いよいよ今回の滞在中最後の公演。

SYMPHONIE CONCERTANTE
Choreography: George Balanchine
Music: Wolfgang Amadeus Mozart
Irina Dvorovenko, Gillian Murphy, Maxim Beloserkovsky
Jennifer Alexander Marian Butler Sasha Dmochowski Sarah Lane Renata Pavam Melissa Thomas
前日にどうやらオペラグラスを紛失したらしく(マチネは前方だったので不要だったため気が付かなかった)、1階最後列からオペラグラスなしで観たのだが、前述の通りシティセンターは2階席がかなり低いところで1階に覆いかぶさっているため、視界が著しく狭く感じられ、閉塞感がある。この位置で見るんだったら、たとえ後ろの方でもいいので2階席で見るべきだという教訓。しかもバランシンである。バランシン作品は、絶対に1階席より2階で見たほうが美しいに決まっている。
しかも、実は私バランシンはあまり得意ではないのであった。「セレナーデ」「アゴン」「テーマとヴァリエーション」「チャイコフスキー・ヴァイオリン・コンチェルト」「シンフォニー・イン・C」「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」「アポロ」といったのは大丈夫だけど、音楽を抽象化して振付にしている作品は、音楽のもとネタに詳しくないとけっこう厳しい。夏にもNYCB3本立てを見て、面白いと思ったのはウィールダンの「Klavier」だけであった。さらに、時差ぼけである。観る前に、素晴らしい夕食を食べてお腹いっぱいにもなっている。結果、何も覚えていないに等しい。舞台がとてもせせこましかったことくらい。あとは、イリーナの踊りが、歌うように柔らかく、パキパキと音にあわせて踊るジリアンとは対照的だったこと。サラ・レーンが素晴らしかったこと。せっかく、大好きなイリーナ&マックスだったのに悲しい。今後は、「バランシン=2階席」の法則を忘れないようにしよう。
MEADOW
Choreography: Lar Lubovitch
Music: Franz Schubert, Gavin Bryars, Ferrucio Busoni, William David Brohm
Julie Kent, Marcelo Gomes
Jennifer Alexander Maria Bystrova Zhong-Jing Fang Melanie Hamrick Anne Milewski
Julio Bragado-Young Kenneth Easter Jeffrey Golladay Isaac Stappas Cory Stearns
前回見たときには「なんだこりゃ」と思った演目だったけれども、今回観たら思いのほか面白かった。リードがデヴィッドからマルセロに変わっただけでも、だいぶ違うのである。マルセロのパートナーリングは見事としか言いようがない。コール・ドのダンサーたちの踊りがなんだか前衛舞踏みたいなのには相変わらず違和感があるけれども、マルセロのリフトの上手さやラインの美しさという魅力が発揮されている。ちょっと暗すぎる気がしなくもないが、海の底のようなライティングも美しい。ジュリーは何度も書くように私は相当苦手なダンサーなのだけど、こういう、フォルムの美しさのみが要求される演目は向いているし、この二人の組み合わせは合っている。横たわる形でポーズをとったジュリーをふわりとマルセロが頭上でリフトし、そのポーズのまま吊られて舞い上がるシーンは、神秘的で深い夢の中のようである。
IN THE UPPER ROOM
Choreography: Twyla Tharp Staged by Keith Roberts
Music: Philip Glass
Kristi Boone, Michele Wiles, Angel Corella, Jared Matthews, Patric Ogle, Sasha Dmochowski, Marian Butler, Maria Riccetto, Arron Scott, Renata Pavam, Herman Cornejo, Paloma Herrera, Gennadi Saveliev
振付指導は、「Movin' Out」日本ツアーに出演していた元ABTのキース・ロバーツ。すごく楽しみにしていた演目だし、実際楽しかった。だけど、多くのダンサーが同時に舞台の上でいろいろな動きを見せていくので、どこを見ていいのかわからなくなってしまうのが難点といえば難点。ドライアイスによるスモークの中、縦じまのパジャマのような囚人服のようなノーマ・カマリの衣装を着たダンサーたちがまず登場し、それから、赤いレオタードにスニーカーや、ポアント、赤いタイツなどさまざまなバリエーションの衣装。途中で脱ぎ捨てて軽装になっていく人も。高速ピルエット、横向きのジュッテ、アラベスク、次から次へとテクニックが展開され、入れ替わり立ち代り、縦横無尽にダンサーたちは駆け回る。ものすごいパワーとパッションが放出していて、思わず茫然としてしまうほどのエネルギーが放出される。誰が誰だかを判断するのもなかなか難しいのだけど、最初に出てきたミシェル・ワイルズがいきなり転びそうになってしまっていた。エルマンのすさまじいテクニックの中に優雅さを保ったジャンプやカブリオールには目を見張る。アンヘルもやっぱりすごいハイテンションのパフォーマンスで歓声を浴びまくっていたし。今回この演目でようやくこのシーズン初めて観たゲンナディ・サヴェリエフの安定して美しいピルエットも良かった。マリア・リチェットも目立って情熱的かつ綺麗な踊りを見せていた。
でも、もう一度ちゃんと見直したいな。
というわけで、今回3日間4公演はこれにて終了。すごく楽しかったけど、時差ぼけが良くなってきたかな、と思った頃に帰国なのでちょっともったいない。
同じ公演をご覧になったPonさんのレポートはこちらへ。私の感想よりずっと参考になると思います。
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