短い中でもいつもドラマを感じさせてくれていました。なんだか私の夏はもう終わってしまったみたいです。カーテンコールで号泣していたジュリー・ケント。思わずもらい泣きをしてしまいました。

数え切れないほどのカーテンコールの最後で、涙に濡れた顔を覆うようにしてさっとカーテンの奥へと去っていったフェリ・・本当にありがとう。


さて、気を取り直して本題です。
8月20~22日の3日間、神奈川県立青少年センターホールで、エイズ孤児救済のためのチャリティーバレエイベント「ダンシング・フォー・エイズ・オーファン」が開催されます。往年の名バレリーナ、リン・チャールズ(元ハンブルク・バレエ、20世紀バレエ団&BBL、なんと現在は横浜市港北区在住だそうで)が、公演のパートナーであったジョルジュ・ドンをエイズにより失ったことをきっかけに、バレエ公演を通して、エイズに立ち向かう人々を支援することを目的として企画したもの。

イベントのチケット収益金は、「スティーブン・ルイス基金」、「世界の医療団」、「UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)」、「アフリカ日本協議会」を通して、エイズにより両親を亡くした孤児への支援を始め、妊婦に対するエイズ母子感染防止薬、医療現場で必要とされる機器・物資の購入に役立てられるそうです。

この公演には、中村祥子(ベルリン国立バレエ)、ホセ・カレーニョ(ABT)、マーラ・ガレアッツィ(ロイヤル・バレエ)、アレキサンダー・ザイツェフ(シュツットガルト・バレエ)、グレゴール・ハタラなどが出演。イベントの趣旨に賛同し、出演料なしで世界各地から集まったとのこと。

20日(月曜)13時~20時が、バレエ公演の公開リハーサル。
21日(火曜)13時~16時には、ダンサーたちによる講演やパネルディスカッション。両日ともに入場時に大人一口1,000円、こども一口500円の寄付を受けつけるとのことです。

21日(火曜)17時からマチネ公演。料金はゴールド・チケット1万2,000円、シルバー・チケット8,500円、ブロンズ・チケット5,000円。
22日(水曜)18時からガラ公演。VIPゴールド・チケット2万8,000円、シルバー・チケット2万2,000円、ブロンズ・チケット1万7,000円。公演終了後、シャンパンレセプション、オークションなどが行われます。

【プログラム(予定)】
「コンチェルト・バロッコ」(振付:ジョージ・バランシン)
「ジャパニズム」(振付:三谷梨央)
「ロミオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ (振付:マッシーモ・モリコーネ)
「マフマニノフ パ・ド・ドゥ」(振付:ウーヴェ・シュルツ)
「アベ・マリア」(振付:イガール・ペリー)
「レ・シルフィード」(振付:ミハイル・フォーキン)
「ドラキュラの最後の愛」(振付:リン・チャールズ)…他


それと、、8月8日には19時30分から同公演のプレイベントとして、公演に関するトークや、出演ダンサーたちによるショートパフォーマンス、交流会などが行われます。太っ腹にも入場は無料(カンパ制)だそうで。

このプレイベント、あまりにも豪華な内容です。

【日時】  平成19年8月8日(水曜日) 19時30分〜20時30分  
【会場】  BankART Studio NYK 2F
【参加予定者】リン・チャールズ、ホセ・カレーニョ、中村祥子さん、
       林ゆりえさん、三谷梨央さん、小林洋壱さん、門沙也香さん ほか
【料金】  カンパ制            
【協力】  BankART1929
【問い合わせ】   NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ  担当:箕輪
Tel 045-662-6758 info@yokohamalab.jp

