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« 栗山千明の爽健美茶CMってどうよ | トップページ | 5/20 新国立劇場バレエ団「こうもり」(まだ途中) »

2006/05/21

5/4ソワレ ボリショイ・バレエ「ラ・バヤデール」(続き)

苦行僧マグダヴェーヤより「ソロルからの贈り物です」と花かごを渡されたニキヤは、再び舞姫としての矜持を思い出して踊り始める。音楽のテンポが速くなって、脚は細かいパを溌剌と刻むけれども、それでも言葉にならないような悲しい気持ちで精一杯ソロルへの愛を謳いあげる。身を引き裂かれそうな思いをしながらも、自分の仕事である踊ることはしっかりとやり遂げなければならないという悲壮な覚悟が見える。

かごを床に置いて、花を一つ一つ取り出しては投げると、首に毒蛇が噛み付いた。そのときの演技も決してオーバーではなく、本当に毒が回って苦しんでいるかのようだ。驚いたソロルは貴賓席から立ち上がるが、思わず目を背けてしまう。「あなたがやったのね」と指を指されたガムザッティは、今までの強気が部分が影を潜め、「私じゃないわ、私は知らない」と明らかに動揺し、去ってしまう。実のところ、彼女は悪い人ってわけではなく、その圧倒的な威厳を持ってしても周りの人々に翻弄されている存在なのだ。
大僧正が解毒剤をニキヤに渡すが、駆け寄ろうとしないで顔を背けているソロルの姿を確かめると、「もう生きていても仕方ないわ」と薬の瓶を落として倒れ、命の灯を消す。倒れ方ひとつとっても、毒がまわったのと絶望のあまり、事切れてしまったというところが自然に表現されているのがすごい。体の動きだけで見事な演技をしているのだ。ニキヤが倒れた瞬間、ようやく彼女のところに駆け寄るソロルだが、すでに時遅し。罪の意識に動揺してそのまま走り去ってしまう。ネポロジニーも演技が自然といえば自然なのだけど、やっぱりここでも薄味。

3幕
2幕のグラチョーワも素晴らしかったけれども、ここでの彼女は<神>と言ってもいい。これほどまでに素晴らしいバレエを見せてくれて神様ありがとう、と感謝したくなるほどだった。

今までは舞姫の中に女性らしい情念をにじませていたニキヤだが、ここではソロルの脳裏に浮かぶ幻影であり、そしてこの世のものではない精霊となってしまったので、感情表現は基本的には行わない役柄である。しかし、彼女の踊りの中には、この世から消えてしまってもなお残る想いというのが、柔らかく夜の闇に溶けてしまうそうな動きにこめられていた。ソロルの行ってしまった過ちに対して、優しく「いいのよ」と語っているような。死を経て、生の生々しさが浄化された、純粋な愛だけが残っている。これ見よがしなテクニックは一切見せないグラチョーワだが、ヴェールを持った踊りでは、ポアントのアラベスクで驚異的に長いバランスを見せ、水を打ったように観客がその一点に注目する様子から、一転大きな拍手が起きた。ヴェールを持ってアラベスクのまま3回転し、今度は反対側から回転するところなどもとても丁寧で美しく正確だった。(最後だけ少しミスしたけどミスのうちには入らない。完璧に踊っている人を見たことがないくらい難しい振付)これは、サポートをしているネポロジニーのうまさにも支えられている。ラストのすばやし綺麗なピケターンを見せながら下手に去っていくところも、心だけはソロルに残していったような、表情での演技は一切していないのにとても切ない余韻を残していった。

ネポロジニーは3幕で華麗なテクニックを存分に見せてくれた。他のヴァージョンでは2幕の婚約式で踊られるソロでは、切り裂くようなカブリオールやグラン・テカール、ジュッテ・アントラッセ。非常に長身だがほっそりとしていて(脚がとても綺麗な人なのだがソロルの衣装ではそれがわからないのが残念)、体重をまったく感じさせない、ふわっと浮いているような跳躍ができるのが素晴らしい。サポートも上手。ついでに驚異的に顔が小さいし優しげなハンサムなのである。当初予定されていたウヴァーロフに雰囲気が似ているのがちょっと損な感じだけど、ちょっと優男すぎるのが、年上の女性に愛される優柔不断なソロルには合っている。
コーダのヴァリエーションもすごかった。5回のトゥール・ザン・レールは正確だし、長い足を広げてのグラン・テカールもばっちり決まる。

影の王国はマチネに引き続き完璧だったし、3人のヴァリエーションも見事。第2ヴァリエーションのナタリア・オシポワは今日も元気いっぱいに飛び跳ねていた。

ニキヤや精霊たちが消えてしまってからも彼女の姿を追い求めるソロルが神殿に入ると、神の怒りで神殿は崩壊する。美しいトール・ザン・レールを見せながら階段に倒れこむソロル。その脳裏に浮かぶ一人の白い精霊の姿。ニキヤのことを想いながら、あの世で彼女に会えると思って幸せに死んでいったのだろうか。

本当に圧倒的に素晴らしい入魂の舞台を見せていただいた。これぞ本物のバレエ。新しいもの、派手なものは何もないけれども、グラチョーワをはじめダンサーたちが心をこめて素晴らしい舞台を見せてくれたことに心から感謝したい。カーテンコールのグラチョーワは、心はニキヤのままで手を合わせるようにレベランスをした。そしてポアントの美しい立ち姿でたたずんでいた。カーテンコールはやむことがなく、多くの観客がスタンディングオベーション。グラチョーワの目には涙が光っていた。本当にありがとう!

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

 naomiさま、こんばんは。拙ブログへのTBありがとうございました。私もnaomiさんの記事を読ませていただきました。以前、ご自身は公演の感想をアップするのが遅い…という旨のことを書いていらっしゃいましたが、生意気承知で言わせていただければ、新聞記者じゃあるまいし早けりゃいいというものでもないと思います。naomiさんの感想や舞台評はきちんと時間をかけて細部の表現に至るまで練っていらっしゃる様子がうかがえます。今回の『ラ・バヤデール』も、同感というだけでなく、「あの舞台の様子をこういう言葉で再現できるとは!」と感嘆しながら拝読しました。
 ところで(今さらですが^^;)体調は回復されましたか。来月は万全の体調でNYにいらしてくださいませ。

Tomokovskyさんこんばんは。

Tomokovskyさんはいつも充実した、細かいところまで良く観ている感想を書かれていて、読むと鮮やかに舞台が蘇ってきますね。勝手にトラバしちゃってすみません。こうもりも楽しみにしていますよ~
体調はおかげさまで回復しました。NY楽しみです!まだチケットはボッカの引退公演を含め2枚しか買っていません。円高がもう少し進んでくれるように祈っています。

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