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2007/03/19

「融07」3/13、14

『融07』-YUH- 第3弾 ヨーロッパ・バレエと現代アートの交錯
2007年3月13日(火)19:00 Bプログラム
2007年3月14日(水)19:00 Aプログラム
新国立劇場 中劇場

【第1部】
『DIVA』(ディーヴァ)
振付:カロリン・カールソン
映像:端聡
出演:マリ=アニエス・ジロ

solo from ENEMY in the Figure (13日のみ)
エネミー・イン・ザ・フィギュアーよりソロ
振付:ウィリアム・フォーサイス
出演:ホン・ヴァイェーホ Jon Vallejo 

『In The Middle,Somewhat Elevated』(イン・ザ・ミドル・サムファット・エレヴェイティド)
振付:ウィリアム・フォーサイス
出演:竹島由美子、ランディ・カスティーヨ Randy Castillo

Special (14日のみ)
振付:イリ・ブベニチェク
出演:イリ・ブベニチェク、マリ=アニエス・ジロ

『Les rares differences』
振付:マリ=アニエス・ジロ
出演:ブリユ・カルパンティエ Brieuc Carpentirer、マルジョリ・アノト Marjorie Hannoteaux、マーク・マンドラバヘノカ Marc Mandravahenoka

【第2部】
『レクイエム 融07』
振付:イリ・ブベニチェク
映像:端聡
音楽:オットー・ブベニチェク
出演:全員
アフリカンドラム:Goshin Moro(茂呂剛伸)

『DIVA』(ディーヴァ)
中央部に一条の光。三面がスクリーンに囲まれている。黒い帽子と手袋、コートを身に着けたマリ=アニエスが登場し、コート、帽子、そして手袋を脱ぐ。すると、やや逞しい肩を露出したタートルネックの、身体にぴったりとしたドレスに裸足の美しい姿が現れる。黒髪をまとめ、陶器のような白い肌の美貌、スレンダーな長身で、まさにディーヴァのようだ。マリア・カラスのアリア「アンドレア・シェニエ」の第3幕が流れ、長い腕を大きく翼のように広げ、優雅に動かすマリ=アニエス。後ろのスクリーンには、この作品を踊る彼女のモノクロのおぼろげなシルエットのような映像がゆらゆらと映り、実際の彼女のムーヴメントとシンクロするのが、さらにドラマ性を高めていて効果的。途中で照明は真っ赤に変わった。主に上半身、特に腕の動きを中心にした作品だけど、ドラマティックで雄弁、オープニングに相応しい美しさだった。ジロの空間を支配する力に脱帽。

solo from ENEMY in the Figure
13日のみの上演。ホン・ヴァイェーホは金髪で小柄な若いダンサー。ものすごく身体能力に恵まれているのがわかる。跳躍の高いこと!黒いアーミーパンツのようなのを穿いていた。短くてあっというまに終わってしまったけれども、ホン・ヴァイェーホというダンサーの存在感はしっかりと刻まれた。

『In The Middle,Somewhat Elevated』おなじみフォーサイスの超有名作品。何回か生で観たことはあるものの、毎回「何かが足りない」と思ってしまう作品なのだ。きっと完璧に決まったらものすごくカッコいいだろうな、とおもいながら不完全燃焼になってしまうという。
で、今回の竹島さん、すごくかっこよかった。テクニックが非常に安定していて、まったく不安げがない。軸がしっかりしていて、ピルエットも微塵も狂いがなくて素晴らしい。ただ、あまりにも安定しているので、フォーサイス特有のオフバランスの感覚を感じにくい気がした。音への合わせ方も完璧で、この難しい振付を余裕綽々でこなしている。素晴らしい。筋肉質のかっこいい脚をしている。相手のランディ・カスティーヨは身体が引き締まって美しく、身体能力の見事なダンサーだが、竹島さんにベテランの貫禄があるので少し影が薄いかもしれない。
竹島さんは2003年にマドリッドのガラで「エスメラルダ」を踊るのを観て一目惚れしたダンサーだけど、こういうコンテンポラリーもお手の物なのね。でも次はお姫様を踊るところも観てみたい。

