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« チャコットのDANCE CUBE11月号 | トップページ | 「腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち」(杉浦由美子) »

2006/11/13

新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」11/12

新制作、牧阿佐美版「白鳥の湖」のお披露目。

オデット/オディール:スヴェトラーナ・ザハロワ
ジークフリート王子:デニス・マトヴィエンコ
ロットバルト:市川透
道化:グレゴリー・バリノフ
王妃:楠元郁子

王子の友人(パ・ド・トロワ)遠藤睦子、西山裕子、中村誠

小さい四羽の白鳥:遠藤睦子、西山裕子、本島美和、大和雅美
大きい四羽の白鳥:真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、寺島まゆみ

スペインの踊り:西川貴子、厚木三杏、マイレン・トレウバエフ
ナポリの踊り:高橋有里、さいとう美帆、江本拓
ルースカヤ:湯川麻美子
ハンガリーの踊り:遠藤睦子、奥田慎也
二羽の白鳥:厚木三杏、川村真樹

今回新制作ということで、まず、ピーター・カザレットによる衣装と舞台装置が美しかった。1幕ではグリーン系統の濃淡でまとめられており、とても品があって素敵。2幕は逆に暖色系。王子の淡いブルーの衣装もマトヴィエンコの金髪に映えていた。3幕の花嫁候補たちは、少しずつデザインの違った衣装と髪飾りをしていたけれども、白でまとめられているので、うるさくなくてモダンかつ優雅な印象。ちょっと微妙だったのはロットバルトで、2幕4幕のロットバルトは大きな翼を持ちかっこよかったのだが、3幕では鱗で覆われているようで、被り物も派手派手、品のよい舞踏会の中で明らかに浮きすぎていた。

ザハロワは調子はよかったように思える。ライモンダの時にちょっとふっくらしていたが、その時よりは体を絞り込んでいる様子。ただし、背中の肉が衣装の上にちょっと乗っている感じがしたので、まだ絞込みが足りないのかも。それはさておき、やはり世界最高のオデットと言われる通り、奇跡のような造形美の持ち主である。弓なりにしなった脚、よく出て美しい甲。細いけど表現力豊かな腕、柔軟な背中。音への乗り方も見事であった。2幕で白鳥が美しい娘に変身する様子が手に取るようにわかる。今回のヴァージョンはマイムがないのだが、なくても十分にオデットの悲しい運命が伝わってきた。夜の闇に溶けそうな儚くて幸薄い、しかしながら誇り高いオデット像が明確に描けているという点で、ザハロワも、今までのただただ美しいだけのオデットより進歩している。孤高の存在でありながら、同時にこれだけ悲しみの影を背負っているオデットというのは、今まで見たことがない。この2幕のオデットを観られただけでも、チケット代の元が取れておつりが来るぐらい。この世のものとは思えない、魔法のような時間で、息を止めて彼女だけを見ていた。

ザハロワのオディールは、オデットに比較するとちょっと弱い。ただ、ポリーナ・セミオノワのように無理に邪悪さを出そうとしていないで、冷ややかな視線だけで王子を篭絡する手錬手管を持ち合わせている、天然の悪意は発揮できていたと思う。グラン・フェッテはすべてシングルだったが、脚がとても高く上がり、安定していて綺麗に決まっていた。

2幕があれだけ素晴らしかったのに、4幕で少々スタミナ切れしていたのが残念といえば残念。しかし、それはザハロワのせいではなく、4幕の盛り上がらない演出が、そう見えた原因であるように思える。

マトヴィエンコは、ヴァリエーションの出来はとてもよかったと思う。ピルエットは軸のずれがなくて正確に決まっているし、トゥール・ザン・レールもぴたりと正面を向いて着地。カブリオールなども高さがあるし、シェネは超高速。3幕のコーダのピルエット・アン・ドォールも実に見事だった。逆に言えば、王子としての役作りというのは全然なくて、心象風景は全く伝わってこなかった。ボリショイの同僚となったザハロワに遠慮しているのだろうか?ソロになると人が変わったように元気に踊っているのに少々違和感。初日ということもあって、緊張しているのがわかった。

