2024年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« パリ・オペラ座バレエ「カルメン/若者と死」  | トップページ | SWAN MAGAZINE2006年秋号/プリンツ21 »

2006/09/19

パリ・オペラ座バレエ「MC14/22 "ceci est mon corps"」

アンジェラン・プレルジョカージュがパリ・オペラ座のために振付けた1時間弱の作品。

タイトルのMC14/22とは、聖書のマルコによる福音書第14章22節「これは私の体」という意味らしい。最後の晩餐のときに、イエス・キリストはパンを取り、賛美の祈りを唱えて弟子たちに渡しながら言った。
「取って食べなさい。これは私の体である」

で、この作品、12人の男性ダンサーが、パンツ一丁もしくはその上に黒い巻きスカートで登場するのだ。音楽はずっと電子音。

ガムテープをベリベリ使う男性。横たわる男性の上に洗面器の水をかける男性。そして、まるで商品のようにカイコ棚のようなスチール棚に並べられた半裸(白ブリーフ一枚)のダンサーたちが、横向きで蠢いている。 人間性を剥ぎ取られた存在のようだ。

やがて、棚は解体されて横一直線に並べられる。男性ダンサーたちはペアを組んで、向かい合い、意味ありげな性的な目線を送ったり、その目線に怯えたり。そして片方が、堰を切ったように相手に激しい暴力を加える。その暴力は、あるときには性的な暴力を連想させる。棚の上に倒した男性の上にのしかかったりとかなり直接的な表現。そして、ある時点で、この二人の立場が逆転する。さらには、2人がかりで1人の男を犯すようなポーズまで登場する。

一直線に並べられた棚のところで、12人がそれぞれ異なったポーズを取って静止している姿は、なるほど、「最後の晩餐」の絵画を連想させるものである。カラヴァッジオみたい。

それからジェスチャーゲームのようなとても複雑な動きを12人が一斉に行う。

一番残酷なのは、ガムテープを使ったシークエンス。冒頭に出てきたガムテープ男が、1人の男が内股気味に踊っているところへ、一瞬の隙を突いてガムテープを巻きつける。最初は目隠しのように顔に。目隠ししながらも同じように踊り続ける男。次に腕、そのうち足、体、と少しずつ自由を奪われる。最後には猿轡のように口に食い込むようにガムテープを巻かれ、ぐるぐる巻きにされてひとつの荷物のようになってしまう。それでも倒れたり不恰好に動きながらも踊ろうとする。ガムテープ男は、天使のような美しい顔をしているのに、表情ひとつ変えようとしないでこのガムテープ緊縛プレイを行うので、恐ろしい。最後は、別の二人の男性によって、ぐるぐる巻きにされた男は運び出されてしまう。

クライマックスでは、二人のダンサー(この舞台は、若手ダンサー中心なので、オペラ座にそんなに詳しくない私が固体識別がつく人が3,4人くらいしかいない。右側で踊っているのがステファン・フォヴォラン)が、アラベスクを入れた振りで踊り、初めてダンスらしいものを見せてくれる。その後ろで、例の棚を積み上げたところから一人一人ダンサーが飛び降りる。もちろん、下にはほかのダンサーたちがいてキャッチをするのだが。最初は前を向いて飛び降りているのだけど、そのうち後ろ向きに飛び降りるように。よく怖くないものだと思ってしまう。 そして一人の男性は、洗面器の中に顔を浸すが、洗面器の中にあるのは水ではなく泥で、泥まみれの顔を向けている。

そんなわけで、先日のバレエ・プレルジョカージュ公演で見た「N」にも通じるような、むき出しの暴力と性が表現されていたり、不条理なものが現れたり。イヤというほどお互いを傷つけるダンサーたち。これを不快と思う人はいっぱいいると思う。意図がわからない部分が多い。事実、フランスでの批評も良くなかったようだ。(チャコットのDance Cubeによると)

しかしながら、個人的にはすごく面白いと思ってしまった。美しいとはいえないもの(もちろん、ダンサーたちの肉体はとても美しいわけだが)、残酷なものをわざわざ舞台で見たくないという気持ちもとてもよくわかるが、時には現実を映し出すような作品も作られなくてはならないのでは、とも思うからだ。

身体的にも精神的にもこれを踊り演じるのは実にタフなことだと思う。これを演じきったダンサーたちに拍手。また、これをレパートリーに入れたオペラ座もすごいと思う。一人、見慣れないスキンヘッドのダンサーがいて、非常に存在感がありセクシャルな魅力を振りまいていたのだが、彼はバレエ・プレルジョカージュから客演していたSylvain Groudだった(現在は地震のカンパニーを率いている模様)。さすがにプレルジョカージュのダンサーだけあって、この世界観を一番理解しているようであり、オペラ座のダンサーにない野性味があって魅力的だった。

振付:アンジュラン・プレルジョカージュ(Anjelin Preljocaj)
サウンド:テッド・ザーマル(Tedd Zahmal)
衣装:Daniel Jasiak
照明:Patrick Riou
撮影:Denis Caiozzi

出演
Stephane Bullion Guillaume Charlot Jean-Christophe Guerri Emmanuel Hoff Gil Isoart Stephane Phavorin
Simon Valastro Vincent Cordier Yong-Geol Kim Nicolas Noel Alexis Renaud

Sylvain Groud(バレエ・プレルジョカージュ)

あ、もちろん腐女子にとってはかなりポイントが高いですよ~(笑)朝っぱらから女子二人でキャーキャー言いながら観ていました。

« パリ・オペラ座バレエ「カルメン/若者と死」  | トップページ | SWAN MAGAZINE2006年秋号/プリンツ21 »

バレエのDVD・ビデオ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: パリ・オペラ座バレエ「MC14/22 "ceci est mon corps"」:

« パリ・オペラ座バレエ「カルメン/若者と死」  | トップページ | SWAN MAGAZINE2006年秋号/プリンツ21 »