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« 行って来ます | トップページ | ABT鑑賞の日々終了そしてフリオ・ボッカ »

2006/06/17

6/16ABT「ジゼル」シオマラ・レイエス、フリオ・ボッカ、ジリアン・マーフィ

今回のABT祭り第一弾はシオマラ・レイエス&フリオ・ボッカの「ジゼル」。なぜ金曜日からNYに行くことにしたかってそれはボッカの最後のアルブレヒトを観るためである。

さすがにボッカ最後のアルブレヒトということで大盛況だ。隣に座っているおじいさんが話しかけてきたので色々と話す。彼はそうとうABTに通っているらしい。夜8時からの公演と遅いのに子供が多く、立ち上がったりしゃべったりとかなり躾が悪い。

時差ぼけも治っていない状態で、「ジゼル」なんか見たら寝てしまうんじゃないかと不安だったけど、それは杞憂だった。すばらしいステージを見ることが出来て大満足。1幕のジゼルの死で泣いて、ラストではもうどうなっちゃうんじゃないかしらと号泣。もう彼が見られなくなるという現実に耐えられなくなりそうになる。

シオマラ・レイエスの1幕のジゼルはとてもかわいらしい。身長160センチもないほど小柄で童顔、純情で素朴な村娘にぴったり。アルブレヒトと一緒にいるのが幸せで幸せで仕方ない。反面、テクニックは強靭である。ソロの片足ポアントでもう片方の足はアティチュードにして前に跳ねるように進むところはびくともしない安定感だし、ピケヤシェネなど回転も非常に正確で美しい。踊ることが大好きな快活で明るい娘なだけに、そんな彼女が正気を失って死んでしまうのがかわいそうで仕方ない。ただし、発狂シーンは好き嫌いが分かれるかもしれない。それまでの可愛くて純朴なジゼルが一転して髪を振り乱し非常に険しい表情を見せてしまうから、ショッキングであった。こんな顔をするジゼルは見たことが無い。

そしてボッカのアルブレヒト。濃い演技には定評のある彼だけど、今回もそれが健在。最初からとても熱いアルブレヒトだった。恋敵ヒラリオンのゲンナディ・サヴリエフも濃い演技だけに、感情のぶつかり合いは激しかった。こんなにジゼルに対してラブラブ光線出しまくりのアルブレヒトというのも珍しいのではないか?とっても優しくて包容力はあって、でも熱いハートの持ち主。

それだけに、ヒラリオンが彼の正体を明かし、婚約者のバチルドが登場し、反射的に彼女の手にキスをしてしまってジゼルが発狂したときの彼の反応には、胸がつぶれる思いがした。なんということをしてしまったのだろう、悪いのは自分だ、自分だけを責めてくれと、ジゼルの苦しみそして村人たちの憎しみを黙々と一身に背負っているように見えた。そしてジゼルの姿はとても直視できない。そんなことをする資格は自分には無いと。彼女の死にはひどく動転し、悲しみのまま彼まで死んでしまうのではないかとすら伺えた。ウィルフリードにマントを渡されるとすごいスピードで走り去っていく。涙が出たのは、ジゼルが、というよりアルブレヒトが哀れでどうしようもなかったから。

ゲンナディ・サヴリエフのヒラリオンも熱い男だ。問題があるとしたら、ヒラリオンのくせに男前でかっこ良すぎることだけかもしれない。衣装も結構貴族っぽいし(森番であれは無いだろう)。彼もアルブレヒト同様、ジゼルに夢中で熱い思いを臆面もなく出している。だから、玄関の前に置いた花束がそのままになっているのを見て思いっきり落胆するのだけど、でもめげない。アルブレヒトの正体を明かしたのもただただ彼女を手に入れたいだけという激しい恋心からであり、証拠の剣を見せるときも非常に荒々しい。その剣を手にアルブレヒトが襲い掛かるときは、殺せるものなら殺してみろ、と堂々としていて男らしい。1幕で踊るシーンが無いのがもったいないのだが、その分2幕で力量を発揮してくれる。

1幕の最初にいきなり本物の犬が二匹登場したのには驚いた!子供のエキストラあり。
ペザント・パ・ド・ドゥはサシャ・ラデツキーとマリア・リチェット。サシャはへたれだと思っていたら意外と良かった(=テクニックがしっかりしていた)のに驚いた。

2幕は、ジゼルの粗末な墓(木の枝でできた十字架のみ)をヒラリオンが立てるところから始まる。ヒラリオンは本当にジゼルを愛していたんだ、と思わせる演出。
ミルタはジリアン・マーフィ。とても威厳があって怖そうな女王。大柄なんだけどジェッテは精霊らしく軽やかだしアームスもやわらかい。大勢のウィリたちの間にいても、一目でリーダーだとわかる風格、誇り高さ、冷酷さがある。ドゥ・ウィリはさすがにソリストのアンナ・リセイカのほうが良かった。ABTのコール・ドは揃っていないことで定評があるが、やっぱり揃っていなかった。でも、足音などはほとんどしないし、揃っていないという前提の元で見れば、許せる範囲。
ミルタは花嫁のようなヴェールをかぶって登場する。ジリアンの美しいパ・ド・ブレとあいまって、この登場シーンの美しいことといったら。ウィリたちも最初の数人はヴェールをかぶって出てくる。花嫁になる前に死んでしまった彼女たちの思いが感じられる。

マントをつけて、貴族らしい装いのアルブレヒトがやってくる。1幕のボッカはあまり貴族には見えなかったけど、ここではさすがにノーブルだ。ジゼルの墓に百合の花を捧げたアルブレヒトのマントは、ウィルフリードが持って走り去る。

