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« フィガロ・ジャポンにパリ・オペラ座マチュー・ガニオ | トップページ | 学校へ行こう!MAXマラーホフ&中村祥子編 »

2006/12/20

マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」12/10マチネ公演

「ロパートキナ・ガラ」での「パキータ」、そしてオールスター・ガラの「グラン・パ・クラシック」。これらの舞台でのテリョーシキナのあまりの堂々とした存在感と圧倒的なテクニックに、思わずチケットを買い足した。残念ながらサラファーノフの「海賊」のアリは見逃したのだけど、やはりスーパーテクニシャンという評判もあって、ぜひこの二人を見てみたかったのだ。


<1幕1場>
サラファーノフは若いダンサーだが、非常に華奢で童顔のため、実年齢よりさらに若く(幼く)見える。しかし、思春期特有の悩みを抱えた少年王子というキャラクター付けに、その外見はぴったりだ。今回観た3人の王子の中でも、一番王子らしい王子といえる。花の冠をかぶって一番違和感のない、可愛い王子だったけど、時折宴から外れて、一人佇み憂鬱そうな表情を見せるのが母性本能をくすぐる。

今回観た3回の「白鳥の湖」とも、オデット/オディールと王子以外はほとんどシングルキャスト。その中で、一番光っていたのは道化のアンドレイ・イワーノフ 。いやはやびっくりした。ピルエット・ア・ラスゴンドの回転の速さといったらもうびっくり。しかも、軸はぶれないし、脚はずっとア・ラ・スゴンドに綺麗に保ったままだし(最後はルティレになるけどそういう振付なので)、もう大喝采。金曜の夜から日曜日の夜まで5回公演で少しも疲れたところを見せないというのが凄すぎた。ちょっとムチムチしているけど、愛嬌もあって演技も達者。

王子の友人は、ソワレで踊ったシクリャーロフではなく、マキシム・ジュージン。前日観たシクリャーロフのサポートがあまりにも不安定だったのに対して、マキシムは彼よりは安定していると思った。シクリャーロフのキラキラ王子様(王子よりも王子様オーラあり)に対して、ちょっと落ち着いた感じだけど、端正なダンサー。パ・ド・トロワを一緒に踊ったスホルコワとノーヴィコワは、溌剌とした踊りを見せてくれるけど、これだけ元気が一杯だと、男性はちょっとサポートが大変そう。スホルコワは手脚が長いダンサーで比較的柔らかい踊りを見せるんだけど、たまに音がずれていることがある。ノーヴィコワは「海賊」でギュリナーラを踊っていた黒髪の美人さんで、ここでもパキパキと踊っていた。

今回のセルゲイエフ版では、乾杯の踊りが終わったあとで道化が素晴らしい跳躍を見せながら去って行き、一人残された王子がソロを踊るという趣向。ここが1幕での数少ない王子の踊りの見せ場。サラファーノフは、コルプのように異常に体が柔らかいわけではないのだけど、テクニシャン振りを発揮。シェネがとても綺麗だし、ジュッテの跳躍も高い!

<1幕2場>
テリョーシキナは、今まで観た舞台のスーパーテクニシャンぶりや、華やかな雰囲気から、オディール向きのダンサーであることは明らかで、逆に言えばオデットはどうなんだろう、という不安があった。決して美人ではないし儚さを感じることが出来るのだろうか。その上、彼女はまだ若いのだが大人っぽく見えるため、童顔で華奢なサラファーノフと釣り合いが取れるのだろうかということも懸念材料だった。ところが、そんな心配は杞憂だった。

テリョーシキナの白鳥は、とても表現力が豊かな白鳥だった。が、同じくとても雄弁なヴィシニョーワのオデットとはまったく違う、古典的なアプローチ。動きがとても大きくて優雅なのだけど、とても哀しい空気を漂わせている。悪魔によって背負わされた宿命を嘆き、王子に救いを求めている。だけど、同時に白鳥たちの女王にふさわしい強さと品格も備えていて、ドラマティックな存在感がある。手首を折り曲げすぎるところは好き嫌いは出そうだけど、腕の動きは柔らかく、音楽性も豊かで歌うように舞っている。思わず目を吸い寄せられ、全神経を集中させて見入ってしまうほどの吸引力と張り詰めた空気を感じさせる。言葉を変えれば、それは、空間を支配する力だ。また、並外れた身体能力も伺わせる。オディールを踊った時にそれはより顕著に現れるのだが、特にアティチュード・デリエールのときの足先の高さは驚異的と言っていいほど。

このオデットと王子の組み合わせは、また若く未熟な王子が、呪われた運命の傾国の王女に導かれて大人の階段を駆け上がるという物語を想像させてくれた。サラファーノフの王子は、若々しくまっすぐな情熱を感じさせてくれ、オデットもその情熱によって閉ざされた心を開いて希望を見出しているように見えたのだ。

<2幕>

テリョーシキナの黒鳥は、男前でかっこいい黒鳥だった。チュチュは一見真っ黒(よく見ると赤い石が縫い付けてある)に、羽のついた頭飾り。背はあまり高い方ではないが、手脚は長く、恵まれた身体能力を目一杯使っているので、大きく見える。なんといっても、アティチュードの時の脚の高さにはびっくり。たおやかでありながら強い黒鳥である。その上、目線の使い方がとても上手だ。すごく派手というわけではないのだが、正統派の気迫のこもった演技。テクニックに自信があるためか、フェッテはとことん攻撃的で、2回に1回ダブルをはさむだけでなく、腕をアン・オーにして、さらにアロンジェの状態で回っていたのには驚いた。腕の力を借りないであれだけ回れるのは天晴れである。王子に捧げられた花束を放り投げ、高笑いする悪女振りがよく似合っている。

