BlogPeople


2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« 5/20 新国立劇場バレエ団「コッペリア」 | トップページ | ローザンヌ・ガラチケット明日発売 »

2007/05/24

5/23 K-BALLET COMPANY「海賊」

コンラッド:スチュアート・キャシディ
メドーラ:吉田都
アリ:橋本直樹
グルナーラ:松岡梨絵
ランケデム:輪島拓也
ビルバント:ビャンバ・バットボルト
サイード パシャ:イアン・ウェップ

<第1幕2場>(市場)
物乞い:小林絹恵、アレクサンドル・ブーベル

<第2幕1場>(洞窟)
パ・ド・トロワ
 第1ヴァリエーション:東野泰子
 第2ヴァリエーション:樋口ゆり
 第3ヴァリエーション:長田佳世

指揮:福田一雄
演奏:シアターオーケストラトーキョー

札幌公演で負傷した熊川哲也さんの代役で橋本直樹さんがアリを演じた「海賊」。入り口に熊川さんからのメッセージが張り出してあり、1年半の構想を経て完成した新制作という。なるほど、かなり斬新な設定と演出があり、従来の「海賊」とかなり違った、オリジナリティあるものにできあがっていた。

今日の功労者は、熊川さんの穴を見事に埋めた橋本さんだろう。たしかに熊川さんのスターオーラはないし、けれん味や鋭さはないかもしれない。でも素直であくのない、力強く若々しい踊りには大変好感が持てるし、跳躍力があり、パ・ド・トロワでのジュッテの滞空時間も長い。回転系も良く、着地はきれいで丁寧と、非常にテクニシャン。外見的には、身長がさほどないなど少し熊川さんを思わせるところがあるけど(カーテンコールで二人並んだところ、橋本さんの方がやや背が高かった)、少年っぽさを残したルックスも非常に良いし、奴隷アリの衣装が似合う、日本人には珍しいしっかりとした体型だった。コンラッドの忠実なしもべでありながら、リーダー性もあって頼りになる若者に見えて、とっても魅力的だったと思う。経験をつめば、スターになれる素質が十分あると思った。というか、スター誕生の瞬間を見た気がした。カーテンコールでも大きな歓声を浴びていた。

パ・ド・トロワでは、アリが奴隷の身でありながら主人の恋人であるメドーラへの秘めた思いを表現しなくてはならないのだが、そこまでの感情表現はさすがにちょっと難しかったか。実はアリはメドーラより実はコンラッドの方に想いを寄せているのだから、これで良いのかな。

吉田都さんはさすがにお見事の一言。すごく可愛くて心優しいメドーラを好演。船が難破して倒れているコンラッドを介抱するところにも、さりげない女らしさや心遣いが感じられる。今回の「海賊」ではメドーラとグルナーラは姉妹という設定なのだけど、妹への気遣いもしっかりと出していた。踊りの方はとても安定しており、パンシェしたアラベスクが非常に美しい。パ・ド・トロワでのフェッテは、時々ダブルを織り交ぜていたけど、音にぴったりと合っており、楔でも打ち込んだのかと思うほどまっすぐでブレがなく、移動もほとんどしていなかった。アレグロでの音への乗り方が小気味良く、ひとつひとつの動きが丁寧で美しい。何よりも気品と愛らしさがある。

惜しむらくは、今回の演出ではメドーラの見せ場が少ないことである。1幕の奴隷市場ではイタリアン・フェッテを踊らない。2幕の寝室のパ・ド・ドゥは非常に短い。さらに、パシャの夢のシーンもマリインスキーなどで見られる花園ではなく、群舞を引き連れてのメドーラのチュチュでの踊りがないのだ。せっかく都さん目当てで観たのに、ちょっとその点は不満。熊川版の「海賊」は男どもの踊りを見せることを主眼とした演出のため、女性ダンサーの踊りが相対的に削られてしまったのだ。

コンラッドを演じたスチュアート・キャシディはサポートが非常に上手で都さんとの息がとても合っていた。ヴァリエーションは2つほどしかなくて踊りの見せ場は少ない。ビルバントに薬を嗅がされた後いつまでも失神していたりと案外頼りないのだけど、包容力があって優しいコンラッドを演じていた。終盤のチャンバラから、ビルバントを倒すあたりに見せる演技力は、さすがにロイヤル仕込みだけあって説得力があった。

