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2006年8月

2006/08/30

光藍社をCHINTAIが買収

日経産業新聞の記事から。

8月24日に賃貸住宅情報誌を発行するCHINTAIが、9月1日付で光藍社の新田忠司社長らが保有する全株式1万2000株を譲り受け、18億円で取得して完全子会社化すると発表したとのこと。 光藍社が企画するバレエや舞台芸術などの鑑賞者と、CHINTAIの顧客である不動産所有者はシニア層や高所得層が多く利用者層が近いとみており、相乗効果が引き出せると判断したという。

光藍社の単独業績は売上高21億7200万円、経常利益は1億2000万円、従業員数は19人。

ということだそうです。

参考記事
(日経の記事はサイトにないため)

数字に疎いのでこの金額が多いのか少ないのかはわからないし儲っていたかどうかも分かりませんが…どういう事情だったんでしょうか。

個人的には光藍社さんの独自路線の招聘や宣伝が結構好きだったので、このまま維持してもらえればと思います。いろいろと懸念はありますが…。ここはチケット代も良心的だと思うので、高所得層がターゲットになっても、値段は上げないまま、さらに良質の公演を実現して欲しいですね。マールイの育ての親みたいなものですから。

ラスタ!キース!Movin' Out2回目8/29

ムーヴィン・アウト2回目。

踊る人によって全然違ってくる。今日のキャストは主役男子3人が全員バレエの人だったので、まるっきりバレエの作品になっていた。ブレンダ役の人も、前回見たホリーよりずっとバレエっぽく踊っていたし。

それにしても、ラスタもキースも素晴らしすぎ。ラスタはやんちゃキャラが良く似合っているし、それでいて踊りがとても綺麗なんだよね。とはいっても、エディは反抗的で怒れる若者だから、ワイルドさを前面に出さなくちゃいけないんだけど、その男の子らしさを出しつつ、美しく踊っているからすごい。多分、身体能力からするとブレンダンの方が上だし、スタミナもある。2幕の、空中で回転しては着地してピルエット2回転してまた空中回転、を繰り返すところもブレンダンの方が多かった。とはいっても、ラスタは技術的に劣っているということではまったくないし、力強くダイナミック。アクロバティックで体育会系のブレンダンに対して、ラスタは違うところで勝負している感じだ。 なんというか、ダンスに愛された少年という感じがする。空中でとまっているんじゃないかという瞬間が何回もあった。2幕の、自分の股の間をくぐりぬけてのジャンプを繰り返すという、今まで観たことのなかった振り付けもあって、見ているとまったく飽きない。

キースは、まさにバレエダンサーという踊りである。もう若くはないだろうし実のところあまり期待していなかったのだけど、ジュッテが高くてふわっとしていて美しいのだ。それとポール・ド・ブラもすごく綺麗。さらに、リフトが抜群にうまい。これはマクミランか!と思うような難しいリフトが随所に登場するけど惚れ惚れするくらい女性の扱いが上手なのだ。ピルエットは綺麗なんだけど回数をたくさん回ろうとすると軸が傾いてしまう。

軍に入る前のシーン、ラスタとキースとスチュアートが3人で踊ると、まるで「ロミオとジュリエット」のロミオ、マキューシオそしてベンヴォーリオのようだ!

ブレンダ役はこの間のホリーのほうが好み。踊りのテクニックは今日のローリーの方が上だし、彼女も脚線美の人なのだが、アップタウン・ガールならではのゴージャスな存在感はやっぱりホリーなんだよね。

今日は2階席で見ていたので、全体が良く見渡せて、主役だけでなく、スウィングというアンサンブルのダンサーもよく見えた。実は彼らがまたすごく上手で、主役が回っている横で同じくらいの数のピルエットをこなしているのにびっくり。1時間40分こんなに踊りっぱなしでハードだ。

2回目となると、字幕にはほとんど目をやらないで、舞台に集中できるからより楽しめる感じで、やっぱりグッドナイト・サイゴンでは涙が出た。この舞台の泣かせどころはやっぱりジェームズとジュディだ。ジュディ役のローラ・フェイグは、黒衣の天使のところはじめ、本当に表現力が豊かで素晴らしいダンサー。彼女なしでは、これほどの作品にはならなかったのでは、と思うくらい。

終了後、CDを買って、ピアノマンのダレンさんにサインをいただいた。一人一人と話して、写真を撮って、とてもいい人だった。彼の歌声は豊潤で本当に素敵だ。歌唱力はビリー・ジョエル以上だと思う。ピアノさばきもね!2階席だと、ちょうどピアノ・マンやバンドと同じ高さなので、彼らがよく見える。

私の席のすぐ隣は外国人の団体だったので、大いに盛り上がって気分が出た。終わったあとは、総立ち状態。2階席の後方はガラガラだったけど、気合で盛り上げた。

うううやばいこのままではもっと通いつめそうだ。ちょうど、あと少しで終わりで良かったような悪かったような。
(というわけで、3回目も行ってきました。本当はもっともっと見たかった!ああ大失敗!)

Shevaさんのサイトで、素晴らしい総括をしてくださっています。内容も詳細に記録してくださっているのでぜひ!

エディ:ラスタ・トーマス
ブレンダ:ローリー・カンヨク
トニー:キース・ロバーツ
ジュディ:ローラ・フェイグ
ジェームズ:スチュアート・キャップス
ピアノ・マン:ダレン・ホールデン

2006/08/29

「ディヴァイン・ダンサーズ プラハ・ライブ(Divine Dancers Live from Prague)」

ダニール・シムキン君が可愛すぎて死ぬ~

以上。

と言っていいくらい、このDVDの目玉は彼です。バレエフェスでバランキエヴィチが踊った「レ・ブルジョア」を踊っていますが、この演目って、かつてはブルジョアを馬鹿にしていた若者が自分もおっさんになって、若者から馬鹿にされるようになるって話です。でもどう見てもダニールくんはおっさんではない。若者が一生懸命大人ぶっている感じで、これがまたかわいいのです。

かわいいだけじゃない、踊りも素晴らしいです。体がとてもしなやかで、アラベスクすると後ろ脚がすごくあがる。跳躍系ももちろん得意で、アクロバティックな動きも軽々。回転もぶれないし、それでいて余裕があるので、超絶技巧を見せてもとても品が良く見えるのだ。両性具有的な雰囲気といい、マラーホフの後継者は彼かもしれない、なんて思ったりして。伊達にコンクール荒らしなだけではない(ダンスマガジン最新号によると、今まで10のコンクールに出て9回金賞だったそう)

19歳だけどもっと若く見える童顔、背が低いので役柄が限られそうなのが惜しいところだけど、キャラクテールだけを踊らせるにはもったいない。ラインが美しいし、ふわっと舞い上がるような跳躍は、クラシックの王子様に向いているから。

お父さんのドミトリー・シムキンと踊った「マイ・ウェイ」もいい。お父さんは実はもっと小柄だったが、顔が小さくてバランスが良いので背が低く見えない。ダニールくんはバレエ学校に行かずに、お父さんとお母さんにバレエを習ったって以前のダンスマガジンに書いてあった。

彼のクリップ(レ・ブルジョワ、海賊、ドン・キホーテ、眠りなど)は公式サイト
http://www.daniilsimkin.com/
で見られます。しかも、本人が自分の映像をYouTubeに投稿しているところがまた可愛い。9月からはウィーン国立歌劇場バレエで踊るそう。退団者が相次いで大変なところとは思うけど。

おっと本題から離れました。
ポリーナ・セミオノワとイーゴリ・ゼレンスキーの「マノン」寝室のPDD。素敵です。ポリーナは小悪魔が似合うので、ジュリエットよりはマノンの方が向いていると思う。しかも、彼女が尊敬しているゼレンスキーがパートナーだ。とても甘くていい雰囲気を作り上げている。ポリーナの足先がとても美しい。ただ、セットがデ・グリューの机と、ベッド代わりのカウチしかないのが残念。

セルゲイ・フィーリンとマリア・アレクサンドロワの「ライモンダ」。アレクサンドロワの鉄壁のテクニックが味わえて、素晴らしいのだけど、なんでアダージオしかないのだ!「ライモンダ」でこの二人だったらどう考えたって、3幕のPDDを期待するじゃない....

同じコンビの「ファラオの娘」。途中からというのがまた...でも、こちらはちゃんとヴァリエーションも入っていて、フィーリンの素晴らしく美しい脚捌きが堪能できる。しかも、舞台袖でフィーリンが衣装をつけるサービスカットつき。惚れ惚れするような肉体美。

シャルル・ジュドの「ムーア人のパヴァーヌ」は20分という長さで、重厚でドラマティック、見ごたえたっぷり。以前に「ルジマトフのすべて」で、ルジマトフとジュドが共演したのを見ていたのだけど、こうやって映像で見るとよりいっそう全体像が明らかになって興味深い。ジュドはアティチュードがとても美しいし、演技に目力があってさすがに元エトワールだけある、と感じさせてくれた。

ジュドのボルドー・バレエにレンタル移籍中のオクサーナ・クチュルクとロマン・ミハリョフの「眠り」、これだったらバレエフェスのマッカテリ兄妹の方が良かったような。クチュルクは今年2月のレニングラード国立バレエの「ドン・キホーテ」と、バレエの美神で観ているのだが、その時も、この人、こんなに雑な踊りをする人だっけ、と愕然としてしまった気が。ミハリョフはそんなに悪くないのだけど、クチュルクは乱暴で、オーロラの気品があまり感じられない。音にも合っていないのでは?

このDVD、カメラアングルがあまりよくない。バレエを見るんだったらやっぱり全身が観たいのに、上半身だけ、とか逆に足先だけ、といった部分的なカットが多いのだ。いくらダニール・シムキンが可愛いとは言っても、その美しい足先を映してよ、と思ってしまう。
そして、全編ではなく、アダージョがフェード・インだったり、ヴァリエーションの間にインタビューが入ったり。カーテンコールなどもほとんど映っていない。ポリーナやジュドのインタビューや、バックステージの様子が見られるのは嬉しいんだけど、演技そのものを中途半端にカットしたりしないでほしかった。せっかく画質は良いのに。

いずれにしても、ダニールくんの踊りと、フィーリンの脚捌きが観られただけで私は満足してしまったのだけど。それだけに、少なくとも「ライモンダ」のヴァリエーションだけは入れてほしかった。

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2006/08/28

ムーヴィン・アウト 8/27

エディ:ブレンダン・キング
ブレンダ・ホリー・クルイクシャンク
トニー:デヴィッド・ゴメス
ジュディ:ローラ・フェイグ
ジェームズ:スチュアート・キャップス
ピアノ・マン:ダレン・ホールデン

ビリー・ジョエルのヒット曲と、トワイラ・サープの振り付けによって誕生したミュージカル。とはいっても「マンマ・ミーア」のようにキャストが歌を歌うのではなく、ピアノ・マンというヴォーカル&ピアノを担当のミュージシャンが、バンドを従えてビリーの曲を歌い、出演者はダンスに専念。ブロードウェイで上演中のときにとても良い作品だと聞いていて、観に行こうと思いつつ都合が合わなくって、気がついたら終わってしまっていた。ブロードウェイでは、今回のツアーに参加しているキース・ロバーツのほかに、アシュリー・タトル、ジョン・セルヤと元ABTのダンサーが3人も出ていたので、ダンスのレベルが非常に高いことは推察していた。しかし、実際に見てみて本当に驚いた。

ミュージカルのダンスそのものは実は好きではないので(何しろ、一番好きなミュージカルは「オペラ座の怪人」というほとんどダンスがない作品だし、「マンマ・ミーア」などは見たけどABBA好きなのに実にくだらないと思ったし、バレエ好きからすると物足りなくて)、あまり期待していなかった。ラスタ・トーマスやキース・ロバーツなどバレエダンサーが出演する回がいいな、と思っていたのだが、ふたを開けてみたら二人とも出演しない日だった。

ところが、この演目はひたすらダンスダンスダンス!恐ろしく高いレベルのダンスが展開する1時間40分。だれるところがほとんどなく、充実しまくり。

エディ役のブレンダン・キングがすごい。ひと目でバレエ系の人ではないのがわかったけど、身体能力の高さが半端ではないのだ。バレエのピルエットではないとは言っても、10回以上余裕で回転しているし、跳躍もすっごく高い。片脚を伸ばし、もう片方はプリエのような形で空中で回転するのを10回くらい連続してやっちゃうのには驚いた!ありえないほどすごい!バック転もいっぱい入っているし、アクロバティックな動きもお手の物。マーシャル・アーツを取り入れたような力強い動きをしているのがとてもユニークで面白かった。1時間40分のステージの間中踊りっぱなしなのに少しもスタミナ切れを感じさせず、最後までエネルギッシュ。席は後ろの方だったのだけど、汗ひとつかいていないように見受けられた。リフトがまたすごく多いのだけど、そんなのも軽々とやってのける。やんちゃで反抗的なエディのキャラクターにぴったり。

トニー役のデヴィッド・ゴメスは、ブレンダン・キングの派手さに隠れがちではあるけれども、着実なテクニックを持っている。ピルエットもとても綺麗に回る。何よりも、長身でとてもハンサムだ。

最初はエディの恋人だけど仲違いしてトニーの恋人になるブレンダ。彼女を演じるホリー・クルイクシャンクは、長身で脚が長く、モデルのような抜群のスタイルを誇る美女。デヴィッドと並ぶと長身美男美女で絵になる二人。基本的にハイヒールを履いて踊っているのだが、脚はすごく高く上がるし、とにかくセクシーに踊れる人だ。後半では、ベトナムに行ったトニーの復員を待ちながらストリップ・クラブで働いているという設定になるため、扇情的な踊りもしたりする。バレエの踊り方ではないけれども、バレエをちゃんと習った人のダンスになっている。

バレエといえばジュディ役のローラ・フェイグ。婚約者ジェームズがベトナム戦争に従軍し、ジェームズは生きて帰ることができずアメリカの国旗がかわりに帰ってくるのだが、喪服を着たときの、ポアントを穿いた踊りが素晴らしかった。アラベスク、ジュテ、パ・ドブレとそれぞれが美しく踊れるだけでなく、情感を込めた演劇的なバレエの踊りができる。怒り、悲しみなどの感情が踊りからダイレクトに伝わってきて胸に響いた。

そのベトナム戦争で命を落とすジェイムズを演じるスチュアート・キャップスは、NYCBに8年間在籍したそうで、さすがに踊りは素晴らしい。何よりもすごかったのが、ベトナム戦争に従軍し、戦いの中で命を落とすシーン。よく、サム・ペキンパー監督の映画で「死のダンス」と呼ばれる描写がある。「俺たちに明日はない」のラストシーンもそうだったけど、「戦争のはらわた」や「ワイルドバンチ」などの映画で、大量の銃弾を浴びた登場人物が踊るように体を動かしながら絶命する描写だ。ジェイムズの死は、まさにペキンパーの映画から抜け出たようなもので、一つ一つの銃弾が命中し、死に至るまでの苦悶が伝わってくる凄まじいものだった。2幕で再び回想シーンでジェイムズが登場するところは、涙なしには見られない。
撃たれて血を流し、瀕死の状態のジェームズが立ち上がり、エディと踊るのだから。音楽は、もちろん「グッドナイト・サイゴン」。