おそらく、「エトワール達の花束」に出演したホセ・カレーニョはそのまま残ってこのプレイベントに参加されるんでしょうね。素晴らしい企画です。

公色サイトはこちらです。
http://www.dancing4aidsorphans.org/jp/index3_jp.htm

また、公演のチケットはこちら

2007/08/06

ABT退団情報

ABTの公式サイトのダンサープロフィールが更新され、先日昇進が発表された、加治屋百合子さんはじめ5人の新ソリストがソリストの欄に移動しています。

一方、ソリストの欄から消えたのがカルメン・コレーラとヘスス・パストール。

カルメンは、先日紹介したいちぞーさんによるアンヘル・コレーラのインタビューにある通り、弟アンヘルの新カンパニーに移籍したものと思われます。

一方ヘススは一体どこへ?謎です。
ABTもロイヤルみたいに退団情報を公式発表してくれるといいんですけどね。

2007/08/05

8/2&3「エトワール達の花束」Aプロ 

▼エトワール達の花束 Aプロ
  2007/8/2、3 東京文化会館

6月にABTでの引退公演を終えてから、1ヶ月と少し。その間に、ハンブルクで、何回か客席でフェリの姿も見てきた。これで本当におしまいだなんて、まだ信じられずにいる自分がいる。ABTでのフェアウェルの時は、涙をあまり見せずに晴れやかな笑顔のフェリだった。あの清清しい終わりがまたここでも見られるのかしら、と会場に足を運んだ。ダンサーの質の高さ、演目の良さ。オーケストラが入っていないことを除けば素晴らしい公演だった。

■海賊 
 振付:プティパ 音楽:ドリーゴ
 出演:パロマ・ヘレーラ、ホセ・カレーニョ

出だしであまりのテープの音の悪さにがっくりしてしまった。ホセ・カレーニョは相変わらずエレガントで美しく、ピルエットでのゆっくりとした美しいフィニッシュには惚れ惚れするし、5番の入り方やつま先がきれい。得意技であるところの惰性で回り自由自在に速度を調整できる回転も健在だったのだが・・・かなりお疲れ気味という印象が強かった。跳躍が重たくて、足音がちょっと大きめ。ミラノスカラ座の「ドン・キホーテ」では絶好調だったのに、少々残念。とはいっても、やっぱり彼のアリは当たり役というだけあって、ヴィルトゥオーソという表現がぴったりの、優雅さと野生のバランスが取れた表現で魅力的だった。

パロマ・ヘレーラはひところのスランプを脱出したと思う。丁寧に踊っていて印象は良かった。ちょっと気の毒だったのが、テープの速度が合っていなくて、フェッテが回りにくそうだったこと。でも2日目は、フェッテの方も安定していて、ダブルを織り交ぜてきれいに回っていた。彼女を苦手と言っている人が特に日本では多いようだけど、偏見なしで観てあげてもいいんじゃないかなと思う。キラキラ感や華やかさもあって、素敵だった。


■ロミオとジュリエット(バルコニーのパドドゥ)
 振付:マクミラン
 出演:アレッサンドラ・フェリ、ロベルト・ボッレ

フェリの出演作の中でも、彼女のトレードマークといっていいこの作品を2番目に入れるなんて、このプログラムの構成をした人はまったくわかっていないと思う。こんなに早いタイミングで入れてしまうのは勿体ない。平日だから仕事の都合で間に合わない人だっているだろうし。バルコニーのセットがなかったらどうしよう、と思ったけどさすがにそれは存在していた。

月明かりに照らされ、バルコニーを歩むフェリの姿は愛らしく、少女そのもの。おののき、胸を焦がし、その先を知らぬ扉の前で戸惑いながらも手をかけようとしているかのよう。マントを翻し駆けてくるロミオ。長いこと見つめあう。ロミオのロベルトは背中をこちらに向けているのに、その背中からも、どのような表情をしているのか、想像できてしまうところがすごい。濃密なドラマがここから展開される。軽やかなステップでバルコニーを降りていくフェリ。寄り添う二人だけど、まだジュリエットはロミオに近づくことも恥じらい躊躇してしまうほどの純真さ。ようやく隣り合わせになって、心臓の高鳴りを聞かせようとロミオの手を胸に添えるジュリエット。ロベルトのヴァリエーションは一つ一つの動きはゆったりとしていて、フォルムが美しくエレガント。ふわっと浮かび上がるようなジュッテ。そしてロベルトからは自然に輝くような微笑が零れ落ちる。大切に、大切にジュリエットを持ち上げる。ぴったりと息が合ったリフト。若々しい熱情がロミオからは伝わってくる。フェリも、ロベルトも、幸せで仕方ない、いつまでもこのときが続けばいいと全身で物語っている。跪くロベルトにフェリが腕を絡ませ、見つめあうその視線にこめられた愛。フェリの、ぐにゃりと折れそうな華奢な背中。空中を泳ぐ脚の曲線。長い、長いキスは、フェリのABTフェアウェル公演のときよりもさらに長く、情熱的でロマンティック。降りてきたときと同様の軽やかなステップで階段を上るフェリは、この役を踊るのが最後という感傷はなく、晴れやかだった。バルコニーの上と下から二人が手を伸ばす。ロベルトが長身のため、もう少しで指先が触れそうだけど、触れないところが切ない。短い時間の間に、一編の映画を観たような物語性がこめられていた。

