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2007/03/07

オーケストラ・ダスビダーニャ第14回定期演奏会 指揮:長田雅人、v)荒井英治

オーケストラ・ダスビダーニャとは、なんとショスタコーヴィチ専門のアマチュア・オーケストラで、通称タコオケと呼ばれているらしい。ショスタコーヴィチファンには有名な存在であり、過去の公演の評判も大変良い。チケット代が2000円と格安な上、大好きなヴァイオリン協奏曲が上演され、ソリストが東京フィルハーモニー交響楽団の荒井英治さん(マシュー・ボーンの「白鳥の湖」のオーケストラつき公演でコンサートマスターを務めた方)なので、お得だと思っていくことに。

2000席ある東京芸術劇場大ホールは、ほぼ満席という盛況ぶり。オールショスタコーヴィチプログラムなので、さぞかしクラオタっぽい男性だらけだろうなと思ったら、意外と女性もいた。さらに、オーケストラのメンバーにも女性が多くて少々ビックリ。

映画「ピロゴフ~先駆者の道~」の音楽による組曲(L.アトヴミャーン編、ドミトリー・ショスタコーヴィチ)

初めて聴く曲である。というか、そんなタイトル聴いたこともない。映画「ピロゴフ~先駆者の道~」は、1947年の作品で、クリミア戦争の従軍医師として活躍したピゴロフの伝記映画だ。したがって、当局に睨まれていたショスタコーヴィッチが、自分の首を守るためスターリン賛美をあからさまに謳った作品を量産していた時代の、プロパガンダ映画ってわけで。しかし、だからといってつまらない曲というわけではなく、どちらかと言えばその逆で非常に面白かった。誰にでも共産党万歳、と言わせてしまうほどのパワーがある。
1曲目:イントロダクション
2曲目:情景
3曲目:ワルツ
4曲目:スケルツォ
5曲目:フィナーレ
特に、2曲目の高揚感と不穏な弦楽器が重なっているところは身震いがするほど。かなりの爆音でインパクトが強く、続くワルツが急に美しく穏やかなので、面白い展開。フィナーレの盛り上がり方もすごい。演奏は、かなり上手いしよくまとまっている。特に金管系や、情熱的な打楽器がいいと思った。バレエ公演の時に聴かされる、下手なプロオケよりもずっと上。

ヴァイオリン協奏曲第1番 ドミトリー・ショスタコーヴィチ
ショスタコーヴィチが1947年に作曲したものの、当局との問題があって発表は約10年後になった作品。
去年のサンクトペテルブルグ・フィルでワディム・レーピンのとんでもない超絶技巧にぶっ飛んだ一曲。以来、このレーピンのアルバムを愛聴しているので、耳になじんでいる。第2楽章のスケルツォの印象的な旋律、第3楽章の長大なカデンツァなど、演奏者にとってはおそらく鬼のような難曲であろう。正面からこの難曲に挑んだ荒井さんの演奏は、力のこもった素晴らしいものだった。前から6列目という至近距離で観た荒井さんは、まさに音符と格闘しているという感じで戦っていた。だが流れ出てくる音は美しく、泣き笑いのように、軽妙でありながら真摯であり耳を気持ちよく刺激する。オーケストラとヴァイオリンの掛け合いも、語り掛け合ってるかのように絶妙である。時にはちょっとオーケストラの音量が大きすぎるかな、と思うところもあったけど、バランスの取れた良い演奏だった。いやはや、生で聴くと脳みそをシェイクされるような感覚に襲われながらも至福の時でもあるという、すごい曲だ。この難曲を、指揮の長田さんも的確な指示でよく率いていたと思う。オーケストラでは、やっぱり打楽器系が一番印象的だった。

荒井さんのアンコールは、映画音楽「馬あぶ」よりノクターン・イ短調。美しい曲だ。

本日のメーンイベントは、交響曲第15番イ長調。ショスタコーヴィチの最後の交響曲は、彼の交響曲の中でもマイナーな曲であり、これを聴くとどうしてもショスタコーヴィチの演奏会というと5番や7番が多く演奏されるのがわかる気がする。とにかくさまざまな引用がちりばめられており、自作の作品から「ウィリアム・テル序曲」からワーグナーの「ニーベルングの指環」「トリスタンとイゾルデ」まで引用されていたりして、相当人を食った難解な作品だ。しかも一番印象的なのが、「チャカポコ」と言われる、まんまチャカポコしたパーカッション(鉄琴)の音だったりするわけで、それがこの曲に不思議な温かみや癒しの要素を加えている。明るいのか暗いのかもわからない、幸せなのか不幸なのかもわからない、さまざまな感情がない交ぜになっているけど、ショスタコーヴィチの人生そのままを象徴しているかのようだ。そして、ダスビダーニャの演奏も、とても穏やかで温かさがある。ショスタコーヴィチが好きで好きでたまらない人たちが生み出した、幸福感が満ち満ちているのが演奏に感じられた。終盤、さすがに弦楽器を中心に疲れが出てきてまとまりがなくなってきたが、2時間半以上にも及ぶ演奏とあれば致し方ないか。いずれにしても、アマチュア・オーケストラとは思えないレベルの高さであった。

滅多に聴けない曲から、名曲「ヴァイオリン協奏曲1番」まで、ショスタコーヴィチの真髄を感じさせた、とても良い演奏会だったと思う。アマチュアでも、音楽に対する敬意と愛がこもっていれば、良い音楽を生み出すことが出来るんだというのがよくわかった。これで2000円は本当にお得である。来年はいったい何を演奏してくれるのか、とても楽しみだ。


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