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2006/05/15

5/4ソワレ ボリショイ・バレエ「ラ・バヤデール」(その1)

ボリショイの「バヤデルカ」こと「ラ・バヤデール」は中身がぎっしり詰まった重厚なバレエで、素晴らしく充実しているんだけどマチネを見ただけで相当お腹いっぱいになっていた。しかし、夜公演はさらにパワーアップしていて、これぞ古典クラシックバレエ、という至宝を見せてもらった幸せを感じた。

なんといっても、ニキヤを踊ったナデジダ・グラチョーワの存在感に尽きる。グラチョーワのニキヤは、オペラグラスで見るとおでこにくっきりと皺が刻まれていて、決して若くはない。しかし登場したところから、只者ではない気配を漂わせている。神聖なる舞姫であり、ただの踊り子ではなく神に愛され、人々の尊敬を集めている巫女。一点の曇りもない信念を持っていて、それゆえ神々しく輝いている。だからこそ、彼女を裏切ったソロルは死ぬしかなかったというわけだ。しかし、それと同時に、この上なく”女”でもある。彼女の恋人であるソロルが、ほっそりとしていて若く優しげなネポロジニー。人生の酸いも甘いも知り尽くした年上の女が、優しく包むようにソロルを愛してるのである。

登場してヴェールを外し、奴隷たちに持ち上げられて踊るときにはたおやかで神々しいのだが、周囲の人たちが姿を消し、ソロルが現れると、急に少女のようにぱっと表情が華やぎ彼に甘える。二人のパ・ド・ドゥは幸福感があふれていてとても素敵だ。

大僧正に迫られたときの拒絶の仕方が非常に芸が細かかった。今回の大僧正の方はかなりエロ坊主という感じなのだが、「ご冗談はいけませんわ、あなたほどの方が」と最初は軽くあしらっていたのが、次第に、「私は神に仕える身だからそんなことは許されません」と困惑し、大僧正が自分の身分を捨て、財宝も与えるからとしつこく迫ってきたときには「お願いですからやめてください」と強くきっぱりと拒絶する。(5日のザハロワなどは、もう最初から「あたしのほうがえらいのよ、近寄らないでよキモいエロジジイ」って感じでちょっと笑ってしまった)なんだか会社のお局OLに迫っているセクハラ親父って感じだったからね、大僧正が。

ソロルのネポロジニーは、端正だし背が高く脚も美しいが、勇ましい戦士というよりは育ちの良いお坊ちゃまで少しほややーんとしているので、思わずガムザッティの美しさにころっと参って婚約をオッケーしてしまったという間抜けさ加減が納得できる感じ。テクニック的には、サポートが上手だし綺麗に踊れて優れたダンサーである。派手さはないので、個性派揃いのボリショイの中では埋没しがちかもしれないけど。

1幕のハイライトであるガムザッティとニキヤのいさかい。ガムザッティを踊ったアレクサンドロワもとても強いダンサーであり、王の娘という育ちのよさと気位の高さが感じられる。ガムザッティが腕輪を与えようとしたときには、あくまでも大人の余裕でニキヤは「そんなものはいただけませんわ」と品よくお断り。ガムザッティがあたしは実はソロルと婚約しているのよ、別れて頂戴、と言っても最初のうちは動転する様子は見せず、散々ガムザッティに強気に出られた挙句にようやく逆上して、自分の中の恋する女の部分が目を覚まし、追い詰められた気持ちになってナイフを向ける。アレクサンドロワが非常にテクニックの強靭なダンサーで、ジュッテも男性顔負けの高い跳躍であるが、グラチョーワも決して負けていないところがすごい。ナイフを片手にジュッテしてガムザッティに襲い掛かる。アレクサンドロワは堂々と、「あたしを刺せるなら刺してみなさいよ」と身を投げ出し、ようやくニキヤは振り上げた腕を女奴隷に止められるのであった。
ニキヤが去った後で、高貴な娘らしく堂々としていて品の良かったガムザッティが、マイムで明確に「殺してやる」と演技をしていたのが印象的であった。ここでのアレクサンドロワは、かなり怖かった。

2幕
婚約式での入場シーンが非常に華やかである。輿に乗ったソロルとガムザッティは、揃いの薄紫色の衣装。ネポロジニーのソロルの衣装は、フィーリンのとは少々デザインが違っていて、ボレロみたいなのを前で結んでいるので、胸の部分は多少露出していた。生きの良いキャラクターダンスがここでも繰り広げられる。ブロンズ・アイドルは岩田守弘さん。かなり小柄な人ではあるが、跳躍力があり
、なんといっても、上半身が美しくアプロンになっていて安定してる。跳んでいる最中でも腕を美しく仏像らしく広げていて、とてもありがたい感じだ。子供たちの踊りはかなり邪魔な感じ。

ガムザッティとソロルのPDD。ネポロジニーはかなり長身のダンサーで跳躍力もあるのだけど、アレクサンドロワも彼に負けないくらい高いジュッテを見せてくれている。イタリアン・フェッテでは床に突き刺されてびくともしないようなポアントとまっすぐに高く鋭く上げられた脚、強靭なテクニックを披露して、まさに独壇場であった。彼女なら、たとえソロルを失っても君主として立派に国を治められるのではないかと思わせるような堂々っぷりである。

そこへ踊りを奉納しにきたニキヤ。物悲しい音楽に乗って登場。黒いヴェールをまとっていて地味な感じであるが、立っているだけで、全身から涙を流しているようである。
背中を大きく反らせ、すがるような目つきで貴賓席のソロルを見る。残念ながら、この回は1階センターブロックの中央部分という良い席であるにもかかわらず全くといっていいほど貴賓席の様子をうかがうことができなかった。ガムザッティが父ラジャにかなり甘えているのがわかったくらい。それはさておき、ここでのニキヤはどうしようもなく”女”になっていた。これは奉納の踊りであるからして、神に捧げるものでストイックに踊らなければならないのに、自分の女としての感情が流れ落ちてしまっているのを必死に抑えている様子がうかがえて、見ているほうも心が痛い。

(つづく)

ニキヤ(バヤデール): ナデジダ・グラチョーワ
ドゥグマンダ(ラジャ): アレクセイ・ロパレヴィッチ
ガムザッティ(ラジャの娘): マリーヤ・アレクサンドロワ
ソロル(名高い戦士): ウラジーミル・ネポロージニー
大僧正: アンドレイ・スィトニコフ
トロラグワ(戦士): ヴィタリー・ミハイロフ
奴隷: キリール・ニキーチン
マグダヴェーヤ(苦行僧): ヤン・ゴドフスキー
アイヤ(奴隷): エウゲニア・ヴォロチコワ
ジャンペ: ジュ・ユン・ペ/スヴェトラーナ・グニェドワ 
スヴェトラーナ・パヴロワ/アナスタシア・スタシケーヴィッチ/アナスタシア・クルコワ/ユリア・ルンキナ
パ・ダクシオン(第2幕): ユリア・グレベンシュチコワ/オリガ・ステブレツォワ/ ネリ・コバヒゼ/ヴィクトリア・オシポワ/パーヴェル・ドミトリチェンコ/エゴール・クロムシン
太鼓の踊り: アナスタシア・ヤツェンコ/ヴィタリー・ビクティミロフ/アンドレイ・ボロディン
黄金の仏像の踊り: 岩田守弘
マヌー(壷の踊り): アンナ・レベツカヤ
影の王国(第3幕)
 第1ヴァリエーション: エカテリーナ・クリサノワ
 第2ヴァリエーション: ナターリヤ・オシポワ
 第3ヴァリエーション: アンナ・ニクーリナ

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