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2006/10/22

「ブラック・ダリア」

大好きなエルロイの原作を、デ・パルマが映画化するというので何をおいても見に行かなくちゃいかん、と劇場へ。微妙な評価はあちこちで聞いていたんだけど。。。


なんだか原作の設定だけ借りたデ・パルマ映画(というジャンル映画)になっていた。原作は恐ろしく男臭い話になっているのだけど、この映画では、死体を切り裂かれ損壊された美女ブラック・ダリアに囚われ、狂気に陥る男たちの心理を描こうとは微塵も思っていなくて、デ・パルマスタイルで撮影することと、エロいレズビアンを描くことに注力している。

"ブラック・ダリア”ことエリザベス・ショートの生前の様子を、原作よりもずっと重点的に描いている。また、このエリザベス役のミア・カーシュナーが恐ろしく魅力的で、まさしくブラック・ダリアそのもの。黒髪に大きなグレーの瞳。これだけの頽廃的な美しさがスクリーンの向こうに漂ってきたら、リーでもバッキーでも取り憑かれるわな。しかも、彼女が出演した怪しげなレズビアン・フィルムが、やたら良くできているわけで。モノクロームの画面に映える、エリザベスの灰色の瞳の訴えかけるもの、あの不安定な美に取り憑かれるのは良くわかる。彼女の魅力を前にしては、ヒラリー・スワンクもスカーレット・ヨハンセンも形無しである。

「エリザベスはレズビアンだったのかも」という女優の卵の証言で(またこの彼女の衣装が妙に派手派手なオリエンタル風味なのがすごく妖しくて素敵)、レズビアン・バーでバッキーは調査活動をするのだけど、このレズビアン・バーの描写がすごく気合が入っていていやらしくて良い。k.d.ラングそっくりの、ちょっと年増の歌手もすごくいい(と思ったら、k.d.ラング本人だったらしい!)。

多分デ・パルマが描きたかったのは、美しいレズビアン女性なのであって、後は彼独特の映像のお遊びだけできれば満足したのでは、と。だから、この映画はあの怪作「ファム・ファタール」をちょっと連想させる。

ブラック・ダリアの惨殺死体が発見されるまでの、ビルをまたぐようなカメラワークや、追われる女性を描いたカメラが長廻しでライス国務長官に似た黒人美女と男性が銃撃戦に巻き込まれるまでのカットなどはいかにもデ・パルマ的で楽しい。キャメラワークはさすがに魔術的といってもいいくらいでいつもながら素晴らしい。

キャストに関して言えば。。。うーんいい役者をそろえてはいるんだが。アーロン・エッカートはうまい人だけど、脚本に難があるのか、清潔感がありすぎてリーのダークサイドが表現されていない。ジョシュ・ハートネットもお坊ちゃん過ぎるし、ぜんぜん狂っている様子が伺えない。(裸のお尻のカットがあったのはデ・パルマの趣味?) ヒラリー・スワンクは思ったより美人に撮れていたし、ビッチな演技も当然すごく達者なのだけど、ブラック・ダリアには全然似ていないのと、少しこの役には年をとりすぎている。スカーレット・ヨハンソンはきれいだし胸は大きいし、40年代の女優風には見えるのだけど、幼児体型なのがわかっちゃうのがな~。それにいかんせん脚本が。。。何のためにいるのか良くわからないような存在感のないキャラクター。ヒラリー・スワンク演じるマデリンの母親役フィオナ・ショーの狂った演技はすごく良かった。 この狂気がどこにも伝播していかないから物足りないのだろう。

話の展開にしても、説明的なせりふが多すぎて、原作を読んでいても変えられた設定が多く混乱するし、特に後半は端折りすぎていったい何が起きているのか全然わけがわからない。終わり方もすごく唐突だし、あれでいいのか、と思う。原作のあのやるせなさが全然伝わってこないし。途中までは割といい感じだったのに、主要なキャラクターの一人が消えてからは、どんどん演出も悪くなっている。

ただ、ディテールの一つ一つはとても凝っていて、視覚的にはとても楽しい。ストーリーが、とかキャラクターとか考えないで画面に酔うには良いのではないだろうか。まあ、デ・パルマですから。