このバルコニーシーンを見るとなぜこのように感動するのか、涙が出てきてしまうのか、考える。あまりにも儚い、短すぎる幸福感に胸が締め付けられそうになるから。ロミオとジュリエットの短く燃え尽きた恋と、短いダンサー生命を重ね合わせてしまった。じわ~と涙が伝ってくる。余韻に浸るには、あまりにもカーテンコールが短かったのが残念だったけど、次の演目が始まるまで、目を閉じて、あの月夜の晩に魂を送って静かに涙した。

■マーラー交響曲第3番 (ノイマイヤー振付)
 出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアプコ

ハンブルク・バレエ&ノイマイヤー作品は好きなのに、実はシンフォニック・バレエは苦手だったりするのだ。それから赤いユニタードという衣装がベジャールっぽくて嫌い。しかしシルヴィアもサーシャも踊りは本当に素晴らしい。音楽と完全に同化している。とにかく男性のリフトが非常に多くて難しそうで大変そうだけど、さすがに息はぴったり、滑らかで、特にシルヴィアのひとつひとつのフォルム、ポーズが美しい。シンフォニック・バレエであるからこそ、特に音質の悪さが許しがたい。きっと生演奏だったら、感動したんだろうな、と思う。

■「白鳥の湖」2幕 白鳥のパドドゥ
 出演:ジュリー・ケント、マルセロ・ゴメス

大好きなマルセロが出演しているので、あまり冷静に観ていられない。彼は「白鳥」だったら王子よりロットバルトの方が魅力を発揮できると思うんだけど。それでも、基本的にはノーブルなダンサーなので、王子だってちゃんとできるのだ。つま先の美しさには惚れ惚れ。ただ2幕だと、サポートばかりであまり見せ場がないのが残念。ジュリー・ケントは、腕の表現はあまり好みではないのだけど、身体のラインやお顔は美しいし、脚の捌き方はうまいし、白鳥らしい儚さは表現されていて、これはこれでありでしょう。

■ヘルマン・シュメルマン
 振付:フォーサイス  音楽:トム・ウィリアムス
 出演:アリシア・アマトリアン、ロバート・テューズリー

アリシアの驚異的な股関節の柔らかさに驚く。ものすごい身体能力。テューズリーは普段クラシックで見慣れているんだけど、こういう作品もとても上手で、実力の高さを実感。洒脱さがあっていいけど、少しエレガントすぎるかな。イン・ザ・ミドル~を少しゆったりさせたような振付。途中で片方ずつすたすた歩いて舞台を去って、アリシアが再び現れたときには黄色いミニスカートを穿いている。テューズリーは、上半身裸になった上でやはり同じ黄色いミニスカ。それがあまり違和感がないところが面白い。衣装はヴェルサーチだそうで。コンテンポラリーも、まじめくさった作品よりこういうお遊びがあるほうが好き。

■エクセルシオール
 振付:ウーゴ・デッラーラ、音楽:ロムアルド・マレンコ 
 出演:ロベルト・ボッレ、モニカ・ペレーゴ

ロベルトのアポロ神のような神々しい肉体美を堪能するための演目。周りの女性達が一斉にオペラグラスを覗き込んでいるのが可笑しかった。2003年の世界バレエフェスティバルでは、パンツだけだったのが、今回上半身に縄のようなものが巻きついていた。あれだけ筋肉質でがっしりとした体つきなのに、跳躍が重そうではなく足音もあまりしないところがすごい。全身がばねのように強靭だ。以前「マノン」全幕で見たときにはちょっともっさりとしていたのに、それが完全になくなっている。跪いて、腕を横に広げる奴隷のポーズすら様になっている。素敵。もっと良い席にすれば良かった(笑)。いやはや美しい男性が奴隷姿に身をやつしているのは、被虐的でいいわ~(ばか)。
モニカ・ペレーゴはフェッテがちょっと不安定だったのでは?最後足が落ちてしまったような。でもそれ以外は、テクニックのしっかりした人だという印象。の衣装だとスタイルが悪く見えて少々気の毒。