そしてサラファーノフ王子も、負けず劣らず、ここではテクニシャンぶりを発揮していた。年上の手錬の美女に誘惑され、素直に喜んじゃっている状態でノリノリになっている初々しいお坊ちゃん。なのにバリエーションではすごい。トゥール・ザン・レールを一回跳んだ後、プレパレーションなしでもう一回やっちゃうし、コーダのマネージュのところでは、合計7回もトゥール・ザン・レールを跳んでいた。しかも、勢いに任せてっ感じじゃなくて、ちゃんときれいな形できちんと止まるべきところは止まっているし、着地も決まっている。体力は有り余っている感じで、若いって素晴らしいな~と思った。

キャラクターダンスは、スペインで素晴らしいイスロム・バィムラードフと、アレクサンドル・セルゲイエフの二人が踊っているので、どっちを見ていいのかわからなくて困ってしまう。細くて長い脚が美しく、端正に踊るバィムラードフの成熟と、若さに任せてキメキメに踊るセルゲイエフ。どちらも素敵。キャスト変更で、スペインで踊っていたガリーナ・ラフマーノワがマズルカにも入っていたのにびっくり。

<3幕>
サラファーノフの若さがここでも発揮されていて、オデットを高々とリフトして悪と戦い、果敢にロットバルトを倒す。少年王の成長物語と見て取れて、物語のつじつまがよく合っている。あんなに幼くて可愛い王子が、立派に大人になっているな~と感心してしまった。テリョーシキナのオデットも、大人の品格があって彼を成長へと導く天使のようだった。若い二人が完成度の高い舞台を見せてくれた、とてもいい公演だったと思う。


2006年12月10日(日) 12:00p.m~3:10p.m.

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:マリウス・プティパ,レフ・イワノフ
改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ
台本:ウラジーミル・ベーギチェフ,ワシーリー・ゲーリツェル
装置:イーゴリ・イワノフ
衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
指揮:アレクサンドル・ポリャニチコ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

出演
オデット/オディール:ヴィクトリア・テリョーシキナ
ジークフリート王子 :レオニード・サラファーノフ
王妃 (王子の母):エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師:ピョートル・スタシューナス
道化:アンドレイ・イワーノフ
悪魔ロットバルト: マキシム・チャシチェゴーロフ
王子の友人たち:ダリア・スホルーコワ
           オレシア・ノーヴィコワ
           マキシム・ジュージン
小さな白鳥:ワレーリア・マルトゥイニュク ヤナ・セーリナ
        スヴェトラーナ・イワノーワ イリーナ・ゴールプ
        エレーナ・ワシュコーヴィチ
        オレシア・ノーヴィコワ
大きな白鳥:ユーリヤ・ボリシャコーワ エカテリーナ・オスモルキナ
        クセーニャ・オストレイコーフスカヤ
        アリーナ・ソーモワ
        エカテリーナ・コンダウーロワ
2羽の白鳥 :ダリア・スホルーコワ
        クセーニャ・オストレイコーフスカヤ
スペインの踊り:ガリーナ・ラフマーノワ,リーラ・フスラーモワ
          イスロム・バイムラードフ,アレクサンドル・セルゲーエフ
ナポリの踊り:ヤナ・セーリナ,マクシム・フレプトーフ
ハンガリーの踊り: ポリーナ・ラッサーディナ クセーニャ・ドゥプロヴィナ,カレン・イワンニシャン
マズルカ:スヴェトラーナ・フレプトーワ,イリーナ・プロコフィエヴァ
      オリガ・バリンスカヤ,クセーニャ・ドゥブロヴィナ ガリーナ・ラフマーノワ
      アレクサンドル・クリーモフ,アンドレイ・ヤーコヴレフ
   

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさま
ムチムチ系の道化大好き。やっぱり「白鳥」の上演にはいつも道化がいて欲しい、と思うのは子供のころ見た「白鳥」がボリショイだったからでしょうか。昔のプリセツカヤの映画でもムチムチの道化が凄い回転を見せていますが、こういうダンサーが舞台の厚みを出すんですよね。

日本のオペラの舞台に年配の貫禄のある合唱団歌手がいてほしいのと同様、色々な体型、年齢の人がいて、その中に若い美男美女の主役がいるから映える、と私は思うんだけれど…

amicaさん、
またまたお返事が遅くなりました。
私も白鳥の道化ちゃんは好きです♪道化を踊るようなダンサーさんが好きなんですね。新国立劇場にはグレゴリー・バリノフ君というラトヴィア人(ミーシャと同じ国ですね)のダンサーがいて、よく道化を踊るのですが、やはりムチムチ体型です。上手だし顔も可愛いのですが、体型の関係か、一度も主役を踊ったことはありません。

キャラクターダンサーに付いては私もそう思います。マリインスキーの場合は、プリンシパル・キャラクター・アーティストという地位があってキャラクター専門なのですが(民族舞踊を踊ったりすることもある)、中には少々お年を召した女性の方もいたりします。でも踊りはビックリするくらいうまいんですよね。主役でなければ、個性的な容姿というのもありだと思います。

グレゴリー君、私も大好きですよ~。いつも一生懸命踊っていますよね。しかも牛乳のようなお肌が美しい。あの体型がやっぱり道化には理想的なのですよね。

最初のコメントには書きませんでしたが記事全体も堪能させていただきました。なるほどね~、手首とかに注目すると面白いんですね。納得です。

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