最近のコメント

BlogPeople


2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« 東京小牧バレエ団「白鳥の湖第二幕」「薔薇の精」「ペトルウシュカ」 | トップページ | 「ディヴァイン・ダンサーズ プラハ・ライブ(Divine Dancers Live from Prague)」 »

2006/08/28

ムーヴィン・アウト 8/27

エディ:ブレンダン・キング
ブレンダ・ホリー・クルイクシャンク
トニー:デヴィッド・ゴメス
ジュディ:ローラ・フェイグ
ジェームズ:スチュアート・キャップス
ピアノ・マン:ダレン・ホールデン

ビリー・ジョエルのヒット曲と、トワイラ・サープの振り付けによって誕生したミュージカル。とはいっても「マンマ・ミーア」のようにキャストが歌を歌うのではなく、ピアノ・マンというヴォーカル&ピアノを担当のミュージシャンが、バンドを従えてビリーの曲を歌い、出演者はダンスに専念。ブロードウェイで上演中のときにとても良い作品だと聞いていて、観に行こうと思いつつ都合が合わなくって、気がついたら終わってしまっていた。ブロードウェイでは、今回のツアーに参加しているキース・ロバーツのほかに、アシュリー・タトル、ジョン・セルヤと元ABTのダンサーが3人も出ていたので、ダンスのレベルが非常に高いことは推察していた。しかし、実際に見てみて本当に驚いた。

ミュージカルのダンスそのものは実は好きではないので(何しろ、一番好きなミュージカルは「オペラ座の怪人」というほとんどダンスがない作品だし、「マンマ・ミーア」などは見たけどABBA好きなのに実にくだらないと思ったし、バレエ好きからすると物足りなくて)、あまり期待していなかった。ラスタ・トーマスやキース・ロバーツなどバレエダンサーが出演する回がいいな、と思っていたのだが、ふたを開けてみたら二人とも出演しない日だった。

ところが、この演目はひたすらダンスダンスダンス!恐ろしく高いレベルのダンスが展開する1時間40分。だれるところがほとんどなく、充実しまくり。

エディ役のブレンダン・キングがすごい。ひと目でバレエ系の人ではないのがわかったけど、身体能力の高さが半端ではないのだ。バレエのピルエットではないとは言っても、10回以上余裕で回転しているし、跳躍もすっごく高い。片脚を伸ばし、もう片方はプリエのような形で空中で回転するのを10回くらい連続してやっちゃうのには驚いた!ありえないほどすごい!バック転もいっぱい入っているし、アクロバティックな動きもお手の物。マーシャル・アーツを取り入れたような力強い動きをしているのがとてもユニークで面白かった。1時間40分のステージの間中踊りっぱなしなのに少しもスタミナ切れを感じさせず、最後までエネルギッシュ。席は後ろの方だったのだけど、汗ひとつかいていないように見受けられた。リフトがまたすごく多いのだけど、そんなのも軽々とやってのける。やんちゃで反抗的なエディのキャラクターにぴったり。

トニー役のデヴィッド・ゴメスは、ブレンダン・キングの派手さに隠れがちではあるけれども、着実なテクニックを持っている。ピルエットもとても綺麗に回る。何よりも、長身でとてもハンサムだ。

最初はエディの恋人だけど仲違いしてトニーの恋人になるブレンダ。彼女を演じるホリー・クルイクシャンクは、長身で脚が長く、モデルのような抜群のスタイルを誇る美女。デヴィッドと並ぶと長身美男美女で絵になる二人。基本的にハイヒールを履いて踊っているのだが、脚はすごく高く上がるし、とにかくセクシーに踊れる人だ。後半では、ベトナムに行ったトニーの復員を待ちながらストリップ・クラブで働いているという設定になるため、扇情的な踊りもしたりする。バレエの踊り方ではないけれども、バレエをちゃんと習った人のダンスになっている。

バレエといえばジュディ役のローラ・フェイグ。婚約者ジェームズがベトナム戦争に従軍し、ジェームズは生きて帰ることができずアメリカの国旗がかわりに帰ってくるのだが、喪服を着たときの、ポアントを穿いた踊りが素晴らしかった。アラベスク、ジュテ、パ・ドブレとそれぞれが美しく踊れるだけでなく、情感を込めた演劇的なバレエの踊りができる。怒り、悲しみなどの感情が踊りからダイレクトに伝わってきて胸に響いた。