■オセロ 
 振付:ラー・ルヴォッチ  音楽:エリオット・ルデンサル
 出演:アレッサンドラ・フェリ マルセロ・ゴメス

これも一本の映画を観たかのような、濃密なドラマを堪能した逸品。二人の演技のぶつかり合いが見ごたえたっぷりだった。身体を黒く塗りマッチョなマルセロのオテロに、白い服を着た華奢で、ここでも少女のようで無垢なフェリのデスデーモナ。絡み合う身体。マルセロのリフトが素晴らしい。そしてリフトされているフェリの身体のコントロールも完璧。夫が妻に向ける疑惑、おびえながらも夫を信じて、一途な愛を捧げる純真な妻。自分の中の怪物と戦い、もがき苦しみ、ついには、妻の愛の象徴であった白いハンカチで妻をあやめてしまう。首にハンカチを巻きつけられ、振り回され、小さく痙攣しながらもあっというまにぐったりと果ててしまうデズデーモナ。息絶える瞬間に、夫にキスをする。あまりにも小さく哀れな亡骸を前に、己の為したことの罪深さに気がつき慟哭するオテロ。マルセロがここまでドラマティックで深みのある演技を見せてくれたことに感動。そしてフェリ!先ほどのジュリエットと同じ人とは到底思えない。
後でヤンヤン・タンとデズモンド・リチャードソンが共演した「オテロ」のDVDを見なくては!


■ジゼル 第2幕のパドドゥ
 出演:アレッサンドラ・フェリ、ロベルト・ボッレ

ジゼルがアルブレヒトと墓の前で十字架の形に腕を広げたところからのアダージオ、という非常に短い場面。私は何年間かバレエをまったく観ない期間があったため、フェリのジゼル全幕を生で観ることは叶わなかった。浮遊感はあるけれども、地上への想いを残した、人間らしさのあるジゼルだった。しばらく踊っていなかったためか、スムーズさには若干欠けてはいたけど、ふわりとしたアームスの使い方はやはり美しい。人間の娘としての想い、魂は残っているのに、肉体は消え、霊魂としてしか存在していないというのが見事に表現されていた。そしてロベルトのサポートも良かった。テープによる音楽のテンポが速すぎて、作品の味わいを殺していたのが至極残念。


■太陽が降り注ぐ雪のように
 振付:ローランド・ダレシオ 音楽:ペーター・シンドラー
 出演:アリシア・アマトリアン、ロバート・テューズリー

2003年の世界バレエフェスティバルでは、アリシアとフリーデマン・フォーゲルが踊ったユニークな作品。おそろいの伸縮性が高いピンクのTシャツをびよーんと引っ張るモチーフが楽しい。ポリスの「ロクサーヌ」に少し似た、タンゴっぽい人を食った音楽。ゆるいがに股、足先はフレックス、そして猫背なんだけど、そこに高度な技巧がちりばめられている。例によってとんでもないアリシアの股関節の柔らかさが発揮されていた。ズサーっとスライディングしたり、相手のTシャツの中にもぐりこんだり、面白い表情をしたり。でも基本的には踊っている本人が大真面目にやっているところがさらに笑えるわけで。アリシアもテューズリーも、ユーモアのセンスが抜群でノリノリだった。ラストは、アリシアがテューズリーのシャツの中に顔を入れて引っ張り、顔のシルエットがTシャツに浮かび上がるという若干ホラーなもの。楽しかったんだけど、バレエフェスで観た時の方が初見だったから笑えたかな。