親友であるジェイムズを見殺しにし、ベトナムに置いてきてしまったことをエディとトニーは深く後悔し、良心の呵責にさいなまれる。エディは麻薬におぼれて自暴自棄な生活を送り、トニーはブレンダとうまくいかなくなり、別れてしまう。そんな彼らを救うのが、ジェイムズの記憶であり、そしてジュディなのだ。

ビリー・ジョエルの曲は、単にこのミュージカルを彩る音楽にあらず。エディ、トニー、ブレンダ、ジュディと登場人物たちの名前はビリーのもともとの曲に登場する名前なのである。彼の音楽を巧みに再構成し、ひとつの物語に作り上げて行ったトワイラ・サープはすごいと思う。ビリーの歌は、「ハートにファイア」などの世相を盛り込みながらも、青春の光と影、挫折と希望を描いた普遍的なテーマが貫かれている。「ハートにファイア」でベトナム戦争を再現したり、まさに「アップタウン・ガール」にぴったりなゴージャスなブレンダの踊りがあったりと、歌詞を含めてよくもまあこんなにうまく当てはめたものだ。せりふがなくても、一つ一つの動きで感情が見事に表現され、歌詞がそれを補強する。実にうまい。

ビリー・ジョエルの楽曲が時代を超えて魅力を放っていることを再確認するとともに(私が彼のコンサートに行ったのはかれこれ20年近く前である→おっと年がばれる)、ピアノ・マンのダレン・ホールデンの歌の素晴らしさも忘れてはならない。20曲あまりを歌いっぱなしなのに声量はまったく衰えず、艶のある魅力的な歌声だった。バックの演奏、コーラスも一流。カーテンコールの途中での、「ピアノ・マン」「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」を歌ってくれたのも嬉しかった。

アンサンブルに至るまで、殺人的な振り付けをやすやすとこなした見事なダンス、そして音楽。ジェイムズの死と、それをジュディが乗り越えたことで、再生していくエディ、トニー、そしてブレンダ。現実の世界はここまでハッピーな終わり方はしないのかもしれないけれども、希望を与えられる、感動的でパワフルなステージだった。そういうわけで、リピート決定。次はラスタとキース。ストーリーや歌詞を頭に入れたから、次はもっとダンスに集中しよう。

これから観る方には、ぜひストーリーと人間関係を頭にいれ、できればビリーの曲も予習してから臨むことをおすすめします。

2006/08/27

東京小牧バレエ団「白鳥の湖第二幕」「薔薇の精」「ペトルウシュカ」

新国立劇場バレエ団のソリスト、グレゴリー・バリノフが「薔薇の精」を踊るというので観に行くことにしました。

「白鳥の湖」第2幕 オデット:周東早苗 王子:アルタンフヤグ・ドゥガラー
ちょっと変わった演出で、ロットバルトがひとしきり踊った後、王子の友人ベンノと、さらに6人の友人たちが狩りに行き、そして王子が登場する。オデットの振り付けは一般的なイワノフ振り付けのものなのだが、王子とベンノとのパ・ド・トロワになったり、ベンノがオデットをサポートするなど、異色である。特に、コーダの終わりではベンノがオデットをリフトするというフィニッシュになっているのだ。プログラムを買っていないので、そのあたりの演出の真意はわからないのだけど。オデットが去った後にまた6人の友人たちが登場する。また、2幕ですでに王子はロットバルトと対決し、倒されてベンノに起こされたりする。ちょっと面白い。
もうひとつの特色は、オデットは一般的なオデットのチュチュだけど、ほかの白鳥たちは、ロマンティックチュチュに近い長い丈のチュチュを着用していること。だからたまに「ジゼル」に見える。
実は小牧バレエ団は日本で「白鳥の湖」を初演したバレエ団で、それは1946年のこと。その振り付けを復元しているものなのだそう。
ダンサーのレベルはまずまず。2羽の大きな白鳥を踊った二人が良かったと思うし、オデットの周東さんもマイムが上手だったし腕も綺麗で良かった。王子にせっかくドゥガラーを使っているのに、この演出の特質上王子が踊るところが少ないのが惜しい。

「薔薇の精」 グレゴリー・バリノフ、長崎真湖
バリノフの薔薇は、フレッシュで爽やか、少年のようだった。足先がとても綺麗で、着地もぴたっと決まっている上に、足音がほとんどしない。アームスもやわらかく美しい。上半身も下半身もマッチョなのが、かえって薔薇の精らしいふくらみを感じさせる。ちょっとジャンプ系は重めだが、音楽によく乗っていた。初々しい雰囲気があるけど、伏せた目と陶酔した表情に少しだけ官能性も感じられる。少女役の長崎さんもかわいらしく良かったと思う。

「ペトルウシュカ」 ペトルウシュカ:ビヤンバー・バットボルト、バレリーナ:関根かなみ ムーア人:アルタンフヤグ・ドゥガラー 人形師:菊池宗
このバレエ団のレパートリーとして長く上演されているため、プロダクションが練り上げられて充実していた。カラフルな民族衣装と街の賑わい、冬の凛とした空気が伝わってくる。男性ダンサーのコサックダンスや踊り子たちの踊りは見ごたえがあった。ムーア人のドゥガラーが最初にすごいピルエット・アンディオールを見せてくれて場内は大いに沸いた。ペトリュウシュカのバットボルトは、ぐにゃっとした独特の動きを良くつかんでおり、ぐにゃっとしたところからの跳躍が高く、高い技術を感じさせながらもペトルウシュカの哀感をうまく演じている。大道芸人の中でもあっと思わせるようなアクロバティックな踊りを見せてくれる人もいたりして、すごく楽しめた。カーテンコールでは、主役3人は、劇中と同じでカーテンの中から登場。役を引きずった動きを見せてくれた。また機会があればぜひ、このプロダクションは観たいと思った。ずっと継承してほしい作品である。

とっても楽しめた公演だったのだけど、残念だったのは、せっかくダンサーがいい演技を見せてくれたというのに、拍手が少なかったこと。お客さんの入りは少なくなかったのに。教室が併設されているバレエ団の公演だと、普段バレエを見慣れていない人が多くて、それはいいんだけど拍手をしていない人が多いのだ。いい物を見せてもらった時には拍手がないとすごくさびしい。

2006/08/26

世界バレエフェスティバル ガラその1

世界バレエフェスティバル30周年記念公演
第11回世界バレエフェスティバル

もう今更書くこともないのかもしれませんが、これも備忘録とゆうことで。

2006年8月13日(日)15:00開演 東京文化会館

第1部 15:00~15:55

レティシア・オリヴェイラ/ズデネク・コンヴァリーナ
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

このペアでは一番よかったと思う。コジョカル・コボー組はバランシンというよりブルノンヴィルになっていたし、正統的なチャイパドになっていたのでは?レティシアのきびきびした踊りに合っていると思う。とてもかわいいコンヴァリーナ君は跳躍は素敵だけど腕を何とかしなさい。

アニエス・ルテステュ/ジョゼ・マルティネス
「水に流して」
振付:イヴァン・ファヴィエ
音楽:S・デュモン/M・ヴォケール/E・ピアフ

可愛い演目だった。下手には、三つ編みでキュートなスカート姿のアニエスが、三つ編みをいじっている。上手側からはヨガマットのような巻物を持った、白いシャツのジョゼ。マットを敷いて退場しようとしたら音楽が鳴って、二人はマットの上で踊るというかじゃれるというか。アニエスはリフトされて振り回されていた。コミカルで楽しい演目だけど、もう終わり?って思うほど短かった。

ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・メリクーリエフ
「ライモンダ」
振付:マリウス・プティパ/ユーリー・グリゴローヴィチ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ

 Aプロと同じ演目。ただ、私がAプロで観たときにはターコイズブルーのようなチュチュを穿いていたステパネンコが、白いチュチュになっていた。ライモンダの3幕は白い衣装の方がいいと思う。残念だな、と思うのは、らいモンダで一番好きなフィナーレの部分をやってくれないこと。ジャンのダイナミックなジャンプが見られるのにね。ステパネンコはAプロよりよかったと思う。違和感がそんなになかったから。メルクリエフはやっぱり貫禄負けしていたけど、でも素敵だった。ジュッテも美しいし、長いマントの白い衣装がとてもよく似合う。そんな彼がガラのおまけであんなにはじけるとは。

フィリップ・バランキエヴィッチ
「レ・ブルジョワ」
振付:ベン・ファン・コーウェンベルグ
音楽:ジャック・ブレル

 前回のバレエフェスでも見たけれども、この演目は楽しいし、バランキエヴィッチにとても似合っている。だらしなく白いシャツを着こなしたおやじがタバコを持って酔っ払い気味に火をくれよ~って言っているコミカルな作品なんだけど、その中に挿入されるトゥール・ザン・レールが高くて切れ味が鋭くてびっくりするほど。長身のバランキエヴィッチがやるとダイナミックですごくかっこいい。ア・ラ・スゴンドの空中ピルエットとか、いろいろな大技を見せてくれて盛り上がる。私は歌つきの演目ってあまり好きではないのだけど、これに限っては、ブレルの歌もとても効果的。カーテンコールでも「火をくれよ~」って役に入り込んだままなのが可笑しい。かっこいいのに情けない、ってところがいいのだ。

マイヤ・マッカテリ/デヴィッド・マッカテリ
「海賊」
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリゴ
 
マッカテリは長身で脚が長くてプロポーションがよいと思っていたけど、上半身が裸になると、なんだか肉がついていなくて痩せ過ぎである。マイヤは紺色のチュチュで、とてもシックかつゴージャス。Bプロでホセ&イリーナの完璧な海賊を観たので、かなり不利であるけれども、がんばっていたのでは?ホセの十八番であるところのアリの後で踊るなんて相当チャレンジャーというか無謀だと思うけどね。マッカテリは、マネージュのときの飛距離が長くて、脚がよく開いているのがわかる。マイヤは、ヴァリエーションは「ラ・バヤデール」の2幕のガムザッティのヴァリエーションを踊っていた。エカルテが入るやつ。相変わらずキラキラお姫様で、鬼のように可愛いんだけど、コンクールの演技でも見ているような気にさせられてしまうのよね。フェッテは前半は全部ダブルで、こちらは上手だった。今回世界中のスーパースターと共演したのを糧にして、次回は成長して帰ってきてね。こんなに可愛いバレリーナはめったにいないくらいだから。

(つづく)

2006/08/25

ニコラ・ル=リッシュが東京で舞台出演

パリ・オペラ座のエトワール、ニコラ・ル=リッシュが、9月2日より6日まで、銕仙会能楽研修所で舞台「出口なし」に出演します。

サルトルの戯曲で、演出はギヨーム・ガリエンヌ、キャストは4人です。演能団体、銕仙会とのコラボレーションによる企画だそうです。サイトでは、舞台稽古中のニコラの素敵な写真も見られます。彼にとっては初めての舞台だそうです。

チケットはぴあで買えます。5000円。全席自由。Pコード「371-074」です。ニコラの舞台デビューという二度とないチャンスなのでファンの方は必見ですね。私も観に行きます。

マリインスキー・バレエ来日公演キャスト変更とブログ開始

ゼレンスキーのダブルブッキング問題は以前から言われていましたが、ジャパンアーツから正式にアナウンスがありました。

12月4日(月) 東京文化会館<オールスター・ガラ>
 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
 イーゴリ・ゼレーンスキー→アンドリアン・ファジェーエフ

  「ロミオとジュリエット」
 アンドリアン・ファジェーエフ→ イリヤ・クズネツォーフ
  [問合せ] ジャパン・アーツぴあコールセンター (03)5237-7711

11月26日(日) びわ湖ホール「海賊」
 イーゴリ・ゼレーンスキー→レオニード・サラファーノフ
 [問合せ] しがぎん経済文化センター (077)526-0005

12月2日(土) フェスティバルホール「白鳥の湖」
 イーゴリ・ゼレーンスキー→ダニーラ・コルスンツェフ
 [問合せ] フェスティバルホール (06)6231-2221

★8月25日現在、このほかに変更はございません。

ということだそうです。

それと、待望のブログがスタートしました。

リハーサル中のロパートキナとヴィシニョーワの貴重な写真が掲載されていて、かなり見ていてどきどきしました。内容はちょっとまだまだ....で(執筆者の方、あまり詳しい方ではないようですね)、まだ裏話等は出てきていませんが、どんなものになっていくか、楽しみですね。

吉田都さん、Kバレエ移籍

バレエびよりさんより情報をいただきました。

日本の至宝、吉田都さんが、Kバレエに移籍するというニュースが、Kバレエのサイトに出ていました。

驚きました。ロイヤルは退団されてしまうのでしょうか?

日本でたくさん見られるようになるのは喜ばしいことですが...。

31日に記者会見が行われ、9月1日から正式に移籍の情報がKバレエサイトに掲載されるそうです。

2006/08/24

「ユナイテッド93」

2001年9月11日の同時多発テロでは、4機の飛行機がハイジャックされた。2機は世界貿易センターに、1機はペンタゴンに突入した。そして、もう一機はどこに突っ込むこともなく、クリーヴランドに墜落した。それがユナイテッド93便だ。

この映画を見る前に、原作といっていい本「ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録」を読んだ。猛スピードで畑にほぼ垂直に墜落した飛行機は木っ端微塵になり、生存者は一人もいなかった。それどころか、一見して遺体すら見当たらないほどであった(それはあまりの衝撃に、人体が断片化してしまったからであり、よく言われている陰謀説のように誰も乗っていなかった、ということではない)。したがって、この飛行機の中でいったい何が起きたのか、目撃者はいない。飛行機電話や携帯電話で乗客とやり取りをした家族ほかの人間と、管制官、そしてフライトレコーダーだけが記録となって残っている。よって、映画で描かれていることがどこまで真実に迫っているかはわからない。ただ、前述の証人たちがいて、彼らの話に基づいて、できるだけ真実に近いところまで迫ろうとしている映画である。

主人公はいない。固有名詞はほとんど登場しない。一人の人物に焦点を当てることもない。音楽もドラマもほとんどない。ただ、自分が事件の目撃者であったかのように感じさせられる、そんな映画である。

9月11日の朝、4人のイスラム系の男性が祈りを捧げ、コーランを読むところから始まる。一見普通の若い男性たちにしか見えない。いつもの朝、パイロットやフライトアテンダントがフライトの準備をする。待合室で待つ人々。乗り込む乗客。一人の客は遅れそうになり、ぎりぎりでやっと間に合って飛行機の扉が閉まる。この飛行機が二度と着陸することがないと知っている私たちは、あの時彼が間に合わなければ、と思う。機長からは明るい挨拶のアナウンス。

映画の前半は、主に管制官室で繰り広げられる。突然、不審な動きをする飛行機。管制官の応答に答えない飛行機。代わりに不審な声が聞こえてくる。そして、レーダーから消えた飛行機。それも一機や二機ではない。管制官はパニックに陥る。裏を取るために他の管制センターに連絡を取る。どの飛行機が正常で、どれが異常なのかもわからない。ハイジャックを疑うものの、ハイジャック信号も飛んでこないし、犯人からの要求もない。大混乱に陥ったところ、CNNをつけると、小型飛行機らしきものが世界貿易センターに突っ込んで大爆発が起きている映像が大写しになっていた...

