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« レニングラード国立バレエ「白鳥の湖」キャスト変更 | トップページ | アエラ「世界に跳躍 バレエ新世代」 »

2007/01/15

あるいは裏切りという名の犬 36 Quai des Orfevres

フィルム・ノワールというのは以前から大好きなジャンルである。フランスのノワール、しかもドパルデュー&オートゥイユという渋い役者二人の映画が日本で公開されるのだからきっと良い作品に違いないと思って劇場に足を運んだ。

ところが、銀座の劇場は、すでに満席。次の回は7時15分。どうしようか悩んで、他の映画館で近い時間帯に上映されている作品がないか銀座~日比谷を一通り歩き回ったけどなかった(「オーロラ」だけは見ようと思えば観られたのだけど私の持っている前売り券はBunkamuraでしか使えないのだ。困ったものだ)

仕方なく時間潰しをして7時15分の回を見る。この回も日曜の夜というのに客の入りが良い。(後で理由がわかった。金曜日の番組「虎ノ門」で取り上げられていたらしい。ただし、井筒監督のお気には召さなかった模様)

この映画は、元警察官であったオリヴィエ・マルシャルが、実際の警察の中での出来事を元に映画化した。中でもレオには、実際に服役させられた監督の親友というモデルが存在している。

刑事ふたりがぶつかり合う映画というのには傑作が多い。「インファナル・アフェア」然り、「L.A.コンフィデンシャル」然り。男たちの行き場のない憎しみと愛がボディブローのように鈍くぶつかり合い、周りを巻き込みながら、ブラックホールのように地獄をもたらしていく。

パリ警視庁に二人の警官がいる。探索出動班のレオ・ヴリンクス(オートゥイユ)と強盗鎮圧班のドニ・クラン(ドパルデュー)。レオは正義感が強くて仲間の信望も厚い。ドニは権力志向が強い。同じ警視庁でもこの二つの部署は張り合っているし、二人は、警視長官候補として強烈なライバル意識がある。そんな二人が、連続強盗事件を追うことになる。作戦は失敗し、スタンドプレーをしたドニは調査委員会にかけられる、が、逆にドニはレオを陥れ、レオは投獄される。とともに、ドニは裏工作に成功して警視長官の座に着く。さらにレオは服役中に、捜査に巻き込まれた最愛の妻カミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)を失う。7年後に出所したレオは、当然復讐を誓うのであった・・・。

大変見ごたえのある映画だった。光と影を駆使した、やや粒子の粗い映像が、男たちの心理を映し出す。夜のパリの官能的な姿。何よりも主演の二人の演技。ストーリー上、必然的に主人公がレオで、悪役がドニ、観客はどうしたってレオに肩入れをする。だけど、そんなレオだって100%清廉潔白なわけではなく、すねに傷を持つ身で仕事の中身は決して家族には語れない。オートゥイユはあくまでも渋く、人間の弱さを見せながらも、職人的な仕事師らしい彼ならではのやり方で復讐の計画を実行していく様をサラリと見せていく。ドニにしたって、下手な役者が演じれば単なる憎まれ役で終わってしまうところを、ドパルデューの悲しみを湛えた終盤の目の演技。本当に地獄はこちらが抱えてしまったということが良くわかる。

レオは仲間たちにもとても愛されている警官で、彼の仲間のエディがドニのせいで殉職した時も、同僚たちは当然彼の味方となる。レオが服役中でカミーユが亡き後も、レオの娘がちゃんと成長したのもおそらく同僚たちのバックアップがあったからだ。ちなみに娘を演じたのはオートゥイユの実の娘で、たしかに顔がそっくりなんだけど、すると母親はベアールなのかしら? 
←違いました。いずれにしても、娘以外のすべてをドニに奪われてしまってからも、レオにはたくさんの味方がいる。

一方、レオ投獄後、ドニは権力は手にするものの、よからぬ噂が付きまとうし、警視長官に就任してからも、レオの部下のディディに小便をかけられたり、目を掛けていた女性警部のエヴにも、前任の警視長官にも「貴様のような男は駐車場で頭に銃弾を浴びて死ぬことになる」と軽蔑され、挙句の果てには妻にまで冷たい言葉を浴びることになる。哀れなる男。自業自得といえばそれまでだ。そんな男でも、最高の権力を手にすることができたわけだが。

しかし、実はレオとドニはカミーユを奪い合った仲であり、だからこその激しすぎるいがみ合いなのであったのだ。このことが後半に大きな影を落としていく。(このあたりをあまり前面に出さないでさりげなく表現していくところが、フランス映画らしい)

主人公を演じた二人が素晴らしいのは言うまでもないが、脇のキャラクターまで息遣いや心の動きが手に取るように見えるのが素晴らしい。女性の登場人物がこの手の映画では同でもいい扱いをされることが多いけど、レオの妻カミーユはしっかりとした女性で、夫が投獄されても(職業は医師?)きちんと仕事をし、元恋人のドニに耳を貸さない気丈な美しい女。銃を持つ姿が颯爽とした女性警部エヴの生き方はカッコいい。ただ一人ドニの緘口令にそむいて地方に飛ばされながらも凛としている。家族以外に唯一レオが心を許す元娼婦のマヌの包み込むような優しさと、矜持。

でもやっぱりこの映画の泣かせどころは、レオの部下ディディだろうな。これぞ、男の中の男。こんなにも哀しい男の友情ってあっただろうか。思わず途中から涙が止まらなくなってしまった。

復讐はどのように果たされるのか?それは見てのお楽しみだが、実にお見事。クライマックスの胸の高鳴りは半端じゃない。

渋い映画ではあるけれども、激しい銃撃戦などのアクションもあり、ハリウッドの刑事映画が好きな人も満足できるはず。と思ったら、ジョージ・クルーニー&ロバート・デニーロ主演でハリウッドリメイクされるらしい。監督は「チョコレート」のマーク・フォスターが予定されているとのこと。デニーロがレオ、クルーニーがドニ役らしいけど、逆の方がしっくり来るような。

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