ABT鑑賞の日々終了そしてフリオ・ボッカ
終わりました。明日の昼にNYを発って帰国します。
毎年、出発の時には今年がMET行き最後にしようと思うのですが、それでも終わったころにはまた来年も行きたいなと思ってしまいます。今回はジゼル3回にマノン6回。加えてNYCBを1回観て8日間に10公演観ました。昼間は美術館に行ったり現地在住の友人とご飯を食べたり、オープンクラスを受けたりと活動していたので、最終日の今日はさすがにぐったりでした。
それぞれの公演については帰国後書くとして、やはり白眉はフリオ・ボッカの引退公演の「マノン」。まだ全然ちゃんとした感想がかけません。ボッカの最後の嘆き顔が脳裏を離れません。音楽がぐるぐると頭の中を回っています。帰りの飛行機の中で考えます。最後の3回の公演を見られて幸せ、でも同時にぽっかりと穴が開いたような、大きな喪失感を抱えています。
6月22日の公演は、ただただ素晴しかったです。最後の力を振り絞った入魂の演技でした。そしてやはり、ボッカとフェリ、この二人にしか出せない魔法がありました。ボッカの動きってなんてきれいなんでしょう。そして、溢れ出る優しさ。捨てられた子犬のような目。背中で語る演技。やわらかく美しい、正確な動き。身体の動きで語る演技でした。フェリも視線の使い方が凄かったです。マノンという人物そのものでした。完璧でした。寝室のPDDでも、いつまでも拍手は鳴り止まず次のシーンまで続きました。客席には、綺羅星のようなプリンシパルたちが盛装して、それはそれは目の保養になりました。
最後は現役プリンシパルほぼ全員と、スーザン・ジャフィ、シリル・イエーガー、マーティン・ヴァン・ハメルなど過去のプリンシパルなども壇上に登場し、花火が光り花が降り注ぎました。フリオはマルセロ・ゴメスとデヴィッド・ホールバーグに担がれていました。アルゼンチン・ビールを飲み、客席から投げ入れられたアルゼンチンの旗をまとい、最後はアンダーウェア姿でカーテンコールに登場しました。満ち足りた素敵な表情で、感謝を気持ちを総立ちの観客に向けていました。終わってしまった。。。もちろん沼地では号泣だったけど、月曜日の方が大泣きしました。木曜は意外と落ち着いてみられました。おそらく木曜のほうが演技を抑えていたのではと思います。
一夜明けてまだ興奮冷めやらずぼーとしています。魂が抜けた状態です。ボッカの踊りがもう見られないかと思うと、死にたくなりそうです。しかもフェリにはもう、これ以上のパートナーは現れないかと思うと。フェリはアンヘルやテューズリー、ホセ・カレーニョ。マッシモ・ムッルとは踊っているけど、でもボッカとのパートナーシップを超えるものは絶対に無いでしょう。この二人のパートナーシップを越えるものが今後出てくるのでしょうか。
バレエにハマるきっかけを与えてくれたのが、99年のABTの来日公演でのボッカ&フェリの「ロミオとジュリエット」でした。今は、ただただ、本当にありがとう、ボッカ。あなたに会えてよかった。ゆっくり休んで、大好きなビール飲んでね。
そして今回のNY行きをサポートしてくださった友達のみんなには、心からのありがとうを言わせてくださいね。
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コメント
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naomi さん、ジゼルもマノンもわざわざ現地からのご報告をありがとうございました。ジゼルの評でさえPCの前ですすり泣きしてしまいました。この後、naomi さんが帰国なさってマノンの鑑賞記なんぞを読んだ日には私も号泣してしまうかも。私はボッカの引退公演を見に行けなくて残念でしたが、精神的に弱っちい私が生で見たりしたら錯乱してしまって無事に帰国できなかったかもしれません。naomi さんは現地で充実した毎日を過ごされたようで本当に良かったですね。そしてその感動を部分的ではありますが共有できて感謝です。帰国されたらこちらのブログを読むのがさらに楽しみです。
投稿: Tomokovsky | 2006/06/24 15:37
Tomokovskyさん、
そういうわけで帰国しました。1週間家を空けている間に家人が家の中を大変な状態にしてしまって、掃除に追われて何も書けなくてすみません。
私も、コレで最後だと思ってみていると、なんだか浮き足立っていて、ボッカ以外の人の演技がちゃんと見られたかどうか大いに疑問です。大好きなエルマン君のレスコーはばっちりでしたが。
本人がとても満ち足りた表情でカーテンの中に消えていったのが何よりでした。実は月曜日に脚をいためて木曜日は踊れないという情報まであったので、カーテンが上がるまで気が気でなかったのですが...