■シンデレラ (舞踏会のパドドゥ)
 振付:ジェームズ・クデルカ 音楽:プロコフィエフ 
 出演:ジュリー・ケント、マルセロ・ゴメス

マルセロがタキシードを着て登場するところから、またファンモード炸裂でまともに観ていないかも!こういうのに本当に弱い私。王子様なんだけど、ちょっと不器用そうなところがまたツボ。最初の方はシンデレラとうまく意思疎通が取れなくて、ちょっと戸惑っているところが可愛い。そして難しいリフトの連続!このあたりは本当にマルセロはうまい。ジュリーは、1920年代風のシックなドレスと髪型で、そりゃもうとっても美しいわけなんだけど、でもシンデレラというよりはマダム風という感じ。でもここでの二人のコンビネーションはよく合っており、ジュリーの演技も、いつもはちょっと鼻につくところがなく、自然で可愛らしくてよかった。ちょっとためらったり恥らったりするところもわざとらしくないし。ラストは、二人が寄り添い、静かに上手の方に歩いて退場。とても余韻が残る。クデルカ版の「シンデレラ」はかぼちゃのかぶりものをした男性ダンサーが大勢登場したり、かなりトンデモ作品らしいんだけど、この場面に限ればとても素敵。何よりも、プロコフィエフの音楽が素晴らしいよね。今回のガラは最低限のセットしか使われていないのだけど、この作品では、唯一天井からシャンデリアが下げられ、夜空に浮かぶ星。美しい二人とあいまって、映画のシーンのように心に残るものだった。

■ハムレット 
 振付:ノイマイヤー  音楽:マイケル・ティペット
 出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアプコ

シルヴィア演じるオフィーリアは、金髪を三つ編みにして、花輪を作って髪に飾る。みつけた人形と遊んでいて鬼のようにキュート。この人は本当に永遠の少女のようだ。そこへ大きな荷物を放り投げ、ドタドタ音をさせながら駆け込んでくるのが、シャツにセーター、コートを着たハムレット役のサーシャ。現代的な衣装なのが面白い。若い恋人達はとても幸せそうに振る舞い戯れる。コートを脱いだハムレット、なぜかシャツのすそが片側だけはみ出している。そのうちに、オフィーリアの様子がおかしくなり、明らかに情緒不安定になる。このあたりのシルヴィアの演技、とても繊細で、決してエキセントリックではないのに壊れて行っているのが見えてくる。ハムレットは旅立たなければならない。ひどく悲しむオフィーリア。ハムレットは、オフィーリアの悲しみを和らげようと、必死にふざけたふりをして、オフィーリアをリフトしたりするけど、その必死さがなお悲しい。登場したときと同じようにどたどたと、ハンカチ一枚を落として走り去っていく。落ちたハンカチをそっと頬に押し当てるシルヴィアの、不安さとあきらめと、不思議な平穏さを内包した表情が、ひどく印象的。
ハムレットという物語の悲劇的な結末がわかっているだけに、恋人達の幸せそうな時間と、ふとよぎる不幸の予兆に胸が締め付けられる。


■フー・ケアーズ?
 振付:バランシン  音楽:ガーシュイン
 出演:パロマ・ヘレーラ、ホセ・カレーニョ

赤いミニドレスのパロマがとても可愛い。チュチュより、彼女にはこういうほうが似合っているんじゃないかな。踊りそのものも、「海賊」よりずっとノリが良く、ガーシュインの洒脱さによくマッチしているし音楽性もぴったり。クルクルと独楽のように回り、非常に難しい振付を楽々とこなしている。一方ホセは、黒いシャツとパンツ。衣装がちと今ひとつな感じ。踊りはあくまでもエレガント。こっちも「海賊」の時より調子が良さそうなんだけど、踊りの質としては、ホセはあまりにも優雅すぎてちょっと違うかな、という感じがする。でもやっぱりうまいなあ。こういうおしゃれな演目がガラに一つ入っていると、趣向が変わっていい。