パ・ド・トロワは西山さんが丁寧な踊りで断然よかった。中村さんは、脚は非常に高く上がるのだが、音に合っていないというか踊りが途中で途切れるのが残念。初日なので、慣れていないのだろうか。
1幕で最初マイレンが王子とのからみが多く、実はキャスト変更でマイレンがトロワなのかな、と思うほど群舞の中でも目立っていた。彼の上手さは頭ひとつ抜けている。つま先の美しさには本当に惚れ惚れする。
ロットバルトの市川さんは、3幕の衣装があまりにアレだし、3幕ではほとんど座っているだけで見せ場がないのが残念。2幕での登場などは非常にかっこいいし、跳躍力もあって素敵なのにもったいない。その上4幕の演出があまりにもロットバルトにとっては気の毒なのである。
道化のバリノフのピルエット・アンドォールはいったい何回回ったのか、というほどの回転でさすがにテクニック。跳躍力もあり、愛嬌もたくさん。ちょっとムチムチぎみなので重く見えてしまうけれども、それも彼の個性でいいと思う。


2羽の白鳥の川村さん、厚木さんは二人とも素晴らしい。厚木さんは何しろプロポーションが抜群にいいし、柔軟でよくしなる肢体の持ち主だ。川村さんも表現力が豊かで美しいバレリーナである。小さい4羽は出演陣は豪華なのだが、顔のつけ方が大げさで好みではなかった。
白鳥の群舞はよくそろっていると思うけれども、新演出の問題か、隊形のつけ方が今ひとつで、その群舞の魅力があまり発揮できていないと思う。腕をあげたまま静止するところでの揃い方はさすがに見事でぞっとするほどだったが、顔の向きは時々ずれている人がいた。

キャラクターダンスに関して言えば、なんといってもマイレンのあまりにも怪しすぎるスペインでしょう。もみ上げとひげを描いて、濃くて胡散臭すぎるキャラクターには、笑いをこらえるのに必死になってしまった。(「ライモンダ」でのスペインはもっとすごかったらしいけど)踊りは本当に素晴らしいのにね~。面白いからいいけど。
ルースカヤの湯川さんは、彼女の個性に合った踊りではあったし、踊りそのものはさすがにメリハリが利いて素晴らしいのだけど、このルースカヤの位置づけには大いに疑問。なぜ、この踊りだけ一人で踊っているのか、何のために彼女はいるのか意味がまったく通じない。一人で延々と踊らされるお仕置きですか?と聞きたくなるほどだ。
ナポリの振付はドタバタしていてまったくよくないし、ダンサーの魅力が全然発揮できていなくて最低。チャルダッシュやマズルカは平凡。

以下はかなり悪口を書いているので覚悟の程を。ネタバレなので、未見の方は読まないことをお勧めします。

今回の新演出の意義は、いったい何だったんだろう。たしかに衣装や舞台装置は美しく素晴らしいと思う。だけど、演出や振付は基本的に去年まで上演していたセルゲイエフ版とさほど変わらない。違う点は、プロローグとして娘姿のオデットが登場すること(ブルメイステル版にちょっと似ている)、1幕の終わりに王子のソロがあること、3幕にルースカヤがあること。そしてエンディングである。

とにかく終わり方がダメダメだ。オデットはあっさりと王子を許してしまう。ここで一転、物語の悲劇性、運命に翻弄されてこの世では一緒になれない恋人たちの悲しみというのが吹き飛んでしまう。そして、王子とロットバルトは戦うこともなく、ただ王子とオデットが一緒にいるだけで、二人の”愛の力”でロットバルトは勝手に破滅するのだ。ところが、オデットと王子の間に愛なんてぜんぜん見えないから困ったものである。以前の演出ではロットバルトは翼をもぎ取られて派手に死んでいくのだが、こちらでは、ロットバルトは自分から湖の底に沈んでしまう。その滅び行くロットバルトを見つめる白鳥たちの数も少なくて、群舞の魅力が発揮できていない。ロットバルトの死に加担する白鳥たち、という見方も出来ない。全然盛り上がらなくてつまらない。ハッピーエンドだけど、ハッピーな終わり方のドラマティックな盛り上げもない。パンフレットによれば、牧阿佐美は、(ブルメイステル版のように)最後に娘の姿に戻ったオデットを見せるのは興ざめなので今回はやらない、と考えたそうだが、そうした方がまだ、ハッピーエンドらしくてマシなのではないだろうか。

と一通り悪口を書いた。だが、ザハロワのオデットはやはり世界一だし(私はニーナ・アナニアシヴィリやイリーナ・ドヴォロヴェンコのほうが好きだけど)、新国立のダンサーはみんな上手だし、舞台装置や衣装は綺麗だし、マトヴィエンコもソロは出来が良かったし、楽しめた。できれば他のキャストでも観たいのだけど、今週は他のバレエ団の公演も重なっている上、また仕事が忙しくなってきているので、行けそうもない。残念。

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先月の新国立劇場の新演出の「白鳥の湖」については、色々なブログに感想記事が出ているようです。 [続きを読む]

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