この管制官たち、さらには軍人の中には、本人役で出演している人たちが何人かいるという。本職の俳優ばかりではない人たちばかりだ。あちこちの管制センターに話が飛ぶので、全貌を把握するのが難しい。でも、考えてみれば、実際にこの事件が起きた時も、何がどうなっているのかわからなくなって、みんなパニックに陥ったわけだ。そう考えると、逆に凄くリアルさが感じられて怖い。前半のやりとりだけでも、ものすごく緊迫感がある。

そして、管制官たちは、生中継で、2機目が突入するところを目撃してしまう。何もドラマティックな演出も効果音もない。一同はその瞬間、凍りついたようになる。そして、本当にとんでもないことが起きたことを悟る。

軍に出撃命令が下されるが、米国の空の上には何千もの航空機が飛んでいる。撃墜は大統領の許可がなければできない。重要な判断を下すべき人間が休暇で不在。肝心な時に役に立たない人ばかりでますます混乱に拍車がかかっている、その様子が実にリアルだ。

機内。ファーストクラスに座った4人のテロリストたち。しかし、彼らもまた、計画を実行するのを躊躇している、極度に緊張している者もいれば、早く取り掛かりたくてうずうずしている者も。しばらくは平和な時間が流れ、談笑する乗客や客室乗務員たち。その平穏がついに破られる。ようやくタイミングを見計らって、一人の乗客を見せしめに殺し、爆弾らしきものを巻きつけて乗客を脅すテロリスト、そしてコックピットに侵入して手早く機長や副操縦士を始末し、操縦桿を握るテロリスト二人。機長と副操縦士が殺されるシーンをほとんど写さず、客室乗務員がコックピット方面を見ると、扉の隙間から二人の死体が転がっているという演出には、心底心凍るものがある。それが、何を意味しているかということが、彼女には、瞬時にわかってしまったから。もう生きて帰れないということ。

機内電話から家族に電話して、WTCの突入を知る乗客。客室乗務員は航空会社に電話するが、かかった先は整備室。伝言ゲームのように、知らなければ良かった絶望的な状況が伝わっていく。大パニックに陥る者はいない。帰ってこれないことを悟り、愛する者に別れの電話を掛ける乗客たち。そして、これ以上の被害を食い止めるということより、黙って殺されるよりは一矢を報いたい、生き残れるわずかな可能性に賭けたい、と乗客たちは作戦を練り、反撃を開始した。

凄くリアルだと思ったのが、乗客の反乱に気づいたテロリストたちが、心底怯えきっていたこと。彼らも怖いのだ。ミッションを完了できないことを恐れていたのだ。おまけに、人数は圧倒的に不利である。爆弾が偽物だと見破られた。大勢でテロリストたちに飛び掛る乗客たちは、生き残るために必死で、正視できないくらい残酷にテロリストに襲い掛かる。まるでゾンビのように。そしてコックピットでのもみ合い。テロリストもすっかり正気を失っていて、制圧できそうになったその時に、画面は真っ暗に。それまで一度も登場人物の名前が出てこなかったが、エンドロールに、実際にこのユナイテッド93便に登場していた乗客たちの名前が現れる。無名だった一人一人の乗客乗員に名前があり、人生があり、家族がいたということを、ここで実感させられて切ない気持ちになる。

終わったあとも、席から立ち上がって現実に帰ることができなくなるような映画だった。だって、目の前に、現実のように、悪夢のような出来事が起きていたのだから。

密室劇のような濃密な2時間弱。乗客たち、そして乗務員たちは決してヒーローとしては描かれていない。窮地に追い込まれた彼らは、わずかな可能性に賭けるためには、どんなことでもした。人間の、生き残ってもう一度家族に会いたいという気持ちは、すごい力を持っているのだと感じられた。無名の、普通の人たちが、戦ったのだ。一方テロリストたちも、悪魔ではなく、ひとつの使命のためにこんなに恐ろしいことをしてはいるものの、感情を持ち、恐怖心を持ち、家族を愛した人間であった。普通の青年であった彼らを、このような行いに駆り立てたものはなんだったのか。それが、今まで世界で続いている戦争の原因なのである。

これみよがしなメッセージも大げさなドラマも、感動もない。だけど、テロリズムとは何か、同時多発テロとはなんだったのか、その状況に放り込まれた人間はどうなるのか、いろいろなことを考えさせてくれる。携帯電話で家族に別れを告げた後、隣の若い女性に「あなたも大事な人にかけなさい」と携帯を渡した中年婦人。このシチュエーションには、ドラマティックな演出はなくても、誰だって観たら涙を流さずにはいられない。

「ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録」のほうは、ニューヨークタイムズの記者が、その時何が起きたかを時系列的に検証しながらも、この飛行機に乗っていた人間全員の周辺に取材をし、一人一人の生き様を記録した本である。死んだ人のことを悪く言う人はいないだろうから、乗っていた人間は全員素晴らしい人だという風になってしまうのはある程度仕方ない。それを割り引いてみても、かなりすごい人たちが乗っていたのは確かだ。教養があり、ボランティアに取り組み、スポーツのチャンピオンだったり、大企業の役員だったり、起業家だったり、大学生だったり。この本の中でも登場し、そして米国では流行語にまでなった「レッツ・ロール(さあ、かかれ)」は映画の中に登場することはするが、派手に扱われることはなかった。

この本を先に読んでいたことで、映画の登場人物が実際は誰だったかを理解する助けになったと思う。犠牲者全員の顔写真が掲載されているが、よくぞこれだけ似た人を探してきたものだと思う。(唯一の日本人、久下さん役の俳優はあまり似ていなかったが、ちゃんと日本人の俳優が演じていた)
そして彼ら40人だけでなく、WTCの中やペンタゴンの中で亡くなった人たちにも、同じようにかけがえのない人生があったということも思い起こさせられた。

本の中で印象的だったのは、墜落現場の検視官の話であった。一度も会ったことのない犠牲者たちのことを思い続け、久下さんの家族にも会ったという。いまだに、現地で遺体の一部が落ちていないか、探し回っているそうだ。

この映画の立場は、エンドロールに現れている。「9月11日のテロで亡くなった全員にこの映画を捧げる」。それには、テロリストたちも含まれている。

最悪の状況の中でも、最善を尽くした人たちがいたことを忘れてはならないし、犠牲となった彼ら乗客乗員たちが、911をきっかけとして更なる戦争が起きていることを望んでいないだろうことも忘れてはならないと思う。後味のいい映画ではないけど、一人でも多くの人に見てほしい。

ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録
ジェレ・ロングマン 原口 まつ子

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追記:このエントリーに対するコメントのうち、9.11陰謀論などに関するコメントは予告なし、問答無用で削除します。こういうことを書く行為こそが、私はテロリズムだと考えています。主要な陰謀論の根拠に関してはすべて目を通しておりますので、わざわざお知らせくださらなくて結構です。
映画と陰謀論はまったく関係がありません。

2006/08/23

アメリカン・バレエ・シアター「白鳥の湖」とエミー賞

海外ドラマぼや記」さんで知ったのですが、PBSが製作したABTの「白鳥の湖」の映像が、栄えあるエミー賞の「OUTSTANDING SPECIAL CLASS PROGRAM」という賞を取ったそうです。(表彰されるのは、製作したPBS)
リリースはこちら

このリリースを見て、エミー賞ったらこんなにたくさん部門があるんだと驚いた次第。いつもは、テレビで中継される授賞式しか観ていないからね。

しかしこの映像がなぜ賞を取ったのかはちょっと謎です。いや、出演者は素晴らしいですよ。アンヘル・コレーラ、ジリアン・マーフィ、マルセロ・ゴメス、エルマン・コルネホ、シオマラ・レイエスとプリンシパルが4人も出演しているし、パ・ド・トロワにエルマンとシオマラなんて豪華キャスト。しかも、家庭教師の役は、バレエ界の至宝、御年92歳のフレデリック・フランクリンだし(美しいです)、女王は元ロイヤルのジョージナ・パーキンソン。素晴らしい演技が見られます。でも、2時間に収めるために、相当カットがされているので、非常に不満です。

しかし、正統派の「白鳥の湖」を見ようと思ってはいけません(笑)

まず出だしからして凄いです。ブルメイステル版に少し似ていて、まずは娘姿のジリアン・マーフィが登場すると、彼女の前にハンサムな紳士マルセロ・ゴメスが現れる。まあ、素敵なお方だわ、ポッ、となったところで紳士が緑色の怪物ロットバルトに変身し、娘が穴に押し込められたかと思うと、白鳥に変身しているという、なんともハリウッド映画っぽい展開。これは映像なので娘が白鳥に変身するというところが見せられるのであって、実際の舞台は、なんとオデットではなくおまるのような?白鳥のぬいぐるみで、しかも化け物ロットバルトが後ろで一生懸命翼をばたつかせているのが見えるのでさらに笑えてしまうのだ。

1幕はなんといってもエルマン・コルネホと姉のエリカ、そしてシオマラ・レイエスのパ・ド・トロワが素晴らしい。エルマンの跳躍はどこまでも高いのにエレガントだし、エリカは脚が強靭なのにびっくりするけれども、あくまでもチャーミング。この3人のパ・ド・トロワは最強だと思うのに、エリカはABTから旦那様であるカルロス・モリーナがいるボストン・バレエに移籍してしまうのだ。残念すぎる。

アンヘルの王子は、一生懸命顔で演技をしようとしているのに、ちょっと違和感がある。彼の普段のイメージを裏切る、憂鬱そうで悩める王子だ。そんな王子がバリエーションでいきなりすごい跳躍を見せるので、そのギャップが味わい深い。

2幕は、ジリアン・マーフィのオデットをどう思うか、好き嫌いが分かれるところだろう。意外とアームスもやわらかいのだけど、大柄な体型もあってちょっと大味に見えてしまうのが欠点。テクニック的には素晴らしいし、叙情的な面を見せることには成功している。とても不幸な身の上の白鳥であることが伝わってくる演技は、良いと思う。群舞が揃っていないのはABTだから仕方ない。

このヴァージョンの最大の見せ場は3幕。ところが、残念なことに、映像ではベンノ(エルマン・コルネホ)のソロが丸ごとカットされてしまっている。なんということ。
キャラクターダンスは、まるで少年隊か光GENJIか、と思うような鉢巻にストライプタイツという珍妙な衣装のナポリが楽しい。カルロス・ロペスとクレイグ・サルシュタインによるナポリは、トゥール・ザン・レールの呼応から、最後はピルエット合戦になっている。チャルダッシュのソリストはゲンナディ・サヴェリエフだが、どうやらここも部分的にカットされているのが残念。

お待ちかねのセクシー版のロットバルトの登場。ルースカヤの曲でブラーヴアなソロを披露して、その場にいる者全員をとりこにするマルセロ・ゴメス。片足ルルベでのアラベスクも美しい。最後には女王の手にキスして、玉座に堂々と座ってしまう。彼が踊っていると、花嫁候補たちが一人一人、魔法にかかったように引き寄せられているのが可笑しい。マシュー・ボーン版の「白鳥の湖」のストレンジャーのような、男も女も魅了するような存在なのだ。

ジリアンはオディールの方が似合っている。真っ白な肌に黒い衣装が映えるし、悪女っぽい表情が魅力的なので。アダージョの時に耳元で囁きかけるロットバルト、本当にやばいほど危険な香りが漂っていて、生で見ると息も絶え絶えになるほど。ジリアン得意の32回転は、トリプルも数回入っていて、さすがに回る回る、これは本当に凄い。アンヘルも、ヴァリエーションでは、今まで踊らせてもらえなかったフラストレーションをぶつけるかのように跳びまくり、コーダでは、親の敵でも取りそうな勢いで、猛スピードでピルエット・アンディオール。なんだか凄いものを見せてもらった気分。

4幕でも冒頭のハクチョウたちが登場するシーンがカットされてしまうのが、許せないところ。いきなり唐突に泣き出しそうな表情のアンヘルが駆け込んでくるものだから。(この映像、なぜかアンヘルのクローズアップがとても多い)化け物ロットバルトは、よく見ると、本当に馬鹿みたいなカッコウで、なんだか途中で可哀相になってきてしまう。おいしい部分は全部セクシーロットバルトが持っていってしまって、こっちはへんてこりんな姿で何が楽しいんだろうと同情しちゃう。やっぱり一緒にはなれないの、とオデットが湖に身を投げると、王子も後を追うように飛び込むのだけど、身投げというより、プールにでも飛び込むような元気のよさで飛び降りるところが、アンヘルらしいというかなんと言うか。哀れなロットバルトはすっかり弱ってしまい、白鳥たちに足蹴にされて死亡。そして、最後には、ご来光のような光の中で、王子とオデットは結ばれている。このご来光を見て爆笑する人多数。

こんな感じの、とっても楽しい映像です。

輸入盤はリージョン1。国内版は新書館から出ています。

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2006/08/22

世界バレエフェスティバル【Aプロ】8/6その2

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第3部

オレリー・デュポン
マニュエル・ルグリ
「扉は必ず・・・」
振付:イリ・キリアン
音楽:ダーク・ハウブリッヒ(クープランに基づく)

フラゴナールの絵画「閂(かんぬき」に着想を得た作品だそうで。
寝乱れたベッドというちょっと色っぽいシチュエーション。オーレリとルグリは、それぞれ、別の椅子に座っている。オーレリの手には花束。これがなんだかいかにも造花っぽい安っぽいもの。オーレリの衣装は古典的で、まさにフラゴナールの絵から抜け出たようで、とても素敵。二人とも超スローモーションで動く。からんでいるようなからんでいないような。上手の方にある扉の閂にルグリが手をかける。でも開くわけでもない。
ちょっとどきどきする。
するとなぜかコミカルになる。お互いに花束を投げあったり、ちょっとコントみたい。オーレリはしまいに花束を遠くに投げちゃうし。そして扉の外に出るけどまた戻ってくる。鬼ごっこのような感じ。
ルグリがオーレリのスカートをつかんでぐるぐる回したり。最後はまたスローモーション。そして隣同士に座ってりんごをかじるルグリ。かじりかけのりんごを渡されて、やはりかじるオーレリ。
なんて言っていいのかわからないけど、皮肉で面白い。

 カーテンコールでは、二人ともノリノリ。ルグリは、まるで野球でホームベースに突入するみたいにスライディングして登場するし、カーテンの奥からオーレリがぽーんと彼に花束を投げつける。オーレリの登場もすごくコミカル。とってもいい雰囲気。ぜひ全編見てみたい。


マイヤ・マッカテリ/デヴィッド・マッカテリ
「眠れる森の美女」
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

