小林十市、ベジャールを語る(その2)
続きです。十市さんは、ただ話すのではなく、かなり身振り手振りをいれ、さらには振りを実際に入れて説明してくれるので、非常にわかりやすいです。
1990年の「ピラミッド」の初演では、本当にピラミッドを前に砂漠で上演する予定だった。が、スポンサーがお金を持って逃げてしまったので、実際にはカイロのオペラ劇場で上演した。そのとき「ボレロ」はジョルジュ・ドンが踊ったが、舞台袖もなくて大変だった。そして「ディオニッソス」は屋外で踊った。「ボレロ」では、ミシェル・ガスカールが大声でランダムな数字をめちゃめちゃにカウントしながら踊ったのでとても混乱してしまった。
イタズラといえば、「モーツァルトタンゴ」という演目を上演した時には、4人で並んでいて、これから出番で集中している時に後ろにいたガスカールに匂いつきのゲップをされたなんてこともあった。また、途中で着替えがある演目があるときに服を全部脱がされてサポーター一枚にされてしまい、そのへんにあったものをとりあえず羽織る羽目になったなどなど。しかし、慣れてくると十市さんも、いたずらの仕返しをするようになり、「突然の死」という演目では、小道具のジョウロに本当に水を入れて知らない人に持たせたり、かごの中に20キロの重しを入れたり。
ベジャールさんは、必ず一箇所はほめてくれるのだけど、それが毎回1回だけというのが泣けるところ。でも「ニーベルングの指環」で来日公演を行った時には、セカンドキャストだったけど、フロー役で突然出番を作ってくれたりした。そんなベジャールさんに、Bienとほめてほしいと思って踊っていた。
ニーベルングの指環では、ジークフリート役を踊った時に金髪にするためにカラースプレーをしたのだけど、金色のスプレーだけだと違う色に見えてしまうので、その前に黄色色のスプレーもしたら、髪の毛がごわごわになってしまって2倍ほどに膨らんでしまった。ニーベルングの指環では、またジル・ロマンの代役でローゲも踊ったが、ジルは頭が小さいのでカツラが合わず、顔が引きつって目が吊りあがってしまった。
「くるみ割り人形」の猫のフェリックスも、当初はローゲのカツラを使う予定だったけど十市さんが「そんなキツイのは嫌だよ~」ということになって、地毛を逆立てることになったのだとか。
というわけで、十市さんのジル・ロマンの物まねに突入。
腕を引いて、胸を出し、振り向く時には必ず肩から、という歩き方をするとジルのできあがり~と、十市さんの実演つき。さらに、ジルがバランスを崩したときのごまかし方実演まで(笑)反って肩をあげてから、体勢を戻すのそうな。
ここで第2部、実演コーナーへ。ここでジーンズから下はジャージへ、そして上のTシャツもお着替え(先ほどまでのTシャツは、背中に「11」ならぬ「12」と書いてあったのでした)
クラシックに一番、二番などのポーズがあるように、ベジャールのバレエにもそういった基本があるんじゃないかって、十市さんはジルと話し合ったことがあるそうです。というわけで、さきほどの配布資料の中のイラストで、ベジャールの基本のポーズが描いてあるので、それを使うことに。観客から、ランダムにポーズを選んでもらい、それに基づいて十市さんがアンシェヌマンを作って実演してくれるという超豪華な企画。
それにしても、十市さんは、腕や肩の動きが美しい人です。やっぱりSAB育ちだけあって、クラシック的な素養があるんだなと思いました。
(続く)
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