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« 5/13 新国立劇場バレエ団「コッペリア」 | トップページ | ABT、METシーズンオープニングガラ »

2007/05/16

5/5 Matthew Bourne's Swan Lake

Burswood Theatre

The Swan/The Stranger Alan Vincent
The Prince Simon Williams
The Girlfriend Agnes Vandrepote
The Queen Sarrane Curtin
The Private Secretary Ashley Bain

今日は、フラットな6列目の席である。舞台には近いのだけど、少し安い値段ということもあり、前の人の頭が邪魔で足元が見えづらい。クラシックバレエではないから、まあいいか。でもやっぱり観づらい。良い席も持っていたのだけど、初めてこの公演を観るという家人に譲った。

一幕、ベッドの上に覆いかぶさるように腕を広げるザ・スワンの、どっしりとしたシルエットを見てダメだこりゃとがっかりしてしまった。そう、マチネのキャストがソワレにずれこんだのではなく、当初予定通りのアラン&サイモンコンビである。ザ・スワン役ダンサーが後姿で演じる彫像のウェストもくびれていないし・・・。

アランのザ・スワンは一昨年にパリで観ていて、一度観るんだったら珍しいものとしてまあいっかと思うのだけど、2度3度とは観たくないのだ。とにかくしまりがないのがイヤだ。腕は一生懸命白鳥を意識してくねくね動かしているんだけど・・・。一番気になるのが、下半身の弱さ。アラベスクの脚が全然上がらないしキープできない。バランスも無理。なによりも、脚がまったくアンドォールしていないのが目に付いて目に付いて・・・つま先もきたないし、ジャンプもひたすら重たい。前日観たトーマスが美しかっただけに、粗が目立った。その上、王子役のサイモンはロイヤルバレエスクール出身のクラシックダンサーで、そこそこテクニックがあるほうだから、余計ダメさが際立ったというか。とにかく美しくないの一言に尽きる。大体、王子よりもザ・スワンの踊りが下手でどうするんだ・・・。サイモン相手でこうなんだから、クリス相手だったら余計差が明らかになっちゃうじゃない。

マシュー・ボーンはなんでこの人をこんなに評価しているのか、まったくもってナゾである。ザ・カーマンのルカのような役だったらまだしも、今までザ・スワンを踊ってきたのは、アダム・クーパーや首藤康之、キース・ロバーツなど錚々たるダンサーなのだ。候補になったけど結局踊らなかったのだって、ラスタ・トーマスだったり凄い人たちがいた。前回のジェイソン・パイパーはたしかにクラシックのダンサーではなかったけど、それを補って余りある身体能力と、美しい肉体があった。アランは演技力はある人だとは思う。だけど、ザ・スワンは他の白鳥の誰よりも美しく踊らなくては、意味がないのだ・・・いくら文句を言ってもいい足りないくらい。

さて、気を取り直して王子について。サイモン・ウィリアムズもパリに続き観るのが2回目。彼はクラシックの技術はしっかり身につけていて、踊りも比較的柔らかいし、アンドォールもしっかりしている。ただ致命的なのは、小柄なくせに太っていて冴えない容姿であることだ。マシュー・ボーンの「スワンレイク」の王子は、ダメダメ王子であり、かっこ悪い役なのではある。だけど、サイモンの王子には、育ちのよさや気品がないのがつらいところである。内向的でマザコンで抑圧されて育ってきているというのはよくわかるんだけど・・・。それでも、昨日の(容姿は美しい)ドミニクよりは良かったと思う。パリで観た時よりも成長していたと思うし。王子としては、まあ及第点といってもいい。スワンクバーの前で踊る内省的なソロの出来もなかなか良かった。

が、フレンズの会報を読んだら、今回のツアーでサイモンはザ・スワンも踊ったと書いてある。え~!こんなにカリスマ性のないザ・スワンもいないだろうし、ストレンジャーとして誘惑している姿もまったく想像できない。だって、ホントに典型的ないじめられっこのように小太りなんだもの。マシュー、いくらスワンレイクは自分の手を離れた作品だからって、それ(=サイモンのザ・スワン/ザ・ストレンジャー)はアリなのか?

アランは、ザ・ストレンジャー役に関してはまだマシというか、こういうのもアリかな、と思わせた。何よりもこの役だったら服も着ているし、演技はまあそこそこいけるので。音にうまく合わせて踊るのは得意だ。女王役のサラーンと長年一緒に踊っているので、女王とザ・ストレンジャーが黒鳥のPDDの曲で踊るところの息はぴったり。彼の良かったのはここだけかな。3幕の終わりに女王とキスしてニヤリと笑うところも、邪悪さがなく物足りなかった。アランは、今ひとつ悪い人になりきれないのである。

4幕については、もはやアランを見る気にはまったくなれず、サイモンとスワンズばかりを観ていた。4幕は踊りという面では王子の見せ場はほとんどない、錯乱した王子が白鳥の真似をしたり、エクソシストのように両手両足をつかって背面歩きするくらいしないのだが、代わりに死に至るまでの心の旅路を表現しなければならない。慕っていたザ・スワンが殺されるところを目の当たりにして、もがき苦しみ悲しみのあまり息絶えるという物語をしっかりと見せてくれたので、最後はちょっと泣けた。4幕の、母親らしさを取り戻し王子の亡骸を抱えて泣き崩れる女王=サラーンの演技が素晴らしかったことも付け加えなければならない。

とにかくマチネを中止に追い込んだ舞台装置問題が解決し、何の滞りもなく無事に公演ができたことは喜ばなくては。ダミアンの伸びやかで、美しい流線型を描くような大きな白鳥の踊りが観られたのも嬉しかった。意外な配役としては、蛾の乙女とフランス王女を踊ったのがノイ・トルマーだった。前日の蛾の乙女を踊ったピア・ドライバーはポアントではなくバレエシューズで踊っていたのであれ、と思ったのだけどノイはポアントだった。ノイの演技は茶目っ気があって可愛いので好き。フランスの王女は挑発的でセクシーな役なのだが、ここでの彼女も妖艶で見事だった。

小さな4羽の白鳥は、コーディ、ギャヴ、サミュエルとかなり最強に近い布陣で、コーディの顔芸はここでも相当ウケていた。コーディはこの日はスペインの踊りでも大活躍。昨日王子を踊ったドミニクは、この日は木こり役だった。こっちの役も、ギャヴが踊った時には見られる妙なユーモラスが足りなくて、今ひとつである。

主役二人が違うことで、まったく違った作品になってしまうということが改めて実感された公演だった。

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