デヴィッド・フィンチャーが予定していたモノクロ3時間半ヴァージョンというのが観てみたい。

うるるさんの感想はこちらです。
Elieさんの感想はこちらです。

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映画」カテゴリの記事

コメント

原作を知らないので、すっかりデ・パルマに踊らされた感のある私ですが、原作ファンには???の評価のようですね。確かに腑に落ちないところは多々あったので、原作読んでみますね~~! その後もう一度スクリーンで見たいけど、なんとなく早々に打ち切られそうな予感が・・・。

デ・パルマの映画って、アル・パチーノおっかけなどでいくつか見て、男性を渋く見せるところが好きなんですが、アントニオ・バンデラス追っかけで見た「ファム・ファタール」は嫌悪感が先に立って理解不能でした~(アントニオにそんなことすんじゃね~っていうような・笑)。

こんにちは~
随所に画的なこだわりを感じる作品でしたね。他のデ・パルマ作品を知らないのですが、これが彼の作風なのでしょうか。

複雑な人間関係について行けるのかという不安が、物語冒頭暫く続いた縦書きの字幕によって増徴されてしまい、焦ってしまいました。。読みづらくて…(^_^;)

TBさせて頂きました。

こんにちは、はじめまして。
結構複雑難解で理解に時間がかかりました。

最初から最後まで腐女子な内容なのに恐れ多くも本文リンクしていただきありがとうございます。
原作、映画化されてるのにタイアップで売り出されてないんですね~~仕方ないから中古品を注文したところです。図書館だと数人待ちだったから・・・。

うるるさん、
そうですね~エルロイの世界ってすごく複雑で2時間の映画にまとめるのは相当難しいと思いますよ。「LAコンフィデンシャル」はそのあたりうまくやっていましたが。そもそもエルロイの文章も決して読みやすいわけではないですからね。
「ファム・ファタール」は確かに駄作といえば駄作だけど、好きだというマニアの方も結構いるようです。


Elie さん、
トラバありがとうございました。絵作りに独特の色香がある映画で、雰囲気はとてもよかったと思います。デパルマはそういう映画監督ですね~お勧めは「アンタッチャブル」「ボディ・ダブル」あたりでしょうか。特に「アンタッチャブル」は主要キャラ3人がみんな超素敵です。ケヴィン・コスナー、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシアですからね。

セニョールさん、
ようこそいらっしゃいました。原作を読んでいる私ですら??と思うところはたくさんありました。脚本に難があるんですよね。

またまたうるるさん、
そう、本が売り切れというのにびっくりしましたわよ!映画となんでタイアップしないんでしょうね~
私も同じく腐女子なので(笑)

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» 「ブラック・ダリア」 [首都クロム]
 変に区切られるドラマよりも、映画で一息に見るサスペンスは良いですね。とは言え、この作品は‘事件の真相を追う’展開を下敷きに愛情と欲望とそれらの狂乱を絡めた織物のような物語のように感じました。サスペンスと言うジャンルを主張するには、その要素は寧ろ弱かったような気がします。しかし、そういうことに囚われるより先に、物語の背景を彩るクラシックな雰囲気にすっかり心奪われてしまいました。黒のクラシックカーで現場に急行ですもの、絵になります!そしてジェントルそうな紳士が沢山。これまた絵になります。極めつけは黒電... [続きを読む]

» ブラック・ダリア [あいち国際女性映画祭ANNEX-cinemado's BLOG]
タイトルに何がしか引っかかるところがあり、というか、どこかで聞いたような…、これなんだっけといった程度の興味はあったのですが、きっと見ないだろうと思っていた「ブラック・ダリア」、某新聞の映画評と某TV番組の某タレントのコメントで興味を持ち、足を運ぶことになりました。(某某じゃ一向に分かんない…)ということで、見ての感想をたとえていうなら、そこそこ名の通ったレストランで食事をし、オードブル、なかなか凝ってたね、魚料理、まあまあ美味かったけどワインの選択を間違えたかな、肉料理、ソースにパンチがなかったね... [続きを読む]

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