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2007/02/07

2/4 レニングラード国立バレエ「バヤデルカ」続き

婚約した二人の前に打ちひしがれたニキヤが現れ、踊りを奉納する。

赤いベールに身を包んだニキヤ=シェスタコワが、沈痛な面持ちで、背中を大きく反らし踊り始める。彼女はテクニックも感情表現もとても達者で、ジュッテはとても高いし、背中は柔らかい上、ソロルに向ける哀しい気持ちが見えない涙となって指先から全身をつたってきているようで、観る者の胸をひりひりさせる。ニキヤは、なんとソロルとガムザッティが座っているすぐ目の前まで行って、彼に訴えかけるように踊っているのだから、ソロルの方もいたたまれないことおびただしい。なぜ自分はここでガムザッティの隣に座り、彼女の手を取らなければならないのか、針のむしろの上にいるような表情。すでに魂の抜け殻。だけど、そんなときにもガムザッティは彼の手を握って、艶やかに微笑んでいるのだ。

花篭を渡されたニキヤが、それまでの哀しげな表情から一転して、花が開いたかのように微笑みながら踊る。この花篭はソロルから贈られたと聞いたから。ひたむきに思いを込めて踊る彼女の変化に驚いたソロルは、思わず立ち上がる。微笑んでいるからこそ、一層痛々しく哀れを誘うニキヤ。花篭から花を取って投げ、再び花篭に身を近づけたときに、毒蛇に噛まれてしまう。このとき、毒蛇の姿は見えず、苦行僧が花篭の中に手を突っ込んで蛇を取り出して退治するという演出になっていた。ニキヤは、あなたがやったのね!とガムザッティを指差すが、ガムザッティは「何言っているのよ、あたし知らないわ」という顔をしながらも、自分の企みがもたらした結末の重大性におびえているかのようだ。
苦しむニキヤに大僧正は解毒剤の瓶を渡す。その瓶を受け取ったニキヤに向かい、ソロルは「それを飲んではだめだ」という表情をしてニキヤは瓶を落とす。それまで突っ立っていたソロルがニキヤに駆け寄るとその瞬間、ニキヤは彼の腕の中で絶命し、ソロルは彼女の亡骸を激しく抱きしめる。深い後悔の念とともに。

ニキヤが死ぬ前に藩主もガムザッティも立ち去っていた。ガムザッティは恋敵を殺すほどの女でありながらも、実のところかなり小心者のお嬢様。そして、優柔不断で、愛してもいないガムザッティとの結婚に同意しながらも、ニキヤには他の男のものになってほしくないというソロルも、身勝手な男。そんな卑劣な人間たちの思惑により、憐れにもニキヤは命を落とすことになってしまった。

<3幕>
青い衣装のソロルはベッドに横たわり、傷心を癒すためにアヘンを吸う。大体こんなに後悔するんだったら、ガムザッティを選ばなければ良かったのに、もう。ベッドの上で苦悶の表情を浮かべながら横たわるルジマトフも色っぽい。
影の王国のスロープは2段。東京では3段のスロープを用意できる会場はなかなかないようで、惜しい。だが、32人のコール・ドはよく揃っており、永遠の時をアラベスク、パンシェ、アテールドゥヴァンの単調な繰り返しによって刻んでいく。降り切った32人が、揃ってデヴロッペ・エカルテ、そしてアラベスク。少しぐらつく人もいないわけではなかったけど、体型もタイミングも見事に統一されており、黄泉の世界を幽玄に体現していて息を呑む美しさ。

ニキヤの幻影は少しもソロルを責めておらず、ただただ一途な想いを清らかな身体で表現している。この世界では二人は、地上世界の醜さ、汚さからすっかり浄化された存在となっている。ヴェールを持ってのヴァリエーション。ヴェールを持ってのアラベスクでの回転はうまくいったものの、ヴァイオリンソロがアレグロになるところで、シェスタコワは途中から着地が不安定になってしまった。このヴァリエーションの難しさは半端ではなく、ザハロワでもグダグダになってしまうくらいだから。しかしルジマトフのヴェール使いは、とても丁寧で、まるでニキヤの魂を大切に大切に抱えているかのようであった。そう、このヴェールは、最初にニキヤが登場したときにかぶっていたのと同じものなのである。地上で結ばれなかった二人の魂は、ようやくここで寄り添うことができたのだ。

3人の影のヴァリエーションは、一番最初のミリツェワが素晴らしかった。軸足の強さは驚異的といってもいいほどだ。次のステパノワも、ダイナミックな個性が生きており、打ちつけ系のパで高いテクニックを見せた。3人目のガブリレンコワは先の二人よりはちょっと落ちる。

シェスタコワのヴァリエーションは完璧。高速シェネが見事だし、ジュッテも非常に高いしアントルラッセは浮かび上がるようなふわっとしたもの。しなやかさを感じさせながらも、生きている存在ではないとわかる、霊的なところが表現できている。ルジマトフは、さすがに跳んだりするのは控えめではあったが、空中にいるときの姿勢は美しいし、着地が柔らかく、背中の柔軟性や見得の切り方がうっとりするほどのストイックな美を内包している。姿勢がよくアプロンを保っているので、シェネも安定した形で美しい。通常トゥール・ザン・レール5連発をソロルが跳ぶコーダは、トゥールを織り込んだマネージュに変更していたが、きれいだったと思う。ニキヤが走り去って独り残されたソロル。ここで永遠に魂が安らぎを得られれば彼はきっと幸せだっただろう。だが、さらなる試練が彼を待ち受けているのだった。


(3幕結婚式へとつづく)

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