ゲンナディのヒラリオンは1幕ではほとんど踊るシーンがない分、ここでは凄かった。死に至るまで踊らせられるときのピルエットやシェネが超高速かつぶれが無くて美しい。ジュッテも高いし、命乞いは必死だ。いい男がこんなに一生懸命助けてくれと叫んでいるんだから助けてやれよ、と思うんだけどミルタは冷淡にも「死ね」。ゲンナディのようは上手で男前な人には、いずれアルブレヒトも踊ってもらいたいと思う。ヒラリオンではもったいない。

1幕のボッカももちろん良かったけど、ダンサーとして、そして演技者としての彼の圧倒的な素晴らしさは2幕に出ていた。キャリアの頂点で引退したいと彼は語っていたが、まさに今がその頂点なのだろう。とても熱い演技を見せる彼ではあるが、決して過剰になることもなく、その熱さが彼のアルブレヒト像からすると非常に自然なのである。彼の前に、ウィリとなったジゼルが現れる。彼に近づいてくるが、霊なので実態があるようでない。でも、彼は今通ったジゼルの感覚を指で感じ、すり抜けていく彼女を感じ、今触れたものはジゼルだったのか、と自問自答し、やっぱり確かにジゼルはいたと確認する。そして最後まで彼女を追い求め、感じ、自分の罪深さにおののきながら、許しを求める資格はないと思いつつも許しを請う。その愛の深さには、胸を深く揺さぶられた。苦しさのあまり胸を押さえる演技もわざとらしさは一切なく本当に胸が痛いように見える。

一方、踊り手としても、彼はすさまじい熱演を見せた。これが39歳の、一週間後には引退してしまうダンサーの踊りなのだろうか?ピルエットは最低5回は回っているしそれにさらに回転を付け加えていて美しい。空に突き刺さるようなジュテ・アントルラッセは高い。ミルタやウィリたちに無理やり踊らされているところは、本当に自分の意思に反して、何者かの凄まじい力で操られて死ぬまで踊らされていると思えるほどだ。踊らされた挙句に倒れこむところも、着地の形をキレイに整えようとした手加減、というのが一切見えず激しく落下し一瞬本当に死んでしまったかと思えた。

ボッカの凄絶な演技の前ではさすがに少しかすんで見えたシオマラのジゼルだが、彼女のジゼルも素晴らしかった。ウィリたちの前に立つと彼女がひときわ小柄なのがわかる。そんな小さな彼女が、圧倒的な強さを持っていて凄く怖いミルタにアルブレヒトを助けてと懇願するから、そのけなげさが伝わってきて切ない。その思いだけが生き残っているという感じで、それ以外のジゼルはすっかり霊となっていて、空気のように軽く浮遊感があって儚い。墓から呼び出されてミルタによって回転させられるところは完全に目を閉じていて、霊としての目覚めを象徴させているがとても早く回っているし、テクニックの強靭さは随所に発揮されている。パッセを速いスピードで繰り返す足先もとても正確だけど、上半身はその大変さを微塵も感じさせずに柔らかく美しく保ち、溶けてしまいそうで、人ならざるものであり続けている。

ジゼルが墓の中に消えていくところは、またとない強烈な印象を残した。最後に腕だけを残し、「わたしは永遠にあなたのもの」という人差し指と中指を伸ばした腕の先でくっつけるマイムを見せると、アルブレヒトも同じしぐさを返す。ジゼルの指先から百合の花を受け取ると、しばらく地面の上でそれを触り、次に何か別のものを足元で触っていた。席が前方過ぎてわかりづらかったのだけど、ボッカはバレエシューズを脱いでジゼルの墓の下に並べたのである。(カーテンコールのときに隣のおじいさんが、彼流のさよならの告げ方なんだよ、と言ってい)。タイツの足先で上手のほうに歩き去っていくフリオは、どこか晴れ晴れとした表情をしていた。これで彼のアルブレヒトは永遠に封印されることとなったが、歴史的な名演といってもいいほど。こんなに素晴らしいものを見せてくれて、本当に有難う。これが見られて幸せだった。私はジゼルと言う作品自体、実はそれほど好きではないが、これは永遠に胸の中に生き続けると思った。

カーテンコールはいつまでも続き、花があちこちからシャワーのように投げられた。本当にフリオのファンでいてよかった。彼の舞台も後2回...。

Giselle: Xiomara Reyes
Albrecht: Julio Bocca
Hilarion: Gennadi Saveliev
Wilfried: Carlos Lopez
Bathilde: Jennifer Alexander
Peasant Pas de Duex: Maria Richetto, Sascha Radetsky
Myrta: Gillian Murphy
Moyna: Anna Liceica
Zulma: Kristi Boone

追記:写真家Gene Schiavoneさんのサイトに、フリオ・ボッカが脱いだバレエシューズをジゼルのお墓に供える写真がアップされています。(プリマローズさん、情報ありがとうございます)
http://www.geneschiavone.com/gallery/Principal-Dancers

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コメント

naomiさま、素敵なレポートありがとうございます。大好きなボッカのすばらしい舞台を見られて大感動!できてよかったですね~。できるものなら私も見たかったです・・・。シオマラちゃんのジゼルもかわいいだろうなあ。ジゼルには小柄な少女のイメージがあるわ。

ururu-san

Thank you for your comment. I cannot write Japanese here, so sorry for English.
Xiomara's Giselle was so cute. I would like to see her in Japan again.

Tomorrow is Bocca's Manon. I can't wait!

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