■マノン (沼地のパドドゥ)
 振付:マクミラン  音楽:マスネ
 出演:アレッサンドラ・フェリ、ロベルト・ボッレ

沼地のパ・ド・ドゥ自体はかなり短い場面である。本来だったら、このシーンの最初、娼館のマダムとかムッシュGMとかレスコーが走馬灯のように登場するところから上演できれば、もう少し作品の世界の中に入っていくことが出来るのかもしれない。マノンとデ・グリューが最果ての地に追い詰められ、死の間際にあるという状況に入っていくことが、観客としても難しいのである。ふらふらと舞台を歩くふたり。デ・グリューを演じるロベルトの絶望と苦しみに苛まれた表情が素晴らしい。ガラの一シーンでここまでの表情を作り上げることができたことに感心した。そしてもちろんフェリ!今際の際にいて、生命の灯が今にも消えそう、立っていられるのが不思議なくらいなのに、そこには最後の輝きが存在している。デ・グリューの腕から放り投げられ回転するところでも、ボロ人形のようにまったく力が入って無いのに、それでも完璧に身体はコントロールされている。落下するマノンをキャッチするタイミングに関しては、去年のフリオ・ボッカのフェアウェル公演で観たボッカの方がさすがに絶妙だったと思うし、パ・ド・ドゥの息の合い方も、長年のパートナーであったボッカとの方が良かったとは思う。それでも、ロベルトのサポートには心がこもっており、見事だった。一昨年、ダーシー・バッセルとのマノンのときも決して悪くは無かったけど、あの時は、ダーシーがあまりにもすごかったのでロベルトはかすんでしまっていたのだ。今回は、演技に関してはもちろんフェリのほうがはるかに上なのは否めないけれども、それでも、ロベルトは確かな存在感があり、この短い時間の中でも、たしかにデ・グリューとして存在しており、フェリの最後のパートナーとしての役割を十二分に果たしていた。マノンの身体を抱えて沼地を歩いていくロベルトの姿は、疲労困憊し絶望の中にあっても、なおも力強く堂々としていて誠実だった。

現実なのか、夢なのか、混濁した意識の中でふらふらと彷徨うマノン。そんな彼女を最後まで愛しぬこうとするデ・グリューの苦悩がダイレクトに伝わってきた。彼の腕に飛び込むマノンは、腕を伸ばし、何かを掴み取ろうとその上を見つめる。そこには、まだ生きようとする強い意志が伝わってきた。だけど、ついにはデ・グリューの中でぐったりとし、腕がだらりと垂れ下がる。その死にっぷりの気高いまでの美しさに打たれる。マノンの亡骸を横たえるデ・グリューは、まだ彼女が死んだことが信じられない。目を覚ますんだ、生きるんだ、と彼女の身体を揺らすが、反応は無い。死を知ったデ・グリューのあまりにも激しい嗚咽。ロベルトの打ちひしがれた、「No...」という叫び声が聞こえてきそうな悲しみは、素晴らしいバレリーナを失う私達の思いと同一化した。

そしてカーテンコール。ボッカのフェアウェルや去年のバレエフェスでも思ったのだが、マノンの沼地のパ・ド・ドゥが最後の演目となると、マノン役のダンサーが一人ボロボロの格好で登場することになって少々気の毒な感じ。でも、フェリはこの姿でもとても美しく見える。何回かカーテンコールがあり、金銀のテープが舞った後、カーテンが開いたら一人佇むフェリに赤い花びらが舞い降りる演出があった。この演出はとても素敵だったと思う。涙はあっても、同時にとても満たされて幸せそうなフェリの姿がそこにはあった。たくさんの感動を、ありがとう、アレックス。

そして月曜日にいは最後のお別れが来る。果たして平静でいられるだろうか。


今回の演目は、こうやって振り返ってみると、古典作品でなくてもドラマ性を重視した作品が多いことに気づかされる。さすが、ドラマティック・バレリーナのフェリに捧げる作品群だと思った。コンテンポラリーの作品を取ってみても、どのダンサーも演技が充実しているから、物語を想像してしまうのだ。

が、フェリがいなくなってしまったら、彼女のあとを次ぐような人は果たしているのか、考え込んでしまった。たとえばシルヴィア・アッツィオーニのように(そして今回出演していないけどタマラ・ロホのように)演技力の優れた人は何人かいるのだけど、フェリほどの女優バレリーナがこれから現れるということは無いのかもしれない。


最後にちょっと苦言。

今回チケットの優先予約の時に日本にいなかったということもあり、予算の関係もあって、席が大いに不満の残る場所だったのが残念。普段使っているプロモーターではない公演だと、チケットも希望通りに取れなくて困ってしまう。その上、チケットが高いので安い席を買ったら、後で割引チケットが出たり、関係者席の良席が放出されたりしているし。パンフレットを売っていない、予告されていた写真集を売らない。平日のみの公演で、仕事がある人は行くのが大変。