「眠り」自体好きな演目ではないからね。でも、19歳のマイヤは本当に可愛くて、キラキラで、目がパッチリと大きくてお姫様そのもの。ヴァリエーションはもう少しがんばりましょう。見ながら「がんばれ、あと少しだ」と応援モードに入ってしまった。マッカテリ君は、まあ眠りの王子様ですから、見た目が麗しくて、脚が長くて綺麗で、バーの役割を果たしていればいいんじゃないかしら。マネージュには勢いがあるし、言われているほど悪いとは思わない。コーダの、オーロラがちょこんと上体を倒す振り付けが好きで、可愛いマイヤがやると、本物のお姫様ってこんな感じなんだろうな、と思わせてくれた。

ルシンダ・ダン/マシュー・ローレンス
「コンティニュウム」
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ジェルジ・リゲティ

この演目、実は去年の11月の兵庫県立芸術文化センターのオープニング・ガラでも観ているのだった。その時は、デヴィッド・アーシーとヤンヤン・タンで。正直ヤンヤン・タンの無駄遣いという気がしなくもなかったけど。でも、それはヤンヤン・タンだからそう思ったのであって。この作品も退屈とかいろいろ言われているけど、実はこれは結構好きなのである。ウィールダンは、NYCBの来日公演で上演された「ポリフォニア」もそうだけど、けっこうヘンな動きをダンサーに強いていて、それが観ていて面白いのだ。二つの体が複雑に絡み合っているのとか、ちょっとピアズリーみたいでいいじゃない。でも6月にNYで観た「Klavier」のほうがドラマティックで好きだけど。

ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・メルクーリエフ
「ライモンダ」
振付:マリウス・プティパ/
   ユーリー・グリゴローヴィチ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ

ステパネンコのライモンダは、お姫様というよりは貫禄のある女王様だった。ちょっと貫禄ありすぎ。ポアントの突き刺さる感じとか、テクニックはあって素晴らしいけど、上体のやわらかさが足りないのか、ここまで堂々とされてしまうと。手を打ち鳴らさないのがボリショイ風。メルクリエフは、急な代役で衣装の調整が足りなかったのか、なんだか衣装が大きすぎたようで肩のあたりが浮いているのが気になった。でも、長いマントで踊りとおしてくれたのは素晴らしい。ボリショイに合わないのでは、という危惧もあったけれども、立派に代役はこなしていた。ただ、迫力はやっぱりステパネンコ姐さんには負けていた。

アリーナ・コジョカル/ヨハン・コボー
「春の声」
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:ヨハン・シュトラウス

小柄で可愛いアリーナにぴったりの、まさに春風のような演目。コボーにリフトされ、シュトラウスのおなじみの音楽に乗せて花びらを舞い散らせる姿は絵に描いたような可愛らしさ。でもリフトする方は本当に大変だと思う。小刻みにアリーナをリフトするコボー。すごく愛を感じてしまった。アントルシャの上手さは、さすがデンマーク仕込み。

第4部
アレッサンドラ・フェリ/ロバート・テューズリー
「カルメン」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジョルジュ・ビゼー

フェリの美脚にうっとり。ショートカットのカツラも似合っていて素敵。脚と視線で物語を作ってしまうから大した役者だ。テューズリーは「こうもり」に続き髪を黒く染めての登場。腰のところに掛けてある白いスカーフに柄が入っていて、手ぬぐいのように見えてしまい、笑いをこらえるのに必死だったのだけど、でもかっこいい。官能的な世界を作りあげることに成功していた。 

シルヴィ・ギエム 「TWO」
振付:ラッセル・マリファント
音楽:アンディ・カウトン

正面席ではなかったので照明の効果を十分に見られなかったのが残念だけど、すごい、としか言いようがない。跳躍も回転もしないで、腕の動きだけであれだけの表現をできるから、ほとんど人間ではないわな。最後の方の、光の残像を生かした表現は、「コート」(デヴィッド・パーソンズ振り付け)を思わせるものがあったけど、もっと神業っぽい。
ギエムはこういう路線を進んでほしい。

ジル・ロマン
那須野圭右、長瀬直義
「ベジャールさんとの出会い」 -世界初演-
振付:モーリス・ベジャール
音楽:グルック/ショパン/アルゼンチン・タンゴ/アンリ

竪琴。紐が落ちてくる。髑髏。
日本人のお兄さんが二人。
うーむ私には難解すぎてわからん世界。いくつかの作品のコラージュらしいけどベジャール苦手であまり見ていないので。
それでも、ジル・ロマンという人の圧倒的な存在感と、見事なピルエット、美しい腕の動きは堪能できたので、文句を言ったら罰が当たる。彼は本当に素晴らしい。

ディアナ・ヴィシニョーワ/ウラジーミル・マラーホフ
「マノン」より“沼地のパ・ド・ドゥ”
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
 
このふたりの「マノン」全幕は、6月にNYで2回も観たからな~。
たしかにここでのヴィシニョーワは、精も根も尽き果てて、最果ての地でぼろぼろになって死ぬ役で、表情を見るとさすがに憔悴し切っていて見事にはまっているのだが。でもやっぱり生命力の人なのだ。生命力を感じさせるマノンが悪いというわけではないが。だからこそ、ここまで流れ着いたわけだし。実はマラーホフの方が弱っていて、くるくる回る難しいリフトにしても、マラーホフが回しているのではなくヴィシニョーワが自分で回っているように見える。助走のところも、一生懸命助走ではないように見せようとしているけどかなり勢いをつけているし。Bプロでフェリがこの役を演じなければ、それでも名演と言われただろうに、気の毒。
ヴィシニョーワはNYでもsぴだったけれども、素足で、スカートがまくれ上がると太ももの上の方のタトゥーが思いっきり見える。マノンだからそれもありだといえるけど。

ヴィエングセイ・ヴァルデス/ロメル・フロメタ
「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

凄いモノを見せていただきました。この演技はおそらく何十年も語り継がれるのではないか。

アダージョがすごい。ヴィエングセイ・ヴァルデス、アラベスクで15秒くらいのバランスを3回見せてくれた。ポアントの先がコンパスになっていて地面に突き刺さっているかのような、びくともしない体勢。2回目のバランスでは、横向きになっていて、後ろの脚も見せてくれた。しかもすごいのが、アラベスクからルティレに、ポアントで立ったまま行ってしまうのだ。それからまたそのポアントのまま、アティチュードからアラベスクへと。お客さんはもう絶叫、悲鳴。フィッシュダイブの時には、脚を180度に開き、ロメル・フロメタに上に放り投げられてキャッチされた。ここまで凄まじい演技を見せられると、あまりの凄さに感動して涙が出てしまった。
アダージョに比べれば、ヴァリエーションは割りと普通。キトリが扇子を持っていないのがちょっと残念。あの扇子が可愛いのに。ロメル・フロメタも跳躍が素晴らしかった。しかし彼は凄い中にも、エレガントさを持っているいいダンサーだ。品が良いので、凄いことをやってもこれ見よがしには見えない。
そしてコーダでは、ヴィエングセイは3回に一度ダブルを入れていたが、とても安定感がある。たまに音と会わないときがあったけれども、オーケストラがこの演目の時に、相当へろっていたというのもあったと思う。

お祭りにふさわしい、華やかな「ドン・キ」での締めくくりは楽しかった。まだ知られていない凄い人を知ることができるのも、このフェスティバルの醍醐味だ。

しかしオーケストラと「椿姫」のピアノ演奏は本当にひどい。次回はもう少しまともな演奏をお願いしたい。

世界バレエフェスティバル【Aプロ】8/6その1

もう2週間も経ってしまったし、あまたのバレエブログにいっぱい感想があふれているので私がいまさら書くこともないといえばないんだけど、自分の備忘録として。

8月6日(日)Aプロ
ルシンダ・ダン/マシュー・ローレンス
「ラ・ファヴォリータ」
振付:ペタル・ミラー=アッシュモール
音楽:ガエターノ・ドニゼッティ

衣装が「ドン・キホーテ」の3幕のようなイメージで華やか。オーストラリアの建国なんとか周年を記念した作品とのこと。振り付けはどうってことがない、プティパっぽくて何も新しいものはない。ただ、ルシンダ・ダンというダンサーはとても素敵だと思った。表情がとても晴れやかだし、ジャンプ力があって、ジュッテのときにすごく高く上がったのが印象的。ローレンスは、脚が長いな、という印象くらいしか残らなかった。

ニコラ・ル・リッシュ 「7月3日 新しい日、新しい人生」 -世界初演-
振付:ジェレミー・ベランガール
音楽:エイフェックス・ツイン

Aプロ最終日で、この作品についての悪評は散々耳にしていた。大体、べランガールは去年の「エトワール・ガラ」では自作自演でなにやら床に絵を描いているような作品を作った方であって(笑)期待値が限りなく低かったので、それほど失望しなかった。一応、二コラがマネージュしたりするようなところあったし。ただ長いのと、音楽が音が悪いのと、意味が良くわからなかった。多分、二コラのお子さんの誕生日に掛けてあるのだと思う。最後に照明が明るくなるのは、もしかして、胎内から表に出たって意味なんだろうか?

タマラ・ロホ/イナキ・ウルレザーガ
「白雪姫」
振付:リカルド・クエ
音楽:エミリオ・アラゴン

48回くらいフェッテする演目らしい、って聞いていたら本当にそうだった。タマラは本当にくるくる良く回るね。シングル、シングル、トリプルの繰り返しでいつまでも回っていて、こんなに回っていて気持ち悪くならないのかな、と思った。宝石箱の中のバレリーナの人形みたいに、安定した回転。音楽がちょっとディズニー風。なんとなく、タマラの白雪姫ってちょっとゴス風かな、と思っていたけどそんなことはなかった。イニャキは抹茶のような衣装でいけていなかったけど、踊りは豪快。すごいマネージュを見せてくれた。前回のバレエフェスではずいぶんぼろくそに言われていたけど、私は「タリスマン」なんか良かったと思うのよね。

ジョエル・ブーローニュ/アレクサンドル・リアブコ
「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン

このAプロでは一番素晴らしかったパフォーマンスだと思う。椿姫を、二人ともハンブルクのダンサーで見るのは初めてだったけど、やっぱりほかのところの人が踊るのとは全然違う。完璧。サーシャ(リアブコ)は若々しい、青二才といってもいいほどのアルマンで、ものすごく激しい感情を抱えている。怒りもある。その情熱が火花のように炸裂していて、胸を直撃する。一方、ジョエル・ブローニュもまさにマルグリットという感じ。私は椿姫はガラ以外ではマリシア・ハイデの映像しか見ていないので、マルグリットといえばハイデである。よく、ルディエールが、って言っている人を見かけるけど、ガラでちょっと観ただけでそれはないだろう、って思ってしまう。そのハイデのマルグリット像を忠実に受け継いだのがジョエルだ。派手さはなく、不幸の影を引きずっていて、でも華やかな世界にかつて存在していたというオーラもあって。そして若い恋人に激情をぶつけられ、心が千々に乱れている様子を、抑えた演技の中にも見せていた。そしてついに彼を受け入れてしまう。白いキャミソール一枚になってしまうマルグリット。
サーシャは難しいリフトも流麗にこなしながら、燃え盛る想いを炸裂させていた。席が下手前方だったので、ラストの上手側に二人が倒れこむところが見えなかったのが残念。
まるで全幕のドラマを見たような、重厚なパフォーマンスで、ずっと一日引きずってしまうほどだった。なんでAプロを一回しか取らなかったのだろう!


ポリーナ・セミオノワ/フリーデマン・フォーゲル
「ロミオとジュリエット」より
 “バルコニーのパ・ド・ドゥ”
振付:ジョン・クランコ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

バルコニーの上にたたずむジュリエットと、赤いマント!を翻して走ってくるロミオ。フォーゲルのロミオは去年のシュツットガルトの来日公演で観ていて、まさに理想のロミオって感じ。背が高くて、甘い顔立ちで、そのお顔が小さくてプロポーションも抜群。でも、走り方はちょっと今一歩かも。
体は柔らかくしなやかで、やっぱり物語の中のロミオがそのまま現実となって目の前で生きているごとく見えた。

ところが、残念ながら、ポリーナのジュリエットは私的にはダメだった。14歳の少女じゃないんだもの。43歳のフェリのほうがよほど少女に見えてしまうほど。すっかり成熟してしまった大人のジュリエットが、一生懸命少女ぶろうとして、表情も、熱い恋に身を焦がしているんだけど、ちょっと感情表現が激しすぎた。後ろへのパ・ド・ブレも上手すぎて、テクニックが先に立ってしまう。うーん残念。ジュリエットの衣装を着ていても、胸の谷間が見えちゃうし。

でも、若い美男美女が恋人同士の熱い抱擁を交わすのを見るのは、悪い気分になるはずがない。クランコ版は最後の懸垂キスが見物なのだけど、セットの関係かそれがなかったのが惜しかった。
 
レティシア・オリヴェイラ/ズデネク・コンヴァリーナ
「エスメラルダ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:チェーザレ・プーニ

 ズデネク・コンヴァリーナは本当にハンサムで可愛く、脚も長くて綺麗。跳躍力はあるんだけど、細かいミスはあった。レティシアは小柄なラテン美人で、見得切り系。テクニックは強いと思った。しかし、この演目で、タンバリンを叩くのがばっちりというのはなかなかお目にかかれない。ルグリのガラ公演でのオーレリも実は今一歩だと思ったし。今まで見て一番良かったのは、マドリッドのガラに出演していた竹島由美子さんのエスメラルダだ。(ガラでのロメル・フロメタはタンバリン使いが上手だった!)
 
