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2007/01/29

1/27&28 東京バレエ団「ベジャールのアジア」

火曜日の「ザ・カブキ」であまりの相性の悪さに死にそうになってしまった私だったけど、今回のプログラムはとても楽しめた。「舞楽」以外の「バクチⅢ」「中国の不思議な役人」はすでに観たことがあるっていうのもあるけど。

「舞楽」
大嶋さんのしなやかさと繊細さ、凛々しくも悩ましい表情を堪能し見とれた。彼のステキな姿を見られただけでも大満足。赤い鉢巻と袴が良く似合う。腕全体、指先までぴんと張り詰めたような緊張感が美しく目が吸い寄せられる。西洋人のような彫りの深い顔立ちなのに、彼は日本の男性の色気を感じさせる人だ。白レオタードの小出さんも高村さんも、リフトされ静止しているポーズがとても美しい。

演出については、よくわからないのが四隅に立っているアメフトの防具を着た4人の男性。多分彼らは現在を象徴していて、レオタードの2組のカップルと、炎に導かれた主人公が過去へと旅して、巫女たちに囲まれた儀式で生贄となるというイメージなのだろう。巫女の真ん中の人が持っている円形の鏡がとても意味ありげ。巫女の顔が正面へと映し出されているのが、なぞめいている。巫女を使っているのに、シャーマニズムっぽいイメージが強い。アメフト選手が四隅に立つことで、結界を作っているようである。難解ながらも緊張感があって、良い舞台。

「バクチⅢ」
後藤晴雄さんの、雷に当たったようなチリチリの逆立った髪の毛にびっくりしてしまった(古川さんの、嵐を潜り抜けてきたように乱れに乱れた髪もすごかったけど)。2日目の井脇さんのぴたっと静止したポーズの凛とした美しさ、目線の使い方、指先、どれもこれも決まっていて素敵。シヴァの力強さに関しては後藤さんのほうが感じさせたと思う。上野さんは最初の方はやるじゃない、と思ったけど、すぐに汚い指先に目が行ってしまう。後半は音と全然当っていなくてばたばたしてしまうし。シャクティではなく上野水香にしか見えないのだ。

「中国の不思議な役人」
東京バレエ団の底力が出た、素晴らしい仕上がりになっていたと思う。特に2日目はぞくぞくするくらい興奮した。先日パリ・オペラ座での上演での振付指導も行った小林十市さんの功績だろう。まずは男性たちのモブシーンのような乱れた群舞がかっこいい!この作品の元となったフリッツ・ラングの映画「M」の猥雑な、1920年代の世界観が伝わってくる。1日目の平野さんはちょっとまだ役をものにしていないように思えたが、後藤さんの演じた首領役の悪辣さが素晴らしい。オールバックに撫で付けた髪、目深にかぶった帽子、着崩したスーツがセクシー。時々ブチ切れたような演技や動きをするので、彼を見ているだけでも楽しい。アコーディオンまで楽しそうに弾いちゃってもう。中島さんのジークフリートの金髪は、この間の小林十市さんのカラースプレーの話を思い出してしまった。若い娘は、前回も観た古川さんと、初役の小笠原さん。古川さんは相当ダイエットしたとのことで、ほっそりとしていながらもけっこうムチムチしていて、それはそれでとても色っぽかった。女性というよりは中性的なイメージなのがセクシー。が、小笠原さんの若い娘がこんなに魅力的とは!小柄で細くて、化粧がとてもよく似合っていて美しい。しかも演技が達者で、娘が時にはおびえたり、高笑いしたり、役人のあまりにも強い想いに動かされたり、といった心の動きが手に取るようにわかる。キスシーンの表情は絶妙。今日の功労者は彼かもしれない。若い男については、井脇さんがうまいのは当然だが、西村さんのコミカルでちょっと悲しい演技もとてもよかった。ランジェリー姿の娼婦たち、か細い女性ダンサーたちがあられもない姿なので、ドキドキしてしまう。
そして木村さんの役人。ここでもまた素晴らしいものを見せてもらった。無表情さの不気味。狂ったように手を震わせたりするところ。何回殺されても起き上がるゾンビぶり。上半身の左右への曲げ方。娘への異常なまでの執着振り。最後に娘の金髪のカツラに股間をうずめ、「牧神の午後」のように身をのけぞらせて果てる迫真の演技。首藤さんの役人とはまたまったく別の役人像を作っていて、異常なまでのテンションの高さには凄みがあった。音楽との一体化も見事だった。

デカタンス、性、死。外は真昼間で晴れているのに、こんな不健全なものを観て喜んでいるところがまた倒錯的でいい。

上演時間が休憩込みで1時間40分ほどと短いのが物足りないものの、このプログラムは、東京バレエ団のカラーに合っていて非常に良い。これからも再演を重ねていって、さらに完成度を高めていってほしいと思った。

舞楽
振付:モーリス・ベジャール 音楽:黛 敏郎
大嶋正樹
小出領子            高村順子
長瀬直義            横内国弘
高木綾

バクチⅢ
振付:モーリス・ベジャール 音楽:インドの伝統音楽

シャクティ:上野水香(27日)、井脇幸江(28日)
シヴァ: 後藤晴雄(27日)、 古川和則(28日)

中国の不思議な役人
振付:モーリス・ベジャール 音楽:ベラ・バルトーク

無頼漢の首領: 平野玲(27日)、後藤晴雄(28日)
第二の無頼漢―娘:古川和則(27日)、小笠原亮(28日)
ジークフリート:中島周
若い男:井脇幸江(27日)、西村真由美(28日)
中国の役人:木村和夫



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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
二日ともご覧になったのですか?私は27日に見ました。久し振りのバレエ鑑賞だったので、気分が舞い上がってしまって大変でした。。
「バクチⅢ」以外は初見の作品だったのですが、特に「中国の不思議な役人」が気に入ってしまって、今でも娘や役人の残像が見えます。
晴雄さんの雷どん頭、吃驚でしたよね(笑)首領でも見たかったなぁ~。
バレエ団独自のレパートリーはどんどん再演して欲しいですね。詳細なレポを有り難う御座いました。

Elieさん、
装なんです、2日間とも行ったんです。本当は日曜日のみだったのですが、日曜日はひょっとしたら全部見られないかも、と思っていたところ友達が土曜のチケットを譲ってくれたので。

「中国の不思議な役人」は首藤さんで見たのですよ。木村さんも端正な中にとても怪しくて良かったんですが、首藤さんもまた演じてほしいです。

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