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2006/11/04

「父親たちの星条旗」Flags of our Fathers

圧倒されるような思いで観た。一片の救いもないような映画である。生還し英雄に仕立て上げられたことで運命を狂わされる3人の若者。硫黄の臭い漂う戦場での、容赦のない残酷な戦い。何度も何度も繰り返される、目を背けたくなるような死、死、そして死。

観客にとって優しい映画でないことは間違いない。主役3人以外の登場人物が多く、名前と顔を一致させることに一苦労。バリー・ペッパー、ポール・ウォーカー、ジェイミー・ベルといったいい役者の、顔がはっきりとわかるようなカットが少ない。だけど、映画を見進めた上で彼らが辿ったあまりにも残酷な運命を知るにつれて、きりきりと胸が痛む。

衛生兵ドクの視点で語られているところが(原作者が彼の息子であったということもあるけど)すごくよく生かされている。なぜならば、一番多くの死を目撃する立場であるからだ。

この作品のすごさを、うまく表現するのは本当に難しい。人間関係を把握した上でもう一度見れば、きっともっと打ちのめされることであろう。

イーストウッドの伝えたかったことの一部しか私には伝わっていないかもしれない。だけど、私に伝わってきた一部だけでも、圧倒的なエモーションとして迫ってくる。

中でも、アダム・ビーチ演じるネイティブ・アメリカン(インディアン)のアイラの苦悩する姿には、胸がつぶれるような思いをさせられた。ヒーローとして祀り上げられる一方で、変わらぬ差別を受け続け、そして何度も何度も戦闘や仲間たちの死が悪夢のようにフラッシュバックする...こんなことに耐えられる人はそうはいないだろう。ヒーローにはふさわしくない、あまりの悲惨な末路。

仲間を一人も後には置いては行かない、という綺麗事は、最初の10分で覆され、その真実はずっと一貫として続いていく。戦争で傷ついた3人が、戦意を高揚し、戦争債を売り出すための偶像として利用されるという残酷さ。

国家という巨大な権力にねじ伏せられ、自分の力ではどうしようもなくなってしまった運命に翻弄され、もがき苦しんでいく個人。戦争で死んでいった、そして生還しても苦しめられた、多くの無名の戦士たち。彼らを冷静な視点で描きながらも、同時に温かく見守っているイーストウッドの優しさも感じることができる。

死んだ人も、生き残った人も、ズタズタにされていく戦争というもの、そして国家というものについて、今一度思いをめぐらす。

この映画を的確に表現する言葉はそう簡単にはみつからない。

佐藤睦雄さんのレビュー、人物紹介が素晴らしいので、ぜひ目を通してください。

あと瓶詰めの映画地獄 ~俄仕込みの南無阿弥陀佛~さんのレビューも。

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コメント

これ、もう日本でも公開されてるんですね。私も見たいと思ってるんですが、まだで。

で、ジェイミー・ベルってあのビリー・エリオットの少年?と思ってIMDBで見てみたらホントにあの子なんですね。キングコングに出てたってのも全然気づかず…。俳優のキャリアで上手くいっているらしいのは嬉しいですが、子役がいつのまにやら大人になってるところに歳を感じますわ。。。

Ponさん、
これは本当にいい映画だと思います。おそらくまたアカデミー賞等にノミネートされるでしょう。イーストウッドは共和党の人ですが、正しい保守という感じですね。国家の責任を声高にならずに、冷静に、だけど優しさをもって訴えているところが素晴らしいです。

ジェイミー・ベル君は、IMDBを見たらもう20歳なんですね。すっかりいい青年に育ちましたよ。もう「Billy Eliott」からそんなに年月が過ぎたんですね。今回の役はとても重要な役なんですよね。

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