アリーナ・コジョカル/フィリップ・バランキエヴィッチ
「オネーギン」より
 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:チャイコフスキー 
編曲:シュトルツェ

マリア・アイシュヴァルトの欠場で代役がコジョカル。すごく可愛くて小さなタチアナ。基本的に1幕のタチアナは田舎の小娘なので、コジョカルは合っていると思う。
鏡のところに行くと、まずタチアナの写し身が(演じているのは日本人だったので東京バレエ団のダンサーだったのかしら?)。そして、オネーギンが現れる。このオネーギン、長身でかっこいいのだけどものすごい悪人顔(笑)。
バランキエビッチは、さすがにシュツットガルトでこの役を踊っているからお手の物で、リフトが上手。特に、この鏡のPDDの、振り回すようなリフトの切れ味が凄い。小柄なコジョカルはすごいスピードで放り投げられるように回転していた。

このシーンはタチアナの妄想なので、少女の妄想の中の美化されたオネーギン像でなくてはならない。ちょっと怖い顔をしているけど、タチアナの理想の大人の男性って感じでバランキエビッチは素敵で、めくるめくような陶酔感の伴うパ・ド・ドゥになっていたと思う。

アニエス・ルテステュ/ジョゼ・マルティネス
「ジュエルズ」より
 “ダイヤモンド”
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
 
アダージョだけのパ・ド・ドゥ。「ジュエルズ」はPOBのDVDを買ったのにまだ一回しか観ていない(だって新しい作品なのに映像が悪いんだもの)。ジョゼより映像のジャン=ギョーム・バールの方が華があるな。純白のラクロワによるチュチュをはじめ、衣装は美しいし、振り付けも美しいんだけど、そしてプロポーション抜群の二人も美しいんだけど、印象にあまり残らない。音楽がチャイコフスキーなのだけどとても不穏な印象を残す。
 
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/ホセ・カレーニョ
「白鳥の湖」より
 “黒鳥のパ・ド・ドゥ”
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

イリーナは今日一番楽しみにしていた。でもイリーナだったら白鳥の方が彼女の良さが発揮できる気もした。
ドラマティック。イリーナもホセも実に絵になる美しい二人。ホセ王子は、美しく妖しいオディールに幻惑され、すっかり魂を奪い取られている。彼女がオデットなのか戸惑いつつも、吸い寄せられている。エレガントな彼は、立っているだけで王子。イリーナの黒鳥は、演技がすごく入っていて、目力が強く激しい気性を感じさせる強いオディール。その腕をつかもうと王子が手を置こうとすると、ぴしゃりと拒絶する。誘惑的な目線。腕の柔らかさは、まさに白鳥。その白鳥の一瞬に王子はだまされるのね。
後ろに、花嫁候補や女王や民族舞踊の人たちもいるのではないかと思わせるような、全幕をそのまま切り取ったような濃厚な舞台。

ホセのすごいところは、ピルエットをした時に、ぴたりと正面で綺麗に止まるところ。そして、トゥール・ザン・レールでも、着地が実に美しく5番ポジションに収まっていること。ピルエットが減速したり惰性で回っていても、その軌跡がとても美しい。本当にノーブルを絵に描いたような踊り。王子としての悩ましい演技も完璧。

イリーナのフェッテは全部シングルだけど、スピードがとても速く軸がぶれない正統派でかっこいい。会場が一瞬舞踏会になったのではないかという余韻を残す舞台だった。これぞ古典バレエの魅力。

(つづく)

2006/08/20

「アクロバティック白鳥の湖」広東雑技団

東京公演は残念ながら終了してしまったけれども、あまりの人気ぶりに来年の再来日も決定したこの公演、とにかく面白い!

時期的に世界バレエフェスティバルと重なってしまっていたので、バレエファンで観に行った方は少ないと思うけれども、百聞は一見にしかず。どうせ雑技でしょ、となめてかかったら本当にびっくりすると思う。素晴らしいエンターテインメントだった。

始まりは、あの前奏曲ではなく有名なテーマ「情景」から。ブルメイステル版のように、娘姿のオデットが花を摘んでいると、突然、馬鹿でかいスワンボート(足で漕ぐやつじゃなくて、観光船のようなの)が湖に現れ、そこからロットバルトが出現してオデットは白鳥に変えられてしまう。

一方王子はまどろんでいると、夢の中にオデットが登場する。彼女に惹かれた王子は、彼女を求めて世界中を旅する。スフィンクスの前でラクダに乗ったり(笑)、タイやインドに出かけたり。そして中国でついに、オデットを発見するのだった。
その旅の最中、さまざまな雑技が繰り広げられる。まずは、棒の芸。下で人の肩の上に乗せられた、棒高跳びに使うような長くて細い棒をよじよじとよじ登った人たちが、棒と棒の間を、宙返りして飛び移ったりするのだ。さすがに命綱はつけていたけど、下で肩の上にあるためにぐらぐらしている棒から棒に、ひねりを入れながら飛び移れるのが凄い。それから、帽子をたくさん投げてはキャッチする帽子芸あり、輪の中に入ってぐるぐる回転したりバランスとったり、真っ赤なチャイナドレスの娘さんたちがラインダンスのごとく並んでストローハットを投げてはキャッチしたり(たまに失敗する人もいた)、手を変え品を変え、出るわ出るわ。中には小さい子供もいて、ちっちゃな男の子が細い棒の上に着地しては空中回転をしてまた着地というのを繰り返しているところも凄かった。

さて、2幕では、オデットは、綱渡りのような状態で、綱の上をポアントを履いてパ・ド・ブレしながら登場。さすがにスムーズにはいっていないけれども、綱の上をパ・ド・ブレできるだけでも凄い。そして白鳥のコール・ドはチュチュではなく長いドレス。なんと足元はローラースケートなのだ。しかしローラースケートの履きこなしも非常に巧みで、水面をすべるがごとくスムーズである。
そしてオデットのウ・ジェンダン!さすがに主役を張るだけあって、バレエ歴なんてほとんどないに等しいのにちゃんと白鳥に見えるところがさすがだ。リフトとアクロバティックな動きが多いため、衣装がチュチュではないのは少し残念。しかし、腕の動きもよく研究されていてやわらかく、アンディオールもしていた。そして驚異的な柔軟性。まさに世界びっくり人間という感じで、いったい何度まで開脚できるんだろう、210度以上であることは間違いないな、と思った。王子役のウェイ・バォホァのサポートも素晴らしく上手。肩の上や手のひらの上でのポアント立ちアラベスクや、グランド・スゴンド(6時のポーズね)も難なくスムーズにこなしている。オデットはリフトされたまま、足を平行に180度に開いたかと思うと、一瞬のうちにその足が頭上の上を越えてしまってもう片方の足と平行になるくらいの開脚となっている。一体この人の体はどうなっているんだろう!それなのに、すごい、と思いながらも叙情性を失わないところが凄い。

4羽の白鳥のコミカルなアレンジがとても楽しい。まずは、ポアントを履いた4人の小さな白鳥が登場。と思ったら、この人たちは女性ではないのだ。グランディーバ系のみなさんである。しかしポアント使いはコミカルながらも上手。そして、実際の4羽の白鳥の曲では、4匹のカエルが登場し、倒立した状態で小ハクチョウたちの脚の動きを見せてくれるからすごい。くすくすと笑えるんだけどすごいことをやってくれているわけだ。
ロットバルトは黒鷹王っていうらしいんだけど、相当かっこいいお方。

さて、3幕では、オディールはオデットとはまた別の人が演じている。これがまた妖艶でいかにもオディールって感じの美しいパフォーマー。王子はすっかりだまされる。この舞踏会はなんだか魑魅魍魎の集まりって感じの怪しげなもので、ロットバルトの手下のいろいろな物の怪が登場していて面白い。一輪車に乗っていたり、後ろのトランポリンで驚異的な回転技を見せたり。花嫁候補たちはすごい足技でお花を表現していたりしていて、そのあたりのセンス・オブ・ワンダーは素晴らしいと思った。黒鳥のパ・ド・ドゥでは、王子ではなくロットバルトがダイナミックなマネージュを見せてくれる。オディールはフェッテを見せてくれるかな、と期待したけど3回くらい回っただけだったのはちょっと残念。
一番びっくりしたのは、驚異の軟体芸!まったく骨がないようである。女性パフォーマーが、ものすごく狭い筒のようなところを通り抜けたり、あっと驚くところから顔を出したり、いったい体がどうなっているのか見てみたい。どういう鍛え方をしたらあんなぐにゃぐにゃに曲がる体になれるんだろう。ああ驚いた。

4幕では、王子は果敢にロットバルト=黒鷹王と戦う。そして宙吊りになった彼めがけて矢を射ると、あっけなく倒される。愛の勝利を高らかに歌うかのように、王子の頭の上にオデットがポアントで立ち、美しいアラベスクをしたかと思うと、今度は6時のポーズ。そして、さらに凄いのは、オデットが6時のポーズのままで上体を反らすように倒して床と平行になるのだ。どういう体のバランスで、この姿勢が保てるのか、すごい謎である。しかしあまりにもものすごいので、感動の波が襲ってくる。
さすがに、頭を保護するために、王子は帽子を着用。パンフレットのインタビューを読むと、肩の上にポアントで乗られるため、一生消えないであろう痣ができてしまったとのことだ。夫婦でないと、ここまで自分の体を痛めつけてまですごい技を見せてくれないかもね、これこそ愛なのね、と思った。

面白いのは、悪が滅びた後、白鳥たちの真っ白な世界から、カラフルで生命感あふれる世界に変わったこと。人間の姿に戻った白鳥たちは極彩色といっていいほどの色鮮やかなドレスをまとっていて、華やかな世界にさらに彩りを加えている。悪が滅びたことを象徴的にあらわしていて、うまい、と思った。

いやあ、本当に凄いものを見せてもらった。凄いだけではなく、芸術としても非常に優れているし、いうまでもなくエンタテインメントとしても一級品。笑いどころも随所に。決してきわものではなく、雑技とバレエがうまく、バランスよく融合していて、その境界線がくっきりすることもなくごくごく自然。まったく新しい芸術を作り出した、その創造性には敬意を払いたい。王子はとてもノーブルだし(ちょっと顔が熊川哲也似)、オデットはバレリーナとしても通用しそうな優雅さ、繊細な美しさや表現力と驚異の身体能力。本場サンクトペテルブルグで公演して大人気、ウラノワ賞まで取ってしまうのも良くわかる。

バレエフェス貧乏で安い席で観たのだが、次回はぜひもっと良い席で堪能したいと思った。今回見逃した方、次回はぜひ!

ここでハイライト映像が見られます。

追記:実は前の日に、バレエフェスの会場で、主演のウ・ジェンダンとウェイ・バォホァを見かけた。ウェイ・バォホァを見て熊川哲也に似ているな、でも熊川哲也は今日は公園のはずなので来ているわけがない、と思ったらアクロバティック白鳥の湖のチラシを持った人たち大勢に囲まれ、サインをしてあげていた。しかも、楽屋口から出てきたフェリにカメラを向けている。その無邪気な姿を見てしまった後なので、余計、その凄まじいまでの演技に驚いたのだった。

2006/08/18

8/15 マラーホフ・ヴィシニョーワ、東京バレエ団「ジゼル」

ここしばらく風邪気味&バレエフェス&心労でぼろぼろになり、さらにしばらく悩んでいた皮膚炎が、病院で薬をもらっても改善しなかった。今日仕事を休んで医者にみてもらったらすい臓が弱っているとのこと。

しばらく禁酒で、油もの、辛いもの、パスタなど厳禁になります。煮魚などが良いそうで。煮魚など作ったこともないんだけどがんばって覚える

そんな中マラーホフ&ヴィシニョーワ+東京バレエ団のジゼルに行ってきました。バレエフェスティバルもこれで終了。

こういう体調なので、詳しい感想はまた後で。(こればっかりだ)

バレエフェスで絶不調だったマラーホフは、復調していて、全盛期には及ばないだろうけれども素晴らしい踊り&演技。サポートもまったく問題なく、得意の消音ジャンプも健在。彼のアルブレヒトは、最初から本気で、全身で情熱的にジゼルを愛していて、ジゼルの狂乱の場面でもジゼルに駆け寄りたいところをウィルフリードに止められていて、隙あらばウィルフリードを振りほどいて襲い掛からんばかりの勢いで駆け寄るんだろうな、と思わせる。ジゼルをこんな目に遭わせたことに後悔しまくっていて、悲しみのあまり死んでしまうんじゃないかと思うほど。

2幕では、自己燐憫の塊となって、ナルシスティックに背中を反らせ、体の曲線がなんて美しいのかしらと思わせた。ミルタに踊らされるところのブリゼ、細かい脚捌きも、足の先まで美しい。その上、あの脚線美である。ジゼルが墓の中に消えた後、ジゼルに救われたことに感謝して新しい人生を生きるというよりは、このまま一生彼は重い十字架を背負い続けるのね、と思わせた。(しかも、あの井脇さんのバチルドの冷たい視線を一生浴び続けるわけである)特殊なアルブレヒトではあるけれども、マラーホフ最大の当たり役なのは納得。彼の中でいかにこの役が大切なのかも伝わってくる。百合の花束を抱え、マントを身に着けて墓の前で泣き崩れる姿がこれだけ絵になる人もいないだろう。わが身が引き裂かれてしまったかのような悲しみが伝わってくる。いつまでも続きそうなカーテンコールの中でも役の中に入り込んでいて笑顔がなかった。

ヴィシニョーワとのパートナーシップはさすがで、まるでお互いの片割れ、半身を求めているかのようだった。2幕は、自分のなくした半分を、相手に見つけ、それを取り戻そうとする過程に見えた。6月にヴィシニョーワとアンヘル・コレーラとの「ジゼル」をNYで観たのだけど、いくら絶賛された舞台とはいえ、マラーホフとの方がずっとケミストリーがある。

ヴィシニョーワに関していえば、確かに完璧なジゼルだと思う。技術的には非の打ち所がない。ミルタに呼ばれて出てくるところの高速回転は、目にも留まらない猛スピードなのに形が崩れなくて凄い。身体能力も凄い。デヴロッペの高さや脚が描く弧の美しさもさすがである。ジュッテも力強く、高さがある。ポールド・ブラは例によってやわらかく浮遊感がある。ただ、彼女の問題は、あまりにもテクニックがありすぎて、テクニックが表現に勝ってしまう部分があること。2幕のジゼルでも元気いっぱいで生命力がありすぎること。腕が柔らかすぎてくねくねしすぎること。だから、幽玄さは感じられるのに、生身っぽい。生身っぽいのに、アルブレヒトを守ろうとする意志があまり感じられないこと。そういうわけで、本当に素晴らしいジゼル、ただし残念ながら私はあまり好きになれない。おとといのコジョカルのほうが、ジゼルというキャラクターをよく理解していて、素晴らしいジゼルを作り上げていると思った。

ただ、2年前に同じ組み合わせで観た時よりは、全然よくなっていたと思う。1幕のジゼル。ものすごく元気いっぱいで踊りが大好きで、とても心臓があるようには見えないんだけど、ちゃんと素朴な村娘に見えたこと。(2年前は、村娘というよりは、間違ってこの村に存在している派手な娘にしか見えなかった)あの派手目なピンクの衣装を着ているにも関わらず。バチルド役の井脇さんが素晴らしく誇り高いお姫様だったので、バチルドよりずっと身分が下に見えたこと。狂乱の場の演技も、完全に狂っていてよかったと思う。コジョカルと違って正気を失ってしまったところがとても哀れに見える。この部分がうまくいくと、やっぱり2幕もよく見えるわけであり、この2年間でかなり成長したことがうかがえる。

けなしているところもあるけれども、ヴィシニョーワのジゼルはパフォーマンスとしては恐ろしくレベルが高いわけであり、今後どのように進化するかはとても楽しみなものがある。年齢を重ねれば表現力や約の解釈も深まるだろうし、見守っていきたいと思った。

おとといは一階だったけれども、今日は3階。3階から観ると、東京バレエ団のコール・ドがとてもよいのがわかった。ウィりたちが交差する場面でも、非常によくそろっていた。木村さん、ウィルフリードの森田さん、バチルドの井脇さん、ミルタの大嶋さん、ドゥ・ウィリの西村さんと乾さん、そしてパ・ド・ユイットの面々、みんなとても好演していた。レベルの高い、充実した舞台だったと思う。

ほみさんの素敵な感想もどうぞ。

2006/08/17

「知ってるようで知らない バレエおもしろ雑学事典」

筆者の一人、音楽ジャーナリスト林田直樹さんのブログのお知らせにもあった「知ってるようで知らない バレエおもしろ雑学事典」。基本的にはバレエ鑑賞初心者のための本なのですが、面白いです。

やはり林田さんが執筆された「バレエ・ファンに贈るクラシック音楽入門」と「その演目にちょっと一言、物申す!」がいいですね。
「クラシック音楽入門」は作品と音楽の関係のみならず、その音楽が作曲された時の裏話もあります。ストラヴィンスキーやプロコフィエフとディアギレフとの関係、チャイコフスキーの交響曲とバレエ音楽との関連。そして、その他いろいろな作曲家について。「白鳥の湖」のテーマ(情景)と王子の心境の関連性は、個人的には、ノイマイヤーの「幻想-白鳥の湖のように」の構成とぴたりとはまっていて、こんなところでノイマイヤーの才能に感嘆させられたり。音楽と踊りとの関係性を理解するのに役に立つ一章です。
できれば、このテーマで本1冊作ってほしいな、なんて思います。

「その演目にちょっと一言、物申す」は、男性の視点から見たバレエの物語へのツッコミで、これは楽しいです。おととい「ジゼル」で木村和夫さんのヒラリオンの熱演を見てきたばかりゆえ、ヒラリオンはいいやつなのになんで殺されなくちゃいけないんだ、という文は思わず笑いながら読んでしまいました。ひどいわね~といいながら女性はやっぱりアレを見て喜んじゃうんですよね。へんなおじさん大好きの私は、くるみのドロッセルマイヤーはお気に入りのキャラクターですが、その辺についても。

その他のバレエの歴史や基礎知識、「バレエダンサーってどんな人たち?」なども、今までのバレエ入門書とちょっと一味違った視点で楽しく読めます。おすすめ!

