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2006/12/25

「リトル・ミス・サンシャイン」

アリゾナ州に住むフーヴァー一家は、へんてこな家族である。父リチャードは「負け犬になるな」という成功哲学の持ち主で、このノウハウを売って一獲千金を狙っている。息子ドウェーンはニーチェに心酔し、空軍士官学校に合格するまでは一言も口を利かないという沈黙の誓いを立てて、9ヶ月間も黙ったまま日夜鍛錬に励んでいる変人。娘のオリーヴは幼児体型のネガネっ子で特別に人目を引く容姿ではないけど、美少女ミスコン出場を夢見ている。そしてリチャードの父親(おじいちゃん)は、セックス中毒&ドラッグ中毒で老人ホームを追い出された不良老人。そんな家族をまとめるのに必死な母シェリルの元に、さらにトラブルが。兄のフランクが自殺未遂したという。自称全米一のプルースト研究家の彼は、ライバルの学者に恋人(男性)を奪われたのに逆上して職場と家を追われ、さらに奨学金も彼に取られたのだった。一人では再び自殺の危険性があるため、シェリルは兄を引き取り、ドウェーンの部屋に同居させることにする。もちろん、マッチョな祖父は「ホモ野郎」とフランクを軽蔑しているし、ドウェーンは筆談でみんな大嫌いだ、と言う。

そんなところへ、オリーヴが補欠になっていたミスコン「リトル・ミス・サンシャイン」の予選で繰り上がり、カリフォルニアで行われる本選に出場できることになる。「負け犬になるな」がモットーのリチャードの一押しで、一家は、おんぼろの黄色いミニバンで一路会場を目指すが、その間にはさまざまなトラブルが・・・。


アメリカ人の成功に対する強迫観念、ステロタイプ、勝ち組と負け組という二者択一的な考え方、そして美少女ミスコンとさまざまなことを皮肉っているシニカルな映画なんだけど、なんだかとても心あたたまる作品。とはいっても、通り一遍のハッピーエンドではないし、この家族に関して解決していることはほとんどないんだけど、希望を感じさせてくれるんだな。

父親リチャードが成功哲学に取り付かれ、負け犬にはなるな、と強調すればするほど、彼らが負け組人生まっしぐらなのが強調されるという皮肉。でも負けてもいいよね、家族が幸せだったらば、ってことなんだよね。

一人一人のキャラクターが強烈に面白い。お尻にいまだにナチスに受けた銃弾が残っていることを自慢し、マッチョな不良老人のおじいちゃん。彼が愛する孫娘オリーヴに振付けたダンス、これには抱腹絶倒!さすがはセックス&ドラッグな爺だけのことはある。ドウェインも面白い。部屋にはでっかりニーチェの肖像画で、しかも不気味な似顔絵のついたTシャツをずっと着ている。本当はしゃべれるのにあえて言葉を発しなくて、筆談でも「Welcome to Hell」とフランクに突きつけたり、「I hate everyone」ってeveryoneに下線を引いたり、なんというかニヒルで世の中を嫌っているんだけど、実は悪い奴ではなくて妹思い。色白で前髪が長い独特の風貌が素敵。ゲイの伯父フランクがまた、プルーストの研究家はみんなゲイだというステロタイプを逆手に取っていて可笑しい。周りが彼の手首の包帯のことを事故とごまかしていたのに、オリーヴに聞かれると、男性同士の恋のもつれで自殺未遂したなんてあっさりとカミングアウトしちゃう。でも、情緒不安定なはずの彼が一番落ち着いているのが可笑しい。母親のトニ・コレットにしても、父親のグレッグ・キニアにしても、いかにも負け組みな二人って感じで、演技がナチュラルで素晴らしい。

しかし誰が見ても驚くであろう部分は、美少女ミスコンのグロテスクさだろう。未だ未解決のジョンベネちゃん事件を生み出す土壌はここにあったのね、と思ってしまう。幼い少女たちが、大人のモデル顔負けの派手な化粧にヘアスタイルでセクシーな衣装を身につけ、しなをつくって観客に媚まくり。やばいものを見てしまった感ありあり。そんな中で、お腹がぽこんと出て地味なオリーヴは当然浮きまくり。この危機に彼女が出した秘密兵器とは・・・これまた破壊力すごすぎ。見てのお楽しみということで!

単純にいい話ね、とは割り切れない邪悪な部分を残しながらも、あったかい気持ちにさせられちゃう映画。東京国際映画祭で主演女優賞(オリーヴを演じた天才少女アビゲイル・ブレスリン)と最優秀監督賞、観客賞を受賞し、来たるゴールデングローブ賞の作品賞と主演女優賞(こっちはトニ・コレット)にノミネートとすごぶる高い評価を得ているのも納得。

監督:ジョナサン・デイトン / ヴァレリー・ファリス

キャスト
オリーヴ:アビゲイル・ブレスリン
リチャード:グレッグ・キニア
ドゥエイン:ポール・ダノ
おじいちゃん:アラン・アーキン
シェリル:トニ・コレット
フランク:スティーヴ・カレル

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