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« ルジマトフ、キエフバレエ「ライモンダ」降板、代役はコルプ | トップページ | 更新の予告 »

2007/07/01

6/22 ABT Romeo and Juliet

アンヘル・コレーラ主演の金曜夜の公演ということでチケットの売れ行きが良く、当日の戻りに期待しようと思ったけど朝ボックスオフィスに行ったところ、もう6階席のファミリーサークルしかないという。が、当日のみ発売される立見席でオーケストラの一番前の席があるというではないか。立見席初体験である。

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Romeo Angel Corella
Juliet Julie Kent
Mercutio Carlos Lopez
Tybalt Sasha Radetky
Benvolio Jared Matthews
Paris Gennadi Saveliev
Lady Capulet Stella Abrera
Lord Capulet Roman Zurbin
Friar Laurence Frederic Franklin

この立見席だけど、非常に見晴らしが良くて見やすい。METのオーケストラ席は段差がほとんどなくて、ほとんどどの席でも前の人の頭が邪魔という困ったところなのだが、その問題が完全にクリアされていて視界が開けている。いわゆる雨宿り席なので圧迫感があるけど、バルコニーシーンのバルコニーもちゃんと見えた。こんな席がファミリーサークルと同じわずか24ドルというのはお得すぎ。立ち見といっても、ちゃんとついたてのようなものがあるので、そこに肘をついたりして見ることができ、普通に立っているよりは疲れない。問題があるとしたら、あまりにも冷房が効きすぎて寒いことくらい。

さて、アンヘル・コレーラといえばロミオかバジル、というくらいの当たり役。彼のロミオを生で見るのは4回目(うち新国立劇場での客演が1回)。今までの3回はすべてジュリエット役がフェリだった。アンヘルは、舞台に登場した瞬間から、ロミオそのものという演技。ちょっとお調子者で、まっすぐで、爽やかな若者。前髪が伸びて目にかかりそうなくらい。以前と比較するとずいぶんと落ち着いた感じになってきたように見えた。踊りが丁寧になっている分、疾走感が薄れているようだ。それでも、独特の愛嬌溢れる魅力とパッションは健在。マキューシオ、ベンヴォーリオとのコミュニケーションのとり方はばっちりだし、キャピュレット家の宴に行く前の三馬鹿大将(と勝手に命名)のダンスも息がよく合っている。
バルコニーシーンでのほとばしる情熱を体現した、超スピードのピルエットやシェネは健在。すごい速さなのに、丁寧になっていて、軸がぶれない回転は完成度がますます高くなっている。本物のロミオってこういう人なんだろうな、と思わせる血の通う人物像を演じられているのが見事だ。ドラマティックな演技力を身につけ、3幕冒頭の別れのパ・ド・ドゥの、胸をかきむしるような離れたくない、でも離れなくてはならないというどうしようもない悲しさも、身体表現ひとつで表わすことができるようになっている。アンヘル・コレーラはすっかり成熟したと思わせた。これが最後、仮死状態のジュリエットとのパ・ド・ドゥになると、そこでまた再び、10代の少年に戻って生のストレートな感情をぶつけていて、それがまた、観る者の心を激しく揺さぶるわけだ。見事な役作りだけど、同時に、アンヘルが大人になってしまったという一抹の寂しさも感じた。マキューシオの死の後、ティボルトに向ける怒りが思ったほど激しくなかった、むき出しの激情ではなかったところに、彼の成熟を見てしまった思いがする。

ジュリー・ケントはもともと好きなダンサーではない上、彼女のような長身でやせぎすのダンサーがジュリエットを演じるのって果たして似合うのだろうか、と思った。また、身長の高くないアンヘルとのバランスもどうなのか、かなり不安を持って臨んだ。結論から言えば、彼女のジュリエット自体は、最後の死の場面を除けばまずまず良かったのではないかと思う。ただし、アンヘルとの相性はというと、演技の質が違うことからも、やはりいいとは言いがたかった。ABTでは、フェリ、シオマラ・レイエス、パロマ・ヘレーラとのジュリエットが彼のロミオとバランスがとれてよかったのではないだろうか。

ジュリーのジュリエットは、ガラス細工のように繊細で、強く抱きしめたら壊れてしまいそうである。少し背が高すぎる以外は、美しくピュアな容姿といい、年齢を感じさせないイノセンスといい、ジュリエットにぴったり。出会ったときの喜びの表情といい、バルコニーでの陶酔を踊りに高めている様子といい、透明感がある。バルコニーでロミオを待つところはちょっとしなを作りすぎかもしれない。それ以外はとても良いのに、時々、彼女の演技にはそういった瑕疵がある。その最たるものが、ラストの墓場でのシーンだった。

