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2006/08/23

アメリカン・バレエ・シアター「白鳥の湖」とエミー賞

海外ドラマぼや記」さんで知ったのですが、PBSが製作したABTの「白鳥の湖」の映像が、栄えあるエミー賞の「OUTSTANDING SPECIAL CLASS PROGRAM」という賞を取ったそうです。(表彰されるのは、製作したPBS)
リリースはこちら

このリリースを見て、エミー賞ったらこんなにたくさん部門があるんだと驚いた次第。いつもは、テレビで中継される授賞式しか観ていないからね。

しかしこの映像がなぜ賞を取ったのかはちょっと謎です。いや、出演者は素晴らしいですよ。アンヘル・コレーラ、ジリアン・マーフィ、マルセロ・ゴメス、エルマン・コルネホ、シオマラ・レイエスとプリンシパルが4人も出演しているし、パ・ド・トロワにエルマンとシオマラなんて豪華キャスト。しかも、家庭教師の役は、バレエ界の至宝、御年92歳のフレデリック・フランクリンだし(美しいです)、女王は元ロイヤルのジョージナ・パーキンソン。素晴らしい演技が見られます。でも、2時間に収めるために、相当カットがされているので、非常に不満です。

しかし、正統派の「白鳥の湖」を見ようと思ってはいけません(笑)

まず出だしからして凄いです。ブルメイステル版に少し似ていて、まずは娘姿のジリアン・マーフィが登場すると、彼女の前にハンサムな紳士マルセロ・ゴメスが現れる。まあ、素敵なお方だわ、ポッ、となったところで紳士が緑色の怪物ロットバルトに変身し、娘が穴に押し込められたかと思うと、白鳥に変身しているという、なんともハリウッド映画っぽい展開。これは映像なので娘が白鳥に変身するというところが見せられるのであって、実際の舞台は、なんとオデットではなくおまるのような?白鳥のぬいぐるみで、しかも化け物ロットバルトが後ろで一生懸命翼をばたつかせているのが見えるのでさらに笑えてしまうのだ。

1幕はなんといってもエルマン・コルネホと姉のエリカ、そしてシオマラ・レイエスのパ・ド・トロワが素晴らしい。エルマンの跳躍はどこまでも高いのにエレガントだし、エリカは脚が強靭なのにびっくりするけれども、あくまでもチャーミング。この3人のパ・ド・トロワは最強だと思うのに、エリカはABTから旦那様であるカルロス・モリーナがいるボストン・バレエに移籍してしまうのだ。残念すぎる。

アンヘルの王子は、一生懸命顔で演技をしようとしているのに、ちょっと違和感がある。彼の普段のイメージを裏切る、憂鬱そうで悩める王子だ。そんな王子がバリエーションでいきなりすごい跳躍を見せるので、そのギャップが味わい深い。

2幕は、ジリアン・マーフィのオデットをどう思うか、好き嫌いが分かれるところだろう。意外とアームスもやわらかいのだけど、大柄な体型もあってちょっと大味に見えてしまうのが欠点。テクニック的には素晴らしいし、叙情的な面を見せることには成功している。とても不幸な身の上の白鳥であることが伝わってくる演技は、良いと思う。群舞が揃っていないのはABTだから仕方ない。

このヴァージョンの最大の見せ場は3幕。ところが、残念なことに、映像ではベンノ(エルマン・コルネホ)のソロが丸ごとカットされてしまっている。なんということ。
キャラクターダンスは、まるで少年隊か光GENJIか、と思うような鉢巻にストライプタイツという珍妙な衣装のナポリが楽しい。カルロス・ロペスとクレイグ・サルシュタインによるナポリは、トゥール・ザン・レールの呼応から、最後はピルエット合戦になっている。チャルダッシュのソリストはゲンナディ・サヴェリエフだが、どうやらここも部分的にカットされているのが残念。

お待ちかねのセクシー版のロットバルトの登場。ルースカヤの曲でブラーヴアなソロを披露して、その場にいる者全員をとりこにするマルセロ・ゴメス。片足ルルベでのアラベスクも美しい。最後には女王の手にキスして、玉座に堂々と座ってしまう。彼が踊っていると、花嫁候補たちが一人一人、魔法にかかったように引き寄せられているのが可笑しい。マシュー・ボーン版の「白鳥の湖」のストレンジャーのような、男も女も魅了するような存在なのだ。

ジリアンはオディールの方が似合っている。真っ白な肌に黒い衣装が映えるし、悪女っぽい表情が魅力的なので。アダージョの時に耳元で囁きかけるロットバルト、本当にやばいほど危険な香りが漂っていて、生で見ると息も絶え絶えになるほど。ジリアン得意の32回転は、トリプルも数回入っていて、さすがに回る回る、これは本当に凄い。アンヘルも、ヴァリエーションでは、今まで踊らせてもらえなかったフラストレーションをぶつけるかのように跳びまくり、コーダでは、親の敵でも取りそうな勢いで、猛スピードでピルエット・アンディオール。なんだか凄いものを見せてもらった気分。

