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2006/11/14

「腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち」(杉浦由美子)

NYから帰国する飛行機の中で読んだ読売新聞に書評が載っていて、興味を持ったので読んでみた。

腐女子とは何か。簡単に言えば女のおたくである。それも主としてやおい系のマンガやボーイズ・ラブ小説に熱狂する女性のことを指すらしい。彼女たちが「私たちは腐っているらしい」と自称したところからはじまったようだ。東池袋に乙女ロードとやらがあって、女性のおたくの聖地らしいというのは、新聞で読んだことがあった。
私も広義では腐女子なのかもしれないけれども、ボーイズラブ小説は読んだこともないし、20歳過ぎてからはコミック自体、「テレプシコーラ」やいくつかの例外を除いてほとんど読んでいないのだ。ガンダム世代なので、中高生の頃はもちろんマンガもアニメも好きだったけど。

そういうわけで、ちょっと話題となっている本ではあるけれども、ちょっと底が浅い。何よりも、当の腐女子にほとんど取材していなくて、いろいろな本からの引用を元に組み立てたって感じなのだ。この本に登場する腐女子の方は、美人の女医さんだったり、コンサルティング会社の若くて綺麗な娘さんだったり、腐女子のイメージとは程遠い人たちばかり。都会に住んでいて、高学歴でいい職業についている人ばかりではないでしょう。男性のおたくとは違って、おしゃれにも気を遣って、女を捨てていないということを、この本では強調している。まあ、女性のおたくはそういう人が確かに多いのかもしれないけれども、そういう人ばかりってわけでもないのでは?十把ひとからげ、ひとつの類型に押し込めている気がしてならない。

それに、ボーイズラブとかやおい系コミックなど全然知らない私が言うのもナンだけど、そういう作品の中に流れる世界観というものについての理解も足りない気がする。作家の方には一人しか取材していない。このやおい愛好文化というのがここ数年の流行ではなく、ずいぶん昔からあったと私は感じているのだが(少なくとも、私が中学生だった20年位前からは存在していた)、その歴史的な背景も出てきていない。ジェンダー論についても、圧倒的に不足している。

宝塚歌劇とか、手塚治虫のマンガとか、ヴィジュアル系のロックとか、ヴィスコンティとか、いろいろと腐女子系の文化というのは昔から存在していたはずである。萩尾望都や山岸涼子は申し訳程度に名前が出てきたりする程度だし、それからガンダム、グイン・サーガといったあたりは無視されている。

それと、世間的には不評だった「ゲド戦記」が腐女子の間では人気だったって、そんな話聞いたことないんですけど。後半に出てくる「国家萌え」といってナショナリズムに萌える腐女子というのもわけわからない。そういう世界にかかわりたくないから、腐女子になるんじゃないかしら?とにかく、腐女子をひとつの類型に当てはめて単純化しようとする論法が目立つ。

それから、この本は途中から格差論になってきて、やたらと三浦展の「下流社会」からの引用が目立ってくるのがとても鼻につく。確かに、女性というのは、学歴や、正社員かそうでないかということで差別され、さらに女性であることでも目に見えない差別を受ける存在であり、女性誌が提唱したものさしに従って自分の幸せというのを測って、他人と比べて勝った負けたで一喜一憂している不幸な存在なのかもしれない。そういった競争社会からの逃避の手段として、腐女子化するというのはなんとなくわかる。腐女子は格差社会を生き抜くための知恵であると。たしかにそれはあると思うのだけど、当の腐女子はそれでよしとしているのかどうかというツッコミがなく、あいまいな結論で終わってしまっている。

そもそも、腐女子というのは、現代のような格差社会が生まれるずっと前から存在していたと思うのだが。この現象が話題となっていたのが、バブル時代の恋愛資本主義が消え去ったからという視点にはなっているのだが、はたしてそうなのだろうか。そんな薄っぺらい話で済むことなのだろうか?

面白い視点があったとすれば、なぜ腐女子が男性の同性愛の物語を好むかという話で、女性が登場しないというのは、自分が感情移入する対象が存在していないということで、完全に現実逃避が出来るということ。「関心が妄想(物語)の男性にいっているので、現実の男性への欲求が低い、現実の男性には幻想を持たない」というのは、たしかになるほどな、と思う部分もある。腐女子も、ジャニーズ好きも、韓流スターにはまった人たちも、現実にはちゃんと恋人がいたり結婚していたりするわけで。

とにかく、腐女子というのはこんなに単純な現象ではないと思うのだ。

でもまあ、腐女子という視点での本はそんなに出ていないし、こういう風に解釈する人もいるのね、ということを知ることができて、ある意味面白かったと思う。いろいろなカルチャーを横断的に知っていて批評できる人が日本には少ないということを象徴するような書物であった。 いかにもAERAの論調。

腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち
杉浦 由美子

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コメント

こんにちは。私もちょうど今日読み終りました(笑)。
入口と出口があさって向いてる、って感じの本でしたね。
こんな方に話が行っちゃってどう収拾するんだろうと思ったら、やっぱりうまくいかなかった、というところでしょうか。最後は強引な割に「それがオチかいっ」という気がしました。

綾瀬川さん、こんばんは。

ホントそうですよね~--;なんか無理やりな落としどころになってしまって。
ネットの世界には腐女子はいーっぱいいますし、みなさん賢いし真面目だから、みんな怒るでしょうね。あんな一面的な捉え方しちゃって。
ぜひ反論が読みたいところです。

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