そして、一番残念だったのが、オーケストラ演奏ではなくテープだったこと。しかもテープの音質が非常に悪かった。たしかにチケットは高いけれども、たとえばS席が2万5千円でもオーケストラが入っていたほうが満足度が高かったと思う。やっぱりバレエに果たす音楽の役割は大きかったと実感した次第。上の階から見て、オーケストラピットに何もないのはかなり間が抜けていた。

2007/08/02

バーミンガムロイヤルの来日、コッペリアに吉田都さん

来年1月のバーミンガムロイヤルの来日公演の概要がNBSのサイトに出ています。フェリの「エトワール達の花束」を観て家に帰ったら、バレエの祭典会員向けの案内も来ていました。

「美女と野獣」では一日、佐久間奈緒さんが主演の日があります。

そして「コッペリア」には吉田都さんが一日だけ主演!平日とはいえ凄いチケット争奪戦になりそうです。ゆうぽうとなので、会場が狭いということもありますし(逆に、どの席からでも見やすいのは良いことですが)

『美女と野獣』全2幕

2008年
1月6日(日) 5:00p.m.
 ベル:エリシャ・ウィリス 野獣:イアン・マッケイ
1月7日(月) 6:30p.m.
 ベル:佐久間奈緒 野獣:ツァオ・チー
1月8日(火) 6:30p.m.
 ベル:エリシャ・ウィリス 野獣:イアン・マッケイ

会場:東京文化会館

『コッペリア』全3幕

2008年
1月15日(火) 6:30p.m.
 スワニルダ:吉田都 フランツ:イアン・マッケイ
1月16日(水) 6:30p.m.
 スワニルダ:エリシャ・ウィリス フランツ:タイロン・シングルトン
1月17日(木) 6:30p.m.
 スワニルダ:アンブラ・ヴァッロ フランツ:ジョセフ・ケイリー

会場:ゆうぽうとホール


アンヘル・コレーラの新カンパニーに移籍予定のイアン・マッケイは両作品に出演します。NBSの天敵、新国立劇場バレエ団の「カルミナ・ブラーナ」にゲスト出演したことは、多分今回の宣伝では伏せられるんでしょうね。

「美女と野獣」は、とても面白かった「カルミナ・ブラーナ」と同じビントレー振付作品なので楽しみです。

チケット発売は9月8日。これは見逃せませんね!

必読!アンヘル・コレーラのインタビュー記事

いちぞーさんのブログ「やめられないのよ、追っかけは」で、いちぞーさんによるアンヘル・コレーラの独占インタビューが掲載されています。(英語版はこちら

このインタビューが本当に面白いので、今回のグルジア国立バレエ「ドン・キホーテ」でアンヘルくんの虜になったみなさん、そして今回残念ながら見逃したけど、評判の高さを聞いて次回は観たいと思ったみなさん、ぜひ読んでくださいね。ファンならではの視点で、雑誌などのインタビューではわからないアンヘルくんの素顔が伺えます。

来年旗揚げを予定しているBallet de Espanaについて、今年のメトシーズンについて、更には一緒に踊ったラリ・カンデラキさんの印象についてなど語られています。アンヘルくんの写真もあります。

今回の来日公演について
http://blog.livedoor.jp/ichizo31/archives/54721442.html

自ら立ち上げたカンパニー、Ballet de Espanaについて
http://blog.livedoor.jp/ichizo31/archives/54722131.html

ABTとの今後の関係やニーナ・アナニアシヴィリ、ディアナ・ヴィシニョーワとのパートナーシップについてhttp://blog.livedoor.jp/ichizo31/archives/54733447.html


Ballet de Espanaですが、かなり強力なメンバーを集めたようです。すでに他のインタビューでも言明しているレティシア・ジュリアーニをはじめ、アンヘルの姉カルメン・コレーラが入団。ゲスト・プリンシパルにはABTのエルマン・コルネホ。それから、新国立劇場バレエの「カルミナ・ブラーナ」に客演したバーミンガム・ロイヤル・バレエのイアン・マッケイ(とてもハンサムな方ですね)、そして、今週末のゴールデン・バレエ・コースターに出演するシンシナティー・バレエのアディアリス・アルメイダ(Adiarys Almeida)とジョセフ・ガティ(Joseph Gatti)。プリンシパルは合計8名とのことです。期待できそうな布陣ですね。また、ロイヤル・バレエスクールの今年の卒業生5名がこのカンパニーに入団すると発表されています。

