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« デヴィッド・ホールバーグ、ABTのプリンシパルに | トップページ | 5/4 ボリショイ・バレエ「ラ・バヤデール」キャラクターダンスについて »

2006/05/07

5/4マチネ ボリショイ・バレエ「ラ・バヤデール」(その1)

待ちに待ったボリショイ祭り。しかし、ここにいたるまでの度重なるキャスト変更で、一体私の見るキャストは誰と誰だっけ?という事態になってしまっていた。今日も、今日のマチネはフィーリンのほかは誰が出るのかしら?と会場に到着するまでよくわかっていないような状態。とほほ。

ガリーナ・ステパネンコの降板で、ニキヤがアラシュに。ニキヤ、ガムザッティともプリンシパルではなくリーディング・ソリストが踊るというキャスティングでちょっと地味な印象があった。

しかし、アラシュも、ガムザッティを踊ったシプリナも、技術的、プロポーション的には申し分がなく、実力からいえば他のカンパニーでは完全にプリンシパル級といっていいと思った。

(1幕の主役3人について)
まずアラシュのニキヤ。1幕ではメイクで少し肌の色を濃くしていたように見えた。目の大きな彼女は、そのメイクのために余計エキゾチックな感じに見えて、インドの舞姫という印象。とても苦労人で幸薄い感じの、身分の低い踊り子が初めて本当の恋に出会って燃えるような思いに身を捧げている風だった。いつも口が半開きなのがやや興ざめではあったけど、よく締まった肢体が美しかった。

一方シプリナのガムザッティ。プロフィールの写真はとてもかわいらしい金髪美人なのだけど、ここでは、愛らしい容姿の下に潜む人格が現れ、高飛車で冷たいお嬢様という感じ。今回はシプリナ、アレクサンドロワ、アラシュと3人のガムザッティを見たけど、シプリナが一番クールビューティで高慢ちき、かつ湿度が高い女性という役作りだった。

1幕のクライマックスは、もちろん、ニキヤとガムザッティの女の戦い。ニキヤを呼びつけ、腕輪をプレゼントしようとして拒絶され、びっくりするガムザッティ。「わたくしの思い通りにならないなんて踊り子風情が何さ」と、ソロルの肖像画を勝ち誇ったようにニキヤに見せつけたところ、彼女の強い恋心を目の当たりにして、うろたえるガムザッティ。しかもナイフまで向けられて。ナイフを振りかざすときの本気度が一番高いのは、アラシュだったと思う。そして一番ナイフを怖がっていたのがシプリナだった。グリゴローヴィッチ版の「ラ・バヤデール」はマイム少なめで踊るシーンが多いのだけど、女同士の戦いをスピーディなジュッテ合戦で表現したのがカッコいい。同時に反対方向からマネージュするようにジュッテを二人が見せるのだが、高さがそろっているし二人とも股関節がやわらかく脚が高く上がるので見ていて気持ちよかった。
女奴隷に取り押さえられたニキヤが走り去った後、ニキヤを絶対に亡き者にしてやるわと堅く誓うガムザッテイ。ここの決然とした表情も、氷のようなシプリナが一番怖かったと思う。

そんな二人を迎え撃つのがフィーリンのソロル。そう、この回のチケットはフィーリン目当てで取ったのだ。「ジゼル」のアルブレヒトも素敵だったし、「マラーホフの贈り物」でのノーブルでクラシックな存在感は、正統派の魅力を実感させてくれた。
しかし、残念ながらこの回はやや精彩に欠けていた気がした。フィーリンというダンサーは、ソロルという役にはうってつけだと思われる。勇敢な戦士にも見える男性的な部分と、二人の女性にはさまれて苦悩するロマンティックな面の両方の要素を併せ持つからだ。しかし、これがどっちつかず、という欠点に今回はつながってしまった気がしたのだ。そしてそこが一番出てしまったのが、2幕の婚約式である。

(2幕の主役3人について)
で、この婚約式についてだが、ひとつ声を大にして文句をいいたい。今回のボリショイの「ラ・バヤデール」はとても素晴らしいプロダクションで質の高い公演だったと思うけど、唯一にして致命的な欠点がここにあった。

この日のマチネ、ソワレとも私は正面の席、特にマチネは3階の正面下手寄りだった。それにもかかわらず、婚約式で踊るニキヤを見るソロルとガムザッテイがまったく見えなかったのである。
このシーンは、ソロルとニキヤ、ガムザッティの三角関係が悲劇を生むとても重要なシーンなので、三者三様の表情、顔の表情は見えなくとも体を使ってどんな演技をしているかが見たいのだ。ところが、彼らの座る席は真横を向いており、しかも席の横には大きな葉っぱがあって、顔がすっかり隠れてしまっているのだった。
東京文化会館のステージは非常に狭いので、そのような配置になってしまっていたのだと思うのだが、これではせっかくの重要なシーンの楽しみの大半が奪われてしまって、ひどい、としかいいようがない。どうして、もっと広いステージのある会場にしなかったのだろうか?それが無理なら、少なくとも邪魔になる葉っぱは外し、席も真横向きではないようにすべきであった。