※付録に舞台写真(モノクロ)がついているんですが、すべて日本のバレエ団の写真。美しい写真ばかりなのですが、できれば、ダンサーの名前も入れてもらえれるとありがたかったかも。
※たまに、記述の間違いがあるのには注意。(東京バレエ団と東京シティバレエ団、とか、ハンブルクが「眠り」を日本で上演したのは2005年、とか、キリアンは今はNDTの芸術監督を辞している、とか。

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2006/08/16

世界バレエフェスティバルBプロその3

アレッサンドラ・フェリ/ロバート・テューズリー
「マノン」より“沼地のパ・ド・ドゥ”

フェリの沼地は2ヶ月前にボッカの引退公演で観たばかり。したがって、そのときのことが思い出されて、それだけで切ない気持ちになっていたところを、さらに、これがもしかして私が観る最後のフェリの沼地かと思うと....。それを抜きにしても、渾身の演技に打ちのめされる思いがした。とてもガラ公演で、この部分だけ踊られているとは思えなかった。登場したときから死の匂いを濃厚に漂わせたフェリは、命の灯が消える寸前の最後の輝きを放っていた。悪夢にうなされ、死の恐怖に怯え、今までの栄華と転落の人生が走馬灯のように流れ...残されたものはデ・グリューへの愛だけ。今本当にこのままステージの上で死んでしまうのではないかというやつれ果てた姿のフェリがいとおしくて。デ・グリューの腕の中でやっと真実の愛を知った、死にたくないともがきながらも、忍び寄る死にあらがうこともできず...マノンの命がはかなく消えた瞬間がしっかりと見えた。涙が止まらない。デ・グリューのロバート・テューズリーもよかった。ボッカがデ・グリューだとどうしてもボッカのほうに目が行ってしまうのだが、テューズリーは控えめながらも、死に行く恋人への最後の愛を一途に捧げ、死んでしまったことに気づくと激しく嗚咽する。10日の時は少しサポートが危なっかしいところもあったが、それは、フェリが、彼を信頼しきって自分の身を完全に彼に任せて、屍同然になりきってリフトされているからだろう。
この日は、やはりこの演目が最も感動的だった。


レティシア・オリヴェイラ/ズデネク・コンヴァリーナ
「ドン・キホーテ」

Aプロのキューバ組の演技が凄まじかっただけに、大変なプレッシャーがあったのではないかと思う。レティシア・オリヴェイラは小柄でコケティッシュなラテン美女で、キトリはとても似合っていた。愛嬌を振りまいていてとても可愛い。長いバランスを何回か見せたけれども、うまくいったときもあればちょっとぐらつくことも。ここまで入れなくてもいいかな、とは思ったけど、がんばって盛り上げていこうとしていることには好感を持った。後方に跳んでフィッシュ・ダイブの形にバジルにサポートしてもらうのはかなりの難しい技。彼女はテクニシャンだと思う。ヴァリエーションでは、扇を可愛く使いこなしていてキュートだった。そして、グランフェッテでは、ダブルで回るときには扇を広げたり、効果的に使っていて、かなり盛り上がった。この扇使いに関しては、今まで見たキトリの中でも一番上手だったのではないかと思う。フェッテも軸、位置ともずれずにうまく回転できていた。「見てよ」というアピール度が強いので、それが苦手な人もいるかもしれない。
一方相手役のコンヴァリーナ君は、ルックスも麗しいし身長も高い。ジュテなども長い脚を生かしているしトゥール・ザン・レールもよく跳べているんだけど、腕の使い方があまり綺麗じゃないのが少し残念。バレエフェスでなければなかなかだとは思うのだけど。でも、私は決して嫌いじゃないな。フィナーレだから、盛り上げていこうという一生懸命さが伝わっていて、「がんばれ!」と応援したくなった。

Bプロは、ほとんどが古典演目で時々演劇的な作品が入るという構成。コンテンポラリーはなし。だからわりと、似たほうが印象の演目が多かったというバランスの悪さを感じてしまった。ただ、一つ一つの演目はとても充実していて、超ゴージャスなフルコースを食べたという満腹感があった。なんという贅沢だろう!

世界バレエフェスティバル コジョカル&ルグリ「ジゼル」短評

例によってすっかり遅くなってしまったので、細かいことはまた後日。
素晴らしい舞台でした。ルグリ&コジョカルの組み合わせは実のところしっくりいっていない部分もあったと思うけれども。演技のタイプがだいぶ違うのね、この二人は。年齢差も感じてしまったし。相性という意味では、コジョカルにはコボーのほうが良かったのかもしれない。でも、それぞれの演技&踊りは非常に良かったし感動的。最後はもちろん涙、涙。そしてほぼ全員がスタンディングオベーション、鳴り止まない拍手と数え切れないほどのカーテンコール。

コジョカルは本当に小さくて軽くて幸薄い感じで、内省的な演技を見せてくれた。出てきたときから、ロイスとの恋で幸せでありながらも薄幸そうなのがわかったもの。折れそうなほどの華奢さで病弱なのも説得力あり。狂乱のシーンは、狂っているというより、幸せだったときの時間に自分の中の時計が戻ってしまって、あまりの悲しみに壊されてしまったように見えた。大げさな部分はまったくなく、ただ、心が壊れて死んでしまったのだ。派手さはまったくないけど、ひたすらかわいそうで胸が締め付けられた。

ウィリになってからもその印象は変わらず。ポール・ド・ブラの形はあまり好みではないけど。健気で、アルブレヒトよりうんと若いのに、つつみこむような母性もあって、かわいそう感が人一倍。 そして、本当にこの世のものではないかのような透明感。だけど、芯には強いものがあって、アルブレヒトを守り抜こうとしている、その凛とした姿がまた感動的。微笑を浮かべて踊っている姿が、また涙を誘う。人間ではなくなっても、愛する人と踊れることが幸せだと感じているようで。

ルグリは1幕で出てきたときから貴族様で、身分の低い田舎の小娘と戯れているって感じだった。バチルド姫が出てきたときに、「こんなの嘘よね、嘘だと言って」とすがりつくジゼルにも思わす顔を背けてしまうほどの冷たさ。けれども、ジゼルの死~ウィリになって現れたときにようやく彼女の思いに気がついて心から悔やんでいた。ウィリとなったジゼルの姿をなかなか見ることができていなかったのが印象的。Bプロとガラの「椿姫」ではリフトがいっぱいいっぱいという感じだったけれども、今回は、コジョカルが軽いということもあったかもしれないけどリフトが完璧。ふわりとジゼルを持ち上げる。最後のヴァリエーションの前の、ミルタの前に進み出るブリゼの細かさは名人芸だった。その後のアントルシャ・シスは9回。高く跳んだカブリオールの足先も美しく、衰えはまったく感じられなくて素晴らしいテクニック。コジョカルを小刻みにリフトするところも、息がぴったりだった。そして、本当に踊りすぎて死んでしまいそうなほどの倒れこみ方。 苦しそうに胸を押さえたりしないのに、苦しいのが良くわかる。

朝を告げる鐘が鳴り、アルブレヒトが助かったことを知って嬉しそうに微笑みながらも、まもなくやってくる別れを感じて涙を押し殺しているようなコジョカルにもらい泣き。それを受けるルグリの演技もさすがに、深い愛と悔恨を感じさせてエモーショナルだった。墓に消える前のジゼルから受け取った花一輪と、墓に供えてあった百合の花を抱え、自分の罪深い魂がジゼルによって救われ浄化されたと万感の思いをこめた表情のルグリ。彼のアルブレヒトを生で見るのはおそらく最初で最後だろう。

木村さんのヒラリオンは例によっての濃ゆい演技の名人芸。ルグリよりも背が高くて、スタイル的に引けをとらない。それなのに、ジゼルが死んだときの地面を拳で打ちつける激情や、背中を大きく反らして天を仰いだままのポーズで幕とか、命乞いの必死さとか、熱くて濃くて最高。これを見ただけでも元をとった気がするほど。そして怖くて美しい井脇さんのミルタ。上半身の柔らかさ、パ・ド・ブレの正確さ。本当にすごい。パ・ド・ユイットの皆様も良かった。特に大嶋さん、中島さんは素晴らしい。ただ、演出としては、ぺザントの場面はパ・ド・ドゥのほうが好きだけど。狂乱のシーンで、ジゼルを心配そうに見守る友人役の西村さんの演技も印象的だった。

一緒に観に行った友人が、テレビクルーに聞いた話では、NHKのハイビジョンと芸術劇場で放映される予定とのこと。(日時は未定)

ジゼル: アリーナ・コジョカル
アルブレヒト: マニュエル・ルグリ
ヒラリオン: 木村和夫

【第1幕】
バチルド姫: 浜野香織
公爵: 後藤晴雄
ウィルフリード: 森田雅順
ジゼルの母: 橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット): 小出領子‐古川和則、高村順子‐中島周、
長谷川智佳子‐平野玲、佐伯知香‐大嶋正樹
ジゼルの友人(パ・ド・シス): 大島由賀子、西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子


【第2幕】
ミルタ: 井脇幸江
ドゥ・ウィリ: 小出領子‐長谷川智佳子

2006/08/15

世界バレエフェスティバルBプロその2

続き行きます。

ジル・ロマン/那須野圭右
「孤独」
那須野某はいらない!着物のすその扱い方は乱雑だし、カーテンコールでジル様の前に出るなって。フィナーレにも出なくてよろし。
それはさておき、苦手なベジャールだけど、振り付けとかはさておき、ジル・ロマンは素晴らしい。一つ一つの動きが洗練されていて美しいし、どうしてこんなに軸のぶれないピルエットができるの、とか彼にしか絶対にできないような独特の腕の運び方ができるの、この表現力の肥沃さはいったい、とかいろんな思いをしながら見ていた。ジルを観ているだけで満足。
それだけに、内掛けの男性が十市さんだったらどんなに素晴らしかっただろうが、と考えさせられた。基本的に歌つきのダンスは好きではないのだが、この演目に関してはバルバラの曲は合っていたと思う。

シルヴィ・ギエム/ニコラ・ル・リッシュ
「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ

まったく受け付けられなかった。ギエムが黒いヴェールをかぶってたたずんでいる姿の不吉なこと。死神のようだ。ヴェールをはずすと真っ赤な髪で、まったくマルグリットに似つかわしくない。肉体が強靭なのがわかるから、とても病弱でもうすぐ死ぬ人には見えないし、よく言われていることでは歩けどギエムにしか見えない。技術的には素晴らしいのだけど、ぜんぜん心に響いてこない。感情の揺らぎや哀れさ、諦めそして劇場の何一つ感じられない。計算ずくの演技を見せられても、心の琴線には触れない。あまりにも超絶技巧過ぎるのも、物語の中に入っていくことを邪魔させる。二コラは、アルマンを演じるには少し年をとりすぎたように見える。白鳥の王子とか若者と死の若者を演じているときには、ぜんぜんそういう風に見えないのに。激情型だったリアブコをちょっと前に観たばかりというのもあるけれども、感情を抑えすぎているし、個人的には自己陶酔型の二コラの演技は苦手だ。ジュッテの見事さだけは感心したけれども。

アニエス・ルテステュ/ジョゼ・マルティネス
「ドリーブ組曲」

ブルーを基調とした衣装がとっても素敵。ストライプになっている部分は、よく観ると細いリボンを何本も並べたもの。たっぷりしたドレープのスカートが可愛い。
基本的には普通のクラシックのパ・ド・ドゥなんだけど、始まりがシルエットで、ヴァリエーションのときに、女性が踊ると思ったらバトンタッチのように男性が踊る、その逆もアリという肩透かし効果が面白い。あと、ジョゼのマネージュが、進行方向と逆に回転するというちょっと変わった趣向なのが面白いといえば面白かった。破綻がなくて綺麗なんだけど、そういうところ以外は無色の印象。そこが素敵といえば素敵なんだけど。

タマラ・ロホ/イナキ・ウルレザーガ
「三人姉妹」

女優バレリーナ、タマラの本領発揮演目。よく回れるのはわかったから、こういうのをもっと観たい。田舎町で身をもてあましてくすぶっている人妻の情念がよく伝わってくる。タマラって肉体性=実体がある感じなのが好き。切りそろえた前髪の下の、タマラ独特の重たげなまぶたと、黒い瞳はクラシックを踊っているときにはクールなのに、演劇的な作品になると暗い輝きを放って、情念を伝えてくれる。動きの一つ一つが計算されているのもわかるけど、わざとらしい計算ずくではなくて自然にあふれ出るものが動きになっているのだ。視線の使い方も相変わらずすごい。ぞくぞくする。
ヴェルシーニン役のイニャキ(イナキじゃなくてイニャキよ)が、もっさりとしていて不器用そうなところが、かえって哀感を漂わせていていい。登場していきなりバサッと帽子を飛ばす。彼は跳躍力がすごくて、ダイナミックなトゥール・ザン・レールを見せる。片脚だけを伸ばした跳躍は、彼の一本気な性格を思わせてくれる。ちょっと着地音がドサッと大きいのだけど、あんなにすごく跳んでいるんだから許してあげて。回転もいい。軍服が駅員か郵便局の人に見えて、わきの下の汗がすごかったことにも目をつぶりましょう。
ヴェルシーニンが去った後に、残されたコートを抱きしめそっと匂いを嗅いで泣き崩れるマーシャ=タマラ。こちらももらい泣きしそうな、素晴らしいドラマだった。一部だけでなく、この二人で全部を見てみたい。

(つづく)

2006/08/14

ガラから帰ってきました

実はおとといくらいから風邪気味で、かぜ薬を飲んでのど飴持参。3部あたりでかなりつらくてのど飴を大量に消費した。 でも4部が全部素晴らしかったので、乗り切ることができた。