4幕でも冒頭のハクチョウたちが登場するシーンがカットされてしまうのが、許せないところ。いきなり唐突に泣き出しそうな表情のアンヘルが駆け込んでくるものだから。(この映像、なぜかアンヘルのクローズアップがとても多い)化け物ロットバルトは、よく見ると、本当に馬鹿みたいなカッコウで、なんだか途中で可哀相になってきてしまう。おいしい部分は全部セクシーロットバルトが持っていってしまって、こっちはへんてこりんな姿で何が楽しいんだろうと同情しちゃう。やっぱり一緒にはなれないの、とオデットが湖に身を投げると、王子も後を追うように飛び込むのだけど、身投げというより、プールにでも飛び込むような元気のよさで飛び降りるところが、アンヘルらしいというかなんと言うか。哀れなロットバルトはすっかり弱ってしまい、白鳥たちに足蹴にされて死亡。そして、最後には、ご来光のような光の中で、王子とオデットは結ばれている。このご来光を見て爆笑する人多数。

こんな感じの、とっても楽しい映像です。

輸入盤はリージョン1。国内版は新書館から出ています。

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コメント

こんにちは~。どうも拙ページ引用ありがとうございます。「白鳥の湖」の絶妙な解説も・・・DVDは何度も見ましたが、初めて心底見た気になれました。(笑)
それに、それ程多くカットされていたとは露知らず・・・編集賞は逃して正解でしたネ。(笑)

ところで、今まで知らなかったのですが、ABTの映像「Born To Be Wild」「The Dream」「海賊」・・と、すべて今回受賞した女性プロデューサーの作品だったのですね。
「白鳥・・」が受賞したなら「海賊」も?・・と思ったら、やっぱり「海賊」もエミー賞受賞していて・・・。
TVマニアとしては、今更知って、気恥ずかしい様なビックリです。(苦笑)

よろしかったら、こちらもご参照下さい~。
http://www.thirteen.org/pressroom/release.php?get=297

 こんにちは~。早速お邪魔しました。
この『白鳥の湖』ってそういう内容だったのですね…。
 「おまるの白鳥」って、「少年隊か光GENJI」のようなナポリって…。
 くくく…、凄い!これは是非観ておかねば!!
解説ありがとうございます~。

 

こんにちは。楽しい記事、にやにやしながら読ませていただきました。
3幕にエルマンのソロがあったんですか?知らなかったわ。カットするなんてもったいない。2幕組みにでもなんでもしてくれるとよかったのに。今回の受賞記念にノーカット版を出してくれるといいのに・・・でも、そうしたらまた買わなきゃいけない??(苦笑)

このDVDを見てまず思ったことは、映像がとってもきれい!!こんなきれいなバレエ映像を見たのは初めてだわと感動しました。

たまねこさん、ようこそいらっしゃいました。
私はこの舞台、7,8回は観ているんですが、生で観た時には、おまる白鳥に笑ったくらいで、結構まじめに観ていたんですよね。(フリオ・ボッカが王子をやったときには情熱的な演技にノックアウトされたし)だけど、映像を見ると笑ってしまう。なんででしょう。
いいサイトを教えてくださってありがとうございます。参考にします。

玉兎さんもようこそいらっしゃいました。
正統派の、ロシア系などの白鳥を見たいという人は受け入れがたいかもしれませんが、エンターテインメントとしてみればとても楽しくていいですよ。みんなテクニックは凄いし、下でうるるさんも書かれているように映像は綺麗だし。
何人かでツッコミながら見ると楽しいと思います。私は発売日にたまたまNYにいたので発売日に買って、ミーハーなことにアンヘルやマルセロ、ジリアンにサインをいただきました。

うるるさん
以前うるるさんも楽しい感想を書かれていましたね。確かに映像は綺麗です。楽しい舞台なだけにカットされているのが残念なんですよね。これは、ぜひまた来日公演でもってきてほしいです。ヘススもロットバルトやっているし。今はパドトロワは日本人の加治屋百合子さんも踊っているんですよね。

ごきげんよう 初めまして。さくらと申します。<エルマン・コルネホ>さまを追いかけて、流れ流れてお邪魔しました。
<白鳥>観ました!ソロがそんなにカットされていたなんて、、、非常に残念です><あのどこまでも飛んでいきそうな美しくしなやかな跳躍と回転には脱帽の一言!そしてあの童顔には完全にノック・アウト!です。初めてDVDを観たときから魅せられてしまいました!2時間に納めなくてはいけないとしても、、、涙、涙の一言です。完全版がもし出たら絶対購入ですっ!
初めてなのにこんなに語ってしまい申し訳ございません><;

また、お邪魔させて下さい。

sakuraさん、ようこそいらっしゃいました!
お返事が遅くなってすみません。
エルマンのファンでいらっしゃるんですね!私も彼のエレガントな踊りに魅せられたひとりです。跳躍力もすごいですよね。間違いなく世界のトップの一人だと思います。とても紳士的で素敵な方ですし。
ホント、彼のソロのカットは残念です。今のところ、市販映像がこれしかないんですよね。最近フリオ・ボッカのサンクトペテルブルグ公演(1996年)のDVDを買ったのですが、どうやらエルマン(とお姉さんのエリカ)が出ているようです。観たら感想を書きます。10年前だからまだ10代半ばですよね。見るのが楽しみです。

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