詳しくは、インタビュー本文をお読みください。よくバレエ雑誌のインタビューを読んで、「そんなどうでもいいことなんか聞かないで、どうして肝心なことを聞いてくれないの」と思うことがありますが、こちらのいちぞーさんのインタビューは、聞きたいことをきちんと聞き出してくださった、痒いところに手が届く素晴らしいものです。

故郷のスペインに、高い水準のクラシック・バレエ・カンパニーを作ろうと何年もの間奮闘してきたアンヘルの努力は並大抵のものではありません。ぜひアンヘルを応援し、このBallet de Espanaの来日が実現するよう、応援したいですね。

カンパニーについての追加情報はこちらへ(英語)

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なお、このインタビューで明らかになりましたが、来年春のABTのMETシーズンの演目は『ジゼル』、『ドン・キホーテ』、『海賊』、『ラ・バヤデール』、『眠れる森の美女』、『メリー・ウィドウ』、そして『白鳥の湖』となります。
今年の演目とかなり入れ替わりますね。また、秋のシティセンターシーズンには、アンヘルは出演しません。

その代わり、Kings of The Danceのロシアでの公演にアンヘルは出演します。共演は、イーサン・スティーフェル(ABT)、ヨハン・コボー(ロイヤル・バレエ)、ニコライ・ツィスカリーゼ(ボリショイ・バレエ)と豪華この上ありません。このメンバーで日本に来て欲しいですね。

モスクワ 10月28日~10月31日
ペテレスブルグ 11月2日
パーム 11月7日~8日
ノボシビリスク 11月10日~11日

こちらも詳しくはいちぞーさんのエントリへ。

※今年上演されて、来年上演されないのが『マノン』、『ロミオとジュリエット』、『オテロ』、『真夏の夜の夢』、『シンデレラ』です。フェリの引退でマクミラン作品が上演されなくなってしまうのと、観客動員(『オテロ』、『真夏の夜の夢』は入りが良くなかった)などを考えて、ということでしょうね。しかしマクミラン好きの私にとっては少々残念なラインアップです。『海賊』、『白鳥の湖』は来年の来日公演で上演予定ですし、現地に行ってまで観たいと思うのは『ラ・バヤデール』くらんですね。

2007/08/01

写真集 「Alessandra Ferri  A Farewell Tribute」

6月にABTのフェリの引退公演に行った時に、アレッサンドラ・フェリの新しい写真集Alessandra Ferri A Farewell Tribute (ご主人ファブリッツィオ・フェリが撮影)が売っていました。 全44ページ。

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ファンには必見です。1996年頃から今までのいろいろな写真があります。「ジゼル」「マノン」「ロミオとジュリエット」のドラマが伝わってきそうな写真から、ヌード写真集「Aria」からも何枚か、それから天使のように可愛い娘さん二人の写真など、家族との幸せそうな写真。かけがえのないパートナーたち・・・フリオ・ボッカ、ロベルト・ボッレ、デズモンド・リチャードソン。そしてスティングとの写真、お腹の大きな写真などバラエティに富んでいます。

特に印象的なのは、一番最後のページにある「椿姫」の写真。2007年と最近撮影されたものですが、白いドレスに身を包んだフェリの美しいこと。

ファブリツィオ・フェリは有名なファッションカメラマンとのことで、陰影を巧みに使った、ドラマティックな雰囲気あふれる素敵な作品や、深みのある色彩の写真を撮られる方です。ABTの2008年のカレンダーや、最近のABTのパンフレットやポートレート写真も撮影されています。

雑誌DDDの記事に依ると、この写真集は「エトワール達の花束」公演会場でも売るみたいです。45ドルと少なめのページ数の割りにちょっと高価だったので、日本ではいったいいくらになるんでしょうか。

追記:エトワール達の花束公演では、売っていませんでした。なお、この公演、パンフレットの販売もありません。無料で簡易版のパンフレットが配布されていました。

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