またおいおい書いていきますね。
投稿: naomi | 2006/06/26 02:32
naomiさん
無事に帰られたんですね。お疲れ様です。
私が忙しかったばっかりにちょこっとしかお会いできませんでしたが、お話できて楽しかったです。またいらっしゃる時には教えてくださいね~。
私もなんだか、あれから3日目にしてまだ気が付いたらマノンの音楽がぐるぐる頭の中をめぐっている状態です。昨日まではまだ胸が一杯になっていましたが、今日くらいから、もうあれを見ることはないんだという喪失感みたいなのがふつふつと湧き上がってきてちょっと悲しいです。。。
投稿: Pon | 2006/06/26 08:15
naomi さま、お帰りなさいませ♪
ボッカ以外の人をちゃんと見られなかったというお気持ち、よくわかります。私自身、去年のABT来日公演がおそらくボッカの全幕ものを見るのは自分にとって最後になるだろうと思っていたので、最後のドン・キはもちろんですが、ライモンダでさえ彼がアブデラフマンを演じたときは、主役の二人はほとんどそっちのけでしたもの。
ボッカとフェリのパートナーシップはバレエ史上語り継がれるペアになりますよね、きっと。この幕の引き方は本当に彼らしいし、どこまでも美しい人なのですね、ボッカは。私も彼のファンでいられたことを誇りにさえ思えます。
投稿: Tomokovsky | 2006/06/26 11:14
Ponさん、
現地では大変お世話になりました!お会いできて楽しかったです。今いただいたチョコレートを食べています。最後のフリオの思い出を共有できて本当に良かったです。
マノンの音楽は今でも頭の中をぐるぐるです。2幕のサロンでのマノンのソロの音楽、沼地の音楽、いろいろな音楽が日替わりでやってきます。
もう二度と見られないと思うと、心にぽっかり穴があいた気持ちになりますね。来年のブエノスアイレスでの最終引退公演に行きたい、なんて大それたことまで考えてしまいます。
Tomokovskyさん、
そうそう、たしかに去年の「ライモンダ」と「ドン・キ」はボッカばかりが目に入ってしまって困りました。特にライモンダは、主役の二人のみならず他の二人のアブデラーマンの印象までも吹き飛んでしまうほどの、熱くて濃い存在感でしたね。あの最後の熱い視線が胸を離れません。
本当に、彼のファンであったことを誇りに思いますね。ダンサーとして最高のクオリティを保ったままの幕引きでしたから...
投稿: naomi | 2006/06/27 01:32
naomiさん
おかえりなさい。
ボッカのニューヨークでの引退公演はとても感動された様子でなによりです。
ゆっくり休んでから幸せのお裾分けをして下さいませね。
フェリは怪我をしたのでもう「ジゼル」は踊らないんですって!バレエフェスも今回限りでお名残に「マノン」「ロミ・ジュリ」を選んだそうです。
投稿: 史緒 | 2006/06/27 19:19
naomiさん、お帰りなさいませ。
ボッカの最後の公演見られて良かったですね。自分の好きなダンサーの最後の公演を見られるなんて感慨深いことと思います。
上の写真、とってもいい写真ですね。たくさんの人たちに見送られてボッカも幸せだったと思います。まだ余力がある時に自分の好きなことをやめるのって勇気がいることでしょうね。
レポ、ゆっくりお待ちしています♪
投稿: プリマローズ | 2006/06/27 19:45
史緒さん、
私も今日ダンマガのインタビューでフェリがジゼルをもう踊れないというのを読みました。去年のMETシーズン前に怪我をしてキャンセルしたんですよね。少しでも長い間踊ってもらえるためには、役柄を限定していくのも仕方ないと思いますが。
今回、マノンは他にジュリー・ケント、シオマラ・レイエス、ヴィシニョーワを観たのですがやっぱり、マノンはフェリを置いて他はないと思った次第です。
あの天子のように無垢でありながら魔性を併せ持つマノンのキャラクターは本当に演じるのが難しいと思いました。
バレエフェスも、今回最後になりそうな人が多くて、寂しいですね。私は幸運にもガラは当たりました。
プリマローズさん、
いやはや客席にいたダンサーの皆さんも一生懸命シャッターを押していましたよ。
そうそう、プリマローズさんの好きなアンヘルもセレモニーでフリオとハグしていました。
アンヘルのデ・グリューも良かったですよ。良家のお坊ちゃまが転落していくという感じだし、エモーショナルな演技で。
投稿: naomi | 2006/06/27 23:52
naomiさーん、Geneさんのサイトでボッカのジゼルやマノンの写真がアップされてます~。
バレエシューズを置いていく写真見るとグッときちゃいますね。
アンヘルのハグ写真はPonさんのところに載ってる写真ですね。アンヘルのデ・グリューもnaomiさんに誉めて頂ける出来だったようでうれしいです。正直、マノンはアンヘルにはどうなのかな?大丈夫なのかぁ?って思ってたので(笑)
投稿: プリマローズ | 2006/06/29 23:24
アンヘルのデ・グリューはなかなか良かったですよ。アンヘルはこういう役柄だと(ジゼルもそうだけど)可愛すぎる顔で損しちゃうんですよね。なんといっても、シオマラとのコンビネーションがよいんです。二人の間にはケミストリーがあるんですよね。10年くらい経ったら、フリオ&フェリくらいの名コンビになるかもしれません(シオマラって可愛らしいけど実はもう33,4歳くらいなんですよね)
特に最後の嘆きの表情は良かったです。ヴィシニョーワとのジゼルは、すげーヴィシに気を使っているのがわかりました。でもリフトが上手でしたね。
Geneさんのフリオ写真情報、ありがとうございます。ブログ本文の方にも載せておきます。
投稿: naomi | 2006/06/30 02:23