ジュリエットが仮死状態から目覚めると、傍にはジュリエットが死んだと思って斃れたロミオが横たわっている。後を追ったジュリエットが、苦しい息の元でベッドの上を這って、少しでも愛しいロミオの死体の傍に行きたい。少しでもロミオに触れていたい。触れようとして腕を伸ばし、ようやく指先で触れたところで命が尽きる。もしくは、あと少しで届くのに、触れることすら叶わないで死を迎える。その切なさが涙腺を刺激してくれるのに、ジュリーのジュリエットは、大胆にもロミオを抱きかかえられるほど接近して、彼の頭をかき抱いてから絶命するのだ。最後にジュリエットにそこまでの力が残っていたとは思えないし、今までのジュリエットの演技にそこまでの情熱が表現されていたかといえばそれは否なので、違和感が残ってしまって泣けなかったのだ。

でも、その部分を除けば、ジュリーのジュリエットは美しかったし、良かったのではないかと思える。ラストの演技が致命的だったけど。

ベンヴォーリオはジャレド・マシューズ。ジャレドはハンサムで端正なダンサーだし、めきめき力をつけている。男性コール・ドの中でもソリスト候補の最右翼で、次の週の「白鳥の湖」では代役でロットバルトを踊ることにもなっている。3年前にMETでABTの「ロミジュリ」を観た時、ベンヴォーリオをデヴィッド・ホールバーグが演じていたことを思い出した。ジャレドも、デヴィッドのように大輪の花を咲かせることがあるのかもしれない、とふと思った。マキューシオは、前日はベンヴォーリオだったカルロス・ロペス。今回、当初マキューシオが予定されていたエルマン・コルネホ、ヘスス・パストールが降板して、マキューシオを踊る残りの二人(もう一人は、クレイグ・サルスティーン)は本当に大変だったと思う。カルロスは、マキューシオにしてはちょっと真面目すぎる役作りで、はじけ方が少々足りないところもあった。でも、彼も上手なダンサーだし、ロミオ、ベンヴォーリオとの踊りは揃っていたし掛け合いもばっちり。ティボルトとの決闘で刺されてから死に至るまでの演技は、ドラマティックでとてもシンパシーを感じさせるものだったと思う。
サシャ・ラデツキーのティボルトも、以前見たときより凄み、悪い人オーラが出ている上渋みもあり、いかしていた。ティボルトはロミオとジュリエットでは最重要キャラクターの一人なので、彼を演じるダンサーに演技力がないと、まったくつまらなくなってしまう。その点では、完全に条件を満たしていると思った。

特筆すべきなのが、93歳になるというフレデリック・フランクリンのローレンス神父。まっすぐに伸びた背筋。美しい腕使い。品格。そして、その年齢にもかかわらず、視線がとても色っぽくて愛に満ちているのが、1階席の一番後ろからでも見えるのだ。こんなに美しい93歳は他にはいないだろう。

「ロミオとジュリエット」は観る回数を重ねるごとに、音楽と振付の融合の見事さに惚れ惚れとする。キャラクター一人一人にテーマ曲が充てられていて、それらが重なってポリフォニックなハーモニーを作っていく、それがまたダンスの重奏となっていくのがすごい。願わくば何度でも何度でも観たい、聴きたい、大好きな演目がマクミラン×プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」だ。

「ロミオとジュリエット」の決定版といえばこれ。

ミラノ・スカラ座バレエ団「ロミオとジュリエット」(マクミラン版)全幕ミラノ・スカラ座バレエ団「ロミオとジュリエット」(マクミラン版)全幕
コレーラ(アンヘル) フェリ(アレッサンドラ) プロコフィエフ

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コメント

アンヘルロメオご覧になったんですね!
ジュリーは大きいから、よっこいしょって感じのリフトではなかったですか??
アンヘル、最近の写真見るとなんだか急に大人っぽくなった(というか老けた?)感じですよね。
来年のABT来日も全幕はロメジュリやってほしかったなあと思います。
今月末のドン・キ楽しみです♪

プリマローズさん、
アンヘル、リフトもしっかり上手でしたよ。でも、フェリのフェアウェル公演でのバルコニーシーンでのロベルトが一番上手だったと思いますけど。
よっこいしょって感じはなかったのですが、ジュリーは背が高いから、ポアントで立つと完全にアンヘルより大きいので、バランスが良くないのかな、と思います。
アンヘルのロミオ、全幕で日本で観たいですよね。白鳥などよりロミジュリの方がよほどABTには合っているのにね。
ドンキは超楽しみです。2公演行く予定です。

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