『Les rares differences』
暗い中、アコースティック・ギターに合わせて歌が始まる。誰が歌っているのかはわからなかったけど、UKロックっぽいメロディアスな曲で良かった。しばらく静寂があったあと、いきなりヒップホップのファンキーな音楽になって、カルパンティエとマンドラバヘノカの二人のダンサーが登場。上半身裸に黒い袴のようなスカート?を穿いている。ジャンプしてはズサーっとすべってみたり、同じ振付でとても楽しげに踊っている。ズサーっとすべって倒れこんだ後また即座に立ち上がっているところ、きっと腹筋が強烈に強いんだろうな、と思ったり。そこへ、一人の美しい女(アノト)が下手から現れ、作品全体のトーンが、静かなものに変化する。パ・ド・トロワでは、男二人がワンテンポずれたようなユニゾンで踊る。
アノトは主にマンドラバヘノカと絡み、上手の方でいろいろな動きを繰り広げる。カルパンティエは、中央部の、鏡が置いてあるあたりで動きを見せている。二人の男性が、一人の人物の別の面を表現しているのではないか、と思った。

英語で、ずっとナレーションが続けられている。それは、一人の少女と一人の男の間の物語。愛し合っていた二人が一緒に暮らすが、貧しさから心が通じ合わなくなり、それでも子供が生まれて男性がようやく愛情に気が付いて少女に思いを向けるがそれは通じず、そしてしまいに少女と子供のいるベッドは炎に包まれ、男は世界の終わりまで走り続けた、という哀しい物語。ただ、この物語を、ダンスで表現しているわけではないようだった。ただ、悲劇的なトーンは同じであったけれども。どこかで聞いたことがある独白だな、と思ったらやはり映画「パリ、テキサス」のトラヴィスの独白だったようだ。好きな映画なので、今度観直してみよう。

オリジナリティはあるし、釣竿をつかったりなどの小道具使いも面白かったけど、ちょっとだけ長いな、と思うところはあった。

第2部
初日はここで、イリ・ブベニチェクの挨拶があった。ドレスデンで怪我をして、5週間踊りから遠ざかっているとのこと。でもダンサーたちはこの日のために一生懸命練習を重ねてきたので、観てください、と。長身で顔が小さく、立っているだけなのに、ものすごく威厳があってカッコいい。初日はひげを生やしていたが、2日目は舞台に出演するためか、ひげを剃っていた。英語で挨拶をしていたが、とても聞き取りやすく、訛りの少ないきれいな英語。

『レクイエム 融07』
札幌の街を撮影したと思われる映像から始まる。
全体として6部構成となっている。つなぎ目にアフリカン・ドラムが入るのだが、 演奏者の場所が初日と2日目では違っていて、初日は下手の舞台奥だったのが、二日目は上手の前の方に変更された。二日目は、休憩時間が終わる少し前にすでに演奏を始めていて、観客の期待を盛り上げる。こっちの演出の方が良かった。アフリカン・ドラムの演奏、すごく心地よくて気に入った。

おそらくはオットーが作曲したと思われる、ノイジーなロック調の曲にあわせ、舞台奥のホリゾントの下から、赤い服を着たジロがコロコロと転がり出てくる。ジロと男性ダンサー二人、カルパンティエとマンドラバヘノカのダンス。センターにジロ、従えるように男性二人。かっこいい。全然ノイマイヤーっぽくない。というか誰の振付に似ている、というのがないのが良い。そこへ竹島さんとカスティーヨが加わる。最初の3人がいなくなる。

アフリカン・ドラムの後、後ろに端聡さん作の聖母を描いた左右対称の彫刻の映像が映し出され、パッヘルベルのカノンが流れる。ドレスデンの男性ダンサー3人、ヴォランジェ、イェーホ、カスティーヨの3人の踊り。それぞれが素晴らしいソロを踊り、二人になり、そして3人になる。生き生きとしていて、伸びやかで、温かい気持ちになる。ここの振付が非常に音楽的で、生命力を感じさせながら流れるように美しい動き。もっともクラシックバレエ的な振付で、心地よいのに超絶技巧も繰り広げられている。音楽への融合の仕方が見事で、魂が震えるほど感動的なパート。いつまでもこの踊りを観ていたいと思った。

その後はアノトとマンドラバヘノカの踊り。アノトはなんという美しい女性なんだろう。女らしい柔らかさ、まろやかさはあるのに腹筋はしっかりと割れている。アフリカンドラム。