もう遅いので一言だけ。

素晴らしかった演目。この4つを観られただけでも来てよかった。中でも「モーリスのために」と「ロミジュリ」は観られた幸せをかみ締め、心から深く感動した。

「作品100-モーリスのために」アレクサンドル・リアブコ、イヴァン・ウルバン
「レ・ブルジョワ」フィリップ・バランキエビッチ
「アダージェット」ジル・ロマン
「ロミオとジュリエット」アレッサンドラ・フェリ、ロバート・テューズリー。

ほかにも良かったのはいろいろあるけどね。ABT組のくるみとか。
その辺はまた時間があるときにゆっくりと。


ロミジュリの時には途中から涙が止まらなくなって困った。フェリが表彰されるときに、私の後ろにいた男性が「ありがとう、フェリ」って叫んでいて、そこでももらい泣きしてしまった。

恒例のおまけは今回はガラ。
マラーホフとタマラ・ロホのロミジュリバルコニーシーン。今回不調のマラーホフがここでは相当はじけていて絶好調だった。貞子のような長い黒髪をバサバサととかしたり。バルコニーの上で身を乗り出して落ちそうになったり、階段でこけたり。おなかにアンコを入れ、サンチョ・パンサのようなだっさい扮装のタマラが可愛かった!二人で追いかけっこをしたりすごく可笑しい。ジュリエットがジュッテを見せるところでは、ちゃんとポアントのままジュッテするマラーホフ。軽やかで美しい~本番でこれくらい踊ってくれれば。タマラは役者。

フリーデマン・フォーゲルの黒鳥のヴァリエーション。彼は王子より黒鳥のほうが向いているのでは?グリゴロービッチ版の、アラベスクで回転してからピルエットというとても難しい振り付けをほぼ完璧にこなしていた。ちょっとポアントワークは危なっかしいところもあって怪我するのでは、とはらはらしたけど。メイクがすごい。超厚化粧に出っ歯で言われなければ彼だとはわからない。

ロメル・フロメタのエスメラルダ。こちらも完璧!ポアントも難なく履きこなしていた。しかもタンバリンを頭で打ったり腰を振り振りさせたりとコミカルな味付けもあって最高!金髪の巻き毛かつらをつけていて可愛かった。

ヴィエングセイ・ヴァルデスのドン・キホーテのバジル。こちらは口ひげをつけていて、これもまたキュートだった。ポアントで3幕のヴァリエーションを踊るけどさすがに堂に入っていた。 跳躍が足りない分走ってごまかすところが可愛い。

ジョゼ・マルティネス。最初はドレス&カツラでフラメンコの女装していたけど、後ろに紐がついていて蛇に追いかけられる。ベタだけど楽しいギャグ。続いて、「オンガクは!?」と日本語で何回か怒鳴り、カツラとスカートを脱ぐと、白いシャツに黒いパンツ。そして、去年のスペインガラでもとてもかっこよかった「三角帽子」の粉屋のファルーカを踊ってくれたのだ。これはとっても嬉しいサプライズ。別人のように生き生きと、伊達男風にサパディードを踊ってくれてしびれた。その合間に2回ほど携帯電話がなって「もしもし」のあとスペイン語でまくし立てる。ひょうきんで素敵。

トリはカルメン。幕が開くと、またあのピンクに黒水玉の悪趣味な衣装のメルクリエフと、素敵なポリーナ。ところが、ポリーナが押しのけられ、あでやかに微笑んでいるのはホセ・カレーニョ。彼のカルメン、すごく美しくて色っぽい、と思ってしまった。一方、メルクリエフは、紫色の口紅にアイライン、鎖をジャラジャラさせ、しかも前をはだけると胸にセロテープが貼ってあって乳首にもチェーンが!姿勢も目つきも悪い、ゴスというかパンクで危ないホセで大笑い。そんな彼に、スカートを捲り上げて挑発するホセ・カレーニョ、素敵過ぎ!ホセはラストのフィナーレまで女装のままというのが、いい味出していた。 エスコートされていたイリーナもこれには苦笑。

そういうわけで、いろいろと見られたのはいいけれども、抽選などの時間がかかった分、おまけのガラはちょっと短かったかも。前回のバレエフェスのガラのおまけは、男性ダンサーほぼ全員参加していたからな~。でも、ジョゼやメルクリエフ、フロメタらの意外な魅力を見ることができて、これはこれで楽しかった。

3年後はチケット取れるのかな~

2006/08/13

世界バレエフェスティバル【Bプロ】8/8&10

AプロよりBプロの感想が先になってしまいました。すみません。

ヴィエングセイ・ヴァルデス/ロメル・フロメタ
「ディアナとアクティオン」

Aプロの「ドン・キホーテ」の驚異的な演技も記憶に新しい彼らが、またやってくれた。ロメル・フロメタの衣装はほぼパンツ一丁なのだけど、それが実に似合う見事な肉体美でまさに彫刻のよう。背中を大きく反らせての跳躍が高いこと、高いこと。瞬発力があるんでしょうね。でも、テクニックを見せ付けていなくても決して下品になっていないのが素晴らしい。さすが、ノーブルなホセ・カレーニョの後輩というべきか。
Aプロのドン・キでは、吸盤が生えているような鉄壁のバランスを見せたヴィエングセイ・ヴァルデス。今回のディアナの衣装を着るととても可愛らしい。お顔はちょっとヴィシニョーワに似ている。しかし今回も本当にすごかった。バランスの見事さももちろんだけど、回転もすごい。サポートつきのピルエットで10回くらい回って、サポートがなくなっても回り続けているって一体どういうことでしょうか!
ぜひ彼らの全幕を観たいと思った。

エレーナ・テンチコワ/フィリップ・パランキエヴィッチ
「リーズの結婚」

うってかわって、とっても可愛い演目。でもバランキエビッチはパステルカラーの衣装を身に着けていながら、悪人顔。二人ともテクニックが安定していて、とっても安心してみていられる。バレエフェスに上演するには少し地味目の演目ではあるけど、こういうリラックスして見られるものがあると嬉しい。テンチコワは、去年の「オネーギン」のオリガ役が良かっただけに、この演目だけの出演なのがもったいない。バランキエビッチが指を鳴らすのに合わせてテンチコワがポアントでぴょこぴょこ跳ねるところが特にキュート。最後のリフトで、バランキエビッチがスカートの中に思いっきり手を突っ込んで持ち上げていたのがちょっと気になった。

ジョエル・ブーローニュ/アレクサンドル・リアブコ
「幻想-『白鳥の湖』のように」

1回目に観たときには席が悪くてドラマに十分入り込めなかったけど、今回は比較的良い席だったのでどっぷりと浸れた。髪型とひげをつけると、リアブコは本当にルートヴィヒそっくりになる。隅々まで行き届いた演技。虚空を見つめる瞳にやどる狂気。一方、ナタリア姫のジョセル・ブローニュも素晴らしかった。王の気持ちがこちらにないことに気がつきながらも、それでもなお彼を求める気持ちが表現されていて、まさに女優バレリーナという感じ。この部分、リフトが恐ろしく多くて本当に踊るほうは大変だと思うのだけど、さすがに踊りなれている感じがした。切なくて胸が締め付けられる。ただ、やはりここには影の男がいたほうが良かった。客席にイヴァン・ウルバンを見かけたのだけど、彼に出てもらえばよかったのに、とちょっと思った。
「幻想~白鳥の湖のように」は大好きな演目なので、ぜひ全幕を来日公演で持ってきてほしい。

イリーナ・ドヴォロヴェンコ/ホセ・カレーニョ
「海賊」

今回の出演者で一番好きなイリーナ様のメドーラだもの、悪いはずがない!しかしここまで見事な、クリーンな輪郭の踊りを見せてくれるとは、嬉しくなってしまう。水色のチュチュ姿もお美しく、お姫様オーラ全開でキラキラ輝いていた。フェッテは、Aプロでは全部シングルでその代わり非常に速くかつ音に正確だったのだが、今回はダブルも取り混ぜて。しかし音に正確な回転と、微動だにしない軸と非常に安定していて美しい。真髄はヴァリエーションの優雅なエカルテ。綺麗だな~とぼーっと見とれてしまう。

一方、アリ役のホセ・カレーニョはもちろんこの役が当たり役。奴隷にしてはあまりにも気品がありすぎるのかもしれないが、やはり素晴らしく美しい。彼の場合は、なんといってもピルエットで回ったときのフィニッシュがぴたりと止まるところが見事だ。アティチュードの姿かたちも彫刻のようだし。何があるとしたら着地音がちょっと大きいくらい。後はもう完璧。こういう優雅な奴隷に仕えてもらうと、お姫様もますます輝くのよね。プティパによるクラシック・バレエの真髄を見せてもらった。ブラボー!バレエはやっぱり美男美女が踊るとさらに輝くよね。


マイヤ・マッカテリ/デヴィッド・マッカテリ
「ロミオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ”

チラシではマクミラン版となっていたのに、ふたを開けてみたらラヴロフスキー版になっていた。う~んラブロフスキー版のロミジュリはリフトなどパ・ド・ドゥ技が少なくてつまらない振り付けなので好きではないのだ。
若くてキラキラの兄妹カップル。ジュリエット役の妹マイヤの可愛いこと。まだ19歳らしく、とても清純でジュリエットにはぴったり。甘くうっとりとこの恋に突き進んでいる陶酔感が素敵。兄のデヴィッドは、Aプロの評判は芳しくなかったけれども、こっちは良かったと思う。登場するときに何故かマントはなし。足がとても長くて、マネージュするときにすっと伸びているのが気持ちいい。決して悪いダンサーではないと思うのだ。ロミオっぽさはないけど。 兄が長身なのに妹は小柄で、バランスはあまりよくない。でも兄妹と知らなければちゃんと若い恋人同士に見える。
コーダでキスしながらくるくる回るところは好きなんだけど、最後のほうで二人で正面を向いているというのが間抜けなんだよね、ラヴロフスキー版は。お兄ちゃんが妹に永遠の愛を誓うマイムをするのがちょっとやばい感じで笑ってしまった。

ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・メルクーリエフ
「カルメン」

Bプロは2回観たのだけど、2回目は、初日にはあったカルメンのソロがカットされてしまっていた。ステパネンコが調子が悪いのではないかと心配。
しかし、彼女の踊りからは不調、というのは伝わってこなかった。ものすごく貫禄があるカルメンだけど、それはそれでボリショイらしくってドラマティックでいい。手管手練に長けた大人の女だ。メルクリエフは、髪を黒く染めて、なんとピンク地に黒の水玉というとんでもない衣装で登場。確かこの役って兵士の恰好をしているんじゃなかったっけ。でも、彼は踊りは良い。体が良く動いていてかっこいい。それだけに2日目から短くなってしまったのが残念。二人の絡み合いをもっと観たかった。

アリーナ・コジョカル/ヨハン・コボー
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」

二人ともテクニックが素晴らしい。アリーナは小さいだけあって軽やかに良く跳んでいる。コボーも足音をまったくさせなくて鳥のようだ。公私にわたる仲良しさんだから、パートナーシップもばっちり。コーダでのジャンプしたアリーナをコボーが受け止めるところも見事に決まっていた。
しかしコボーが踊るとバランシンがブルノンヴィルになる。ヴァリエーションの最後のアントルシャ・シス、実に見事な足捌きで惚れ惚れとしたけれども、オリジナルの振り付けにはないよね。でも春風のようにさわやかな二人だった。


ポリーナ・セミオノワ/フリーデマン・フォーゲル
「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ

ポリーナの黒鳥は、2月のマラーホフ公演でも、強靭なテクニックと小悪魔ぶりでとても印象的であった。が、成長期のバレリーナゆえ、数ヶ月でまた印象が変わった。以前よりもずっと邪悪で目チカラが強い、ぞくぞくするような黒鳥。黒曜石のような硬質な光を放っている。たまに白鳥の幻影が見えるところがまたすごい。コーダのフェッテは、なんと前半は全部ダブル。そんなポリーナ黒鳥に、すっかり意のままに操られていた感のあるフォーゲル王子。彼は、長身で容姿は本当に完璧に美しい。しかし意外にテクニックが弱いのが見えてしまった。一番の弱点はピルエットで、3回回るのがやっと、しかも滑らかさがなくカクカクへろへろしている。跳ぶほうは問題ないのだけど。すっかりポリーナ黒鳥に骨抜きにされてヘラヘラしている、おめでたいお坊ちゃま君で、一瞬も彼女が白鳥ではないなんて疑ったことがないように見える。苦悩のかけらも見えない。でも、これだけ王子らしく素敵なルックスなので、問題なし。ロミオを演じさせれば世界で1,2を争う人なのにね、フォーゲル君は。


ルシンダ・ダン/マシュー・ローレンス
「眠れる森の美女」

ルシンダはとてもキラキラ感があるオーロラでよかったと思う。テクニックもしっかりとしていて、安定感がある上、笑顔がチャーミング。音楽性にも長けていて、歌うように踊ってくれていた。ちょっと残念だったのが、コーダのところで、オーロラがちょこんと上半身を横に倒す振り付けが可愛いと思っていたけどそれがなかったこと。私は眠りがあまり好きな演目ではないのでそれほど観ているわけではないのだけど、ほかにも、通常の振り付けから改変されている部分があったようだ。パートナーのローレンスは、長身スタイル良し端整だったけど、印象はあまりない。そもそも眠りの王子って印象も見せ場もあまりない役柄から仕方ないのだけど。


オレリー・デュポン/マニュエル・ルグリ
「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ

ドラマティックな3幕「黒のパ・ド・ドゥ」に対して、派手さはない、しっとりとした「白のパ・ド・ドゥ」。ルグリの美しい脚と繊細な演技、下ろした豊かな髪と美貌が映えるオーレリ。複雑なリフトが多い中でも、ドラマをいかにつむいでいくかというところがポイントで、幸福感にあふれながらも、死の予感を漂わせる不吉さがあってよかったと思う。ただ、ルグリはアルマン役には少々年をとりすぎたと思えなくもない。オーレリには薄幸さが少し足りないかも知れ兄。それでもとても美しいものを見せていただいたと感謝。
その美しい演技を台無しにするピアノ演奏。なんでプロのピアニストじゃない人に弾かせるかな。バレエは総合芸術なんだからもう少しそのあたりちゃんとしてほしい。これだったらテープ演奏のほうがまし。

ディアナ・ヴィシニョーワ/ウラジーミル・マラーホフ
「ジュエルズ」より “ダイヤモンド”

