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2006/11/07

「トリスタンとイゾルデ」TRISTAN + ISOLDE

ワーグナーのオペラやシェイクスピアの戯曲の基にもなった悲恋の物語を映画化ってことだけど、音楽はワーグナーを使っているわけではない。製作総指揮が"光の魔術師”リドリー・スコットとトニー・スコットの兄弟ってわけで、映像はとても凝っていて深みがある。この物語の時代背景であるローマ帝国崩壊後の暗黒時代のイギリスらしい、ほの暗い中の陰影美が表現できている。幻想的な夜の結婚式、葬送船。加えてケルト/アイリッシュな音楽やダンスも雰囲気を盛り上げ、ゼッフィレッリの「ハムレット」や「オテロ」で知られるマウリッツィオ・ミレノッティによる繊細で典雅な衣装が素敵。

運命に引き裂かれてしまった恋人たち、トリスタンとイゾルデ。トリスタンは幼いときに両親をアイルランド軍に殺され、イギリス王マークによって育てられて彼の片腕として活躍している。一方、イゾルデはアイルランド王の娘。アイルランド軍との戦いで、毒を塗られた剣によって倒れたトリスタンは死んだものと思われ、葬送船に乗せられる。瀕死の彼を乗せた葬送船がアイルランドに流れ着く。身分を偽ったイゾルデの薬草の知識と懸命の看護で、トリスタンは命をとりとめる。愛し合うようになる二人だが、イギリスにイゾルデを連れて帰ろうとするトリスタンに対し、イゾルデは一緒になれない運命と言い残る。アイルランド王はイギリスの領主たちに剣術の試合を持ちかけ、勝った者に領地と娘を差し出すという。マーク王の代理で参加したトリスタンが優勝し歓喜するイゾルデだったが、それはマーク王に彼女が嫁ぐという意味であった。いうまでもなく、マーク王はトリスタンの命の恩人であり、父親代わりである。禁じられた恋に苦しむ二人。そして、娘を差し出すことそのものが、アイルランド王の大いなる陰謀なのであった...。

「スパイダーマン」でのハリー・オズボーン役など、いつも陰のある役を演じているジェイムズ・フランコ。ここでも、尊敬するマーク王の妻となったイゾルデへの禁断の想いで苦悩している。いつも眉間に皺を寄せている表情で、ちょっと演技は一本調子なところもあるが、時折見せる、捨てられた子犬のような目が母性本能をくすぐる。加えて、細身ながら肉体が鍛えられていて、派手さはないものの隠花植物のような美しさがある。イゾルデのフォフィア・マイルズはすごい美人ってわけではないけれども、ブルーの澄んだ瞳に金髪、ふっくらとした肉体が古典的で、役柄にはとても合っていて好感が持てる。

が、この映画はなんといってもマーク王のルーファス・シーウェルでしょう。イゾルデの結婚相手が、最初に登場した婚約者のように嫌な奴だったら、きっとこんなに語りつくされるような物語にはならなかっただろう。マーク王は高潔で寛容で、血のつながりがある甥のメロートより、亡き友人の息子であるトリスタンを買って副官に据えるほど、彼のことを信頼し愛している。もちろん、イゾルデのことも深く愛している。そんな立派な人物に見える役者が演じなければ、意味がない。そしてルーファス・シーウェルは見事にその期待にこたえているのである。人民に愛され、カリスマ性があり、しかも目力のあるハンサム。だが幼いトリスタンを助けるために片手を失っており、そのことに引け目を感じている。堂々とした演技である。私はSF映画「ダーク・シティ」の超能力者や、「マーサ・ミーツ・ボーイズ」のちゃらんぽらんな男を演じていた彼が結構好きだったのだけど、それがこんな立派な人を重厚に演じるとは、嬉しい驚きである。

トリスタンとイゾルデの恋愛は、アイルランドではとても純粋だったのが、イギリスでは不倫の関係となってしまう。だが、イゾルデの情熱は炎のように燃え盛っている。あんなに王に優しくされながらも、トリスタンを激しく求めている。もともと、瀕死の彼を救うために、全裸になって冷え切った彼の体を温めたほどの女性である。マーク王への忠義から、イゾルデとの恋を封印し必死に忘れようとしてるトリスタンへも、積極的に近寄って、再び情熱に火が付いてしまうのだ。あんなにところかまわずやりまくっていればばれちゃうって・・・。オリジナルの”純愛”のイゾルデよりはずいぶんと現代的で、ストレートな描写だこと。嫁いで来たイゾルデがトリスタンに「初夜がつらいわ」と悲しそうに語ってその後でマーク王に抱かれた後は、もう肉欲一直線で恋の苦しさは全然感じさせられない。優しい夫を裏切っていることに一片の罪悪感もないようだ。一方、トリスタンのほうは、一人で激しく苦悩して、ずっと眉間に皺を寄せた暗い表情をしているのである。後ろめたさがあるからこそ、激しく燃えるわけなんであるが。

それなのに、イゾルデに「君を幸せにしたいから、そうするためには私は何をすればいいのだろうか」と言い、「私は良い夫か」とトリスタンに相談してしまうマーク王。いい人過ぎる。というか、見ている側としては若い二人よりも彼に感情移入してしまうのだった。ってゆうか、イゾルデはちょっとおバカさんでは?あんなに真摯に愛してくれる王よりも、うじうじと悩んでいるトリスタンを取るなんて。しかも、それが、イギリスという国の危機にまで結びついてしまうのだ。思わず「トロイ」の姫と、オーランド・ブルームが演じた超ヘタレなパリスバカ王子を思い出してしまうのであった。

アイルランドと通じていた裏切り者の領主に二人の密会場面がばれ、イギリスの同盟は危機に陥る。そしてもちろん二人の関係がマーク王に知られることになる。息子同然に可愛がっていたトリスタンに裏切られたわけである。そこで見せたマーク王の驚くべき寛容さ。もはや、二人のバカップルの恋愛より、彼の方に肩入れしてしまうのであった。悲しいラストシーンの後でも、二人よりも王様の今後の方を思いやってしまった。史実によれば、マーク王はその後は生涯妻を持たなかったそうだ。

あとは、予算の制約ゆえ大規模な戦闘シーンはないものの、肉体と肉体の荒々しいぶつかり合いを感じさせる戦いの場面には迫力があった。「グラディエーター」「ラスト サムライ」「ブレイブハート」 のアクション振付スタッフがこのあたりを構成したということで、なるほどな、と思った。

若い二人の恋愛の悲劇を期待するとちょっと違う部分もあるかもしれないけど、別の意味で大変見ごたえがあって楽しめた作品。

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コメント

naomiさんの記事を読んだら、もう一回見たくなっちゃったけど、これすぐに本数減っちゃってもう終わりそうなんですよね~~。

マーク王、ルーファス、よかったですよね~~。そうなの、そうなの、彼がよかったから、バレた後キレちゃってこれで終わったらいやだなあと思ったんだけど、最後はやっぱりああいう選択をとるところが憎いですよね。彼のその後が気になります。

TBさせていただきますね。

うるるさん、
トラバ&コメントありがとうございます。
私が観に行ったのは小さな映画館だからそこそこ入っていたけれども、でもあまり宣伝していないし埋もれちゃいますよね。

そうそう、あそこで見せた優しさと、そしてそれに答えようとしたトリスタン、それがよかったですね。ワーグナーのオペラだとだいぶ話が違っていて、メロートとトリスタンが戦ってトリスタンが瀕死の重傷を負うのだそうです。

「レジェンド・オブ・ゾロ」もルーファス目当てに観なくちゃ!

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