そのベトナム戦争で命を落とすジェイムズを演じるスチュアート・キャップスは、NYCBに8年間在籍したそうで、さすがに踊りは素晴らしい。何よりもすごかったのが、ベトナム戦争に従軍し、戦いの中で命を落とすシーン。よく、サム・ペキンパー監督の映画で「死のダンス」と呼ばれる描写がある。「俺たちに明日はない」のラストシーンもそうだったけど、「戦争のはらわた」や「ワイルドバンチ」などの映画で、大量の銃弾を浴びた登場人物が踊るように体を動かしながら絶命する描写だ。ジェイムズの死は、まさにペキンパーの映画から抜け出たようなもので、一つ一つの銃弾が命中し、死に至るまでの苦悶が伝わってくる凄まじいものだった。2幕で再び回想シーンでジェイムズが登場するところは、涙なしには見られない。
撃たれて血を流し、瀕死の状態のジェームズが立ち上がり、エディと踊るのだから。音楽は、もちろん「グッドナイト・サイゴン」。

親友であるジェイムズを見殺しにし、ベトナムに置いてきてしまったことをエディとトニーは深く後悔し、良心の呵責にさいなまれる。エディは麻薬におぼれて自暴自棄な生活を送り、トニーはブレンダとうまくいかなくなり、別れてしまう。そんな彼らを救うのが、ジェイムズの記憶であり、そしてジュディなのだ。

ビリー・ジョエルの曲は、単にこのミュージカルを彩る音楽にあらず。エディ、トニー、ブレンダ、ジュディと登場人物たちの名前はビリーのもともとの曲に登場する名前なのである。彼の音楽を巧みに再構成し、ひとつの物語に作り上げて行ったトワイラ・サープはすごいと思う。ビリーの歌は、「ハートにファイア」などの世相を盛り込みながらも、青春の光と影、挫折と希望を描いた普遍的なテーマが貫かれている。「ハートにファイア」でベトナム戦争を再現したり、まさに「アップタウン・ガール」にぴったりなゴージャスなブレンダの踊りがあったりと、歌詞を含めてよくもまあこんなにうまく当てはめたものだ。せりふがなくても、一つ一つの動きで感情が見事に表現され、歌詞がそれを補強する。実にうまい。

ビリー・ジョエルの楽曲が時代を超えて魅力を放っていることを再確認するとともに(私が彼のコンサートに行ったのはかれこれ20年近く前である→おっと年がばれる)、ピアノ・マンのダレン・ホールデンの歌の素晴らしさも忘れてはならない。20曲あまりを歌いっぱなしなのに声量はまったく衰えず、艶のある魅力的な歌声だった。バックの演奏、コーラスも一流。カーテンコールの途中での、「ピアノ・マン」「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」を歌ってくれたのも嬉しかった。

アンサンブルに至るまで、殺人的な振り付けをやすやすとこなした見事なダンス、そして音楽。ジェイムズの死と、それをジュディが乗り越えたことで、再生していくエディ、トニー、そしてブレンダ。現実の世界はここまでハッピーな終わり方はしないのかもしれないけれども、希望を与えられる、感動的でパワフルなステージだった。そういうわけで、リピート決定。次はラスタとキース。ストーリーや歌詞を頭に入れたから、次はもっとダンスに集中しよう。

これから観る方には、ぜひストーリーと人間関係を頭にいれ、できればビリーの曲も予習してから臨むことをおすすめします。

« 東京小牧バレエ団「白鳥の湖第二幕」「薔薇の精」「ペトルウシュカ」 | トップページ | 「ディヴァイン・ダンサーズ プラハ・ライブ(Divine Dancers Live from Prague)」 »

バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

「夫婦de雫」というサッポロ 雫(しずく)を応援するブログを運営しております。「ムーヴィンアウト」の記事にトラックバックさせていただきました!こちらのブログもよかったら、チェックしてくださいね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30328/11641445

この記事へのトラックバック一覧です: ムーヴィン・アウト 8/27:

« 東京小牧バレエ団「白鳥の湖第二幕」「薔薇の精」「ペトルウシュカ」 | トップページ | 「ディヴァイン・ダンサーズ プラハ・ライブ(Divine Dancers Live from Prague)」 »