黒いスーツを着たマリ=アニエスと、本来はここはイリが踊るべきところだったんだろうけど代役としてファビアン・ヴォランジェが踊る。一昨年の「エトワール・ガラ」で二人が踊った「身近な距離」だ。急遽な代役で大変だったと思うけど、ちゃんと愛を感じさせてくれたのはさすが。ヴォランジェも実に素晴らしいダンサーである。

ここで4回目のアフリカンドラム。毎回合間に入る演奏は、それぞれ違う曲になっているものの、4回目ともなると「またかよ」という雰囲気になりかけたところ、いきなりドラマーのGoshinさんの横に、カルパンティエが椅子とドラムを持ってきて、二人でハーモニーを作るように演奏が始まる。カルパンティエの演奏も上手い。ちょっと笑いが漏れたけど、これは小粋な演出で楽しめた。しかも、その後アフリカン・ドラムに合わせてインプロヴィゼーションが始まるのだから。2日間とも違う動きを見せてくれた。まずは、マンドラバヘノカが、腕の筋肉をそれぞれ別々に動かして、世界ビックリ人間と思うほどのものすごい軟体芸を見せた。次にカルバンティエも、彼の動きをなぞりながらも少しずつ変えて腕をクネクネと動かす。この二人は完全に人間離れしている。さらに、ロボットのようなコミカルな動き。楽しかった!世界には本当にすごい才能が人知れず存在しているんだな。ブレイクダンスも見せてくれた。クラシックバレエの素養がある二人が踊るブレイクダンスはすごく新鮮。

そしてモーツァルトの「レクイエム」が流れるクライマックスへ。スポットライトが3つ落ちていて、中央をジロ、左右にヴェイェーホとヴォランジェ。ジロは短い丈の赤いドレス。すそから覗く長い素足が美しい。畳み掛けるように踊る。さらには赤いスリップドレスの竹島さん、カスティーヨが加わる。そして5人で迎えるフィナーレへ。素晴らしい!ドレスデンの3人の男性の踊り。彼らの凄まじいまでのテクニックにしびれる。中でも、カスティーヨの脚の高く上がること、跳躍力、すごすぎる。左右に竹島さんとマリ=アニエス、シンメトリーな動きを見せながら舞台の奥へ、時には視線を交わして微笑み合う。途中まで、それぞれの振付は優れていると思ったものの散漫な印象がないわけではなかったけど、この収束が見事であった。

イリの振付は、ソロ、二人、トリオ、5人と人数を変えながらの変幻自在な構成力に本領があったのではないかと思う。その人数に最適のフォーメーションを作る力というべきか。とても立体的に作品を作ることができる人であり、振付家として得がたい才能を持っていると思った。


そして、最後になってしまったが、二日目に踊られたSpecialがまた、凄絶なまでの魂の戦いを感じさせる、崇高なまでの作品に仕上がっていたと思う。
暗がりの中にスポットライトが当たったのは、上手前方に、袴のような赤いスカートに肌色のレオタードのマリ=アニエス。上半身を折り曲げて苦悩するソロ。雄弁な身体。何かを求めているけれどもそれが得られない苦しみ。
次に、舞台中央後方に、高い台にスポットが当たり同じ赤いスカート、上半身裸のイリが浮かび上がる。マリ=アニエスと同じような動きを繰り返す。しかし、彼の苦しみは崇高で、聖者が神の試練に遭って信仰を確認させられているかのようでもあった。次にスポットが当たったときには、イリとマリ=アニエスは一体となったかのようであり、また上半身を折り曲げて苦しそうにしていながらも、その苦しみをともに受け止め、癒しているかのように見えた。とても神聖不可侵で、深い魂の結びつきを感じさせるような、究極の美がここにはあった。脚をつかわなくても、踊りを表現することはできる。上半身の動きだけで、ここまでのエモーションを感じさせてくれるとは。闇の中、厳しく苦しい中にこそ、光り輝く何かがある、そう思わせてくれて魂が震えた。


オットーの降板から始まったアクシデント続き、イリの怪我で公演の実施そのものが危ぶまれたこともあったようだ。札幌のスタッフは手弁当で東京で仕事をしたようである。こんなにも素晴らしい公演を見せてくれて、ダンサーの皆様、スタッフの皆様、本当にありがとう。素敵なプレゼントをいただいた。願わくばまた来年、この公演を行ってほしい。もちろん、今回中止となってしまった「春の祭典」が上演できればそれに越した喜びはない。照明デザイン、音楽、美術もレベルが高く総合芸術の真髄を見せてもらった。

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