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« ルジマトフとインペリアル・ロシア・バレエ:『シェヘラザード』Bプロ | トップページ | プリセツカヤの世界文化賞 »

2006/10/19

ルジマトフとインペリアル・ロシア・バレエ「シェヘラザード」Bプロ第2部

ゾベイダ:スヴェトラーナ・ザハロワ
金の奴隷:ファルフ・ルジマオフ
シャリアール王:ゲジミナス・タランダ
宦官長:ヴィタウタス・タランダ
シャザーマン:ジャニベク・カイール

先週マハリナの妖艶で大人の色香漂うゾベイダを見たばかりで、"姫"ザハロワのゾベイダはいかに、と期待と不安を半分ずつ抱えて臨むことに。何しろ、月曜日には彼女のライモンダを観たばかりだし。

ザハロワ、演技がすごく上手になったじゃない、というのが第一印象。DVD「Kirov Celebrates Nijinsky」では一生懸命にセクシーに演じようとしていたところがかえって痛々しかったが、さすがにそれから成長して、すっかり余裕のあるつややかな演技を見せてくれた。

でもやっぱり"姫"なのよね。すごく甘え上手な寵姫で、シャリアール王も彼女が可愛くて仕方ないって感じで接していた。そんな王の寵愛を一心に受けながら、でも心にはなぜか隙間があって、というところをよく表現していたと思う。すこしふっくらしたのも、この役には似つかわしい。ザハロワがふっくらしたとはいっても、もともとがものすごく細いので、バレリーナ標準からしてもまだ細いわけだけど。 「Kirov Celebrates Nijinsky」での「シェヘラザード」のザハロワなど、やせ過ぎてあばら骨が浮き出ていたほどだったのだ。
最初のほうで、シャリアール王がゾベイダに水を飲ませるところなんて、まあ色っぽいこと。彼がどれほど彼女のことを愛しく思っているかよくわかる。

それにしても、ザハロワの身体能力はすごい。何がすごいって、脚がまるで独立した生き物のようにくねくねと自在に動き、しなるってことだ。ありえないものを観たとびっくりした。もちろん、背中も恐ろしく柔らかいし。
今回、踊っているシーンに関してはルジマトフ以上に、ザハロワの踊りが目を引いた。アラベスクのときに、まるでスケートのビールマンのように足先と頭がくっついて、それから脚がアティチュードになったりとか、そんな動きは滅多に見られるものではない。

ザハロワがよく、テクニックはすごいけど演技がちょっと、といわれるのは、完璧すぎる容姿とすごい身体能力が先に立ってしまうというのが大きいのだろう。

演技力が付いたとはいえ、ゾベイダらしさについては、マハリナに一歩も二歩も譲るとは思う。ザハロワのゾベイダは、登場したときから途中まで、あまり変化がないのだ。すごくセクシーだし、小悪魔的な魅力がある一方、高貴さもある。だけど、やっぱり"姫"だし、奴隷との出会いで何かが変わったかといえば、変わっていないのだ。奴隷との関係は、愛のゲームのように見えてしまう。マハリナの時に感じた、見ている側も息苦しくなるような、むせかえるような濃厚で凄絶な、狂おしい愛の饗宴はここにはないように思えてしまった。

それでも、終盤、シャリアール王に命乞いをする時の必死さには心を打つものがあった。命乞いというよりは、「こんなことをしてしまった私を許して」と言っているようで。だからこそ、王も彼女を生かそうと思うし、彼女が果てた後の悲しみも大きくなったのだ。
このシーンでのザハロワの演技を観て、まだ若い彼女が、これからどれだけ成長することか、とても楽しみとなった。

さて、ルジマトフに関しては、今回も絶好調。踊りに関しては、8日よりもさらにパワーアップしていた。ところ狭しと、疲れを知らないかのようにダイナミックにジュッテ、トゥールザンレールを繰り返す。見得の切り方に関しては、彼以上にカッコよくキメられるダンサーを知らない。実際には決して大きくはない体を数倍にも大きく、雄雄しく魅せてくれるその彫刻のようなポーズは、無形文化財といっていいだろう。ラメが塗られて光り輝く美しい肉体。やがて滅び行くものだと知っているからこそ、なお美しく輝く。後宮の奥でシャリアール王に大事にされ、おそらくは王しか男性を知らないであろうゾベイダがぞっこんになるのも無理はないだろう。「アダージェット」でも発揮されていた腕の動きの美しさも天下一品。ここまで力強く官能的に体の曲線を作ることができる人がどこにいるだろうか。若く世間知らずだけど、気位は高い姫の戯れに、奴隷は愚直なまでに従い、やがてゾベイダも夢中になっていく(ここで理性は失っていなくて、どこかクール、愛よりも、愛欲に身を任せている自分に酔っているように見えるのがザハロワらしいところのだが)。
二人がパ・ド・ドゥでシンクロして踊るところは、あまりにもぴたっと合っていて、眩暈がしそうだった。なんという美しい風景だろう。ザハロワの相手としては少しルジマトフは小さいのだが、顔の小ささといい、腕の長さといいバランスは絶妙なのだ。

しかし、今回最も心を打たれたのはシャルアール王を演じたタランダの演技である。狂乱の宴に踏み込んだ彼は、決して怒ってはいなかった。「なぜなんだ」と彼は訴えかけていた。これほどまでに愛情を注ぎ込み、何不自由ない暮らしをさせていた愛妾が、奴隷ごときとこんなことを...。その場にいる者全員を殺させた後、ゾベイダを見つめる彼の瞳は潤んでいた。そこへ、ゾベイダが、「許して」と彼の足元にひれ伏して命乞いをする。こんなにも愛らしい姫にすがりつかれてしまったら、許そうという気持ちにもなり、彼女を優しく抱ききしめる。しかし、弟が、それは許されないといい激しく動揺する。その隙を突いて、彼の短剣を奪うゾベイダ。もう一度、「許して」という表情を見せるけれども、王は「この俺こそを許してくれ」とその潤んだ瞳で語る。短剣を自身に突き立て、息絶えるゾベイダ。彼女の亡骸を抱きとめ、死に顔を愛しそうに覗き込んだ王は、なすすべもなく、潤んだ瞳のままで苦悩し絶望して虚空を見つめる。弟シャザーマンに心の動揺を見透かされまいとしながらも、そんな虚勢を張らなければならない自身を呪うかのように。自分が王でさえいなければ、愛する姫を死に追いやることを強いられなかったのに....。今はすべてが虚しいと、タランダの美しい瞳は語りかけていた。

エロスと死と暴力で彩られた作品に、ギリシャ悲劇のような重厚さを与えたのは、タランダなのであった。心をかきむしられるような彼の深い演技を堪能できた幸せをかみ締める。ザハロワもルジマトフも素晴らしかったけれど、そして第一部のキリル・ラデフやマハリナもよかったけれど、今日のMVPはタランダであった。

カーテンコールで渡された花束から一厘バラの花を抜き取ってルジマトフに渡したザハロワ。ひざまづいて受け取り、彼女の手にキスをするルジマトフ。いい雰囲気の二人で、観ていて嬉しくなってしまった。これからもっと共演して、伝説的な舞台をたくさん作り上げて行って欲しい。タランダ様がいればさらに最高。

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