小林十市、ベジャールを語る(その1)
いろんなところでレポートが上がっているので、ベジャール苦手を自認する私が書くまでのこともないかな、と思っていたのですが、かなり詳細なメモは取ったので、せっかくなので記録として書いておきますね。
構成としては、以下の通り。
第一部 小林十市、ベジャールの魅力を語る
第二部 小林十市、ベジャール・ボキャブラリーの秘密を明かす
第三部 十市さんに質問!コーナー
十市さんは、このトークショーに出演するに当たって、詳細な資料を準備してくださって、ここでまず彼がいかにエンターテイナーかつ凝り性であるかがよ~くわかりました。彼が表紙になった雑誌LES SAISONS DE LADANSEのカラーコピーが表紙になっていて、シーズン中に踊った全作品のリストを年代ごとにまとめたもの、踊ったことがあるソロ、好きなソロベスト20、好きな作品ベスト30のリストがついています。さらにすごいのが、ベジャールのボキャブラリーをイラスト化していることで、全部手書きで、動きの種類ごとに20個、プラスオプションが4つ、描かれているのです。これは素晴らしい!ベジャールファンだったら、このボキャブラリーを片手に映像を見ればフムフムと理解が進むことでしょう。
大体こんな内容です。ただし、間違いなどもあるかもしれません。私はベジャール作品があまり得意ではないので、そもそも彼の作品をあまり見ていませんので。
ベジャール・・バレエ・ローザンヌ入団について
SAB(スクール・オブ・アメリカン・バレエ)を卒業した後も、本当はNYにいたかった。ボストン・バレエなどアメリカのカンパニーをいくつか受けたけどビザの関係でダメだった。母がベジャールのファンで、母がここに入れ、と言った。ぼくにトゥール・アン・レールの後のポーズをとるところをやらせてみたかったらしい。88年に「ゲテ・パリジェンヌ」を観て、最終的に受けようと思った。
3月後半にオーディションが終わっていて、これからグランパレで公演を行うという時に、NYから単身やってきて、プライベートなオーディションを受けさせてもらって入団した。
89~90年のシーズンに入団してから、ツアーまで1ヶ月で8つの作品を覚えなければならなかった。「マリオネットの生と死」では3人の黒子の一番目立つ役をもらった。
SABではバランシンを踊っていたけど、すぐにメソッドは違和感なく移行できた。自分の体型は、ごく普通の体型なので入りやすかった。クラシックを学んでいると、アンドォールしていないプリエをすることができないダンサーもいる。きれいに見せたいという意識があるとダメだ。
パリオペラ座が「中国の不思議な役人」を上演した時に指導をした。彼らを指導していると、その合間にダンサーたちは別のクラスを受けに行き、そこでパキータなどのクラシックを踊っている。彼らは、これは仕事であるという取り組み方をする。ベジャールのカンパニーでは、ダンスは仕事ではなく生活の一部。ベジャールダンサー=人生、でないとやっていけない。私生活にもダンスは影響してくるし、みんな舞台に命を掛けている。
ベジャールの作品を見たのが、82年のエロス・タナトゥスが最初だけど、半分寝ていた。85年にディオニッソスを観て、すごいと思った。そのときに観たドンのゼウスみたいな人には、舞台でも滅多に見ない。彼は男性ダンサーがどうやってかっこよく見せられるかというのを良く考えている。大人の男が踊っているということへのこだわりが強いのを感じた。いかに自分を見せるかというこだわり、自分自身がどう踊りたいか、この二つが重要だと思う。ディオニッソスはどこをとってもカッコいい。この作品に初めて取り組んだ時、マーク・ウォンに「ジュウイチ」と読んでもらえた時にジーンとした。この人のために僕は戦っているんだと思った。
2002年に火の鳥を踊った時には、みんなでひとつの作品にしたいと思って声を掛け合っていた。みんなが一緒にいないと作品はダメになってしまう。
ベジャールさんで最も印象的なのは目。あの青い目で見られると小さくなってしまう。オーディションの時も緊張した。
93年のシーズンの終わりに「M」をベジャールが作った時、初めてベジャールの振付アシスタントとなり、シュツットガルトで二人きりになった。リハーサルの初日は、自分のパートが終わったら帰ってしまったけど、翌日からは全部見るようにした。その次のシーズンからは、レペティーター(振付を教える人)になった。演劇をやり始めてから、「中国の不思議な役人」は注意するところが変わってきた。ベジャールの作品は、音がすべてを語っているので、そこに忠実に動いていけばいい。演技をするのではなく、身体の中から生み出される動きに従っていくこと。
「中国の不思議な役人」の娘役は、92年にローザンヌでガラが開催された際、マラーホフにオファーしたと聞いたことがある。
(続く)
« アラン・プラテルles ballets C. de la B.「聖母マリアの祈りvsprs」 | トップページ | 映画「オーロラ」 »
「バレエ」カテゴリの記事
- あけましておめでとうございます/2012年を振り返って(2013.01.02)
- 東京文化会館バックステージツアー(2008.09.28)
- あけましておめでとうとざいます&帰国しました(2008.01.07)
- ハンブルクから帰ってきました(2007.07.10)
- またしばらく留守にします(2007.07.03)
コメント
« アラン・プラテルles ballets C. de la B.「聖母マリアの祈りvsprs」 | トップページ | 映画「オーロラ」 »























貴重な記事ですね。naomiさん、どうもありがとうございます。先月、「くるみ割り人形」の予習のためにベジャールの「くるみ」を見て(ヌレエフ版の勉強にはまったくなりませんでしたが)、小林十市さんってすごい人なんだ、とやっと認識しました。続きよろしくです!
投稿: amica | 2007/01/21 08:14
貴重な講演レポ-トありがとうございます。
彼自身のサイトを見ていると、彼は文章よりもダンスで自己表現する人なんろうなあ、、、と感じているので、ここで彼の講演を要約して読めるということはとてもありがたいネットの恩恵です。
つづき楽しみにしています。
投稿: ib | 2007/01/21 18:18
amicaさん、
ばたばたしちゃって、一週間後の掲載になっちゃいました。
ヌレエフ版のくるみはイレールさんの映像で観ているんですけど、ドロッセルマイヤーと王子が同じ人なのがいいですよね。
でもベジャール苦手な私でもベジャールのくるみは結構好きです。十市さんはすごい人なのに、決して偉ぶらず気さくだからみんなに好かれますね。本当に素敵な方です。「M」での「Ⅳ=死」役も美しくてよかったです。
ibさん、はじめまして。ようこそいらっしゃいました。
そう、まさに十市さんはそういう方だと思います。さすが噺家のお孫さんだけあって、お話はめちゃめちゃ上手なんだけど、身体で表現されるとうっとりしてしまいます。
頑張って続き書きますね。
投稿: naomi | 2007/01/23 01:34