出てきた二人を見て、この衣装何、と思った。ダイヤモンドというからには、純白に輝いているものを想像していたのに。Aプロではアニエル・ルテステュとジョゼ・マルティネスが踊ったのだが、そちらはパリ・オペラ座のクリスチャン・ラクロワデザインによる、まさに宝石のように美しいチュチュだったのに。こちらは、ベージュといってもいいほどのくすんだ色に、バロックな石が乱雑についている感じ。
そういうわけで、演技のほうもこれはバランシンではないな、と思った。ヴィシニョーワというバレリーナも、何を踊ってもヴィシニョーワなのかもしれない。こんなにドラマティックなジュエルズは初めて観た。視線の絡ませ方から腕のくねくねした使い方まで、とてもAプロと同じ作品とは思えない。ねっとりとしていて、暗い情熱があって。「ダイヤモンド」の音楽はチャイコフスキーとはいってもけっこうダークな曲だし、「白鳥の湖」の2幕を思わせる振り付けが挿入されているので、オデットが踊っているように思えてきた。マラーホフはサポートに徹して、存在感ほとんどなし。
ある意味、とても面白かったともいえる。

(つづく)

2006/08/12

映画「オーロラ」の日本版公式サイト

お正月にBunkamuraル・シネマ&シャンテ・シネで公開される映画「オーロラ」の日本版公式サイトができていました。 (【昨夜のバレエ 明夜のバレエ】 さん、情報ありがとうございます)
http://www.aurore.jp/
監督はドキュメンタリー「エトワール」のニルス・タヴェルニエです。

まだ表紙と予告編しかないのですが、予告編がすごく素敵です。ちゃんと、二コラ・ル=リっシュだけでなく、カデル・ベラルビ、マリ=アニエス・ジロ、そしてヤン・ブリダールはアップになって映って、名前も出演者として出ています。たしかベラルビとヤン・ブリは求婚者の役だったかと思いますが、ベラルビのファンの私としてはもうベラルビ見ただけで舞い上がりそうになりました。
しかも、この予告編、右クリックでダウンロードできます。

オペラ座のダンサーが35人も出ているそうです。
昨日Bunkamuraに行ったのになんでチラシもらってこなかったんだろう。

映画自体は、フランスで見てきた人の話ではかなり微妙らしいけど、ベラルビさんが出ているので絶対に観ます。DVDも買います(ばか)
監督のお父さんは巨匠、ベルトラン・タヴェルニエなのに息子はちょっとボンクラっぽいです。

追記:チラシによれば、なんとイリ・ブベニチェクとオットー・ブベニチェクも出演しているそうです。ますます必見ですね。

2006/08/09

世界バレエフェスティバルBプロから帰ってきました

明日の朝も早いのにもうこんな時間。HS06もAプロも感想に手をつけていないし。

とりあえず、何とか仕事を早退してBプロに駆けつけました。得チケの割には良い場所だったのですが、斜め前の人が前のめりで舞台が半分以上隠れてしまって、興をそがれることおびただしかったです。やっぱり勇気を出して注意すべきだったんだろうか。東京文化会館は前の人がかぶりやすいサイド席が多いので、携帯電話だけでなくて、前のめりについても注意放送をしてほしいと思いました。

良かったのは、トップバッターのキューバ組による「ディアナとアクティオン」(またやってくれました!)、ハンブルク組の「幻想~白鳥の湖のように」(やっぱりハンブルクダンサーはドラマティックな演技が素晴らしい)、ABT組の海賊(二人とも端正でスターの輝きがある)、コジョカル&コボーの「チャイコフスキーパ・ド・ドゥ」(パートナーシップの勝利。コボーのアントルシャ・シスはさすがにブレノンヴィル・ダンサーだけあって美しい)、イニャキ&タマラの「三人姉妹」(タマラはやはり回転を売りにするよりこのようなドラマティックな演目が向いている)、そしてフェリ&テューズリーの「マノン」沼地のPDD(やっぱりフェリのマノンは最高。思わず涙が...)でした。ステパネンコ&メルクリエフのカルメンも、スタイリッシュで素敵。この辺は本当に楽しかったけど、それ以外は、う~む。ラストのドン・キのレティシア・オリヴェイラは、長~いバランスと、扇を効果的に使ったフェッテで、すごくがんばっていたと思うので及第点。

反対にいただけなかったのは、ギエム&ル・リッシュの「椿姫」3幕黒のPDD。ギエムは何を踊ってもギエムにしかならないのが良くわかったし、これっぽっちも伝わってくるものがなかった。同じ演目のハンブルク組は素晴らしかったのに。Aプロのギエムによる「TWO」は凄まじかったので、やっぱりギエムは今後はそっちの路線を進んでいったほうがいいのではと思った。ポリーナの黒鳥は良かったけど、フォーゲルってひょっとしてクラシックは苦手?かわいいから許すけど。

またそのうち詳しく書きます。おやすみなさい。

2006/08/08

バレエフェスでもらったチラシから

明日からバレエフェスのBプロですね。明日観に行く予定ですが、果たして6時に行けるのでしょうか。会社の定時が5時50分なので多分無理ですが。

さて、バレエフェスの会場でチラシをいろいろといただいて、重かったので捨てて帰ろうかとも思ったのですが結局持って帰り見て見たら、なかなか面白そうな公演が。

ラスタ・トーマスが来年2月24日(土)、25日(日)にNBAバレエ団の「バレエ・リュスの夕べ」に客演し、「薔薇の精」「ショピニアーナ」を踊るそうです。あと「ラ・カルナバル」「ポロヴィエツィアン・ダンス」(ダッタン人の踊り、ですね)も上演されるということで、これは絶対見なくちゃ、という公演です。チケットは9月1日発売。

神奈川県民ホールのお知らせを見ていたら、ナチョ・ドゥアトのスペイン国立ダンスカンパニーの公演日程が出ていました。2月3日(土)、4日(日)で時間は未定。ちょうどマールイの「バヤデルカ」とかぶっているので、一回ずつ行こうかと思っています。

あとNBSニュースには、来年のラインアップが。2007年11月にバーミンガム・ロイヤル・バレエが来日し、デヴィッド・ビントレーの「美女と野獣」と、ピーター・ライトの「コッペリア」が上演されるようです。ビントレーの美女と野獣はなんだかとてもゴシックな感じで超期待。ところで、「音楽の友」に書いてあった来年の東京バレエ団にポリーナ・セミオノワが客演する件は、作品は何なのか、とても気になります。

2006/08/07

小ネタいろいろ

バレエフェスシーズンたけなわですね。わたしもやっと今日バレエフェスのAプロに行って、存分に楽しんできました。昨日は服部有吉さんと首藤康之さんのHS06でした。服部さんが体調不良で一部のHomo Scienceを欠場、だったのですが今日は怪我で出演できなくなり、二部が中止となってしまったようですね。靭帯の怪我だそうで、とっても気がかりです。大きな怪我でなければいいのですが。二部の「ゴーシュ」はとても楽しくて可愛い作品。バレエフェスもHS06も後で感想を書きますが、なかなかまとまった時間も取れないので少しお待ちください。

代わりに小ネタを少々。

ボリショイのロンドン公演が開幕して大盛況のようです。ところで、なんと「ファラオの娘」の上演中に、サルの尻尾が取れてしまい、Alexander Pshenitsynさんのお尻が丸見えになってしまったそうです。東京では岩田さんのシングルキャストだったのですが、ほかの方も踊るんですね。
http://www.thesun.co.uk/article/0,,2-2006350760,00.html

ボリショイのロンドン公演の前には、キーロフ(マリインスキー)のロンドン公演があったのですが、いろいろとあったようです。最初はキーロフはコヴェントガーデンで上演されるはずだったのが、芸術監督のゲルギエフが、興行主が要求する「白鳥の湖」の上演を断り、オールショスタコーヴィッチプログラムを主張したため、コヴェントガーデンではキーロフは公演を行うことができず、代わりにボリショイが公演を行うことになったそうです。しかも、今回のショスタコーヴィッチプログラムは批評家受けもお客さんの入りもよくなかったようで。ショスタコーヴィッチの名曲「レニングラード(交響曲7番)に振付けて、ロパートキナが踊った「レニングラード・シンフォニー」はぜひ観たかったですけどね。

話し変わって、世界バレエフェスティバルは世界的に有名なようで、キューバの新聞でも、バレエフェスについての記事があり、キューバからはホセ・カレーニョ、そしてロメル・フロスタとヴィングセイ・ヴァルデス(この二人、本当にすごかったですね。世界びっくり人間でした)が参加するとあります。ところで、このバレエフェスについて、Tadatsugu Sasaki World Festival Balletって外国では呼ばれているんですね。。すごいなあ。ササチューさんには長生きしていただかないと。

元マリインスキー、現在はABTのソリスト、ヴェロニカ・パールトの公式サイトがオープンしました。写真多数、プロフィール、そしてマリインスキー時代の「ライモンダ」の動画が見られます。この人は本当に美人ですね。「マノン」には出演しなかったためMETの客席で何回か見かけましたが、女優顔負けの華やかさです。日本公演では不調でしたが、彼女のオデットは、表現力がとてもすばらしいとNYでは評判みたいで、プリンシパル昇格を期待する声も多いようです。スポンサー募集と書いてあるところが可愛い。

2006/08/02

マスネ「マノン」(バレエ音楽)

遅々として進んでいないのですが、現在未だに少しずつABTの「マノン」の感想を書きたしているとことです。とはいっても、もう1ヶ月以上経過してしまったので、シーンを思い出すために、「マノン」のマスネによる音楽を聞いて記憶を発掘しているところです。

ご存知の通り、バレエ「マノン」の音楽は、オペラの「マノン」の音楽とは異なっていて、マスネのさまざまな曲をつなぎ合わせたものです。かつてディアギレフのバレエ・リュスのダンサーであったレイトン・ルーカスが、マクミランが振付を行う際に、13ものマスネのオペラ、2つのオラトリオ、さらにはいくつかの曲から、マノンのキャラクターにふさわしいものを探してきたとのこと。その苦労の甲斐あってか。「マノン」の音楽はこの上なく甘美で、ドラマティックで、頭の中を幾度となくぐるぐると流れてしまうような印象的なものとなりました。特に有名なマノンのテーマとも言えるような曲はピアノ曲「エレジー」です。

いずれにしても、バレエ「マノン」のCDを探そうと思ってもなかなか見つけるのは大変。コヴェントガーデン・ロイヤル・オペラハウスのオーケストラによるこの「マノン」が決定盤。まさに、このバレエのために演奏された1枚となっている優れものです。2枚組。

それにしても、よくもまあ、このようにこのバレエにぴったりの音楽を探してきたものです>ルーカスさん。

Massenet: ManonMassenet: Manon
Jules Massenet Richard Bonynge

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2006/08/01

世界バレエフェスティバル「ドン・キホーテ」続き東京バレエ団編

そういうわけで、東京バレエ団編。

エスパーダの高岸さんは、前回のバレエフェスでもエスパーダ。でもこの人はバジルの方が似合うキャラクターだ。特に今回バジル役のホセ・カレーニョがノーブルだったから余計そう思えた。エスパーダってものすごくスカした、ええかっこしいな人だと思うんだけど高岸さんはちょっと3枚目過ぎたところも。でも、とにかくすごく張り切っていて頑張ってる姿は好ましい。プロポーション的にもゲストに決して見劣りしないところもいいしね。

メルセデスは大島由賀子さん。なかなかカッコよく踊っていて素敵だったと思うんだけど、彼女もいわゆるメルセデスのキャラクターとちょっと違う持ち味の人。大人の色っぽい女性、という部分が今回はタマラ・ロホにあったし。背も高いし華やかだしダイナミックに踊れるんだけど、どこか優しげなのだ。闘牛士たちが刺した剣の間をパドブレしながら進むところはもう少し丁寧だと良かったかもしれないが、背中もとても柔らかかったし、全体的には良かったと思う。

闘牛士たちは、東京バレエ団の誇る男子陣総出演で、いいメンバーをそろえているんだけど人数が多く、帽子をかぶっているので判別するのも大変だしとても追いきれない。もったいない~大嶋さん、中島周さん、高橋竜太さんあたりはやはり光っているので、すぐに目に付くけどね。でも、さすがに男性ダンサーが日本一充実している東京バレエ団なので、切れ味鋭くキメキメに跳んだりマント捌きをしているところは、とってもいかしていて、目の保養になった。

しかし今回やっぱり一番はガマーシュの古川さんでしょう!一瞬古川さんだとわからないバカ殿メイク。すっとぼけた演技は楽しいし、この版のガマーシュは踊りの見せ場も3幕に用意されているので、古川さん持ち前の跳躍力もばっちり発揮できる。一番すごかったのはカーテンコールで、なんとホセ・カレーニョとフェッテ合戦!脚裁きも美しく、回転も決して負けていなかったような気が。このヴァージョンは、ガマーシュもちゃんとお祝いの席に駆けつけるところがいいね。

もう一人素晴らしかったのは、ドリアードの女王の西村さん。優雅で美しくて丁寧で、女王らしいやわらかい気品があってとにかく素敵!ジュッテも本当に綺麗で、タマラ・ロホよりもよほど高く、アンディオールして跳んでいた。イタリアンフェッテはない振付なのだが、一つ一つの動きが大きい。テクニックがとても安定しているので、安心してみていられる。釘付けになるほどの素晴らしさだった。キューピッドの高村さんは、とっても軽やかで、跳躍力があって、可愛かったと思う。もう少しコケティッシュでも良かったと思うけど。子供キューピッドたちもなかなかレベルが高く、足音もしなくて、夢の場面らしかった。このプロダクションの夢のシーンは、バックも綺麗だし、衣装も素敵だし、照明も明るいから華やかさがあっていいと思う。

それと忘れてはならないのが、ジプシーの若い娘役の井脇さん。事前に彼女の日記を読んで、この役にこめられた気持ちや役の解釈を読んでいたが、それだけの深みを感じさせる演技だった。前回このプロダクションを観たときは吉岡美佳さんが演じていて、これも吉岡さんのイメージを裏切るような情念の女って感じだったのだけど、今回の井脇さんは、また全然違っていて、強烈だった。井脇さんの持っている強さが発揮されていて、悲しい運命を背負ってはいるしそれを呪っているところはあるけれども、生き抜いていく強さと意志は持ち合わせている。すべての観客を吸い寄せずに入られない磁力の持ち主だと思った。

キトリの友人役の小出さん。こういう可愛い役は本当に合っているし、愛らしいんだけどとても正確に踊ってくれているのが良い。長谷川さんはその分、ちょっと明るさが足りない感じかな。3幕ではグラン・パ・ド・ドゥの間にヴァリエーションを踊るから、かなり重責だけど、その任はしっかり果たしていた。

もちろん、ドン・キホーテ役の芝岡さんとサンチョ・パンサの飯田芸術監督も最高。サンチョ・パンサは思いっきりはじけていて楽しいし、かなり踊りまくり。ドン・キホーテは哀愁と気品がないとできない役だから、実のところかなり難しいのではないかな。芝岡さんはこのプロダクションには欠かせないね。おっとロレンツォの平野さんもいた。あんなに素敵で若い平野さんがキトリのパパ役だなんて。でもあちこちで楽しい小芝居を見せてくれたからいいや。

そんなこんなで、すみずみまでアンコが詰まったようなお得感と楽しさ。主役が誰であっても楽しめるプロダクションだ。コール・ドに至るまで全員が一丸となって盛り上げていって、スタートの共演を楽しんで作り上げていて、とってもいい舞台になったと思う。早くまた観たいな~。東京バレエ団の古典演目では一番好き。

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