よって、ニキヤが物悲しい音楽に乗って、ソロルへの絶望的な愛を舞で表現しても、それに対してソロルがどのようなりアクションをしたのか、そしてガムザッティは、自分の陰謀―ニキヤを殺すこと―の一部始終をどう見守ったのか、それが見えなかったのである。

話をフィーリンに戻すと、彼は脚の使い方がとても美しいダンサーで、特にブルノンヴィル/ラコットなどの脚捌き系のパがとても得意である。今回も3幕のヴァリエーションでのバットゥリ―は実に見事だったのだが。今回の公演のソロルの衣装は、ダンサーによってデザインが異なっており、フィーリンのそれは露出度が少なく、まるでパジャマのように見えるだぶだぶのものであった。よって、彼の魅力のひとつである脚の美しさがぜんぜん見えない!困ったものである。

そしてノーブルで大変マナーのよいダンサーである彼は、感情表現もとても控えめである。ニキヤが毒蛇にかまれ、絶命しそうになっているときも、リアクションは大きくなく、あくまでもガムザッティの婚約者として理性的に振舞っている。ニキヤが死んだときでさえ、彼女に駆け寄るものの、すぐに走り去ってしまう。ちょっと冷たすぎるソロルである。彼がようやく自分の罪深さを実感するのは、3幕でアヘンに溺れニキヤの幻影を見るときなのであった。

上記の位置関係により、ニキヤが踊っている最中のガムザッティの表情を見ることもできなかったわけだが、ガムザッティは父親であるラジャにしなだれかかるように甘えているような雰囲気はわかった。そしてニキヤが毒蛇に噛まれた時―この毒蛇はもちろんガムザッティがラジャと共謀して花篭に仕込んだわけだ―、ニキヤはガムザッティを指差し「あなたがこれを仕掛けたのね」とにらむのだが、シプリナのガムザッテイは開き直っていて「ふん、それがどうしたのよ、あなたは死ぬべき人なんだわ」と平静を装っていて、それがすごく怖い感じだった。

ソロルとのPDD、そしてパ・ダクシオンの後のイタリアン・フェッテではシプリナは抜群のテクニックを見せた。アラシュに比べて少しお腹のあたりが太い感じだが、お嬢様のふてぶてしさを出すにはこれくらいのほうがいいのかも。ソロルという獲物を得て、勝ち誇って輝いていた。

そしてニキヤの舞。アラシュによるニキヤは最初から最後まで薄幸オーラが漂っていたので、この踊りもすごくかわいそうな感じが漂っていた。背中はとてもやわらかいけどアームスは少し硬かったかもしれない。それでも哀しみと情念がこもった美しい踊りで、さすがボリショイの水準は非常に高いなと感じた。後半の花篭を持った踊りも、曲の速いテンポにしっかりと乗っていた。蛇にかまれるところだが、花を一つ一つ籠から抜き取って、その後でかまれるというのが他の二人のニキヤと違っていたところ。あなたがこんなひどいことをやったのね、とガムザッティをにらみつける視線は、逆に一番強かった。こんな形で殺されてしまい一番かわいそうなニキヤであった。

ボリショイ的だな、と思ったのは、2幕が終わった後に、カーテンコールがあったこと。ガムザッティの出番はここで終わりだから、いいサービスだと思うけど死んでしまったばかりのニキヤもカーテンコールをやるのには少し違和感。カーテンを開けて全員でのカーテンコールをやったのはこの回だけだったと思う。

(長くなったので続きは後で)

ニキヤ -バヤデール: マリーヤ・アラシュ
ドゥグマンタ -ラジャ:アレクセイ・ロパレヴィチ
ガムザッティ -ラジャの娘エカテリーナ・シプリナ
ソロル -名高い戦士:セルゲイ・フィーリン

大僧正:アンドレイ・スィトニコフ
トロラグワ-戦士:ヴィタリー・ミハイロフ
奴隷:キリール・ニキーチン
マグダヴェーヤ-苦行僧:ヤン・ゴドフスキー
アイヤ-奴隷:エウゲニア・ヴォロチコワ

ジャンペ:ジュ・ユン・ペ、アリョーシャ・ボイコ、
スヴェトラーナ・グニェドワ、
スヴェトラーナ・パヴロワ、アナスタシア・クルコワ、
アナスタシア・スタシケーヴィチ
パ・ダクシオン(第2幕)ユリア・グレベンシュチコワ、オリガ・ステブレツォワ、
ネリ・コバヒゼ、ヴィクトリア・オシポワ、
パーヴェル・ドミトリチェンコ、エゴール・クロムシン
太鼓の踊り:アナスタシア・ヤツェンコ、ゲオルギー・ゲラスキン、セルゲイ・アントノフ
黄金の仏像の踊り:デニス・メドヴェージェフ
マヌー(壷の踊り):ダリア・グレーヴィチ

影の王国(第3幕)
第1ヴァリエーション:エレーナ・アンドリエンコ
第2ヴァリエーション:ナターリヤ・オシポワ
第3ヴァリエーション:アンナ・ニクーリナ

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