意外と良かったのが、ランケデム役の輪島さん。あくどい奴隷商人というよりは、本当はいい人なんだけど仕方なく小悪党になっちゃったという感じでわりと爽やか。以前に比べてずっと跳躍が軽くなり、身のこなしもとてもきれい。脚が良く開いているし、5番にきれいに着地できている。彼の成長も今後楽しみになってきた。

松岡さんの踊りはダイナミックで、都さんとは対照的な感じだったけど魅力的だった。手脚が長い方だと思うし、ゴージャスな美人なので、華がある。腕の使い方は柔らかいが、くっきりとした輪郭のある踊りで、非常に意志が強そう。パシャに売られていくときには相当強く拒絶していた。グルナーラの衣装はお腹を出しているので、腹筋がくっきりはっきり現れていた。少し痩せすぎなのかもしれない。ビルバント役のビャンバ・バットボルトは、黒髪のウェーブヘアが似合っていて、すごく悪そうな人でかっこよかった。海賊どもの踊りはたっぷり観られるし、男性ダンサーたちの魅力は存分に発揮されていた。

と、K-BALLETのダンサーがみな魅力的なのがよくわかった。この布陣だったら、熊川さん抜きでも観て損はないと思える。S席18000円は高いと思うけど、私は今回14000円のA席だったので、値段分の価値はあると思った。
熊川さんの不在を、カンパニー一丸となってカバーしようという気迫が感じられ、充実した舞台になっていた。

立派なつくりの海賊船といい、舞台美術はとてもお金がかかっていそうで見事。衣装もなかなか豪華でセンスも悪くない。ストーリーの筋はわかりやすく刈り込んであり、スピーディな展開。ただし、寝室のパ・ド・ドゥと花園のシーンがないのはやはり物足りない。ハーレムでのコール・ドの踊りは、白いハーレムパンツの女性ダンサー10人が踊るもので、人数的にも少ないし華やかさに欠け、振付も面白くない。今まで、「海賊」を観てパシャの夢の中の花園のシーンは退屈だと思っていたけど、去年のマリインスキー来日公演でのロパートキナ演じるメドーラの素晴らしい踊りを観ていて感動した。あの踊りを都さんが踊るのかしらと期待していたのに見られなかったのがとても残念。

終わり方については、ネタバレになるので詳しく書くのはやめておくけど、一言。実はアリはコンラッドのことが好きだったのね。この版では実質的な主人公はアリであり、アリというキャラクターの魅力を見せるための作品となっている。意外にほろ苦い結末が待っているということだけ、記しておく。

いずれにしても、まったく新しい、男っぽい「海賊」という作品を作り上げた熊川さんの手腕は見事なものだと思う。個人的には、やはりマリインスキーやABTで上演している一般的な演出の方が好きだけど。


熊川さんはカーテンコールの途中から登場。松葉杖もつかないで、少し足は引きずっていたけど元気そう。明るい表情で橋本さんらダンサーの健闘を讃えていた。肩を抱かれた都さんの照れたような笑顔がとても可愛かった。払い戻しをした人も少しはいたようで、所々空席はあったけど、払い戻ししないで観ることができて、良かった。

« 5/20 新国立劇場バレエ団「コッペリア」 | トップページ | ローザンヌ・ガラチケット明日発売 »

バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさんの
>実はアリはコンラッドのことが好きだったのね。
の一言で、私のこの公演をやっぱり見たい!という気持ちに抑えがきかなくなってしまったのですよ・・・(笑) ああ、行きたいな~~。

うるるさん、

そう、アリといえばうるるさんなのよね♪
ぜひ観ていただきたいわ!ホントアリは素敵なのよ。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30328/15181200

この記事へのトラックバック一覧です: 5/23 K-BALLET COMPANY「海賊」:

« 5/20 新国立劇場バレエ団「コッペリア」 | トップページ | ローザンヌ・ガラチケット明日発売 »